押し入れからビデオ④『こむぎいろの天使』

『こむぎいろの天使』



小学校の図書室にあって、俺もよく読んでた「動物小説」。犬やオオカミの物語を好んで書いて「日本のシートン」などと呼ばれることもあった戸川幸夫。
彼の小説を映画化した『オーロラの下で』を監督したのが、動物や自然と人間の関わりを一貫して描き続けて、俺が「映画界の戸川幸夫」と勝手に呼んでる後藤俊夫監督だ。

『こむぎいろの天使』は1978年の監督デビュー作。
一般の劇場公開ではなく、「文部省特選」のお墨付きも得て、全国の公民館とか、学校での貸出上映とか、そういう形で上映されたもの。
俺は民放の朝の時間帯に放映された時のをビデオに残してある。いつ頃やったのかわからないが、ジュワイヨクチュールマキのCMに、リー・トンプソンが出てるので、まあそのあたりの時期ということ。

この監督はフィルムを積んで、日本各地を巡回していくという上映方式に今もこだわり続けていて、この映画の次に撮った『マタギ』は東映の封切り館でかかってたが、その次の『こんにちはハーネス』は、俺は新宿の駅近くのホールでの上映会で見てる。
事故で視力を失ったピアニスト志望の女性と、盲導犬の物語で、NHKの朝の連ドラ『まんさくの花』の中村明美が主演というんで見に行ったのだ。可愛かったんだよね彼女。



映画の中で、杖を使って路上の障害物を避けられるようになったヒロインが、道にはみ出た角材か何かに顔をぶつける場面がある。
「目は見えないのに、こういう時の星は見えるのね」
と言ってワッと泣き崩れる。その時、場内で小さな拍手が起こってたのが印象に残ってる。


この『こむぎいろの天使』は調べてみると、後藤監督はシリーズとして作っていて、3作目に取り掛かってるようだ。
この1作目は富士山を真近に望む、静岡の里村に住む小学生が、親を失ったスズメを育てるというストーリー。
最近数が減ってるんじゃないかともっぱらの噂のスズメだが、俺んとこの地元じゃ普通に見かけるけどな。
あまりにも身近にいるんで、まじまじと観察したこともないから、この映画で、カメラが寄って捉えてるスズメのいろんな仕草が楽しい。
「砂遊び」という、砂に体をすりつけるようにして、羽をバタバタさせるとこなんかね。

主人公の小学生さぶを演じるのは、後に松本俊夫監督の怪作『ドグラ・マグラ』で主役を張る松田洋治。
当時11才だが、5才で劇団ひまわりに入団してる彼の演技は、さすがに達者なんだが、他の子役が棒読みなんで、ドラマ部分に関しては、いかにも児童映画な気恥しさは拭えない。

スズメのヒナを、目の開かないうちから、実際に育てるという撮影方針でやってるので、見てるともう完全に主役の松田君を親と思う「刷り込み」が出来てて、片時もそばを離れない。
外を歩く時も、彼の頭の上にちょこんと乗ってる。近くを飛び回るようになっても、さぶがエサ置きをコンコンと叩いて呼ぶと、パアーッと帰ってくる。

最初のうち、ヒナが何を食べるのかわからずにいたさぶが、担任の先生に調べてもらう場面がある。
俺はてっきりスズメは野鳥なんで、鳥獣保護条例で飼うことは禁止されてると思ってが、市町村などに届け出て、許可をもらえば飼えるようだ。

そういや父親と町に買い物に出かけたさぶが、昼飯に入った、父親のなじみの料理屋で、スズメの丸焼きを出されて「ガーン！」となる場面があったが、俺も中学の時に地元のバーベキュー屋で、スズメを試してみたことがある。
肉が少なくて「食べるとこないなあ」と思った。
で、調べてみたら、スズメは頭から食べられるように、骨を砕いてから丸焼きにするんだそうだ。
調理の仕方を一から画像つきで解説してるHPを見てしまい、ちょっと引いた。

映画のラストで、さぶはスズメを山に帰そうとするが、何度放しても、すぐに戻って来てしまうのだ。
松田君は撮影中に自分で育てたあのスズメを、その後引き取ったりしたんだろうか？

2011年10月3日

コメント 3

この映画、中学生の頃に見ました。
餌のお茶碗を叩くと、どこからともなくスズメが戻ってきたり。
落花生を枕にしてスズメが寝たり（落語であったな・・・）

あたし京都の伏見に近いところに住んでるんで、伏見稲荷大社の参道に「スズメ焼き」のお店が並んでいるのをよく見てます。
食べたこともあるけど、食べるところの少ない珍味ですね。
もういらない・・・
by なおぼん (2015-02-09 16:58) 

私も40年くらい前にテレビでみました。もう一度みたいと思いました…ありがとう。
by 紗香衣里 多積遣 (2018-06-14 14:55) 

小学生の時に学校で見ました。
静岡辺りの富士山が見える辺りの風景今でも覚えてます。
もう一度見たいです！
by ゆう (2018-07-12 18:47)