押し入れからビデオ⑨『ロザリー・残酷な美少女』 [押し入れからビデオ]

『ロザリー・残酷な美少女』

ロザリー.jpg

1972年のアメリカ映画。男が女に片足へし折られて監禁されるという展開は、後にスティーヴン・キングの『ミザリー』に流用されてる。『ロザリー』に『ミザリー』だしね。
オリジナルは107分だが、俺が昔テレビ東京で録画した吹替え版は正味80分弱だから、40分位カットされてるわけで、場面が繋がらない箇所が多くて困ったもんだ。


話は非常にシンプルで、ニューメキシコの荒野の一本道で、男がヒッチハイクの娘を乗せる。娘はロザリーと名乗り、両親が死んだので、まだ会ったことがない祖父の住む農場に、とりあえず身を寄せると言う。彼女の見た目は白人と先住民族の混血のようだ。
男は白人で、アクセサリーのセールスをやってるバージル。彼は会ったこともない祖父の家がなぜロザリーにわかるのか、訝しく思ったが、日も暮れてきたので、その農場まで乗せて行くことに。
だがそもそもロザリーはその祖父と暮らしていて、死んだばかりの祖父を土に埋めたばかりだったのだ。
あばら家のようなその住まいにバージルが足を踏み入れた直後、ロザリーは斧を振るい、バージルの右足の骨を砕く。

痛みで気を失ってたバージルが目を覚ますと、右足には木の板で「つぎ」がされていた。周りには何も無い荒野の一軒家。バージルは自分が監禁されたと確信するが、動機がわからない。
ロザリーを興奮させないように、食料と医者を呼んでもらうよう頼むが、医者に関しては拒否される。
バージルの足を折りはしたが、それは危害を加えるためでなく、ここに一緒にいてほしいという意志の現れのようだ。ロザリーは一緒に暮らしてた唯一の肉親の祖父に死なれ、淋しかったのだ。
それにバージルのことを気に入ってもいた。
バージルから見るとロザリーはまだ少女に見えたが、彼女はSEXを経験していて、「かけ合わせ」などと呼んでた。バージルが、それは動物の行為の表現で、人間は「愛」を持って行うもんだと言うと、痛いだけで、愛などなかったと言う。

そのロザリーに無理矢理「かけ合わせ」を行ったフライという名の男が、家にやってきた。
薄汚い風貌で、バイクを転がしてるこの男は、ロザリーの祖父から「金」があることを聞いていて、その在り処を探し出すために来たのだ。
ロザリーに身体で吐かせようとするフライに、ベッドの上のバージルは、自分の車のキーを渡し
「トランクの中にスーツケースがある」
と言う。持って来させて中を開けると、金色に輝くアクセサリーが。
ロザリーはとっさに、祖父が死ぬ2日前に、金を売って、そのアクセサリーを買ったのだと言う。フライはスーツケースをひったくって、町に行き換金するため去ってく。
だがバージルがセールスのため持ち歩いていたそのアクセサリーはすべて「まがい物」だった。バレればフライは怒り狂って戻ってくるだろう。
だがバージルの説明に、ロザリーは
「金が欲しいというだけのフライより、平気で嘘をつくあんたの方が信用できない」と言う。

ロザリーはバージルを家に残したまま、町で黄色い服やタイツを買ってくる。初めてするおしゃれだ。彼女はバージルに好かれたいのだ。
バージルが海を見せてあげるからと、ロザリーがパンクさせたタイヤを直させようとしても、
「あたいの幸せはここにある」
と、どうしてもバージルとここで暮らそうと願う。

そうしてる内に、案の定フライがすごい剣幕で戻ってきた。ロザリーは観念して
「金はおじいちゃんと一緒に埋めた」
と言う。死体に握らせた袋に金は入っていた。フライは騙したバージルに礼をしようと斧を振り上げるが、黄色い服のロザリーに目をやり、バイクに乗せて去って行った。
残されたバージルは、右足を庇いながら、なんとかタイヤをスペアに交換し、運転席に滑り込んで、エンジンをかけた。ようやく悪夢のような監禁の日々から解放されたのだ。

あのロザリーを拾った一本道に出て、ハンドルを握る表情には自然に笑みがこぼれる。
やっと帰れるのだ。だがその時、道端にうずくまる黄色い服が目に入る。
停まる必要などない。
通り過ぎてしばらく、車はブレーキをかける。
バックしてロザリーの前へ。
「あんたが来ると思った」
「ばかな。なんで僕がここを通るとわかるんだ?」
ロザリーの服はドロに汚れ、手には血がついている。
あの後フライに襲われて、とっさにナイフで刺し殺してしまったと。バージルは彼女の話を信じてなかったが、すぐそこに死体があると言われ、車を降りて見に行くことに。

果たしてそこには首を切られたフライの死体があり、バージルはロザリーに警察に自首するよう説得する。だがロザリーは抗う。
「君はこの死体を埋めれば一件落着と思ってるのか?いいかげん大人になれ!」
だがロザリーはナイフを振りかざし、揉み合いとなって、バージルは右足に激痛が走り、うずくまってしまう。
ロザリーは道路に出て、助けを借りようと、車を停めようとする。停まってくれる車はない。
やがて一台のパトカーがロザリーを見て停まる。警官は何かあったのかと彼女に尋ねる。
そしてロザリーは思いもかけない一言を、警官に向かって叫んだ。


ここまで書けば大概ネタバレも同じなんだが、想像してもらうとして。
この映画を監督したジャック・スターレットの、1975年作『悪魔の追跡』のあのエンディングを知ってる人なら、まああれに近い感じと思ってもらえばいい。

オリジナルの107分版には道に迷ったバイカーってのが出てくるらしいんで、登場人物は厳密には4人てことか。
40分は切られてるバージョンを見てるんで、ロザリーとバージルの関係性の変化が掴みづらい。
だがバージルが、監禁されてるにも係らず、ロザリーに惚れられてることに満更でもなくなってきてる感じはわかる。『ミザリー』との大きな違いはそこの部分で、あの映画で小説家ジェームズ・カーンが、キャシー・ベイツに好意を抱くなんてことはあり得なかった。
この映画では、もし自分が同じような目に遭ったとして、でもその相手が身寄りのない少女で、教育も受けておらず、逆に言うと、ある種のプリミティブな魅力を感じたとしたら、この娘と一緒に居るのもいいかも、と思ってしまうのではないか?
映画の中でバージルは、ロザリーから「愛」を、してほしいとせがまれるも、一線を越えることはなかったが、もうちょっと長引いてればわからんよな。

副題に「残酷な美少女」とついてるが、俺が録画したテレ東のテロップには『ロザリー』としか出てなかった。劇中のセリフでバージルが「君はまだ子供だろう?」と言ってるが、ロザリーが何才なのかはわからない。
だが演じてるボニー・ベデリアは当時もう24才だったし、見た目も少女という感じでもないかな。
吹替えの声が幼い感じだし、「あたい」なんて表現にしてるから、そう捉えられてる部分があるのか。

ボニー・ベデリアといえば、後に『ダイ・ハード』でマクレーン刑事の奥さん役で広く知られるようになるが、彼女の代表作は、それ以前の1983年に主演した『HEART LIKE A WHEEL』という映画。
実在の女性ドラッグカー・レーサー、シャーリー・マルドーニーを演じた彼女は、ゴールデングローブ賞ドラマ部門の女優賞候補になってる。監督はこのブログでも取り上げた『Mr.ビリオン』のジョナサン・キャプラン。

ボニーべデリア2.jpg

これはまったくの日本未公開であり、是非見てみたい映画だ。題名はリンダ・ロンシュタットの同名アルバムと、車のWHEELをかけてる、その辺りも洒落てるんだが。
まあしかしロザリー役は後の彼女のイメージとはかけ離れてるんで、黒歴史になってなきゃいいけど。

登場人物が3人という映画で、フライを演じるのが、このブログで前にコメントした『ドッグ・ソルジャー』に出てたアンソニー・ザーヴ。ただ凶暴というだけでなく、狡猾そうな表情も持ってる、強烈な面構えだね。最近のディカプリオが段々似てきてるのが気がかりだが。
アンソニー・ザーヴを吹替えてるのが大塚明夫。これは元声を聞くより、絶対こっちと思う位にキャラにハマッてる。さすがとしか言いようがない。

この『ロザリー・残酷な美少女』は劇場用映画ではあるが、日本未公開で、テレビ放映の他は、ビデオ・DVDの発売歴はない。どこか権利買わないかな。

2012年1月15日

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コメント 3

カイルちゃん

発売されてましたよ。輸入盤ですが…。
もう廃盤ですが私は購入出来ました。
画質は良くありませんが昔の作品なので仕方ないです。字幕もありませんが内容はいたってシンプルなので問題はなかったです。
by カイルちゃん (2012-09-14 01:45) 

jovan兄

カイルさま。

コメントありがとうございます。
それは貴重ですね。国内版もキングレコードが「グラインドハウスホラー」の1本としてリリースでもしてくれればよかったんですが。肌合いとしては
『悪魔の調教師』に近い感じもあると思うし。
by jovan兄 (2012-09-15 23:38) 

クリス

jovan兄 さま
コメント失礼します。クリスといいます。
押入れからビデオコーナー参考になります。
ロザリー昔から気になっていた作品ですが、ようやく国内版DVD発売されてみることができました。
ミザリーよりこちらの方が考えさせられますね・・。
by クリス (2017-12-31 11:15) 

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