やせたデニーロ、太ったベルッチ [映画ハ行]

『昼下がり、ローマの恋』

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原題は「愛のマニュアル3」となってて、2005年の『イタリア的、恋愛マニュアル』2007年の『モニカ・ベルッチの恋愛マニュアル』に続くシリーズ3作目なんだね。
俺は前の2本を見てないんだが。これを見ようと思ったのも、デニーロがイタリア語で演じてるというんで、どんなもんかと興味を持ったからだ。


「若者の恋」「中年の恋」「老いらくの恋」の3つのエピソードに分かれたオムニバス形式なんだが、イタリア映画というのは、このオムニバス物が多いんだよね。特に「恋愛映画」のジャンル。

デシーカ監督の『昨日・今日・明日』のような人情あふれる物語から、いわゆる「艶笑劇」と呼ばれるエロい内容のものまで。『ボッカチオ’70』や『華麗なる女女たち』など、有名な監督たちによる競作もある。ナンニ・モレッティの『親愛なる日記』はオムニバス形式の私小説という趣だった。

近年見たもので良かったのは『夜ごとの夢』で、その3話目を、大作『輝ける青春』のマルコ・トゥリオ・ジョルダーナが監督してたんだが、これがいかにもエロい設定で始まりながら、最後は感動で締めくくるという見事なものだった。

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オムニバス物の製作本数を数えてみたら、多分というか間違いなくイタリアが一番多いはず。
なんでだろうね、イタリア人って「小話」好きなのかもな。それも色っぽいヤツがね。
よく男たちが集まって食事の場で、笑い話を披露するって場面が、イタリア映画にはあるけど、大抵エロいネタだよな。
スケベなんだけどカラッとしてる。しんねりむっつり長々と語るもんじゃないって意識があるのかも。


ローマの賑やかな通りに面した、歴史を感じさせる外見も美しいアパートの住人たちが主人公。
若い弁護士ロベルトは、このアパートに住む恋人サラとの結婚を考えていた。どうしても土地の立ち退きに応じない、トスカーナ地方の農家への交渉に派遣されたロベルトは、この仕事をまとめれば、キャリアアップにつながると、勇んで村へと向かった。

都会から弁護士が来てるということは、すぐに村中に広まっていた。最初は村の住民たちにからかわれたりしてたが、ある晩、酒場にやってきた金髪の美女ミコルが、男たちに賭けを申し出ると、ロベルトは手を上げ、賭けにのった。村の男たちは、自分からこっちの世界に飛び込もうとしてきた、この若者が気に入った。

農家の頑固な持ち主との交渉は難航したが、滞在を伸ばすうちに、ロベルトはこのトスカーナの村の、朗らかであくせくしない住民たちとの触れ合いが心地よくなっていた。だがそれもミコルとの出会いが実のところ大きかったのだが。ふたりは夜の海辺で抱き合った。
毎晩「3つ星ホテル」という名の安ホテルの部屋で、サラからパソコンに「テレビ電話」が入るんだが、ロベルトはさすがに罪の意識で、まともに目を見て話せない。

ミコルは謎を秘めた女で、ロベルトは彼女の住まいを探して、大きな邸宅のプールで寛ぐミコルを見つける。彼女はこの家の持ち主の妻だった。年の離れた夫は、彼女が奔放な性格だと知ってるのだという。ふたりは寝室で愛し合うが、夫が出張から不意に戻ってきてしまう。

まあありがちなシチュエーションだね、この後もローマに居るはずのサラが、実はロベルトのホテルのドアの前からパソコンで電話してたという場面も出てくるが、4人が鉢合わせして修羅場になるという展開にはならない。
ロベルトを演じるのが、丁度この映画と前後して見たイタリア映画『あしたのパスタはアルデンテ』でも主演してたリッカルド・スカマルチョというイケメンで、それもあって、ドタバタな展開にはしなかったのかも。
しかし彼女がいるのに、他の土地で簡単に女と寝ちゃうのはどうなんだよ。
「それがイタリア人」てことなのか?
題名には「ローマの恋」となってるが、1話目はトスカーナが舞台だったしな。


デニーロとモニカ・ベルッチは3話目に出てくるんだが、俺が見てて面白かったのは、実は2話目の「中年の恋」だ。
温和なムードとピンクのネクタイがトレードマークで、視聴者の人気を博してるニュースキャスターのファビオ。
パーティでテレビ局の社長と談笑してると、若い女性がよろけてきて、社長もろともプールに落ちてしまう。
社長が帰った後、部屋でバスタオル姿のファビオに、エリアナという名の彼女は「ヒールがはさまっちゃって」と謝る。エリアナはファビオに熱い視線を送ってる。
「お詫びがしたいんで、明日食事でも」

ファビオは若い美女の誘いにまんざらでもなく、翌日彼女の住むアパート近くで待ち合わせ。食事が終わり、エリアナは「ウチに美味しいジェラートがあるから」とアパートに誘う。
彼女の部屋の中にはなぜか天使の像が沢山あった。部屋を見てエリアナのエキセントリックな人物像を推し量るべきなんだが、ファビオはベッドに誘われて、そんな余裕もない。

エリアナは相当情熱的で、ファビオは猫の鳴き真似させられたり、いろいろめんどくさいんだが、結局最後まで行ってしまう。
そしてエリアナは見抜いていたように、ファビオの頭をつかむと、カツラをベリッとはがしてしまう。
「バレたら大変なことになるんだよ!」とうろたえるファビオに
「この方がよっぽど素敵よ」「自分を偽ってはダメ」
などと言われ、ファビオもつい納得。
翌日からカツラをつけずにニュースに臨んだ。
社長は「視聴者が逃げる」と反対するが、ファビオは聞かなかった。

エリアナの要求は激しく車の中でも求められた。サイドブレーキが外れ、検問中のパトカーに衝突。
署で事情を訊かれたファビオだったが、その時巡査から
「あの女は有名なストーカーだ」と告げられる。

ファビオを演じるカルロ・ヴェルドーネは、このシリーズの常連だが、俺は前2作を見てないんで、彼のことは初めて見たが、面白いなこの人。
イタリアの役者で『Mr.レディ、Mr.マダム』なんかに出てたウーゴ・トニャッティを思わせる、スケベなユーモアが似合うキャラだ。
しかも最初は渋い感じで出てくるんで、ベッドで「ニャーゴ!」とか言わされながらセックスするところとか、感情が昂ぶると身振り手振りがものすごくスピーディになったり、もう笑いっ放しだった。

家にやってきたエリアナが別れ話にキレて、ファビオが収集した陶器なんかを割りまくり、帰宅した奥さんと娘に、事情を説明したファビオが
「浮気した私は悪いが、こんな時こそ家族の支えが必要なんだ」
と言うと、速攻荷物まとめて出ていかれたり、結局そのスキャンダルでキャスターを降ろされ、アフリカの特派員になるんだが、エリアナからは離れられたりしたものの、反政府ゲリラに捕まり、声明文読まされてる。
ひたすら気の毒な運命を辿るのは笑っていいのか何とも言えない所だ。

療養施設に入れられたエリアナと、ローマを離れる前にファビオが面会に行く場面はちょっとしみじみさせる。
大量の鎮静剤を投与され、すっかり大人しくなってるエリアナを見つめるファビオの表情がよかった。


3話目の「老いらくの恋」は、デニーロもそう言われる歳になったのかと、ちょっと淋しい気もするが。
ボストン大学を定年退職した考古学の教授で、2年前からローマに移り住んでるエイドリアン。
7年前に心臓移植手術を受け、その後に離婚、もう恋愛など心臓に負担のかかることはすまいと、静かに暮らしてたんだが、アパートの管理人アウグストの娘で、40になる独身のビオラの美しさを目にして、眠っていた恋心に火が灯った。
若く見せようとやったこともないジョギング姿をアピールしたり、酒場でビオラに絡んできた若い男に思わず殴りかかったり。

ビオラは父親にはパリでブランドショップに勤めてると言ってたが、実はパリではポール・ダンサーで生計を立て、開業したレストランに失敗して、借金に負われ、ローマに逃げてきたのだ。
彼女は自分の身の上話を静かに聞いてくれるエイドリアンの優しさに惹かれ、彼も心臓を庇って、自分を押し殺して生きるのは止めようと思うようになっていた。
父親に真実を知られ、行き場のなくなったビオラを、エイドリアンは自分の部屋に招いた。

エイドリアンがワインを飲みながら、ビオラに
「ポールダンサーって、服の脱ぎ方は決まってのかい?」と訊ねると
「自分で試してみるとわかるわよ」と言われ、ビオラの指示通りに服を脱いでくはめに。
デニーロもこの歳でストリップとはご苦労なことだが、『ミート・ザ・ペアレンツ』シリーズで、すでに「名優」の称号を自らひっぺがすような、あられもない格好をしてるから、免疫できたのかも。

ただ首周りとか「痩せたなあ」と感じる。数年前に見たアル・パチーノとの共演作『ボーダー』ではかなり肥えてた印象だったのに。ジョギングする場面での足のほっそい事!スーパーモデルなみだぞ。
今さらこの歳になって、若い頃のような、メソッド演技で体重を減らして映画に臨むなんてこともしないだろう。
彼も今年72才で、高齢になってからの体重の上下はいいことではないから、なんか心配にはなるね。
対照的にモニカ・ベルッチは肥えてきてる。実は彼女も48になるんだね。長い髪をソバージュにして、頬を隠してるが、体全体として丸みを帯びてる。
でもイタリアのお母さんとかみんな丸いし、そうなるのは自然なことなんだろう。

スターが出てるから、あからさまにエロい感じに作られてはいないが、「艶笑もの」の範疇だとは思う。
イタリアらしく愛の言葉はロマンティックで、デニーロ演じるエイドリアンが、ビオラに
「僕の新しいハートは、君を愛することに決めたんだ」
と言うセリフもよかった。

2012年3月25日

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