吹替版で見よう「消耗品軍団」 [映画ア行]

『エクスペンダブルズ2』

img3092.jpg

シルベスター・スタローン(バーニー・ロス)=ささきいさお
ジェイソン・ステイサム(リー・クリスマス)=山路和弘
ドルフ・ラングレン(ガンナー・ヤンセン)=大塚明夫
ジェット・リー(イン・ヤン)=池田秀一
チャック・ノリス(ブッカー)=堀勝之祐
ジャン=クロード・ヴァン・ダム(ヴィラン)=山寺宏一
ブルース・ウィリス(チャーチ)=綿引勝彦
アーノルド・シュワルツェネッガー(トレンチ)=玄田哲章

どうよ、この吹替版の声優のメンツ。これでこそ「吹替版」を名乗る資格があるってもんだ。
普通ならもちろん洋画は字幕版で見るんだが、これは別だ。
本編に負けず劣らず、こんな声の顔ぶれが一堂に揃うなんてことは滅多にないのだ。

都内近郊いろいろネットで調べてみて、吹替版が大きなスクリーンでかかってる所ということで、今まで足を運んだことなかった「109シネマズ木場」を選んだ。
しかし俺の見た回は、他に男性客ひとりだけ。なんだこの「選択に負けた」感は。

吹替自体は文句なしに素晴らしかった。
CMでブルース・ウィリスと「共演」してる綿引勝彦が、
「ちゃんと覚えとくんだ、ブルゥース!」って云うのかなと期待しちゃったよ。

パンフは800円と高めだが、ささきいさお、玄田哲章、綿引勝彦による対談も載ってるし、内容盛りだくさんで、値段に見合ってる。


基本1作目とやってることは変わんない。
スタローンは今回監督はサイモン・ウェストに任せて、自分は演技に徹してるが、それとて、スタローンの演出とどこが違うとか差も感じないし。

冒頭でネパールの武装反乱軍に拉致された、中国の富豪を救い出すというミッションに臨む「消耗品軍団」。
最初っから殺しまくりだ。
徹底的に殺して破壊し尽くして、ミッションを終えて国へ帰ると、新入りの凄腕スナイパー、ビリーが仕事の血生臭さに耐えられないと、バーニーに訴える。

バーニーは「俺もお前くらいの頃、同じように悩んだもんだ」
と云い、その胸の痛み、わかるぞみたいな熱い眼差しを注ぐ。

俺はスタローン好きだし、映画もほとんど見てるけど、彼の悪い癖は、こういうウェットな訴えかけをしてくる所だ。
あれだけ他所の国の人間を虫けらみたいに殺しまくっといて、
「でも俺たちも家に帰れば、一人の人間なんだよなあ」みたいなアピールはいらんわ。
殺しが仕事なら、殺しに徹してくれ。

まあしかしウェットなのはそこまでで、後はひたすら撃ちまくり殺しまくりしか描かれないので、安心して見てられたが。

今回はジェット・リーが冒頭のミッションで、ちょっと暴れてみせただけで、映画から退場してしまうのはがっかりだが、前回仇役っぽい位置づけだったドルフ・ラングレンが、なんとコメディリリーフを任されてる。
これが悪くないのだ。スタローンはこういう人の使い方が上手い。

ちなみにドルフの役名のガンナー・ヤンセンというのは、同じ北欧出身で、『悪魔のいけにえ』でレザーフェイスを演じた、ガーナー・ハンセンをもじってると俺は踏んでる。

前作ではオファーを蹴ったヴァン・ダムが、今回満を持して悪役として登場。
役名がヴィラン(悪党)ってそのままじゃないか。
サングラスかけて凄みを感じさせるが、最後の見せ場でそのサングラスを外すと、なんか目が変になってる。
スタローンも同じなんだが、アクション映画に出続けた頃に、筋肉増強剤をかなり服用してたんだろう。
その副作用めいたものが、顔の妙なゆがみに現れてる気がする。

スタローン対ヴァン・ダムの「ゆがみ顔対決」も見ものだが、格闘の切れのよさでは、ジェイソン・ステイサムと、敵の腹心スコット・アドキンスのマーシャルアーツ対決の方が見応えはある。

地獄のコマンド.jpg

だが俺にとっては、この映画はチャック・ノリスに尽きる。
もうここからはチャック・ノリスの事しか書かないが、実は途中まで彼は出てこない。
俺も見ながら「あと誰か出てくるはずだよなあ」
などとボンヤリ考えてたら、敵に囲まれた「消耗品軍団」のピンチを一人で解決した男が現れた。
なぜか『続・夕陽のガンマン』のテーマ曲に乗って、歩いてくるのがチャック・ノリスだ。

俺はこの場面で、二人しかいない劇場内で、ケラケラ笑い出してしまった。
別にギャグの場面でもないし、俺は「こういうのわかってるんだぜ」というような、笑いのアピールをするのは好かない。
時々映画見てるといるんだよ、そういう手合いが。
笑おうと思って笑ったんじゃなく、自然に笑いが止まらなくなってしまったのだ。
スタローンが「ブルース・リーと拳を交えた男」に、最大の敬意を払ってることに嬉しくなったのかも。

チャック・ノリス演じるブッカーは、傭兵の業界では「ローンウルフ(一匹狼)」と呼ばれてるのだ。
ローンウルフという呼称と、マカロニウェスタンの音楽となれば、これは
1983年のチャック・ノリス主演作『テキサスSWAT』へのオマージュだとわかる。

原題は『ローンウルフ・マッコード』といい、現代版マカロニウェスタンを目指したような作りの活劇で、フランチェスコ・デマージによる音楽は、モロにマカロニテイストでカッコよかった。

あの映画の仇役はデヴィッド・キャラダインだった。
テレビドラマ『燃えよ!カンフー』で一躍名を上げたキャラダインと、ブルース・リーとの対決で名を上げたノリスが、最後に野っぱらで、カンフーで雌雄を決する様は、
『ドラゴンへの道』の記憶を喚起させたもんだ。

テキサスSWAT.jpg

俺は自分の人生の持ち時間を、人に比べてチャック・ノリスの映画に結構費やしてきてる方だ。
1977年の『暗黒殺人指令』から、1993年のTVムービー『テキサス・レンジャー』あたりまで、ほとんど見てきてる。
キャリアとしての最盛期は、この『テキサスSWAT』から、『地獄のヒーロー』『野獣捜査線』『デルタフォース』『地獄のコマンド』の5連発だろう。

『地獄のコマンド』なんて、原題は「合衆国侵略」と大きく出てるわりには、フロリダの先っぽの方で小競り合いしてるレベルの話だったが、キャノン・プロ製作だから、見せ場もエグくて楽しめた。

なによりこの時期の「チャック・ノリス映画」はテーマ曲がみんないいのだ。
『野獣捜査線』はラロ・シフリン風にクールだし、アラン・シルベストリによる『デルタフォース』のテーマは、一時期「プロ野球ニュース」の試合ダイジェストで必ず流れてた。

『エクスペンダブルズ2』のチャック・ノリス参上で、こんなにテンション上がるのは、彼の映画に付き合ってきた者だけに表れる症状なのだ。

2012年11月2日
  
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 2

キミドリ

素晴らしい威厳のあるレビュー、ありがとうございます!

>ウェットな訴えかけ
>この映画はチャック・ノリスに尽きる。

同意を得ました。
チャック・ノリスの映画は本当に音楽がいい。
どの作品も音楽的傾向が違うにも係らずです。

ここに着目したレビューを見るのは稀です。


by キミドリ (2012-11-07 07:07) 

jovan兄

キミドリさま。

コメントありがとうございます。
普段の自分は威厳のかけらもないので、恐縮しております。
音楽がいいと、活劇の印象度もアップしますよね。最近は即リフレインできるようなテーマ曲に出会えないのが不満です。
有望なコンポーザーはいるでしょうか?
by jovan兄 (2012-11-11 03:35) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。