夏川結衣のドラマを見る [映画タ行]

『尋ね人』

夏川結衣4.jpg

WOWOWの無料放送でやってた。
主演が夏川結衣とあっては、まずは見なくてはならない。

監督は篠原哲雄。先月「TIFF」で見た日中合作の『スイートハート・チョコレート』はガッカリな出来だったので、どうかなとは思ったが。

これは今年出版された谷村志穂の小説をドラマ化したものだが、筋を追いながら、なんだか篠原哲雄監督が2000年に撮った『はつ恋』と、プロットが似てるなあと思った。


『尋ね人』で夏川結衣が演じるヒロイン李恵は、東京で服飾デザインの会社を経営してたが、仕事でも私生活でもパートナーだった男に裏切られ、地元の函館に戻ってくる。

病床に臥す母親を自宅で看病するためだったが、傷心を癒すためでもあった。
だが家に戻ると、母親から思いもかけない頼まれごとをされる。

母親の美月は、自身の余命が僅かであることを察していた。
命尽きる前にと、母親がどうしても確かめたかったこと、それは50年前の初恋の人の消息だった。


昭和27年、函館の児童施設で働いていた美月は、仙台の大学から函館を訪れた藤一郎と知り合う。
二人は親密になると共に、藤一郎は大学の休みを見つけては、青函連絡船に乗って、仙台からやってきた。
旅費もかなりかかるはずだが、藤一郎は仙台の土地持ちのせがれだったのだ。

親友によれば、それまでは女にも手が早い、遊び人だったが、美月と出会い、その純真さに打たれて、本気で彼女を愛するようになったと。

美月も藤一郎との将来を心に決めていた。
「次に会う時は、ご両親にも紹介してね」

藤一郎はその言葉に頷いたが、帰り際、市電乗り場で一緒に乗り込むはずが、二人はそこで別れ別れになってしまう。
藤一郎は不意に市電乗り場から立ち去り、それきり姿を消してしまったのだ。

以来手紙を出しても返事は来ず、心当りに連絡しても、誰ひとり藤一郎の居場所を知らない。

「私がなにか気に触ることでも言ってしまったのか?」
美月は思い悩む日々を送った。

そして傷心にけじめをつけるべく、2年後に、紹介を受けた見合い相手と結婚を決め、そして李恵が生まれたのだ。


「なんで50年も前の恋にこだわるの?」
「私やお父さんは、一体なんなの?」
李恵は母親の申し出をとても納得できはしなかった。

だが母親が藤一郎と交わした、100通にも及ぶ恋文を目のあたりにして、余命僅かな母親の真剣な心情に思い及ぶようになっていった。


地元のいきつけのバーで、そんな話を漏らした李恵に、そばに居た無精ひげの男が
「それは失踪ですよ」と口を挟んだ。
「自分から望んで失踪した場合、まず見つけだすのは不可能だ」
男のぶっきらぼうな口調にカチンとくる李恵。

だがその言葉が引っかかり、後日、男が営んでる「浮気調査」の事務所に顔を出す。
男は「失踪人の調査はしない」と断るが、李恵の率直な性格に惹かれるものがあり、手助けをするようになる。
恋文の文面から手がかりを探り、糸をたぐるように、藤一郎の足跡を見つけて行く。


藤一郎はあの後、仙台の実家にも戻らず、バーテンをして渡り歩いていた。
大阪のバーに当時の藤一郎を知る主人がいた。

藤一郎には実は親が決めた許婚がおり、美月との恋の狭間で、悩んでいたという。
美月からも将来を乞われ、許婚との式も迫り、その女たちの視線に耐えられなくなり、藤一郎は衝動的に姿を消したのだという。

だが2年が経ち、やはり美月への思いは断ちがたく、藤一郎は大阪から、再び函館へと向かった。

その時すでに美月は結婚し、児童施設も辞めていた。
藤一郎は後悔を胸に、昭和29年9月、嵐の近づく青函連絡船・洞爺丸の乗客となっていた。


夏川結衣は、母親の恋の消息を辿るなかで、自らの過去の恋との訣別をはかるヒロインの心の揺らぎを、丁寧に演じてた。
男を寝取った、自分の部下でもあった若い女から、男の部屋にあった私物を函館に送りつけられ、屈辱に涙する場面もいいが、その男が函館にやってきて、ホテルで復縁をちらつかせる態度に、きっぱり拒絶を示し、
「では、お元気で!」と立ち去る、
その切れ味に夏川結衣の本領が出てた。

無精ひげの男を演じてるのは安田顕。ファンからは「ヤスケン」と呼ばれてるんだね。
うらぶれた感じは、若い頃の山崎努を思わせるものがあり、舞台に立ってるからか、声がいい。

俺はこの人の芝居を初めて見るんだが、普段の芸風とはちがうようで、盟友の大泉洋が見たら
「おまえ、なにカッコつけちゃってるんだよ!」
とツッコミ入るところか。
大泉洋も『探偵はBARにいる』で十分カッコつけてたから、お相子だろうけど。

はつ恋.jpg

さて前述した篠原哲雄監督の『はつ恋』だが、あの映画では田中麗奈演じる女子高生が、やはり母親の昔の初恋相手への想いを知り、その男性を探すという出だし。
母親が病に倒れ、余命いくばくもないというのも同じ。

初恋相手はわりとすぐに見つかるんだが、真田広之演じるその男は、初恋のイメージをブチ壊すような、うらぶれた風情の中年男で、女子高生は
「こんなじゃ母親に会わせらんない」と、男を改造するべく奮闘する。

男は結婚生活に破れ、その痛手を引きずってグズグズしてるという設定だが、
これも『尋ね人』の安田顕演じる無精ひげの男が、妻と離婚し、いまは幼い息子に会うことも適わず、失意の日々にあるというのと一緒だ。
真田広之演じる男の名が藤木真一路といい、藤一郎と似てなくもないし。

監督の篠原哲雄がこういう話が好きで、『尋ね人』の監督を引き受けたのか、原作の谷村志穂が、『はつ恋』のプロットからヒントを得て、小説を書き上げたのか、なんにせよ偶然すぎる一致に思える。

2012年11月9日

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