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TOHOシネマズの三文芝居 [映画雑感]

シネコン通いをしてる人なら当然遭遇してるであろう、「TOHOシネマズ」の本編上映前の短編プロモ。
リミテッド・アニメを逆手にとったような「おトボケ感」が、それはそれで悪くなかった『紙兎ロペ』のシリーズが終わり、今やってるのは、岩井俊二に撮らせた風の短編ドラマ『映画のある生活』。

あなたの日常の中に「TOHOシネマズ」を、というコンセプトなんだろう。
それは別に構わんけど、内容はちょっと思慮に欠けやせんかね。


シネコンに映画見に来て知り合ったというカップル。
男はそのまま年上の女の部屋に転がり込んでる。
女はベランダでガーデニングしながら
「支柱があるから植物は育つんだよ」みたいなことを年下男に言い、
「フ~ン」て感じで聞いてる。

二人でレストランに居ると、彼女の大学時代の友達らしき一行と偶然出会う。
年下の彼氏?と冷やかされると、年下男は
「いえ、映画好きのただの後輩です」
と言下に否定。女の顔が曇る。

二人の同棲生活はギクシャクし、
「二人でいても、一人と一人じゃ意味ないし」と、
もうボチボチ出て行ってよ的なセリフを年下男にぶつける。

すると翌朝だか、反省した年下男は、興味もなかったベランダの植物に触れながら、彼女の言った
「支柱」の意味を悟り
「ひとりとか…ちがうから!」と謝る。


三文芝居な筋書きとか、ツッコミありきで作ってる、確信犯的な意図も感じるが、それより映画館に見に来てる観客に向けて
「ひとりとか…ちがうから!」
ってセリフをよく吐けるな。
「おひとりさま」全否定ってことだろ。

「もっとカップルとか、夫婦づれで映画館を利用してくださいね」
というアピールだとすれば、それはそれで言いようがあるだろう。

こういうことに噛み付くと
「そりゃ独りもんの僻みだ」と捉えられる。
別にそう思われてもいいし、映画を一人で見ることは、俺の中では当たり前のことだから、それはどうでもいい。

だがどんな客であれ、お金を払ってその場所まで出かけてきてる相手に、
「おひとりより、座席2つ分は確実に利益になる、二人連れ以上でお越しください」
みたいなアピールは感じ悪いぞ。

「感じ悪いぞ」と感じる観客がいるであろうことを、多分思い至ってない、そのデリカシーの欠落ぶりが、サービス業の姿勢としてどうなんだよと思う。


この短編プロモに限らず、いつの頃からか映画館で一斉に流し始めた
「海賊版撲滅キャンペーン」の映像もね。

あれはたしか谷村美月が、どアップで黒い涙流して
「映画が盗まれている、感動が盗まれてる」ってのが最初だったか。

現在はパントマイムキャラの「映画泥棒さん」(多部未華子談)のシリーズになってるが、あれだって、お金払って映画館に来てる客に
「映画の撮影・録音は犯罪です(キリ!)」
と凄んで見せて、感じ悪い。

「いやそういう怪しい行動を見かけたら通報してくださいという意味」と作った側は言うんだろう。
あのシリーズも見てくると、「映画泥棒」は単独犯であるとほぼ断定してるね。
実際そうなのかもしれんが、
いかにも「ご夫婦やご家族連れや、カップルでお越しの方々に、こんな行為をする人はおられないと思いますが」
が前提になってる描き方だ。
「おひとりさま」全不審である。

一人で映画を見に行くというだけのことで、なんで本編が始まる前に、こういう嫌味な思いをさせられるのか。
「おひとりさま」はそもそも映画の興行収入に、それほど貢献してない存在とされてるんだろうか?


俺はちょっとマイナーな映画を見たような時には、他にどのくらい見た人がいるだろうという興味で、ネットをあたったりするけど、映画に関するブログをやってる人の数はあまたに上る。

その中で、新作映画のコメントをマメにアップしてる人の文面から察すると、俺みたいに「おひとりさま」鑑賞の人は多い。
年間100本も見るなんて人間につきあえる相手は、そうは居ないだろう。
映画好き同士が付き合ってない限りは。

でもって「おひとりさま」の俺が、年間どのくらい映画館に金をおとしてるかザッと見積もってみる。

当日料金1800円で見ることはあまりないとして、平均で1本1300円としとく。月にならして12本程度か。
試写会にはここ何年行ってないから、ポイント無料鑑賞の分を差っ引いて、年間で140本とみて、

1300×140=182,000円

これは人によるが、俺の場合はよっぽどダメだった映画以外は、基本パンフが売ってれば買うので、パンフの平均価格を650円に設定するとして、中にはパンフが作られない映画もあるから、

650×130=84,500円

合計すれば
266,500円を例年、映画館で使ってる計算になる。

それからはっきり書いとくが、俺は映画館で飲食系の物は買わない。
理由は「高い」からだ。
飲み物が外の自販機とそんなに金額が変わらないというなら買うが、100円以上は差があるよな。

俺は上映中に物は食わないが、上映前にコンビニのパンをかっこむことはある。
「外部からの飲食の持込みはお断り」
とか知らんよ。だったら安くしろ。

まあとにかく俺ひとりでも年間266,500円おとしてるわけで、そういう人間はブログを眺めただけでも、かなり居るはずだ。
「おひとりさま」が映画館収入の下支えをしてると、捉えては貰えないんだろうか?
レイトショーでは特に「おひとりさま」率が上がってると、見た目感じる。
それは会社が退けた後に駆け込むような人がいるからだ。


よく「猫は家につく」なんて言われるが、映画好きというのは映画ではなく
「映画館についてる」のだ。
映画館で時間を過ごすことが日常の行いに組み込まれてる。
そういう人間たちは、映画館に背を向けることはない。
ことさらに優遇してくれなんてことは言わない。
だけど「気分よく居させてほしい」と思うのは、そんなに贅沢な望みかね?


ところでこの「TOHOシネマズ」短編プロモだが、主題歌を唄ってる近藤晃央というミュージシャンが主演してて、どうもシリーズ化するらしい。
ならば彼が年上の女のもとを離れて「自立」して、「ひとりになってもTOHOシネマズ」というエピソードも作ってくれよ。

というより本音を言えば短編いらないんだけどな。

2012年10月13日



インディーズ系日本映画の興行ハードル [映画雑感]

インディーズ系日本映画の興行ハードルを下げられないか?

昨日は、映画の当日料金¥1800が高いとはいえ、割引サービスを活用すれば、かなり財布の負担も減るだろうということを書いてみた。
¥1800が高いということより、封切られる映画が一律に¥1800であることの方に、俺などは違和感がある。
これを書くと「何十億もかけたハリウッド映画と、日本のインディーズのビデオ撮りの映画が同じ値段というのはおかしいという理屈だろう?」と思われがち。

そのことへの反論として、映画は制作費で価値が決まるもんじゃない、と当然意見が出るだろう。
それはもちろんそうだ。その反論が出るのを承知の上で言ってる。

だがその反論というのは、どこか作り手側の理屈にも聞こえる。
作り手が予算は少なくても、絶対の自信を持った映画を撮り上げたとする。
試写を見たプロやメディアの受けもいい。
その映画をなんでハリウッド映画と同じ¥1800で商売しちゃいかんのだ?ということだろう。
いや全然いかんことはないよ。

ただね、例えば同じ時期に、宣伝費もかけて認知度も高い、話題のハリウッド大作が映画館でかかってるとする。何を見るかはまだ決めてない客がいる。
デートだし、¥1800で確実に楽しめる映画を選びたい。
それは泣けるでも笑えるでも感動できるでも、なんでもいいんだが、いずれにせよ選択に失敗したくはないわけだ。

映画を料理に置き換えてみて、二つ皿が並んでいて、一つには、いろんな料理が山盛りで乗っかってる。見るからに豪華そう。
もう一つの皿には、地味に一品盛られてる。ただ素材は良さそうで、絶品な味かもしれない。
どっちを選ぶかということだよね。

大抵は同じ値段だったら、見た目で元が取れそうな方を選んでしまうだろう。
条件が同じ土俵で勝負すると、作り手の思い入れとは関係なく、身も蓋もない選択の場に晒されるということになる。

プライドがあるから、「金だけかけて中身スカスカの大作より、自分の映画が安く売られるのは我慢ならん」と作り手なら思う。
だがそこは逆転の発想があってもいいんじゃないかと思うんだよ。


HDビデオカメラが普及して以来、ビデオ撮りでもクォリティの高い画質の映画が作れるようになった。映画館のスクリーンにかけても、フィルム撮り作品と同等とまではいかないが、それほど見劣りしないレベルにまで来てると思う。
なのでここ数年は、日本映画の劇場公開本数が、夥しい数に上ってるのだ。

映画を撮りたいというクリエイターが、フィルムの場合よりも、ポストプロダクションの経費など、格段に安くできるようになったのはいいとして、完成した映画は受け手に十分に届いてると言えるだろうか?

今そういったインディーズ系の日本映画をかけるのは、ほとんどがミニシアターの役割となってる。
渋谷のユーロスペースをはじめ、オーディトリアム渋谷、アップリンクX、シアター・イメージフォーラム、テアトル・ヒューマントラスト系シアター、新宿のK'sシネマ、新宿武蔵野館。

こういった所で、全日というよりはレイト上映が多い。
配給会社側も劇場側も、宣伝費はかけられないから、一般の認知度は高まらない。

こういう映画を目ざとく探して見に行くというのは、コアな映画好きなのだ。
コアな映画好きはいつの時代も一定数はいる。
だがその数が右肩上がりに増えていくことはない。

映画に興味を持ってなかった若い人が、あるきっかけで映画にハマって、コアな映画好きになることは、もちろん継続的にあることだ。
反面、今まで浴びるように映画を見てた人が、結婚とか、仕事とか環境の変化で、ぱったり見なくなるということも、一定数はあるのだ。

もしインディーズ系の日本映画上映への入場を記名制にしてみたら、けっこう同じ名前が並んだりするんじゃないか?
ミニシアターでのこうした興行が、ブレイクスルーを起こすという例は、だから稀だといえる。


その2~3週間の上映が済むと、あとはDVDという「パッケージ」化に向かう。
ツタヤのような大きなレンタル店の棚に並ぶんだから、そこで認知度が上がるんじゃないか?
と考えそうな所だが、そうは甘くない。

レンタル店というのはさらにシビアな商売の場だ。
新作DVDはほぼ毎週のように入荷してくる。店の棚数は限られてる。
客の目線に入る位置には、話題作が大量に並べられる。

いま映画興行の場では「邦高洋低」の状態だが、DVDレンタル店の売り場は、洋画のスペースがまだまだ広く取られてる。
その限られた「新作邦画」の棚で、表紙を見せて並べられる話題作と一緒に入荷しても、もはや「インディーズ系」の邦画に十分なスペースなどない。

ツタヤでも都内の大型店には、映画マニアなスタッフがいるので、場合によっては、表紙を見せる分のスペースを確保されて、おすすめコメントもつけてもらえるかも知れない。
だがそれはもう店側の裁量にかかってるわけで、スタッフが一瞥もくれなければ、すぐに「背並べ」にさせられる。
DVDの背表紙はおよそ15mm程度のもので、縦に題名が書かれてるだけだから、よほど関心を持った客でなければ、手に取ることもない。
月に数回貸し出されただけで、すぐにトコロテンのように、新作棚から押し出され、もっと地味な旧作棚へ追いやられる。
こうなるともう棚の模様と化してしまい、こうして1本の映画は忘れ去られる。


日本映画は話題作でもないと、ほんとに短い賞味期限の中で、次々に消費されていってしまうというのが現状だろう。
話題作であれば、DVDになった時も商売の機会は十分にあるが、ほとんどのインディーズ系日本映画は、むしろDVDにパッケージ化される前までが勝負なのだ。
劇場にかかってる期間に、どれだけ認知度を高めることができるのか。そこに命運がかかってる。


現在、散発的に公開されてる、こういったインディーズ系映画を、もっとまとめて人目に触れられる、そういう機会が作れないものか。
「日本映画の未来を占うショウケース」というような形態で。

若い映画作家たちに発表の場を与えてるのは、PFFをはじめ、「映画美学校」や「バンタン」などの、映像専門学校ライン、あるいはシネコンの「ユナイテッドシネマズ」でも、定期的に上映の場を設けたりしてはいる。
TOHOシネマズにおいても、お台場シネマメディアージュにて、「第2回 日本学生映画祭」が、丁度本日開催されてた。

そういった取り組みがあるにはあるが、期間も開催場所もそれぞれ違うので、前述した「コアな映画好き」でないと、その情報が手にできない。
映画好きが鼻をひくつかせて、ようやく辿り着くレベルだと、一般的な認知度には程遠いのだ。

「在野」の映画作家たちの作品を、それぞれ支援してる組織などが、横のつながりをつけて、ひとつの
「ショウケース」にまとめてみる。
1回の開催につき10本ほどの作品を目安にして、それをできればシネコンでかけられるようにする。
どこの系列のシネコンであれ、できれば1箇所ではなく、全国数箇所レベルの規模で。
その際に入場料を¥800位に設定する。
無名の映画作家の作品なんだから、とにかく見てもらわないと始まらない。

シネコンで全日スクリーンを確保するのは難しいだろうから、レイトの時間枠を空けてもらう。
俺は都内近郊のシネコンを利用するけど、正直レイトショーになると客はいつもまばらだ。

1回の開催期間を3週ほどとして、年4回行えるようなローテーションを確立できれば、企画の認知度も上がってくだろう。こういうのは継続させないと意味がない。
単発的に行っても、すぐ忘れられてしまうのだ。

「ショウケース」の運営組織を設立して、HPを立ち上げて、上映作品の情報や映画作家へのインタビューなど、上映時期までマメに更新させていく。
宣伝も打ちやすくなるだろうし、メディアへのアピールもし易い。


思うんだが、第1作を世に出した監督にとって、なによりも重要なのは、次の映画が撮れるという状況を作れるかということじゃないか。
映画はそれ自体を完成させるよりも、むしろその後の道のりが険しいのだ。

「お蔵出し映画祭実行委員会」という組織がある。広島県尾道市と福山市の会場を使って、完成後に公開のメドが立たないでいる映画作品を公募して、上映するという試みを昨年から行っている。
今年の第2回は10月に決定してる。
つまりそういう催しが企画される位に、インディーズ系日本映画の、劇場公開へのハードルは高いということだ。

だが志のある映画作家たちの活動が停滞してしまうようだと、この先日本映画は本当に、テレビ局主導の、テレビドラマの映画化作品か、漫画の原作映画化作品しか残らなくなってしまいかねない。

インディーズ系日本映画が、映画マニアだけの発見の楽しみの対象としてではなく、もっと観客の裾野が広がっていくように、なにか大胆な試みをしてみる時期なのではないか?

2012年8月26日

映画館料金割引サービスの一覧 [映画雑感]

映画館料金割引サービスの一覧を作ってみた。

日本の映画館の当日料金¥1800は高すぎるんではないか?とよく言われる所だが、シネコンのビジネスモデルが定着して以来、割引サービスなどに劇的な変化が訪れたのも事実だ。

以下に割引サービスを行ってるシネコン及びミニシアターを列挙してみたが、俺は会員になれる所はほとんどなってるし、俺も含めて、映画館で年間100本は見るという映画好きなら、誰しもこういうサービスを最大限に活用してるんではないかと思う。

表もまともに作れないパソコン音痴なんで、箇条書きで勘弁願いたいが、まあざっと都内周辺だとこんな感じではないか。漏れがあれば追記していくが。


(シネコン系)

TOHOシネマズ

毎月14日「TOHOシネマズデイ」¥1000
毎週火曜日「シネマイレージ会員割引」¥1300
レイトショー¥1200
ららぽーと横浜など一部で平日午前中の回¥1300
シネマイレージ会員6回鑑賞で1本無料
シネマイレージポイント6000マイル(映画上映時間1分で1マイル計算)で、
TOHOシネマズ1ヶ月間フリーパス(六本木除く)


109シネマズ

毎月10日「109シネマズデイ」¥1000
毎月19日「ブルーカード会員デイ」¥1000
毎週火曜日「ブルーカード会員割引」¥1300
レイトショー¥1200
ブルーカード6000ポイントで1本無料(1本鑑賞で1000ポイント)
2000ポイントで1本¥1000鑑賞可能
ブルーカード入会料¥1000(更新なし、但しポイントの有効期限は6ヶ月)
入会時2000ポイント付与


ユナイテッドシネマズ

毎週金曜日「CLUB-SPICEカード会員割引」¥1000
レイトショー¥1300 
CLUB-SPICEカード入会料¥500(1年更新)
6000ポイントで1本無料(1本鑑賞で1000ポイント)
2000ポイントで1本¥1000鑑賞可能


ワーナーマイカルシネマズ

劇場により、毎月20日か25日「ワーナーマイカルお客様感謝デイ」¥1000
レイトショー¥1200
「ポイントカード」発行料¥100 6本スタンプ貯めると1本無料(発行から6ヶ月以内の期限つき)


MOVIX・新宿ピカデリー

毎月20日「MOVIXデイ」¥1000
平日の午前中の1回目¥1300
毎週木曜日「メンズデイ」男性¥1000
レイトショー¥1200
MOVIX系のシネコンでは「MOVIX Club CARD」を発行しており、入会料¥500(更新なし)
入会時10ポイント付与
60ポイントで1本無料 20ポイントで1本¥1000鑑賞可

MOVIXと経営は同じ「松竹系シネコン」だが新宿ピカデリーは別サービスとなってる。
通常の割引デイはなし(毎月1日のファーストデイはほぼ全部の映画館が¥1000なので、ピカデリー固有の割引ではない)
「新宿ピカデリーメンバーズカード」発行料は無料(更新なし)
8ポイントで1本無料 12ポイントで3D映画1本無料 ポイントの有効期限6ヶ月


チネチッタ川崎

毎月23日「チネチッタデイ」¥1000
レイトショー¥1200 オールナイト¥1200
「チネカード」5ポイントで1本無料(1本1ポイント)
1個目のスタンプから1年以内有効


T-JOY・バルト9・ブルク13

レイトショー¥1200 ナイトショー¥1200
新宿バルト9のみ、平日16時~18時に上映の回はシネマチネ¥1200
会員割引・ポイントカードはなし


ヒューマックスシネマズ

レイトショー¥1200 オールナイト¥1200
平日の午前スタートの回ファーストショー¥1500
会員割引・ポイントカードはなし


(ミニシアター系)

テアトルシネマ・ヒューマントラストシネマ

毎週水曜日サービスデイ¥1000
「TCGメンバーズカード」テアトルシネマ・ヒューマントラストシネマ系列で使えるカード
年会費¥1000 入会時に¥1000鑑賞できる割引券付与
カード提示でいつでも¥1300
毎週火曜日と金曜日は会員割引デイ¥1000


シネマート新宿・六本木

毎月25日「シネマートデイ」¥1000
毎週月曜日「メンズデイ」男性¥1000
「ポイントカード」入会料¥300(更新なし)入会時3ポイント付与(1本1ポイント)
10ポイントで1本無料
毎週火曜日カード提示で¥1000
毎週木曜日はポイント2倍


角川シネマ新宿・有楽町

毎週水曜日「サービスデイ」¥1000


東急文化村ルシネマ

毎週火曜日「サービスデイ」¥1000
毎週日曜の最終回¥1000


シネマライズ

毎週火曜日「サービスデイ」¥1000
毎週日曜の最終回¥1000
PC&モバイルでの座席予約¥1600
「シネクイント」の座席指定券提示で¥1300


シネクイント

「チケットリターンシステム」前回シネクイントで鑑賞した座席指定券を提示すると¥1000
「シネマライズ」の座席指定券提示で¥1300


シアターN渋谷

毎週水曜日「サービスデイ」¥1000
毎週月曜日「メンズデイ」男性¥1000


ユーロスペース・シネマヴェーラ渋谷

「ユーロスペース・シネマヴェーラ共通会員券」年会費¥1200
カード提示でユーロスペース¥1200 シネマヴェーラ¥1000に
割引ポイント8回で1本無料


シアターイメージフォーラム

「イメージフォーラム・メンバーズカード」年会費¥2000 更新時¥1000
カード提示でいつでも¥1000
同伴者1名まで¥300割引


渋谷シネパレス

毎週木曜日「メンズデイ」男性¥1000


新宿武蔵野館

レイトショー¥1300
劇場HPの「クーポン」画面クリックしてプリントアウト、窓口に持参で¥300割引



以上のような具合で、このくらいは入場料金の割引サービスが行われてるわけだ。
なので、かなりの割合の映画を、通常料金より安く鑑賞することができる。

一応断っておくと、書き出したサービスは、男の俺が恩恵に預かることができるということに限られてるので、「レディースデイ」だとか「夫婦デイ」とか「カップルなんたら」とか、俺に関係のない部分は割愛してる。
ここに上がってない映画館でかかってる映画は、なるだけ毎月1日「映画の日」にハシゴするのだ。

そうなると¥1800払って見るのは、封切り初日にとにかく見たいという期待作を、ネットで座席予約する場合が主になる。
あとはデジタルIMAX上映は、すべての割引対象外なので、これは致し方ない。


こうして眺めると、「TOHOシネマズ」が、割引サービスにおいて、リードしてるのがわかる。
続いて「109シネマズ」か。
ミニシアター系の「TCGメンバーズカード」は、テアトルシネマとヒューマントラストシネマのスクリーン数を合わせると、けっこうな数の映画がひと月に上映されるので、お得感がある。

俺の要望としては、東映が運営する「T-JOY・バルト9・ブルク13」も、せめてポイントカードを導入してくれんかな。特に桜木町の「ブルク13」は俺の好きなシネコンなんで、割引サービスが増えれば、ますます通う頻度が高まるんだが。


普通に暮らしてる人はいちいち映画館のポイントカードとか作らないだろうし、そういう人たちにとって、¥1800は高いという話なんだろう。
だがせいぜい年に数回、映画館に行くというような人たちなら、¥1800というのも、そんなに負担には思ってないんじゃないか?
それに映画の当日料金というのは、年々値上がりしてるというわけではないのだ。
俺の記憶では¥1600という時期がけっこう長く続いてた。


シネコンが日本上陸する前の映画興行というのが、ほんとに殿様商売だったのだ。
ロードショー館で割引サービスなんてものはなかった。
それは映画が娯楽の王様だった時代の「客は黙ってても入る」という、その感覚がずっと引き継がれてきてたのだ。

だが俺が見始めた1970年代~80年代なんてのは、もう都内の映画館も閑古鳥は当たり前の風景で、従業員も暇だからだらけてるし、入場しても「ありがとうございます」のひと言もないなんてのはザラだった。

俺は学生時代には試写会にせっせと応募して、ロハで見ることが多かったが、社会人になって、試写会通いはぴったり止めた。
時間的に上映に間に合わないということもあったが、なにか自分で稼げるようになったら、身銭を切ろうという気持ちにもなったのだ。

シネコンができるまでの20年あまりは、多分現在の年間支出額より多くを、入場料金に費やしてたはずだ。もちろん当日料金ではなく、特別鑑賞券を買えるものは片っ端から買って見に行った。
¥400~¥500は安くなるからだ。
その当時の半券が、どっかに山のように積まれてるだろう。
今は特別鑑賞券よりも、シネコンのサービスデイの方が割安になったりするから、すっかり買わなくなってしまったが。

2012年8月25日

鮫!鯨!蛇!ムカデ!ピラニア!猿&禅! [映画雑感]

この週末は月曜祝日の「3連休」となるんで、配給会社も勝負かけて封切作品を揃えてきたわけだが、題名眺めると「わくわくどうぶつ大集合」みたいなことになっとるぞ。
「猿」というのは「海猿」のことだが。

それにしても『BRAVE HEARTS 海猿』の、各シネコンにおけるスクリーン占有率はすごいな。
話題性からいえば『ヘルタースケルター』の方が上だと思うし、『ポケモン』も公開されるんだが。

もうシネコンの名前も「TOHO海猿シネマズ」とか「ユナイテッド海猿シネマズ」とか「109海猿シネマズ」とか「ワーナーマイカル海猿」とか「新宿海猿バルト9」とか「新宿海猿ピカデリー」とかにしといたらどうなん?
もっともどんなに海猿にあふれてても、俺は映画版2作を見た段階で、お腹いっぱいになったんで、3作目は見てない。
よって今回も「見ザル聞かザル海猿」である。


まず「鮫」VS「ピラニア」の人食い対決に期待がかかる。

『ピラニア・リターンズ』は3D上映。
前作『ピラニア3D』が、正しい3D映画の見本を示しただけに、今回も「その方向性」にブレがないように祈るのみ。監督が、常に攻めの姿勢が素晴らしいアレクサンドル・アジャから、
『The FEAST/ザ・フィースト』シリーズのジョン・ギャラガーに替わってるのが気になるが、あのシリーズのアホっぽさも捨てがたいものがあったんで、健闘を期待しよう。

対する「鮫」の方は『シャーク・ナイト』
これも本来3D映画として製作されてるのに、なんと日本では2D上映!
いやタイタンとかジョン・カーターとかMIBとか、そういうもんは3Dじゃなくたって一向に構わんが、これは3Dでやれよ。飛び出されて怖いとなったら「サメのアゴ」だろ。
しかも監督は『ファイナル・デッド』シリーズで3Dの見せ方にも長けてるデヴィッド・R・エリスだぞ。


次いこう。蛇やムカデは苦手な人も多いよね。

『ムカデ人間2』は、一部からは「最も待望されたパート2」作品といわれてる。
「お尻とお口をくっつけちゃおう」というキ●ガイ博士を描いた前作の続きといおうか、その『ムカデ人間』のDVDを見た素人が「僕もつなげてみたい」と、麻酔も医療用具もなく、日曜大工感覚で犠牲者たちをムカデ化してくという、手前味噌な設定だ。

あまりのグロさにモノクロで撮影したそうな。
といっても俺は前作をまだ見てないんで、レンタルして予習しとこう。
都内では「新宿武蔵野館」1館で、しかもレイト1回のみの上映。これは混むかもな。


「蛇」の方はグロではなく『白蛇伝説~ホワイト・スネーク~』
「なんだなんだデビット・カヴァーデイルか?」とロック・ドキュメンタリーと思いきや、ジェット・リーが『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』のチン・シウトンと組んだ「もののけファンタジー・ホラー」のようだ。
都内では「シネマート六本木」での単独公開。


次は「鯨」だが、これはホラーではなく、『だれもがクジラを愛してる。』
1988年10月に世界中のお茶の間の話題をさらったアラスカのクジラ救出作戦の実話を元に描いた、といっても俺はそんな話聞いたこともなかったが、まあ「感動のドラマ」ということなんだろう。
原題は『BIG MIRACLE』なので、日本の配給会社が、わざわざ日本へのあてつけみたいな邦題をつけたってことだな。
『だれもがクジラを食べている。』に変えるべき。

同じ海洋生物の感動の実話を描いて、愛しのアシュレイ・ジャッドが出てて、全米興行第1位にもなった『イルカと少年』が、劇場公開されず、DVDスルーになったのに、なんでこっちが?という思いが拭えないので、多分見ない。


最後に「&禅」だが、これはもちろん
『3D SEX&禅』である。
テキトーな伝え聞きでは、香港では『アバター』よりヒットしたと言われてる、古典エロ文学の映画化だ。その『アバター』以降「これからは3Dの時代だ!」などと言いながら一向に盛り上がる気配もなかったのは、その理由はわかってるくせに、どこも踏み出さずに、子供だましのCG見せてお茶を濁し続けてきたからだ。

そこでついに中国が、超大国の存在感を見せつけることとなった。
「見たいものを見せてあげる」
ってのは沢尻エリカのセリフではないのだ。
まあしかし本当にすごい場面に関しては、原紗央莉など、日本のエロ系女優に頼ってるということなんで、今後はその分野でも「国産」でまかなえるようになってほしい。
なんたって人的資源は豊富なんだから。
これ厳密には「香港映画」で、中国本土では上映禁止だそうだが。
都内では俺もよく通ってる「シネマート新宿」での単独公開。
はじめてそこで見る3Dがこれになるのか。若干こっ恥ずかしさはあるな。


この他にも前述の『ヘルタースケルター』に、芥川賞原作の映画化で、前田敦子がけっこう体張ってるらしい『苦役列車』と話題作に事欠かない週末となってる。

でもここまで書いといて、俺が一番楽しみにしてるのは、全米ベストセラーの映画化で、マシュー・マコノヒー主演の『リンカーン弁護士』なんだが。
原作は『わが心臓の痛み』が、イーストウッド監督・主演『ブラッド・ワーク』として映画化されてるマイケル・コナリーのハードボイルドだ。

2012年7月14日

7月の「フィルムセンター」が熱い件 [映画雑感]

と言っても、国の機関だから、夏の電力需要に気を遣って、館内冷房抑えめにしてるから、蒸し暑いとかの意味ではない。組まれてるプログラムが熱いってことだ。

先だって「EUフィルムデーズ」の『カロと神様』を見に行った際のコメントの中で、7階の展示室で
「ロードショーとスクリーン 外国映画ブームの時代」
と題された展示が楽しいと紹介したが、いよいよそれにちなんだ映画17本を、
7月12日(水)から7月29日(日)まで上映することになったのだ。

ラインナップを眺めてみると、これは『(裏)午前十時の映画祭』と呼べるもので、すべて35mmフィルムで上映される。ちなみに本家『午前十時の映画祭』で上映された作品も4本入ってる。

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上映作品は以下の通り。年代順に並べてみると


『サスペリアPART2』(1975)

1977年の『サスペリア』が日本で大ヒットしたため、東宝東和がその続編という体で翌1978年に公開した、ダリオ・アルジェント監督の「ジャーロ」的傑作。
『サスペリア』とは繋がりがないことは、すでに皆さんご承知の通り。
『欲望』のデヴィッド・ヘミングスが、あの不条理感を引きずった感じで翻弄される展開もいいし、気色悪い人形と、最後のばあさんはトラウマ級の怖さだった。フィルムで拝めるのは俺にとっては初公開時以来だ。
なお今回の上映は、後にビデオ・DVD化された際の126分の「完全版」ではなく、劇場公開時の106分版とのこと。


『キングコング』(1976)

ピーター・ジャクソン版のコングはCGだが、このジョン・ギラーミン版は「アニマトロニクス」&「着ぐるみ」という、手作り感がいいのだ。ジャック・ブラックには悪いが、こっちのジェフ・ブリッジスの方が格上だし。
ジェシカ・ラングもこの頃はちょいエロくてよかった。
なによりこのコングが登るのはエンパイア・ステート・ビルではない。
その「世界貿易センタービル」の在りし日の姿を偲ぼうってもんだ。


『カサンドラ・クロス』(1976)

先日『星の旅人たち』のコメントで、マーティン・シーンについて熱く語ったばかりなので、この映画の久々のスクリーン上映は嬉しい。
この年の年末に「お正月映画」として、東宝東和の『キングコング』への対抗馬に日本ヘラルドが打ち出したのがこの映画。パニック大作の触れ込みだったが、ラストのミニチュアは正直しょぼい。
だがそこに至るまでのサスペンス描写に、その後『ランボー怒りの脱出』で大きく当てる、新鋭コスマトス監督の手腕が見てとれる。
ジェリー・ゴールドスミスの流麗なスコアも聴きもの。
ちなみにこの映画アメリカではほとんど知られてないのだ。


『Mr.BOO!ミスター・ブー』(1976)

初公開時に見た時はなかなかに衝撃的だった。カンフー映画一色だった香港映画に、現代を舞台にしたコメディが出現、しかもギャグがドリフなみにベタなドタバタで、それが波状攻撃的に展開される。
マイケル・ホイが全くフツーのおやじ顔というのも衝撃。三男の年寄り顔したリッキー・ホイと3人ならぶと、さほどイケメンでもない次男のサミュエルがことさら美男に見えるという錯覚で、女の子から人気を博した。
これはテレビでやった時の、広川太一郎の吹替版で上映してほしいなあ。
ちなみに俺は3作目の『Mr.BOO!ギャンブル大将』まではつきあった。


『コンボイ』(1978)

このサム・ペキンパー監督作の元になってるのは、C・W・マッコールというカントリー歌手が、1976年の1月に全米ヒットチャート第1位に送り込んだ同名の曲。
俺は当時、ラジオ関東の「全米TOP40」を毎週聴いてたんで、この無名の歌手のいきなりの大ヒットナンバーには馴染みがあった。イントロにCB無線のやりとりが入るあたりから、ワクワクさせられるものがあり、もう自分の中で、大型トラックの「船団」がアメリカ大陸を爆走する絵面が浮かんでたのだ。
それをあのペキンパーが映画にするというんで、公開が待ち遠しかった。
いざ見てみると、妙にコミカルな味付けで違和感あったな。
だがこれも初公開のたしか丸の内ピカデリーだったか、そこで見て以来なので、今見れば気楽に楽しめるかもしれない。スクリーン映えする景色だし。


『エレファント・マン』(1980)

これがデヴィッド・リンチ監督の日本初紹介作だった。モノクロの、フリーキーであり、かつ胸を揺さぶられる描写に溢れているという、思えば他にあまり例のない映画なのかも。
新宿プラザで見たはずだから、リンチ作品としては、今に至るまで『砂の惑星』とともに、最大スクリーンでの公開だったわけだ。
「象男」の哀しみを全身で体現したジョン・ハートの驚異の名演。静かに受けるアンソニー・ホプキンスのこれも名演だ。
英ハマー・プロで数々のホラー映画を監督してきたフレディ・フランシスが、美しいモノクロのカメラを担当してる。彼が『フランケンシュタインの怒り』の監督でもあることからも、これは変則的な「フランケン」物であるとも言える。


『ジェラシー』(1980)

ミニシアター・ブームの先鞭をつける一館となった、新宿歌舞伎町のミラノ会館内「シネマスクエアとうきゅう」の、こけら落としとして公開され、俺も駆けつけた。
ニコラス・ローグ監督作では『地球に落ちてきた男』から4年後の新作で、評判だけは聞かれ、日本には入って来ないんじゃないかと思われてた。
日本公開は後になるが、1973年の『赤い影』のヴェニスから、舞台はクリムトの絵が小道具となるウィーンへ。
その迷宮感覚につながりを感じる。
DVDも出てはいるが、ローグ監督の映像感覚はスクリーンで、フィルムで味わいたい。
テレサ・ラッセルがこれ以上なくエロ美しい。


『エンドレス・ラブ』(1981)

実は今回のラインナップでこの映画だけ、初公開時に映画館で見てないのだ。
まあ青春ラブロマンスということで「けっ」と思ってたのか、アメリカ本国ではラジー賞候補にもなってて、前評判の悪さもあった。
今聴くとテーマ曲の、ダイアナ・ロス&ライオネル・リッチーの『エンドレス・ラブ』も、いい曲と思えるが、これも当時全米で何週も1位の座にあり「早く落ちろよ」と思ってたんで、全体的に印象が悪かったな。
だが当時まだ16才のブルック・シールズは、すでに美貌が完成されており、この機会にスクリーンで拝むのもいいだろう。トム・クルーズも端役で出てる。


『ハウリング』(1981)

こういうのをやってくれるのが嬉しいね。『ピラニア』の次は狼男と、ジョー・ダンテ監督が上げ潮に乗ってく時期の、サービス精神に溢れたモンスター映画。
脚本は『アリゲーター』も手がけたジョン・セイルズなんで、どこかしらヒネリがある。キャストも含めて「ロジャー・コーマン一派」の後押しも頼もしい。
主演のディー・ウォーレスは『E.T.』のお母さんだが、彼女この映画のほかに『クジョー』やら『アリゲーター2』やら『クリッター』やらと、怪物系に起用されてたね。
ロブ・ボッティンによる、狼男への変身シーンは、ビデオになった時に、何度も巻き戻して見たもんだ。


『愛と哀しみのボレロ』(1981)

この映画に関しては、以前このブログの、俺の『午前十時の映画祭』(80年代編)の1本に選び、コメントも入れた。
今回のラインナップでは、他の16本は現在DVDやブルーレイでも見ることができるが、この映画だけは、DVDが廃版となってるので、見ること自体が困難なのだ。
もともとはスクリーンでこそ見るべき映画で、俺も初公開の丸の内ピカデリーで見て以来だから、今回の企画の目玉だと思う。
ラベルの「ボレロ」はもとより、全編音楽に溢れた、クロード・ルルーシュ監督の渾身の大作。
音楽をフランスの巨頭2人、フランシス・レイとミシェル・ルグランが担当してる豪華さだ。


『ランボー』(1982)

1981年と1982年の、正月映画因縁の戦いというのがあった。
1981年にCICは、スピルバーグ監督の全米大ヒット作『レイダース/失われたアーク』を、満を持して正月映画に持って来た。ところが蓋を開けて見ると、東宝東和のオールスター映画『キャノンボール』に興行でまさかの敗北を喫する。
そして翌年、東宝東和はスタローンが新境地開拓となる「戦士」もの『ランボー』を正月に。
それを迎え撃ったのがCIC、スピルバーグ監督再びの『E.T.』だった。さすがにこれは強く、CICは前年の雪辱を果たしたのだ。
その『ランボー』は東宝東和がつけた邦題だが、それが本国でも通り名となり、大ヒット・シリーズに成長した。
この1作目はテッド・コチェフ監督の小気味よいアクション演出と、人物造形の説得力では、やはりシリーズ随一と思う。


『プロジェクトA』(1983)

この映画によって「ジャッキー・チェンの時代」が高らかに宣言されたと思う。
それまでの主演作はカンフーの見せ場の凄さはともかく、時代設定が古色蒼然としてたのだ。時代を近代に持ってくることで、映画全体が垢抜けた印象に変わった。
そしてカンフー以外の大仕掛けな見せ場や、目を見張るスタントシーンのアイデアなど、その後のジャッキー映画のエッセンスが、すべてこの映画に詰まっていた。
最初のアメリカ進出は成功しなかったが、何かを学んで帰ってきたジャッキーの、アクション映画哲学が結実したと言える。自分で歌う主題歌が流行ったのもここからじゃないか?


『ターミネーター2』(1991)

これはもちろん初公開時に見てるし、あの1作目をここまでブラッシュアップさせたかと、当時は圧倒されるのみだったな。
ただジェームズ・キャメロンの映画だったら、これより『エイリアン2』をやってほしかった。
あれはたしか先行上映で満席の日劇で見たのだ。リプリーが最後にパワーローダーに乗って出てくる場面では、場内に興奮のどよめきが起こった。あんな体験は滅多にない。

以下の4本は『午前十時の映画祭』で上映済なんで、コメントは割愛。

『大脱走』(1963)
『ジュリア』(1977)
『フィールド・オブ・ドリームス』(1989)
『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984)


以上の17本、どうせ今年の夏も暑いんだろう。暑気払いに「フィルムセンター」に通うのもいいぞ。
各作品3度づつ上映機会がある。スケジュールは「フィルムセンター」のHPを参照のこと。

気になるとすれば、「ニュープリント」とは記載されてないから、フィルムの状態はまちまちかもね。
だがいやしくも「東京国立近代美術館フィルムセンター」という、日本を代表する「映画の保存・所蔵機関」であるからして、その状態には期待を持たせて頂きますよ。
入場料金が普段より高い1000円というのが残念だが。

2012年6月16日

洋画離れが進んでるという [映画雑感]

昨日のブログでフィルムセンターでやってる催しのことに触れた。
「ロードショーとスクリーン 外国映画ブームの時代」のことだ。
1970年代は興行的にも洋画のシェアが高かった時代だった。

キネマ旬報で映画ジャーナリストの大高宏雄と、ビデオ業界紙に携わる林健太郎の対談が出ていた。
2008年以降、洋画と邦画の興行成績が逆転しているという現象に対する考察をしてる。
これは「キネ旬 大高」と検索すればネットでもその内容が読める。


俺が『戦火の馬』のコメントの中で、映画館に来てるのは自分より年配ばかりと書いたが、この対談の中でも同じ発言がある。ただあれは、映画が扱う時代背景もあるし、俺の場合は銀座という場所の土地柄も関係してると思ってたが、シネコンを巡ってても、洋画の場合は若い人たちの比率が低いような印象はある。
ということより先に客が入ってないよ。

俺がここ最近でコメント入れた中でも、映画館でわりかし入ってるなと思ったのは
『ブライズメイズ…』と『ファミリー・ツリー』と『別離』くらい。
『ダーク・シャドウ』も『バッド・ティーチャー』も『キラー・エリート』もガラガラ。コメント入れてないけど、見てはいる『ジョン・カーター』も『タイタンの逆襲』もほんとに客はいなかった。
シネコンは明らかに供給過剰な状態なのだ。

その原因について対談の中でいくつか挙げられていて、「まあ、そうなんだろう」と読んでて思う。
俺自身が定点観測的に映画を見続けてきて感じるのは、特にハリウッド映画がいろんな意味で、日本人の特に若い世代の嗜好とか、関心あるものに対して、アジャストしなくなってきてるんじゃないかということだ。

そのひとつが前にも書いたが「新しいスターの不在」だ。
洋画のシェアが高かった時代には、その時代を飾るアメリカ映画のスターが必ず存在してた。
現在ジョニー・デップ、ブラッド・ピット、ディカプリオ、キアヌ・リーヴスあたりを最後に、その下の世代で名前があがるスターがいない。
今挙げたスターのうちジョニー・デップとブラッド・ピットは、来年には50才になるのだ。
20代30代で女性から黄色い声援を浴びるようなスターが出てこない。
近年の韓流スターのブームというのは、その不在を埋めるような形で生まれてきたのでは?

実際にはハリウッド映画の大作に主演する若い役者はいる。だが『ジョン・カーター』と『バトルシップ』立て続けに主役を張ったテイラー・キッチュにしろ、『タイタンの逆襲』『アバター』のサム・ワーシントンにしろ、少なくとも日本の女性にウケるルックスではない。

他にもシャイア・ラブーフであれ、エミール・ハーシュであれ、チャニング・テイタムであれ、ロバート・パティンソンであれ、それぞれ個性は感じるとはいえ、その名前をバンと出して、日本で客を呼べる存在ではない。

アメリカ国内では主にテレビから新しいスターやアイドルが生まれてる。ディズニー・チャンネルなどはその最たる所だが、セリーナ・ゴメスやジョナス・ブラザースといったアイドルが、日本でブレイクする気配はない。

その要因として、アメリカ国内の特に西海岸で、ヒスパニック系の人口が増えてることがある。それに伴いラテン系のスターやアイドルが生まれてきてるし、また業界もそこに力を入れてるのが見える。
日本ではラテン系の濃さはいまいち受けない。

女優も同様で、アマンダ・セイフリッドやクリステン・スチュアートやエマ・ストーンのようなルックスは、日本の男たちにはウケないだろう。
そういったスターのルックス的嗜好が、日本とアメリカではズレてきてる。


もう一つは企画される映画そのものだ。『ジョン・カーター』は、SFの古典であるエドガー・ライス・バロウズの『火星のプリンセス』の映画化だが、どの位の人間がその原作を知ってるのだろう。
それは盛んに作られる「アメコミ・ヒーロー」映画にも言えることだ。
アメリカ人はキャラクターに子供の頃から馴染んでるが、日本人はちがう。

アメリカでは現在アメコミヒーロー大集合みたいな『アベンジャーズ』が記録的なヒットとなっており、『ダークナイト』の興行収入を抜くのではと見られてるが、その『ダークナイト』もアメコミだ。
『ダークナイト』は日本では大ヒットとはならず、『アベンジャーズ』も本国の期待ほどには、日本では伸びないと予想する。

そもそも今の10代20代の若い世代が、アメコミにどれほどの思い入れがあるのか。
メディアで盛り上がってるのは、例えば「映画秘宝」に携わる40代前後のライターたち「中年世代」が主で、洋書店などで、昔からアメコミを買って、キャラクターに対する下地ができてた世代だ。


近年の日本映画への批判としてよく挙がるのは、テレビ局による、テレビドラマの映画化の量産ということだが、ハリウッドだってやってることは変わらないのだ。
テレビドラマの映画化作品に、日本の観客が集まるのは、そのテレビドラマを見ていて、下地が出来てるからだ。
ハリウッド映画界が近年さかんにやってるのは、「アメコミ」などのキャラクターもの、過去に大ヒットした映画の続編や前日譚、あるいはリメイクなど、やはり観客に下地があるという条件を担保にしてるのだ。
同じ方法論で作られてるなら、日本の観客はより身近な、日本のテレビドラマの映画化作品を選ぶだろう。ハリウッド映画の方が、邦画の10倍以上は金がかかっていて、見せ場も派手であっても、そこはもう重視されなくなってる気がするね。

『E.T.』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は大ヒットしたけど、どちらの映画も、その映画を見るための下地なんか必要なかった。誰にでも楽しめる内容だったのだ。


あとこれは俺自身の嗜好に通じてるんで、書きにくいことなんだが、近年のアメリカ映画のクリエイターたちの、ある種の「懐古趣味」がある。
70年代~80年代が「オールディーズ」になりつつあって、映画の細かいネタであるとか、挿入される楽曲であるとか、その年代のものが目立つようになってきた。
アダム・サンドラーやベン・スティラーなど、特にコメディ畑のスターたちにその傾向が強い。
映画業界でも、実績を積んで、自分で作品をコントロールできる年代というと、30代後半から40代くらいにはなるだろう。
人間中年になってくると、自分の趣味を入れたくなってくるもんなのだ。
それは「自分語り」ということでもある。

俺もこのブログでさんざんそれをやってるようなものなんだが、 ブログは個人の範囲だが、映画はマスを対象にするわけだからね。
俺のような、10代20代からすれば「じいさん」世代の人間は喜んでも、彼ら若い世代は関係ないことだし。つまり映画が「自分たちに向けて作られてない」という思いを、若い人たちは感じていはしないか?ということだ。


ハリウッドは80年代~90年代には、スターのギャラが制作費の大きな部分を占めるというような状態になってて、2000年以降はその歪な状態を脱したことは良かったと思うのだが、今度はそのギャラの分も特殊効果などに使えるぞと、「見世物」的要素を高めていった。
結果『アバター』まで行き着いてしまうと、どんな絵を作っても「でもCGじゃん」で済まされるようになってしまった。
もう「絵」で驚くということもほとんどないのだ。


ハリウッド映画は「産業」だから、大作で外貨を稼ぐという命題は外せないまでも、もう少しスモール・プロダクションにシフトしてってもいいんじゃないか?
例えばジョニー・デップと、無名時代のディカプリオが兄弟を演じた『ギルバート・グレイプ』のような、若いスターを通して「共感」を得られるような、そういうドラマがもっと増えるべきなのだ。

2012年5月30日

3月残り2週末の公開作が熱い [映画雑感]

3月の24日(土)とその翌週末31日(土)に公開される新作のラインナップが充実してて、貰った給料が速攻目減りするのは避けられない。期待値の高い映画を以下に挙げてく。

24日(土)公開分

『第九軍団のワシ』
以前ファスベンダー主演の『センチュリオン』のコメントを入れた時に、その後日談を描いてる『THE EAGLE』の公開を期待してると書いたが、ようやく原作小説と同名の邦題がついての日本公開が実現。
チャニング・テイタム主演の歴史アクションに見えるんで、シネコンでやるのかと思ったら、
「渋谷ユーロスペース」での単館公開とはね。意外と地味な中身なのかも知れんが。


『トロール・ハンター』
「ファンタ」系としてはその筋の間で早くから話題となってた、北欧ノルウェー発の怪獣映画。
伝説のモンスター「トロール」を追う、トロール・ハンターの行動を、心霊系でよく使われる手法の、フェイク・ドキュメンタリーとして描いてる。北欧らしい低温なギャグもまぶしてあるようだ。
東京では「TOHOシネマズ日劇」でのレイトと、お台場の「シネマメディアージュ」のみでの公開。
シネコンなんだけど単館みたいな扱いだね。


『テイク・シェルター』
大竜巻の襲来とともに世界が滅びるというビジョンを見てしまい、自宅の庭に一心不乱にシェルターを作り始める、そんな男を演じさせたら、マイケル・シャノン以上の役者はいないじゃないか!
「電波系」演技の集大成を見せてもらおう。映画自体もカンヌやサンダンスで受賞してるしな。
東京では新宿の「バルト9」と横浜・桜木町の「ブルク13」の東映系シネコンに、「銀座テアトルシネマ」に、
「シアターN渋谷」という変則的な公開だね。
マイケル・シャノンの電波出世作『BUG』も「シアターN渋谷」で見たんだっけ。


『マリリン 7日間の恋』
マリリン・モンローを演じたミシェル・ウィリアムズが、今年のアカデミー賞でメリル・ストリープと賞を競った伝記映画。ローレンス・オリヴィエのフォロワーとしてキャリアを築いてきたケネス・ブラナーが、ついにオリヴィエ本人を演じる他、最近とんと名前を聞かなくなったジュリア・オーモンドが、なんとヴィヴィアン・リーに扮してるという。
そっくりさん大会になってなきゃいいが。
東京では、「TOHOシネマズ」「Tジョイ・バルト9」(東映系)「MOVIX」(松竹系)「ワーナーマイカル」「ユナイテッドシネマズ」「立川シネマシティ」という、東急系の「109シネマズ」以外のシネコンに、「角川シネマ有楽町」「ヒューマントラストシネマ渋谷」などミニシアターと、ほぼ網羅するような規模の公開となってる。
ちなみに「109シネマズ」においては、横浜のみなとみらい地区の「109シネマズMM横浜」のみで公開。
小品ぽい印象があるんだが、予想以上に興行が期待持たれてるのかな。


『カエル少年失踪殺人事件』
韓国には「3大迷宮入り事件」というのがあり、
1986年からの5年間に起きた「華城連続強姦殺人事件」は『殺人の追憶』で、
1991年ソウルで起きた「イ・ヒョンホ君誘拐殺人事件」は、ソル・ギョング主演『あいつの声』で
それぞれ映画化されてる。
『カエル少年失踪殺人事件』は1991年にテグ市の小学生5人が、「カエルを取りに行く」と言ったまま戻らず、2002年9月に少年たちのものと思われる白骨死体が発見された事件を映画化したもの。題名からは一瞬コメディかと思ってしまうが、韓国人には「カエル少年事件」と呼ばれ誰もが知ってるのだという。
キャストが渋めなのも期待を持たせる。
東京では韓国映画といえば此処という「シネマート六本木」での単館公開だ。


31日(土)公開分

この日はすでにファンの間では盛り上がってるようだが、「ライアン・ゴズリング・ウィークエンド」とも言える、彼の期待の新作2本が公開されるのだ。

『ドライヴ』
ライアンは犯罪組織の逃走請負に手を染める、映画のスタント・ドライバーを演じてる。先輩「ライアン」のライアン・オニールが1978年に主演した『ザ・ドライバー』と同じ稼業だ。
この映画でのライアン・ゴズリングの演技が、今年のアカデミー賞の候補から漏れたことが、ハリウッドでも騒ぎとなってたが、新世紀のフィルム・ノワールとしてもすでに評価が高い。
もう予告編がね、カッコよさを煽りまくってるからね。こっちも「期待通りじゃなきゃ許さないよ」という位のテンションになってるのだ。
東京では「TOHOシネマズ」「バルト9」「MOVIX」「ワーナーマイカル」「ユナイテッドシネマズ」「立川シネマシティ」というシネコン系に、「ヒューマントラストシネマ渋谷・有楽町」「シネリーブル池袋」のテアトル系ミニシアターとこちらも規模の大きい興行展開だ。
しかしこれも「109シネマズ」ではやんないのか東急。
この『ドライヴ』で一躍世界的な注目を集めることとなった、デンマーク出身のニコラス・ウィンディング・レフンの2009年の監督作『ヴァルハラ・ライジング』も、この翌週4月7日に公開が決定したのは嬉しい。
なんたって主演がマッツ・ミケルセンという北欧伝説アドベンチャーなのだ。


『スーパー・チューズデー 正義を売った日』
こちらの方は、民主党の大統領候補者を選ぶ「予備選」を題材にした、まさに時期としてはドンピシャな内容。
ライアンは、選挙の裏の政治的かけ引きに翻弄される、若き選挙参謀を演じてる。
監督・主演は政治ネタにこだわるジョージ・クルーニーだが、彼の監督作は「クール」を気取りすぎるというか、いい意味でのはったりに欠ける所がある。今回のはどうだろうか。
ライアン・ゴズリングは若手きっての演技派だが、この2作は外見をあまり作ってないから、女性には特にアピールできるだろう。これで人気がブレイクしなかったら、もうこの先日本でのブレイクはない。
東京では「新宿ピカデリー」「MOVIX」(松竹系)「ワーナーマイカル」に、「シネマメディアージュ」「品川プリンスシネマ」「立川シネマシティ」の独立系シネコンと、銀座の「丸の内ピカデリー」、「渋谷シネパレス」での公開。
ちなみに神奈川では「ブルク13」や辻堂の「109シネマズ湘南」のほか独立系シネコンの「チネチッタ川崎」でも公開される。
ところで、お台場の「シネマメディアージュ」は一応「TOHOシネマズ」の傘下に入ってるにも係らず、TOHOシネマズのサービスが適応外となってる。なんでそういう中途半端なことになってるのか、ずっと気になってる。


『ヘルプ 心がつなぐストーリー』
これも今年のアカデミー賞を賑わせた作品の1本。
先日DVDで見た『小悪魔はなぜモテる?!』が抜群だったエマ・ストーンが、南部の白人家庭で働く、黒人のメイドたちの心情を取材する、記者志望のヒロインを演じる。
アカデミー賞助演女優賞を獲得したオクタヴィア・スペンサーなど、演技の見せ場は黒人女優たちが負ってるようだが、涙あり笑いありのヒューマン・ドラマに仕上がってるんだろう。
東京では現在わかってる範囲では「TOHOシネマズ」「ワーナーマイカル」「109シネマズ」「MOVIX」のシネコンに、「ヒューマントラストシネマ渋谷」「新宿武蔵野館」のミニシアター系、横浜・桜木町の「ブルク13」などでの公開が決まっている。


『ルート・アイリッシュ』
『大地と自由』『カルラの歌』『麦の穂をゆらす風』など度々戦争下のドラマを描いてきた名匠ケン・ローチが、イラク戦争に従軍していたイギリスの民間兵の存在を初めて題材としたドラマ。イラクの空港から米軍管理区域「グリーン・ゾーン」までの12キロに及ぶ道路の俗称が題名となってる。
最もテロの標的にされやすい「世界で一番危険な道路」なんだと。
心臓に悪そうなサスペンスフルな描写がありそう。
東京は「銀座テアトルシネマ」での単館公開。


『少年と自転車』
カンヌに出品した監督作が5作連続で何らかの賞を受賞してる、ジャン=ピエールとリュックのダルデンヌ兄弟の新作。
『息子のまなざし』の公開時に来日した折、企画されたシンポジウムで「育児放棄され、赤ん坊の頃から施設に預けられた少年が、親が迎えに来るのを屋根にのぼって待ち続けていた」という実例が紹介され、それに胸を打たれた監督が、インスパイアされて作ったのがこの映画だそうだ。
監督デビュー作『イゴールの約束』に、15才で主役に抜擢されたジェレミー・レニエが、この映画では31になり、父親役を演じてる。セシル・ドゥ・フランスというスター女優を起用してるのも珍しい。
東京では渋谷の「文化村ル・シネマ」、神奈川は「109シネマズ川崎」で公開される。
なお「ル・シネマ」では公開記念として、今月24日(土)から30日(金)まで、ダルデンヌ監督の旧作5本『イゴールの約束』『ロゼッタ』『息子のまなざし』『ある子供』『ロルナの祈り』を上映する。

とそんな所なんだが、日本映画は1本もなかったな。
24日には森田芳光監督の遺作となってしまった『僕達急行 A列車で行こう』があるんだが、こう今ひとつ食指が動かない。むしろ同日公開で、谷村美月が「ヒットガール」みたいなコスプレで怪盗を演じるという『サルベージ・マイス』が、危険な香りはプンプン漂わせてるものの、逆に気になったりしてるが。

俺は昔から日本映画もわりと見てきてはいるんだが、そうね40過ぎたあたりからか、特にここ数年が顕著だが、見たいと思う日本映画が少ないんだよ。
テレビドラマの劇場版がさかんに作られてるけど、俺はテレビドラマをほぼ見ないから、劇場版を見に行く筈もない。マンガも読まないから、マンガ原作の映画にも関心湧かない。
気に入った女優が出てると見たりはするが、内容にハマるってことはあまりないな。
作られてる映画がユース向けか、でなければエルダー向けか、両極端な気がするね。30代から50代くらいまでの年代が「これは見たい」って内容のものが滅多にない。

話はちょっと違うけど、今年の夏に公開されるアニメで、『サマー・ウォーズ』の細田守監督の新作『おおかみこどもの雨と雪』のティーザーがシネコンで流れてるけど、俺このアニメはそれこそジブリなみに大ヒットすると見てる。興収50億は軽く超えてくんじゃないか。
ジブリがもう作るのを止めてしまった「観客が求めてるジブリアニメ」を、細田監督が再生させようとしてる感じがビンビン伝わってくるんだが。
ポスターのビジュアルだけでも、子供もお母さんも「これ見たい!」って思うよきっと。

2012年3月22日

冒頭20分のハリウッド映画術 [映画雑感]

先日見た『ペントハウス』は後半の強奪場面のディテールが強引すぎるという難点があったが、話の滑り出しはすこぶる快調だった。

ハリウッド映画でもサスペンスの要素が入ったものや、話の展開の面白さで見せてこうという映画の場合、冒頭20分位の、「起・承・転・結」でいえば「起」の部分が、周到に描かれているのがわかる。

『ペントハウス』でいえば、
主人公ベン・スティラーはどんな職業に就いてるのか?
仕事先の場所はどうなってるのか?
彼の仕事ぶりと、その人柄はどんな感じなのか?
主人公とこの後映画で係っていくのは、どんな顔ぶれなのか?
その大まかな性格は?
主人公と対立するであろう人物は誰か?
この映画がどんなテイストの映画になりそうなのか?

これらの要素、つまり建築でいうと建物の「基礎」にあたる部分を、20分ほどで、かっちり固めてくのだ。
観客に映画のストーリーにすんなり入ってもらうのに、ここの部分の明解な描写は欠かせない。
よく見てると、いかに効率的に話を語り出すかということが、演出の主眼になってるかわかる。
画面に人物をどう入ってこさせるか?次の人物への紹介を、どういうセリフきっかけで行くか、それが短いカットの積み重ねで、かなり早いテンポで描かれてく。

なので、ハリウッドの娯楽映画を見る時には、冒頭20分に最も集中して見ておくべきだ。映画によってはその部分ですでに伏線が張られてることもあるし、またタイトルバックが出てる状態でも、どんどん会話が進んでたりもする。
だからそこをボケーッと見てると、後半になって「うん?」という置いてきぼりを食うことがある。
見終わって釈然とせず、後でもう1回見直した時に、
「こんなとこですでに語られてたのか!」
と気づいたりね。
個人的にも、近年のハリウッド映画は前半3分の1あたりまでが一番面白かったということが多い。
「これからどんな物語に転がってくのか?」というワクワク感を与えてくれるような演出になってる。

だが建築でも、いくら基礎がしっかり出来てても「ウワモノ」を建てたら、装飾が過剰でダサいビルになったとか、デザインに凝りすぎて使い勝手が悪すぎるなんてことはままある。
それと同じで、映画でも後半に行くにしたがって、話の風呂敷広げすぎて、収拾つかないとか、ありきたりな見せ場で決着つけるとか、「ウワモノ」に当たる部分の描写が練られてない映画が目立つね。

日本の商業映画のクリエイターたちが、ハリウッド映画から学ぶことがあるとすれば、CGの使い方だとか、爆破シーンやカーチェイスの演出だとか言うことより、映画の「起」にあたる、語り出しの部分を、どう快調に捌いてくかというテクニックではないかと思う。


俺が今まで見た映画でも、とりわけ冒頭20分が「すげえ!」と思わせたのは、
マーティン・スコセッシ監督の『カジノ』だ。
タイトルバックが明けてから、ラスベガスのカジノがどのように運営されてるのか、その入り口から出口までの、「おっかない」部分もある裏側を、水際立った演出と編集で、それこそ息継ぎしないで、一気に語り尽くす感じだった。

カジノ.jpg

スコセッシ監督のインタビュー映像とか見たことある人ならわかると思うが、あの人も相当な早口でまくしたてるが、それは映画に関して語りたいことが山ほどあるという事なんだろう。
その監督の口調がそのまま映像になってるようだった。俺は『カジノ』のこの冒頭部分ばかり、もう何度となく繰り返し見てるのだ。

例えばこの『ペントハウス』でも、日本で同じ予算と脚本で撮らせたとしたら、140分位の上映時間になるだろう。
ちなみにこの映画は104分だ。

日本映画の場合、ちょっとでも大きな予算がついた映画になると、すぐに120分超えしてしまう。
監督が苦労して撮った所だからと、もっと見せたい所を我慢して切る、無駄なカットを減らす、そうやって研磨されたものを、最終的にスクリーンにかけてほしいのだ。

2012年2月23日

ヒル、マン、フリン、男の活劇作家の共通項 [映画雑感]

今日はまず新年早々もたらされた吉報から。
前にこのブログで、公開される見込みのなさを残念がったジャック・オーディアールの傑作
『預言者』の急遽公開が決まったのだ。
今月21日から、ヒューマントラストシネマ渋谷にて。
まだ年も始まったばかりだが、今年の年末のベストテンには、必ず顔を出すであろう映画なので、その臨場感をスクリーンで。


昨日『摩天楼ブルース』を取り上げて、ジョン・フリン監督の活劇の特徴を述べようとして終わった。

組織.jpg

ジョン・フリン監督が初めて手がけた活劇が1973年の『組織』、その2年後にウォルター・ヒル監督がブロンソンを主役に『ストリート・ファイター』でデビュー。彼らからしばらく置いて1981年に『ザ・クラッカー 真夜中のアウトロー』で名を知らしめたのがマイケル・マン。この3人に共通するのが、『摩天楼ブルース』の中でちょっと触れたが、主人公に近い女性に危害が及ぶような描写が、ほとんどないことだ。
「フェミニストだから」とかそういう意味じゃない。

だが例えば初期のウォルター・ヒルが、そのスローを駆使したアクション演出で引き合いに出された先達のサム・ペキンパーや、活劇俳優から活劇監督へ転身遂げたイーストウッドの監督作とでは、やはり明らかな違いを見てとれる。

ストリートファイター.jpg

ペキンパーの『わらの犬』『ガルシアの首』『戦争のはらわた』にはヒロインや、主人公に近い女性がレイプされる場面がある。
イーストウッドの監督作でも、『アウトロー』や『ガントレット』でソンドラ・ロックが、『タイトロープ』ではイーストウッドの実の娘が、『許されざる者』では暴行され、ナイフで顔を切り裂かれた娼婦が、そして『グラン・トリノ』では隣家のアジア人の長女が、危害を加えられてる。
そのことが主人公の怒りの導線に火をつけるような、映画を動かすモチベーションの機能に使われてたりする。

だがこの3人の監督の映画ではそうならない。
それは彼らの活劇の本質が「ごっこ」の延長線上にあるからだ。
ガキの頃に「戦争ごっこ」とか「チャンバラごっこ」とか「ギャングと警察ごっこ」とか、やったと思うけど、その時の動機づけに「じゃあ、まずお前の妹が襲われて…」なんて設定にするわけない。
「ごっこ」とはいかにそれらしく演じられるか、演出できるかってことであって、その人物造形や、小道具なんかのディテールにこだわることこそ本筋なのだ。
だからマイケル・マン監督などは「音効の銃声音が物足りない」と言って実弾使ったりしてるのだ。

ザ・クラッカーブルーレイ.jpg

そんな3人の監督の映画だから、必然的に「女」の存在は薄くなりがちだ。物語に絡みはするけど、見せ場となれば「お呼びじゃないよ」状態となってしまう。
女優も印象に残らない。ウォルター・ヒルの場合は『ストリート・オブ・ファイアー』でスターのダイアン・レインを起用してたが、あれは例外みたいなもんで、マイケル・マンの映画でも『ヒート』のアシュレイ・ジャッド位しか、パッと思い浮かばない。
それを映画を見る楽しみの部分で物足りないと思う人もいるだろう。
だけど、女性の登場人物が、主人公の行動のモチベーションのために、危害加えられるために出てくる、そんな役割を担ってるように見えてしまう映画も如何なもんか、と思うんだが。

別にペキンパーやイーストウッドが、そういう考えで女性を描いてると言いたいわけじゃない。彼らの場合は、活劇よりも「暴力」の本質を描こうという視点があるのかもしれない。
暴力は男にも女にも、降りかかるものだからだ。
ここに挙げた監督たちの映画は「アクション映画」とひと括りにされてるが、同じジャンルの映画でも作り手の立脚点が違うものがある、ということなのだ。

「ごっこ」を、俺は貶めるような意味で使ってるわけじゃない。むしろ映画が「ごっこ」に徹してるからこそ、こっちもカラッと痛快に楽しめるんだと思う。そこに女性が暴行されたりという場面が入ると、どうしても陰惨な感じを引きずってしまうのだ。
映画会社としては、そういう場面に男の観客が興奮するということもあるだろうと、描写を歓迎するだろうし、実際1970年代までのアクション映画には、よく見られるものだった。
「お色気とドンパチ」というセットメニューみたいなもんだ。
だがそれをよしとしないで活劇を作り続けた監督たちの映画が、「男のアクション」映画好きに今も支持されてる。

だがどうも彼ら3人の後を継ぐような監督がここんとこ見当たらない。監督よりもアクションスターに、その思想が引き継がれてるように思う。

昨年見たドウェイン・ジョンソン主演の『ファースター 怒りの銃弾』にこんな場面があった。
ドウェインが仇として追ってる悪党一味の中に、異常性格の男がいる。老人に変装して、善意の若い娘に荷物を自分の部屋まで運んでもらい、お礼にとジュースを振舞う。薬が入れてあり、朦朧とする娘を暴行して、その様子を写真に撮るつもりだ。だが手を出す間もなくドウェインが部屋に踏み込んで、その娘は危機を脱する。

ファースター 怒りの銃弾.jpg

ここは映画によっては、娘が暴行を受ける様子を何カットか入れそうな所だが、それはドウェインが避けたのだろう。彼の主演のアクションを見ても、女性が危害を加えられるような描写は見ない。
ジェイソン・ステイサムの映画にも当てはまる。『アドレナリン』シリーズのエイミー・スマートの場合は…あれは本人も同意の上だよね。

と、ここまで論を進めてきて何だが、ことジョン・フリン監督に関しては、映画第1作の『軍曹』というのが、軍隊内の同性愛を扱ってるのが理由でもないんだが、本人はゲイだったんじゃないかと言われてる。
『ローリング・サンダー』での、ウィリアム・ディヴェインに呼ばれて、敵のアジトに殴りこむトミー・リー・ジョーンズの嬉しそうな顔とかね、『摩天楼ブルース』でも、テレーザ・サルダナよりジャン=マイケル・ヴィンセントの裸の上半身にカメラが行ってたし。
そういう人なら、女が服を引き裂かれたりなんて場面も関心湧かないかもな。

2012年1月8日

品川の大スクリーンでオペラ座ざんまい [映画雑感]

前にもこのブログで興奮気味にコメント入れた『オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン』なんだが、もう止まらなくなってるのだ、俺の場合。「オペラ座症候群」と言ってもいい。
TOHOシネマズららぽで見た後、品川プリンスシネマに移ってから、すでに3回見た。見終わった後に、またあの歌声が聴きたくなってしまうのだ。

d0115.jpg

CDを2種類買ったんだが、1つはサラ・ブライトマンとマイケル・クロフォードによる、初代ロンドン・オリジナル・キャスト版で、もう1つは映画『オペラ座の怪人』のサントラだ。こっちはエイミー・ロッサムのソロはいいんだが、ファントム役のジェラルド・バトラーが、声楽家の発声じゃないんで、声にボリューム感がない。俳優としての表現力で補おうとしてる感じなのだ。オリジナル・キャスト版はいいことはいいんだが、本当はこの25周年記念公演のライヴ盤が出てれば一番いいのだ。だがリリースされてない。だから上映を見に行くしかない。

多分俺のようなリピーターが多いんだろう、品川プリンスシネマでは予定の上映期間を延ばして、16日(金)まで続映となってたんだが、HPを見たら、さらに年明け1月6日まで、再延長が決まってた。
今、映画の当日料金は1800円だが、見た後、徒労感しか残らない映画も少なくはない。
だがこの『オペラ座…』の2000円は絶対安い。
この感動にはそう出会えるもんじゃないと思う。俺は別に宣伝部員ではないが、なれと言われたらなってもいい。

続映が決まったことで予想するに、イヴとクリスマスの2日間の座席は争奪戦となるだろう。
品川プリンスシネマのインターネットによる座席予約は3日前からしか取れないので、21日の午前0時近辺からHPをチェックすべき。このシーズン、デートで見るには最強のカードだよ。


俺がここまで書くのはもうひとつ理由があって、これを上映してるのが品川プリンスシネマの別の階にある「シアターZERO」という劇場だから。ここはもともとは「IMAX」映画の専用常設館として作られてたのだ。
それ以前には新宿の高島屋タイムズスクエアの中にあったのが、品川に移転した。これは今、109シネマズやユナイテッドシネマズにある「IMAXデジタルシアター」とは根本的に違う劇場だった。

本来のIMAX映画というのは、専用の大きなサイズのフィルムと専用のカメラで撮影された映画のことを指す。
ユナイテッドシネマズ浦和の館内に、カメラとフィルムが展示されてるが、見るとその大きさが実感できる。カメラが巨大なのと、コストもかかるため、長編劇映画ではなく、主に「ネイチャー」系ドキュメンタリーや、3DCG作品が製作されてきた。

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その中でローリング・ストーンズの1989年の「スティール・ホイールズ・ツアー」のライヴを、IMAXカメラで撮影した「LIVE AT THE MAX」を高島屋で上映した時見たんだが、それは凄かった。ステージの真ん前で見てるというより、そこにいる感じになった。


例えばシネコンの中では都内最大級のユナイテッドシネマズ豊洲の10番、通称「オーシャンスクリーン」が、ヨコ22,6×タテ9,3なのに対し、
品川の元々のサイズは、ヨコ22×タテ16と、圧倒的にタテ部分が大きくなってる。
なので、スクリーンが視界から見切れるということがないのだ。スクリーンの中にいる感覚だ。だがフルスクリーンで上映されるのは、あくまでIMAX用に撮影された作品のみ。

いまシネコンにある「IMAXデジタルシアター」で上映されているのは、IMAX以外のフィルムで撮影された映画を、IMAXフォーマットにリマスターしたものだ。品川のスクリーンサイズを「元々」と書いたのは、IMAX映画の上映劇場としては、2007年に閉館してしまってるからだ。なので現在は施設はそのままに、全体の70%位のスクリーンサイズにて、通常の劇場用映画をかけてるわけだ。

場内に入るとまず天井の高さが違う。ビル5階分ほどあるという。
客席はすり鉢状で、どの席からも見やすい。段差がハンパない。普通のシネコンだと、階段上になってはいるが、ごくたまに前の席に、恐ろしく座高の高い人が、背筋伸ばして座られたりすると、画面にカブることもあるが、この「シアターZERO」なら、キリンが座りでもしない限りは、前が遮られることはあり得ない。

それだけに残念なのは、「IMAXデジタルシアター」が普及してきた今、真正IMAX上映館として格を見せ付けることができないこと。高い契約料なんかの問題があるみたいだが、せめて「IMAXデジタルシアター」にでもできれば、その迫力の違いが認識されると思うんだがなあ。たしかに、俺ここにけっこうIMAXのドキュメンタリーもの、「セレンゲッティ国立公園」とか「ヒマラヤ」とか、見に通ったけど、いつも客あんまりいなかったもんな。

『オペラ座の怪人 25周年記念公演in ロンドン』の席の埋まり具合とか久々のことなんじゃないか?いっそ年明けとか言わず、しばらくロングランさせといたらいいのに。

2011年12月15日

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