TOHOシネマズの三文芝居 [映画雑感]
シネコン通いをしてる人なら当然遭遇してるであろう、「TOHOシネマズ」の本編上映前の短編プロモ。
リミテッド・アニメを逆手にとったような「おトボケ感」が、それはそれで悪くなかった『紙兎ロペ』のシリーズが終わり、今やってるのは、岩井俊二に撮らせた風の短編ドラマ『映画のある生活』。
あなたの日常の中に「TOHOシネマズ」を、というコンセプトなんだろう。
それは別に構わんけど、内容はちょっと思慮に欠けやせんかね。
シネコンに映画見に来て知り合ったというカップル。
男はそのまま年上の女の部屋に転がり込んでる。
女はベランダでガーデニングしながら
「支柱があるから植物は育つんだよ」みたいなことを年下男に言い、
「フ~ン」て感じで聞いてる。
二人でレストランに居ると、彼女の大学時代の友達らしき一行と偶然出会う。
年下の彼氏?と冷やかされると、年下男は
「いえ、映画好きのただの後輩です」
と言下に否定。女の顔が曇る。
二人の同棲生活はギクシャクし、
「二人でいても、一人と一人じゃ意味ないし」と、
もうボチボチ出て行ってよ的なセリフを年下男にぶつける。
すると翌朝だか、反省した年下男は、興味もなかったベランダの植物に触れながら、彼女の言った
「支柱」の意味を悟り
「ひとりとか…ちがうから!」と謝る。
三文芝居な筋書きとか、ツッコミありきで作ってる、確信犯的な意図も感じるが、それより映画館に見に来てる観客に向けて
「ひとりとか…ちがうから!」
ってセリフをよく吐けるな。
「おひとりさま」全否定ってことだろ。
「もっとカップルとか、夫婦づれで映画館を利用してくださいね」
というアピールだとすれば、それはそれで言いようがあるだろう。
こういうことに噛み付くと
「そりゃ独りもんの僻みだ」と捉えられる。
別にそう思われてもいいし、映画を一人で見ることは、俺の中では当たり前のことだから、それはどうでもいい。
だがどんな客であれ、お金を払ってその場所まで出かけてきてる相手に、
「おひとりより、座席2つ分は確実に利益になる、二人連れ以上でお越しください」
みたいなアピールは感じ悪いぞ。
「感じ悪いぞ」と感じる観客がいるであろうことを、多分思い至ってない、そのデリカシーの欠落ぶりが、サービス業の姿勢としてどうなんだよと思う。
この短編プロモに限らず、いつの頃からか映画館で一斉に流し始めた
「海賊版撲滅キャンペーン」の映像もね。
あれはたしか谷村美月が、どアップで黒い涙流して
「映画が盗まれている、感動が盗まれてる」ってのが最初だったか。
現在はパントマイムキャラの「映画泥棒さん」(多部未華子談)のシリーズになってるが、あれだって、お金払って映画館に来てる客に
「映画の撮影・録音は犯罪です(キリ!)」
と凄んで見せて、感じ悪い。
「いやそういう怪しい行動を見かけたら通報してくださいという意味」と作った側は言うんだろう。
あのシリーズも見てくると、「映画泥棒」は単独犯であるとほぼ断定してるね。
実際そうなのかもしれんが、
いかにも「ご夫婦やご家族連れや、カップルでお越しの方々に、こんな行為をする人はおられないと思いますが」
が前提になってる描き方だ。
「おひとりさま」全不審である。
一人で映画を見に行くというだけのことで、なんで本編が始まる前に、こういう嫌味な思いをさせられるのか。
「おひとりさま」はそもそも映画の興行収入に、それほど貢献してない存在とされてるんだろうか?
俺はちょっとマイナーな映画を見たような時には、他にどのくらい見た人がいるだろうという興味で、ネットをあたったりするけど、映画に関するブログをやってる人の数はあまたに上る。
その中で、新作映画のコメントをマメにアップしてる人の文面から察すると、俺みたいに「おひとりさま」鑑賞の人は多い。
年間100本も見るなんて人間につきあえる相手は、そうは居ないだろう。
映画好き同士が付き合ってない限りは。
でもって「おひとりさま」の俺が、年間どのくらい映画館に金をおとしてるかザッと見積もってみる。
当日料金1800円で見ることはあまりないとして、平均で1本1300円としとく。月にならして12本程度か。
試写会にはここ何年行ってないから、ポイント無料鑑賞の分を差っ引いて、年間で140本とみて、
1300×140=182,000円
これは人によるが、俺の場合はよっぽどダメだった映画以外は、基本パンフが売ってれば買うので、パンフの平均価格を650円に設定するとして、中にはパンフが作られない映画もあるから、
650×130=84,500円
合計すれば
266,500円を例年、映画館で使ってる計算になる。
それからはっきり書いとくが、俺は映画館で飲食系の物は買わない。
理由は「高い」からだ。
飲み物が外の自販機とそんなに金額が変わらないというなら買うが、100円以上は差があるよな。
俺は上映中に物は食わないが、上映前にコンビニのパンをかっこむことはある。
「外部からの飲食の持込みはお断り」
とか知らんよ。だったら安くしろ。
まあとにかく俺ひとりでも年間266,500円おとしてるわけで、そういう人間はブログを眺めただけでも、かなり居るはずだ。
「おひとりさま」が映画館収入の下支えをしてると、捉えては貰えないんだろうか?
レイトショーでは特に「おひとりさま」率が上がってると、見た目感じる。
それは会社が退けた後に駆け込むような人がいるからだ。
よく「猫は家につく」なんて言われるが、映画好きというのは映画ではなく
「映画館についてる」のだ。
映画館で時間を過ごすことが日常の行いに組み込まれてる。
そういう人間たちは、映画館に背を向けることはない。
ことさらに優遇してくれなんてことは言わない。
だけど「気分よく居させてほしい」と思うのは、そんなに贅沢な望みかね?
ところでこの「TOHOシネマズ」短編プロモだが、主題歌を唄ってる近藤晃央というミュージシャンが主演してて、どうもシリーズ化するらしい。
ならば彼が年上の女のもとを離れて「自立」して、「ひとりになってもTOHOシネマズ」というエピソードも作ってくれよ。
というより本音を言えば短編いらないんだけどな。
2012年10月13日
リミテッド・アニメを逆手にとったような「おトボケ感」が、それはそれで悪くなかった『紙兎ロペ』のシリーズが終わり、今やってるのは、岩井俊二に撮らせた風の短編ドラマ『映画のある生活』。
あなたの日常の中に「TOHOシネマズ」を、というコンセプトなんだろう。
それは別に構わんけど、内容はちょっと思慮に欠けやせんかね。
シネコンに映画見に来て知り合ったというカップル。
男はそのまま年上の女の部屋に転がり込んでる。
女はベランダでガーデニングしながら
「支柱があるから植物は育つんだよ」みたいなことを年下男に言い、
「フ~ン」て感じで聞いてる。
二人でレストランに居ると、彼女の大学時代の友達らしき一行と偶然出会う。
年下の彼氏?と冷やかされると、年下男は
「いえ、映画好きのただの後輩です」
と言下に否定。女の顔が曇る。
二人の同棲生活はギクシャクし、
「二人でいても、一人と一人じゃ意味ないし」と、
もうボチボチ出て行ってよ的なセリフを年下男にぶつける。
すると翌朝だか、反省した年下男は、興味もなかったベランダの植物に触れながら、彼女の言った
「支柱」の意味を悟り
「ひとりとか…ちがうから!」と謝る。
三文芝居な筋書きとか、ツッコミありきで作ってる、確信犯的な意図も感じるが、それより映画館に見に来てる観客に向けて
「ひとりとか…ちがうから!」
ってセリフをよく吐けるな。
「おひとりさま」全否定ってことだろ。
「もっとカップルとか、夫婦づれで映画館を利用してくださいね」
というアピールだとすれば、それはそれで言いようがあるだろう。
こういうことに噛み付くと
「そりゃ独りもんの僻みだ」と捉えられる。
別にそう思われてもいいし、映画を一人で見ることは、俺の中では当たり前のことだから、それはどうでもいい。
だがどんな客であれ、お金を払ってその場所まで出かけてきてる相手に、
「おひとりより、座席2つ分は確実に利益になる、二人連れ以上でお越しください」
みたいなアピールは感じ悪いぞ。
「感じ悪いぞ」と感じる観客がいるであろうことを、多分思い至ってない、そのデリカシーの欠落ぶりが、サービス業の姿勢としてどうなんだよと思う。
この短編プロモに限らず、いつの頃からか映画館で一斉に流し始めた
「海賊版撲滅キャンペーン」の映像もね。
あれはたしか谷村美月が、どアップで黒い涙流して
「映画が盗まれている、感動が盗まれてる」ってのが最初だったか。
現在はパントマイムキャラの「映画泥棒さん」(多部未華子談)のシリーズになってるが、あれだって、お金払って映画館に来てる客に
「映画の撮影・録音は犯罪です(キリ!)」
と凄んで見せて、感じ悪い。
「いやそういう怪しい行動を見かけたら通報してくださいという意味」と作った側は言うんだろう。
あのシリーズも見てくると、「映画泥棒」は単独犯であるとほぼ断定してるね。
実際そうなのかもしれんが、
いかにも「ご夫婦やご家族連れや、カップルでお越しの方々に、こんな行為をする人はおられないと思いますが」
が前提になってる描き方だ。
「おひとりさま」全不審である。
一人で映画を見に行くというだけのことで、なんで本編が始まる前に、こういう嫌味な思いをさせられるのか。
「おひとりさま」はそもそも映画の興行収入に、それほど貢献してない存在とされてるんだろうか?
俺はちょっとマイナーな映画を見たような時には、他にどのくらい見た人がいるだろうという興味で、ネットをあたったりするけど、映画に関するブログをやってる人の数はあまたに上る。
その中で、新作映画のコメントをマメにアップしてる人の文面から察すると、俺みたいに「おひとりさま」鑑賞の人は多い。
年間100本も見るなんて人間につきあえる相手は、そうは居ないだろう。
映画好き同士が付き合ってない限りは。
でもって「おひとりさま」の俺が、年間どのくらい映画館に金をおとしてるかザッと見積もってみる。
当日料金1800円で見ることはあまりないとして、平均で1本1300円としとく。月にならして12本程度か。
試写会にはここ何年行ってないから、ポイント無料鑑賞の分を差っ引いて、年間で140本とみて、
1300×140=182,000円
これは人によるが、俺の場合はよっぽどダメだった映画以外は、基本パンフが売ってれば買うので、パンフの平均価格を650円に設定するとして、中にはパンフが作られない映画もあるから、
650×130=84,500円
合計すれば
266,500円を例年、映画館で使ってる計算になる。
それからはっきり書いとくが、俺は映画館で飲食系の物は買わない。
理由は「高い」からだ。
飲み物が外の自販機とそんなに金額が変わらないというなら買うが、100円以上は差があるよな。
俺は上映中に物は食わないが、上映前にコンビニのパンをかっこむことはある。
「外部からの飲食の持込みはお断り」
とか知らんよ。だったら安くしろ。
まあとにかく俺ひとりでも年間266,500円おとしてるわけで、そういう人間はブログを眺めただけでも、かなり居るはずだ。
「おひとりさま」が映画館収入の下支えをしてると、捉えては貰えないんだろうか?
レイトショーでは特に「おひとりさま」率が上がってると、見た目感じる。
それは会社が退けた後に駆け込むような人がいるからだ。
よく「猫は家につく」なんて言われるが、映画好きというのは映画ではなく
「映画館についてる」のだ。
映画館で時間を過ごすことが日常の行いに組み込まれてる。
そういう人間たちは、映画館に背を向けることはない。
ことさらに優遇してくれなんてことは言わない。
だけど「気分よく居させてほしい」と思うのは、そんなに贅沢な望みかね?
ところでこの「TOHOシネマズ」短編プロモだが、主題歌を唄ってる近藤晃央というミュージシャンが主演してて、どうもシリーズ化するらしい。
ならば彼が年上の女のもとを離れて「自立」して、「ひとりになってもTOHOシネマズ」というエピソードも作ってくれよ。
というより本音を言えば短編いらないんだけどな。
2012年10月13日
ボクの言いたかったことを全て言葉にしていただけた思いです。
あの方法はもうやめてほしいですね。
本編が始まるまで廊下に居たいくらいです。
by inuneko (2012-10-13 13:53)
inunekoさま。
コメントありがとうございます。
割引サービスひとつ取っても、映画館側にとって「ありがたい客」「そうでもない客」の選別があるのでしょう。
にしても今回のは「もてなしの心」がまるで感じられない。
温和な自分でも「たいがいにしとけ」と言いたくなったわけです。
by jovan兄 (2012-10-14 12:28)
激しく同意します。
これから、戦闘シーン満載の映画みるまえに、
気持ちをかなり下げてくれるいみわからん短編映画でした。
by dio (2012-10-30 15:41)
dioさま。
コメントありがとうございます。
その映画は「消耗品達続集」ですね?自分も見てきました、敢えて吹替版で。いや声優のメンツが凄いので。
TOHOシネマズじゃないシネコンで見ましたよ。
by jovan兄 (2012-11-02 08:23)