ジェイミー・フォックスが「映画泥棒」 [映画マ行]

『モンスター上司』

img1517.jpg

よくこのキャスティングを揃えられたもんだなという、中身は完全なおバカコメディ。
ジェニファー・アニストンが開き直ったように演じる、色情狂の女性口腔外科医。これ見て思い出すのは、デミ・ムーアがマイケル・ダグラスに「私を抱きなさい」と迫る『ディスクロージャー』だね。あれに出てたドナルド・サザーランドが、ちゃんとこの映画にも出てるし。

そのサザーランド社長が急死して、薬品製造販売会社を継いだバカ息子を演じるのが、バーコード頭のヅラを被ったコリン・ファレル。「産廃はボリビアに捨てる」と公言するクズで、社長室に女たち連れ込んでコカイン吸ってる。「こんなのいねえよ」とさすがに思うが。

一番リアルに嫌な上司は、ケビン・スペイシーだろう。
映画の冒頭でこの上司の下で働くニックの独白が流れる。
「僕の祖母は20ドル持ってアメリカに渡ってきた。以来、一所懸命に働いて、死んだ時の所持金は2000ドルだった。祖母は何でお金持ちになれなかったのか?」
「それはプライドを捨てられなかったからだ」
そしてニックの社畜ぶりが描かれる。この導入はうまい。
そのケビン・スペイシーの上司から、2分の遅刻を執拗に責められ、朝からスコッチを注がれ、断れずに飲みほすが、社員たちの前で「酒くさいな」とアル中呼ばわりされ、それでも昇進のために耐えるが、そのポストは自分が兼任すると宣言され、ついにキレて辞表を出す。
「祖母の葬式にも出られず働いたのに」
と言うが、つい祖母のことを愛称の「ガムガム」と呼んでしまい、ゲラゲラ笑われたあげくに
「この業界で再就職するには俺の推薦状が必要だ。俺は書く気はない。
だからお前は俺のために奴隷のように働いてりゃいいんだよ」

女性口腔外科医のアシスタントをしてる歯科助手のデールは、婚約者のいる身で、セクハラ攻撃を受けるのが耐えられない。それに弱みも握られてる。児童公園で立ちションしてるとこを子供に見られ、小児性愛者として起訴された過去を知られてるのだ。この設定は『ハングオーバー』でザック・ガリフィナーキスが、小学校への接近禁止令が下されてるってのとカブるね。
コリン・ファレルの下で働くとこになったカートは、前社長から信頼厚かったことが、逆に息子社長の勘にさわるように。

長いつきあいの友達同士の愚痴りあいだったのが
「上司がひどいからといって、このご時勢で辞めても仕事なんか見つからないぞ」
というところから
「これは上司を殺すしかない」と一気に飛躍。

自分たちで手を下すわけにはいかんので、殺し屋を雇おうとネットで検索。「濡れた仕事請負い」と出てるんで、濡れるってのは血のことだろうと、早速モーテルに呼び出す。
やってきたのは黒のジャンパーにサングラスの、いかにもな雰囲気の男。
「誰から始める?」
と言って、ビニールシートを床に敷きだす。
「いっ、いや、俺たちじゃないから!」と慌てる3人。
「じゃあ、誰がションベンかけられたいんだ?」
そいつは殺し屋ではなく「お小水プレイ」専門の出張サービスだった。
その役をヨアン・グリフィスがやってるのにビックリ。多分カメオ出演なんだろう、パンフにも名前も写真も出てない。ヨアン・グリフィズは『ファンタスティック・フォー』とか『アメージング・グレイス』とか主演張ってても、なぜか印象薄い人。それに真面目そうな英国俳優というイメージなんで、これは意表を突かれたわ。主演張ってる時よりも印象残したね。
「トイレ借りるぞ。3人分と聞いてずいぶん貯めといたんだ」
という退場の仕方もナイス。

3人はネットを諦め、人を殺しそうな人たちが住んでる地区へ行くことに。音声対応のカーナビが「このルートはお薦めできません」と答えるような地区に入る。カーナビに
「接続切らないでいてくれよ」
と話しかけるのが笑える。
そして黒人たちの集まるバーへ。この偏見丸出しの展開も凄い。
そこで声をかけたのが、スキンヘッドでタフガイ風の、いかにも人を殺してそうなジェイミー・フォックス。
「俺はジョーンズだ、MFジョーンズ」
「MFってなに?」
「マザファカだ」
多分間違いないと踏んだ3人は、さっそく殺しの依頼を。
「1万ドルで請け負うぜ」
「そんな金ないよ!」
「じゃあ、5千ドルでいい」

あっさり値下げして、後日金を用意して渡すと
「俺は殺しはやらない」と。
「俺は殺しのコンサルタントだ」
「じゃあ、金返せ」
「一度受け取ったもんは返せない」
と凄まれ3人あっさり諦める。だがMFは3人に提案する。
「お前たちが、それぞれ別々の上司を殺せば動機もわからない」と。
『見知らぬ乗客』の方法か!と、あっさり納得する3人。
ジェイミー・フォックスは『デュー・デート』の時も後半にちらっと出てきて、おいしい所さらっていったが、今回も同じような仕事ぶり。一応10年の刑期を務めて出てきたMFだが、それが映画館で『ヒマラヤ杉に降る雪』を盗撮した「NO MORE 映画泥棒」の罪だったという、またマニアックな映画持ち出してくるな。
「黒人てだけで5千ドルも払うお前らが悪い」
ってセリフが最高だ。

この後は3人が交換殺人に動くわけだが、以降の展開はドタバタとなり、ケビン・スペイシー以外の上司が空気になってしまうのが物足りない。というより、嫌な上司を、社内から追いやる、知的な犯罪劇にした方が、上司役のビッグネームが引き立ったと思うんだがな。まあ上司をブッ殺したいほど、ストレスたまってる会社員がアメリカにも多いってことなのか。向こうじゃ大ヒットしたからね。

もうひとつ弱いのは、上司に苦しむ3人を演じる役者たち。ニック役のジェイソン・ベイトマンと、カート役のジェイソン・サダイキスが、ファーストネームだけじゃなく、背格好とか風貌とか似てるんだよ。アメリカでは名の知れた役者なのかも知れないが、俺は時々どっちかわかんなくなってた。
あとデール役のチャーリー・デイは、ネズミみたいな感じなんだが、声がうるさい。白人版のクリス・タッカーみたいで、キンキン耳にくる。だいたいジェニファー・アニストンに迫られるんだったらいいじゃないか、いっそ乗りかえろよ、と思ったよ。

2011年12月8日

nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 2

すわっと  優優

はじめまして
一昨日にゲオの旧作、準新作¥50セールで
レンタルして見ました。
カーナビの音声(訛り)からインドへ外注して
るのも皮肉ってますね。

とにかく笑え最後の仕返しのシーンとか
特典映像での削除シーンも良かった
by すわっと  優優 (2012-07-23 12:17) 

jovan兄

すわっと 優優さま。

コメントありがとうございます。
DVDだと特典映像があるんですね。今度借りてみます。
by jovan兄 (2012-09-05 02:45) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。