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『午後十時の映画祭』60年代編④作品コメ [「午後十時の映画祭」]

『午後十時の映画祭』

昨日に続いて、この映画が観たい『午後十時の映画祭』(60年代編)の50本について、短めにコメント入れてく。
五十音順で今日は「ナ」行から「ワ」まで。


「ナ」行

『夏の夜の10時30分』1966年アメリカ・フランス 
監督ジュールス・ダッシン 主演メリナ・メルクーリ、ロミー・シュナイダー

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娘とその女友達を誘い、スペインの町に観光にやってきた、倦怠期の夫婦。妻のメリナ・メルクーリは、夫が娘の友達ロミー・シュナイダーと不倫してるのを感づいていた。折りしも町では殺人事件が起きており、妻は容疑者の若い男にシンパシーを感じる。
デュラス原作・脚本。ロミーが美しい。
ビデオ・DVDにはなってない。



『盗みのテクニック』1966年フランス・イタリア・西ドイツ 
監督ニコラス・ジェスネル 主演ジーン・セバーグ

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ブロンソン主演の『扉の影に誰かいる』とかジョデイの『白い家の少女』は知られてるが、この監督デビュー作は俺も見たことない。西ドイツ舞台で、銀行員が強盗を計画するというプロットは、71年の『バンクジャック』を連想させる。
セバーグと『血とバラ』のマルティネリという女優の顔ぶれもいい。
ビデオ・DVDにはなってない。



『野にかける白い馬のように』1969年イギリス 
監督リチャード・C・サラフィアン 主演マーク・レスター

マークレスター野にかける.jpg

これも昔テレビでよくやってたが、未だにビデオ・DVDにはなってないね。
11才のマーク・レスターが、イギリスの荒涼とした土地に住む失語症の少年を演じる。孤独な少年と、野生の白い馬が心を通わせていく様子は、スピルバーグの『戦火の馬』にもイメージがつながる。
退役軍人を演じるジョン・ミルズもいい味。



「ハ」行

『裸のランナー』1967年アメリカ 
監督シドニー・J・フューリー 主演フランク・シナトラ

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題名だけ聞くと目の保養になる映画と勘違いしそうだが、これは殺し屋の映画だ。
家具デザイナーのシナトラが、英国諜報部から殺しの仕事を命じられる。もう足を洗ったと断るが、息子を誘拐され、従わざるを得なくなる。
ジョージ・クルーニーはこの映画なんかの渋さを狙ってる所があるね。
ビデオ・DVDにはなってない。



『華やかな魔女たち』1966年イタリア 
監督ヴィスコンティ、パゾリーニ、デ・シーカほか 主演シルヴァーナ・マンガーノ、クリント・イーストウッド

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イーストウッドが主要な役を演じる映画で、唯一未だにビデオ・DVD化されてないのがこれ。
同じ時期にシャーリー・マクレーン主演の『女と女と女たち』、ゴダールも名を列ねる『愛すべき女・女たち 』と、テーマも一緒のオムニバスが3本揃って非常に紛らわしい。
これはシルヴァーナ・マンガーノが全編で主役となってる。



『ふたりだけの窓』1966年イギリス 
監督ロイ・ボールディング 主演ヘイリー・ミルズ、ジョン・ミルズ

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少女スターとして人気を博してたヘイリー・ミルズもこの時は20才。レコード店の店員の彼女と、映画館の映写技師の青年が結婚するが、住宅難で親と同居、新婚旅行も、斡旋した会社に騙され代金も無くなるという、多難な新婚生活に。
音楽をポール・マッカートニーが担当してるのは驚き。
DVDは以前発売されてたが現在は廃版。



『フレンチ・スタイルで』1963年アメリカ 
監督ロバート・パリッシュ 主演ジーン・セバーグ

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アイオワ州の出身でありながら、パリを舞台にした映画のヒロインを何度も演じ、「巴里のアメリカ人」の代表格となったジーン・セバーグ。この映画も、画学生の彼女がパリでアヴァンチュールを繰り広げるロマコメのようだ。
60年代のパリのロケーションも見てみたい。
ビデオ・DVDにはなってない。



『ペルーの鳥』1968年フランス 
監督ロマン・ギャリー 主演ジーン・セバーグ、モーリス・ロネ

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作家にして、フランスの外交官でもあったという、ロマン・ギャリーが、自らの原作を映画化、妻でもあったジーン・セバーグを主演にした愛憎劇。
ペルーのリマ北方の、「鳥の墓場」と呼ばれる海岸に、死を覚悟してやってきた男と女。女は発作的に男を求めてしまうニンフォマニアだった。
ビデオ・DVDにはなってない。



「マ」行

『みどりの壁』1969年ペルー
監督アルマンド・ロブレス・ゴドイ 主演ラウル・マルチン

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昔名画座で見たきりだが、ペルー映画という物珍しさや、物語の中心人物の家族たちが暮らす、森の中の風景がよかった。木々の呼吸まで感じられるような生々しいカメラだった。
子供が毒蛇に噛まれたまま、母親のもとに、泣きながら駆け込んでくる場面の恐ろしさに固まった憶えがある。
ビデオ・DVDにはなってない。



「ヤ」行

『ユリシーズ』1967年アメリカ 
監督ジョセフ・ストリック 原作ジェームズ・ジョイス

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映画化されたものでは、ジョン・ヒューストン監督の『ザ・デッド/「ダブリン市民」より』が有名なジョイスの小説だが、この映画は、ジョイスの文体そのままに、主人公の行動ではなく想念が脈略なく描かれるという、野心的な試みをしてるらしい。
監督は『ヘンリー・ミラーの北回帰線』も撮ってる。
ビデオ・DVDにはなってない。



『夜のダイヤモンド』1964年チェコスロヴァキア 
監督ヤン・ニェメッツ

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なにやらロマンティックな響きのある題名なんだが、中身はユダヤ人を詰め込んで収容所へと送る貨物列車から、飛び降りて森の中を逃げる少年ふたりの物語なのだ。
なので逆になぜこの題名がついてるのか、俄然興味が湧いてくる。
『小さな赤いビー玉』や『さよなら子供たち』のような名作なのかもと。
ビデオ・DVDにはなってない。



『491』1964年スウェーデン 
監督ヴィルゴット・シェーマン 主演レナ・ニーマン「私は好奇心の強い女」

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1950年代のスウェーデン、非行少年たちを収容する、教会が運営する「保護所」を舞台にして、男色行為なども描かれる、当時としてはスキャンダラスな内容。題名は「主は490回の罪を許される」の言葉から。
監督と出演者のレナ・ニーマンは2年後に『私は好奇心の強い女』で世界を騒然とさせる。
ビデオ・DVDにはなってない。



「ラ」行

『リサの瞳のなかに』1962年アメリカ 
監督フランク・ペリー 主演ケア・デュリア、ジャネット・マーゴリン

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監督も主演のふたりもこれがキャリアのスタートとなった、瑞々しい一作。他人に触れられることを極度に恐れる「超潔癖症」の青年が、治療施設で、自分の世界に生きる少女リサと心を交感していく。
近年では、アスペルガー症候群の男女が出会う『モーツァルトとクジラ』に通じる眼差しの映画。
ビデオ・DVDにはなってない。



『レッド・ムーン』1968年アメリカ 
監督ロバート・マリガン 主演グレゴリー・ペック、ロバート・フォスター

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これはガキの頃にテレビで見て「おっかねえ!」と思った映画。
グレゴリー・ペック主演のウエスタンの体裁なんだが、ペックが混血の少年を連れた白人女性を保護したことから、その少年の父親である、アパッチの戦士に執拗に付け狙われる。その神出鬼没ぶりがほとんどホラーのキャラのよう。
ビデオ・DVDにはなってない。



「ワ」

『私は誘拐されたい』1968年イギリス 
監督ヒューバート・コーンフィールド 主演パメラ・フランクリン、マーロン・ブランド

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東京生まれというのも親しみが湧くパメラ・フランクリンが、身代金目的の一味に誘拐・監禁されるサスペンスだが、題名がネタバレしてるのが困りもの。
パメラは『ヘルハウス』以降がリアルタイムだったが、この映画の18才の彼女はエロ可愛かった。
ブランドが妙に二枚目。
昔テレビで見たが、ビデオ・DVDにはなってない。

2012年4月16日

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『午後十時の映画祭』60年代編③作品コメ [「午後十時の映画祭」]

『午後十時の映画祭』

昨日に続いて、この映画が観たい『午後十時の映画祭』(60年代編)の50本について、短めにコメント入れてく。
五十音順で今日は「サ」行と「タ」行を。


「サ」行

『さすらいの狼』1964年フランス 
監督アラン・カヴァリエ 主演アラン・ドロン、レア・マッサリ

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昔テレビで見たきりで、以来ビデオもDVDにもならず、ドロン主演作としては今や「幻の作品」扱いとなってる。
誘拐した女性弁護士を、情にほだされて逃がすことから、自らが窮地に陥る、外人部隊兵士を演じてる。髪を相当短く刈り込んでた印象がある。
アラン・カヴァリエは、1986年に久しぶりの監督作『テレーズ』が評判を得た。



『茂みの中の欲望』1967年イギリス 
監督クライヴ・ドナー 主演ジュディ・ギースン

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トラフィックやスペンサー・デイビス・グループの楽曲が使われてて、たしか90年代に『ジョアンナ』と一緒にリバイバル公開してなかったか?「60年代オシャレ」を語る時、引き合いに出される映画。
19才のジュディ・ギースン、ミニスカだし脱いでるしで、頼むからもっかい見せてくれ。
ビデオ・DVDにはなってない。



『ジャガーの眼』1965年フランス 
監督クロード・シャブロル 主演マリー・ラフォレ

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映画評論家・児玉数夫著の「やぶにらみ世界娯楽映画史」という、今でいうと「秘宝系」の娯楽作ばかり紹介した面白本があり、その中に出てた。
寝てるマリー・ラフォレのガーターベルトを外そうとしてる女の場面写真に、俺の「ビアン・アンテナ」が反応したのだ。
何とか見たいがビデオ・DVDにはなってない。



『女王陛下のダイナマイト』1966年フランス 
監督ジョルジュ・ロートネル 主演リノ・ヴァンチュラ、ミレーユ・ダルク

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監督のロートネルは70年代にはドロンやベルモンドのお抱えのようになり、凡作ばかりだが、60年代には面白い映画ばかり作ってた人。
これもビートルズとモッズを合わせたような爆弾バイカー族と、リノ・ヴァンチュラとの戦いを、軽妙なタッチで描き飛ばしてる。昔夜中にテレビで見たきりだ。
ビデオ・DVDにはなってない。



『ジョーカー野郎』1966年イギリス 
監督マイケル・ウィナー 主演マイケル・クロフォード、オリヴァー・リード

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なんかデカいことやってやろうと、ロンドン塔から女王の王冠を盗み出す計画を立てる兄弟を描くクライム・コメディ。60年代のマイケル・ウィナーは冴えてたんだなあと思わせる演出ぶり。
2008年のA・ブロディとマーク・ラファロが兄弟詐欺師を演じた『ブラザース・ブルーム』の元ネタはこれか?
ビデオ・DVDにはなってない。



『ジョージー・ガール』1966年イギリス 
監督シルヴィオ・ナリッツァーノ 主演リン・レッドグレーヴ、アラン・ベイツ

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これは何と言ってもテーマ曲、シーカーズの「ジョージー・ガール」だね。ポップスの美点が詰まってる名曲。
ロンドン下町のちょっと冴えない女の子ジョージーの日常を、ユーモラスにあったかく描いてる。たしかルームメイトの役でデビュー間もないシャーロット・ランプリングも出てた。
昔ビデオになってたが、DVD化はされてない。



『紳士泥棒/大ゴールデン作戦』1966年イタリア・イギリス 
監督ヴィットリオ・デ・シーカ 主演ピーター・セラーズ、ブリット・エクランド

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これも昔はけっこうテレビでやってたが。名匠デ・シーカの意外や泥棒コメディ。脚本がニール・サイモン、音楽バカラックという超ゴージャスな布陣。
ピーター・セラーズの役柄が詐欺師とはハマりすぎ。当時24才のブリット・エクランドを口説いて嫁にしとるし。
昔ワーナーからビデオが出てたが、DVDにはなってない。



『死んでもいい』1962年アメリカ・フランス・ギリシャ 
監督ジュールス・ダッシン 主演メリナ・メルクーリ、アンソニー・パーキンス

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義理の息子に恋したことから、嫉妬の炎を燃やす王妃「フェードラ」のギリシャ悲劇を、現代に移し変えたメロドラマ。
アンソニー・パーキンスは『サイコ』の2年後なんだが、それ以前の甘い青春スターの面影を持って、年上の女との許されざる恋を演じてる。メリナ・メルクーリは圧巻。
ビデオ・DVDにはなってない。



『スパイがいっぱい』1965年イギリス 
監督ヴァル・ゲスト 主演デヴィッド・ニーヴン、フランソワーズ・ドルレアック

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カトリーヌ・ドヌーヴの実姉で、この映画の2年後に、25才の若さで事故死を遂げるフランソワーズ・ドルレアック。
明るいお色気を振りまく彼女が見たいわけだ。
洒脱な英国紳士デヴィッド・ニーヴンが、医者なのにスパイ活動させられて、ベイルートで危機連発というストーリーも楽しい。
ビデオ・DVDにはなってない。



『スリルのすべて』1963年アメリカ 
監督ノーマン・ジュイスン 主演ドリス・デイ、ジェームズ・ガーナー

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歌って踊れてコメディエンヌとしても優れてるドリス・デイの主演作も、1本くらいは入れときたい。彼女は本国アメリカでの人気と、日本での温度差があるスターだね。
これは主婦がいきなりテレビCMで人気となってしまう、その騒動を60年代アメリカ映画の明朗さで描いてる。脚本はカール・ライナー。
ビデオ・DVDにはなってない。



『青春の光と影』1968年アメリカ 
監督ホール・バートレット 主演ケント・レイン

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ジュディ・コリンズの同名の主題歌(作曲はジョニ・ミッチェル)の美しさもさることながら、伝説のフォーク・シンガー、ティム・バックリーが音楽を担当してるというのが貴重。
ナイーヴで感覚的な、いかにも60年代後半の青春像は、今見ると気恥ずかしくなるんだろうか?
名画座で見た昔が懐かしい。
ビデオ・DVDにはなってない。



『世界詐欺物語』1964年フランス・イタリア・日本・オランダ 
監督ロマン・ポランスキー、堀川弘通ほか 主演カトリーヌ・ドヌーヴ、浜美枝

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「詐欺」を題材にした4ヵ国製作のオムニバス。
フランス編は監督クロード・シャブロルで、主演はドヌーヴ、日本編は監督堀川弘通で、主演は浜美枝、宮口精二も出てる。オランダ編は監督ポランスキーという豪華布陣。イタリア編の監督は知らない人。
合作だけど東宝が噛んでるからDVD出せそうなもんだけどね。ビデオも出てない。



『世界殺人公社』1969年イギリス 
監督ベイジル・ディアデン 主演オリヴァー・リード、テリー・サバラス

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『女王陛下の007』のボンドガール、ダイアナ・リグが女性記者に扮し、20世紀初頭のヨーロッパで続出する奇怪な殺人事件の背後に、世界的な殺人ネットワークがあることを突き止める。
剣呑な設定のわりには、コメディ・タッチで描かれるのがイギリス映画らしい。
ビデオ・DVDにはなってない。



「タ」行

『太陽を盗め』1968年アメリカ 
監督ロバート・パリッシュ 主演ジェームズ・コバーン、スザンナ・ヨーク

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海運業者の父親の横暴さに反発した兄弟が、その輸送船に積まれた100万ポンドを強奪しようと、義弟に声をかける。ジェームズ・コバーンが「ヒッピー」で「芸術家」で「一等航海士」というキャラで登場。
原題に役名をつけるあたり、『電撃フリント』に次ぐシリーズにしようと目論んだか?
昔ビデオは出てたがDVDにはなってない。



『タッチャブル』1968年イギリス 
監督ロバート・フリーマン 主演ジュディ・ハクスタブル

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これは昔っから見たいと思い続けてる映画。学生の頃「映画宝庫」という季刊誌があり、「こんな映画があった」という紹介のされ方をしてた。
スウィンギン・ロンドンの時代に、超ミニの女の子たちが、人気スターを誘拐するというコメディだという。適度にエロいらしい。
もちろんビデオ・DVDにはなってない。なんとかならんか。



『血とバラ』1961年フランス・イタリア 
監督ロジェ・ヴァデム 主演エルザ・マルティネリ、メル・ファーラー

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昔テレビで夜中に見たんだが、カーミラという女吸血鬼の存在を初めて知った。
従兄の婚約相手のジョルジアが、バラの棘で痛めた指に口をつけ、その唇に血がついてるのを見たカーミラが、思わず彼女に接吻する場面に、俺の「ビアン・アンテナ」が反応したのだ。ヴァデムの最高傑作だろう。
ビデオ・DVDにはなってない。



『ドーヴァーの青い花』1963年イギリス 
監督ロナルド・ニーム 主演ヘイリー・ミルズ、デボラ・カー

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60年代にロリ系の可愛さで人気があったのがヘイリー・ミルズだ。13才で映画デビューしてるが、彼女は年上の人間と心を通わせるという少女を度々演じてた。
この映画では、暗い過去を持つ家庭教師デボラ・カーと、母から引き離された少女との交流が、端正な画面の中に描かれる。
ビデオ・DVDにはなってない。



『泥棒貴族』1966年アメリカ・イギリス・フランス 
監督ロナルド・ニーム 主演マイケル・ケイン、シャーリー・マクレーン

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ケインとシャーリー・マクレーンという顔合わせがまず面白い。
詐欺師のケインが、香港のナイトクラブの踊り子マクレーンを、仲間に引き込んでの強奪計画を頭の中で練るんだが、実際は思惑はずれまくりという、落差の描き方で笑わせる。
いかにも60年代の洒落っ気があり、オチも決まってる。
昔ビデオが出てたがDVDにはなってない。

2012年4月15日

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『午後十時の映画祭』60年代編②作品コメ [「午後十時の映画祭」]

『午後十時の映画祭』

昨日アップした、この映画が観たい『午後十時の映画祭』(60年代編)の50本について、短めにコメント入れてく。
五十音順で今日は「ア」行と「カ」行を。


「ア」行

『合言葉は勇気』1963年イギリス 
監督アンドリュー・L・ストーン 主演ダーク・ボガード

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もう何年も前になるが、三谷幸喜脚本のテレビドラマの題名はここから拝借してたんだね。中身は全く関係がなく、こちらは第2次大戦中に、イギリス兵の捕虜があの手この手で、ドイツ軍の収容所から脱走するという話。「捕虜収容所もの」は面白い映画が多いので、これも見てみたい。
ビデオ・DVDにはなってない。



『悪魔のくちづけ』1967年アメリカ 
監督カーティス・ハリントン 主演キャサリン・ロス、シモーヌ・シニョレ

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1970年の『愛はひとり』が6月に初DVD化されるキャサリン・ロス主演のスリラー。妻の相続遺産で優雅に暮らす夫婦のもとに、シモーヌ・シニョレ演じるセールスウーマンが来て、奇怪な出来事が続発する。心理的に追いつめられるキャサリン・ロスが初々しい。
昔ビデオになってたがDVDにはなってない。



『悪魔のような恋人』1969年イギリス 
監督トニー・リチャードソン 主演アンナ・カリーナ、ニコール・ウィリアムソン

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『ロリータ』のナボコフ原作で、アンナ・カリーナが、初老の画商の財産目当てに近づき、その手管でやりたい放題するという、ニコール・ウィリアムソンが哀れすぎる物語。ナボコフこういうの好きだね。究極のマゾヒズム映画の1本だろう。
ビデオ・DVDにはなってない。



『明日に賭ける』1967年イギリス 
監督マイケル・ウィナー 主演オリヴァー・リード、オーソン・ウェルズ

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60年代のイギリスのテレビ広告業界に生きる主人公を描いていて、日本映画『その場所に女ありて』を思わすドライなタッチ。あちらは司葉子だったが、こちらはオリヴァー・リードが主演。
マリアンヌ・フェイスフルも顔を見せてる。
ビデオ・DVDにはなってない。



『明日よさらば』1969年イタリア 
監督ジュリアーノ・モンタルド 主演ジョン・カサヴェテス、ピーター・フォーク、ブリット・エクランド

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これは昔よく12チャンの昼間なんかにやってたね。イタリアの製作陣による、アメリカの役者を起用した、ギャング映画だ。主演のカサヴェテスを筆頭にフォーク、ローランズという「カサヴェテス・ファミリー」が集結してる。ブリット・エクランドは可愛い盛りの時期。
ビデオ・DVDにはなってない。



『甘い暴走』1968年アメリカ 
監督ハーヴェイ・ハート 主演ジャクリーン・ビセット、マイケル・サラザン

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「70年代編」で選んだ『さらば青春の日』のビセットとサラザンが、それに先んじて共演してた、マリブビーチが舞台のドラマ。ビセットのレ●プシーンがあるとかないとか映画雑誌には書いてあったが、これも今まで見る機会に恵まれない。
ビデオ・DVDにはなってない。



『或る種の愛情』1962年イギリス 
監督ジョン・シュレシンジャー 主演アラン・ベイツ

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シュレシンジャー監督が第1作目にして、ベルリン映画祭「金熊賞」を獲得したドラマ。アラン・ベイツにとっても初の主演作だ。イギリスの労働者階級の若い男女が、愛情のない結婚生活から少しづつ心を変化させてく様子を描いてる。相手役の女優が今ひとつ魅力に欠けるのが難。
ビデオ・DVDにはなってない。



『ある日アンヌは』1969年フランス 
監督ギイ・カザリル 主演マルレーヌ・ジョベール

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刑務所内でレズビアンの相手になった年上の女が先に釈放され、それを追って脱獄するヒロインにマルレーヌ・ジョベール。といっても外に出た後は男と女のドラマになるようだ。
これは昔ビデオになってたようだがDVDにはなってない。
ギイ・カザリル監督は後に純正レズビアン映画『エミリアンヌ』を撮ってる。



『異邦人』1968年イタリア・フランス 
監督ルキノ・ヴィスコンティ 主演マルチェロ・マストロヤンニ、アンナ・カリーナ

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「太陽がまぶしかったから」という理由で人を撃ち殺した会社員の男。ヴィスコンティがカミュの「実存主義」的小説の映画化に挑んだ野心作。アルジェリア・ロケの色彩の鮮やかさ。
もう何年も前だが、有楽町の朝日ホールで見ることはできたのだが。
権利関係が煩雑なようで、ビデオ・DVDにはなってない。



『いのちの紐』1965年アメリカ 
監督シドニー・ポラック 主演シドニー・ポワチエ、アン・バンクロフト

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睡眠薬を大量に飲んだ、自殺志願の中年女性の電話を受けた、自殺予防センターのアルバイト学生が、警察と連携して、彼女の居所を探り、必死で説得を行う過程を、息詰まる演技で見せる、シドニー・ポラックの監督第1作。リメイクするならポワチエの役はデンゼル・ワシントンだろう。役が学生じゃなくなるが。
ビデオ・DVDにはなってない。



『いれずみの男』1969年アメリカ 
監督ジャック・スマイト 主演ロッド・スタイガー

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これと前後する『軍曹』では、一等兵に熱を上げる曹長を、『殺しの接吻』では女装の殺人鬼を、そして本作では、全身に入れた刺青の中に、見つめた人間の未来が見えるという男を、という当時は「男色テイスト」路線に走ってたロッド・スタイガーなのだった。原作はレイ・ブラッドベリという異色SF。
ビデオ・DVDにはなってない。



『女になる季節』1961年イギリス 
監督ルイス・ギルバート 主演スザンナ・ヨーク、ジェーン・アッシャー

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60年代イギリス映画の名花である二人が、十代の頃に共演を果たしていたという、もうそれだけでも見れれば眼福なのだが、ルイス・ギルバートの映画なんで、内容もいいと思われる。シャンパーニュ地方に休暇にやってきたイギリス人一家の物語。
スザンナは長女、ジェーンが次女。見たいなあ。
ビデオ・DVDにはなってない。



「カ」行


『かわいい毒草』1968年アメリカ 
監督ノエル・ブラック 主演アンソニー・パーキンス、チューズディ・ウェルド

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60年代前半には十代にして「ポスト・マリリン」的セックス・シンボルだったチューズディ。彼女のキャリアは『俺たちに明日はない』の主役を蹴ったことで暗転する。この映画では人殺しも躊躇しない、悪女というよりサイコパスを演じて、パーキンスよりも「サイコ」である。
ビデオ・DVDにはなってない。



『危険な恋人』1968年イタリア 
監督ティント・ブラス 主演ジャン・ルイ・トランティニャン、エヴァ・オーリン

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後に映画界きっての「尻フェチ」として名を成すティント・ブラス監督初期のジャーロ作。『キャンディ』のヒロイン役で、男の下半身を直撃したエヴァ・オーリンが演じる女性像というのは『氷の微笑』の元ネタのように感じる。サイケなイメージ映像とか音楽のはさみ方とか面白い。
DVDはリリースされてたが現在は廃版。



『傷だらけのアイドル』1967年イギリス 
監督ピーター・ワトキンス 主演ポール・ジョーンズ

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これも昔はけっこうテレビでやってた。メディアによって作り上げられたポップスターの心の葛藤と、虚構の座に抗おうとして、バッシングを受ける様を、エキセントリックな描写で見せてた。
これのアンサー映画的な展開を見せるのが、アラン・パーカー監督の『ピンク・フロイド/ザ・ウォール』だ。
ビデオ・DVDにはなってない。



『経験』1969年アメリカ 
監督ジェームズ・ニールソン 主演ジャクリーン・ビセット

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これはもうまったくのジャクリーン・ビセット見たさでしかない。彼女の出演作としても一番なじみがない映画なんじゃないか?童貞高校生3人が、カナダ国境のナイアガラの滝で、カナダ人の年上の女性ビセットと知り合いとなり、アタックしようとする話。ビセット当時25才。
ビデオ・DVDにはなってない。



『五月の七日間』1963年アメリカ 
監督ジョン・フランケンハイマー 主演バート・ランカスター、カーク・ダグラス

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60年代フランケンハイマーの、『大列車作戦』『影なき狙撃者』と並ぶ「ポリティカル・サスペンス3部作」の1本。核廃絶に反対する強硬派が軍事クーデターを画策する。『OK牧場の決闘』の二人が再び顔を合わせ、ディスカッション・ドラマとしても迫力がある。
WOWOWで放映されたことはあるが、ビデオ・DVDにはなってない、

2012年4月14日

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さらに60年代編・『午後十時の映画祭』① [「午後十時の映画祭」]

『午後十時の映画祭』

ちょっと間が開いてしまったが、この映画が観たい『午後十時の映画祭』の、「70年代」編「80年代」編に続き、今回は「60年代」編のラインナップ。

1960年代というと、ぐっと見た本数も減ってきて、「もう一度見たい」という映画というより、「一度見てみたい」というものが多く並んだ。例によって過去にビデオやDVDでリリースされたことがない映画を優先的に選んでる。

マカロニ・ウェスタンが1本も入ってないが、けっこうマイナーなものまでDVD化されてたり、俺自身がそれほど熱心に見たいジャンルでもないということがある。
選択の基準としては、女優に惹かれるというのは大きいかな。

70年代、80年代の映画は、リストを選んだ後にポツリポツリとDVDが発売になってて、先だってもベルトルッチの『1900年』のブルーレイが6月に出るとあったが、60年代の映画はそういう動きが鈍い。
明日以降、各作品に短くコメント入れてく。



『午後十時の映画祭』(60年代編)のラインナップ50本は以下の通り。


『合言葉は勇気』1963年イギリス 
監督アンドリュー・L・ストーン 主演ダーク・ボガード

『悪魔のくちづけ』1967年アメリカ 
監督カーティス・ハリントン 主演キャサリン・ロス、シモーヌ・シニョレ

『悪魔のような恋人』1969年イギリス 
監督トニー・リチャードソン 主演アンナ・カリーナ、ニコール・ウィリアムソン

『明日に賭ける』1967年イギリス 
監督マイケル・ウィナー 主演オリヴァー・リード、オーソン・ウェルズ

『明日よさらば』1969年イタリア 
監督ジュリアーノ・モンタルド 主演ジョン・カサヴェテス、ピーター・フォーク、ブリット・エクランド

『甘い暴走』1968年アメリカ 
監督ハーヴェイ・ハート 主演ジャクリーン・ビセット、マイケル・サラザン

『或る種の愛情』1962年イギリス 
監督ジョン・シュレシンジャー 主演アラン・ベイツ

『ある日アンヌは』1969年フランス 
監督ギー・カザリル 主演マルレーヌ・ジョベール

『異邦人』1968年イタリア・フランス 
監督ルキノ・ヴィスコンティ 主演マルチェロ・マストロヤンニ、アンナ・カリーナ

『いのちの紐』1965年アメリカ 
監督シドニー・ポラック 主演シドニー・ポワティエ、アン・バンクロフト

『いれずみの男』1969年アメリカ 
監督ジャック・スマイト 主演ロッド・スタイガー

『女になる季節』1961年イギリス 
監督ルイス・ギルバート 主演スザンナ・ヨーク、ジェーン・アッシャー

『かわいい毒草』1968年アメリカ 
監督ノエル・ブラック 主演アンソニー・パーキンス、チューズディ・ウェルド

『危険な恋人』1968年イタリア 
監督ティント・ブラス 主演ジャン・ルイ・トランティニャン、エヴァ・オーリン

『傷だらけのアイドル』1967年イギリス 
監督ピーター・ワトキンス 主演ポール・ジョーンズ

『経験』1969年アメリカ 
監督ジェームズ・ニールソン 主演ジャクリーン・ビセット

『五月の七日間』1963年アメリカ 
監督ジョン・フランケンハイマー 主演バート・ランカスター、カーク・ダグラス

『さすらいの狼』1964年フランス 
監督アラン・カヴァリエ 主演アラン・ドロン、レア・マッサリ

『茂みの中の欲望』1967年イギリス 
監督クライヴ・ドナー 主演ジュディ・ギースン

『ジャガーの眼』1965年フランス 
監督クロード・シャブロル 主演マリー・ラフォレ

『女王陛下のダイナマイト』1966年フランス 
監督ジョルジュ・ロートネル 主演リノ・ヴァンチュラ、ミレーユ・ダルク

『ジョーカー野郎』1966年イギリス 
監督マイケル・ウィナー 主演マイケル・クロフォード、オリヴァー・リード

『ジョージー・ガール』1966年イギリス 
監督シルヴィオ・ナリッツァーノ 主演リン・レッドグレーヴ、アラン・ベイツ

『紳士泥棒/大ゴールデン作戦』1966年イタリア・イギリス 
監督ヴィットリオ・デ・シーカ 主演ピーター・セラーズ、ブリット・エクランド

『死んでもいい』1962年アメリカ・フランス・ギリシャ 
監督ジュールス・ダッシン 主演メリナ・メルクーリ、アントニー・パーキンス

『スパイがいっぱい』1965年イギリス 
監督ヴァル・ゲスト 主演デヴィッド・ニーヴェン、フランソワーズ・ドルレアック

『スリルのすべて』1963年アメリカ 
監督ノーマン・ジュイスン 主演ドリス・デイ、ジェームズ・ガーナー

『青春の光と影』1968年アメリカ 
監督ホール・バートレット 主演ケント・レイン

『世界詐欺物語』1964年フランス・イタリア・日本・オランダ 
監督ロマン・ポランスキー、堀川弘通ほか 主演カトリーヌ・ドヌーヴ、浜美枝

『世界殺人公社』1969年イギリス 
監督ベイジル・ディアデン 主演オリヴァー・リード、テリー・サバラス

『太陽を盗め』1968年アメリカ 
監督ロバート・パリッシュ主 演ジェームズ・コバーン、スザンナ・ヨーク

『タッチャブル』1968年イギリス 
監督ロバート・フリーマン 主演ジュディ・ハクスタブル

『血とバラ』1961年フランス・イタリア 
監督ロジェ・ヴァデム 主演エルザ・マルティネリ、メル・ファーラー

『ドーヴァーの青い花』1963年イギリス 
監督ロナルド・ニーム 主演ヘイリー・ミルズ、デボラ・カー

『泥棒貴族』1966年アメリカ・イギリス・フランス 
監督ロナルド・ニーム 主演マイケル・ケイン、シャーリー・マクレーン

『夏の夜の10時30分』1966年アメリカ・フランス 
監督ジュールス・ダッシン 主演メリナ・メルクーリ、ロミー・シュナイダー

『盗みのテクニック』1966年フランス・イタリア・西ドイツ 
監督ニコラス・ジェスネル 主演ジーン・セヴァーグ

『野にかける白い馬のように』1969年イギリス 
監督リチャード・C・サラフィアン 主演マーク・レスター

『裸のランナー』1967年アメリカ 
監督シドニー・J・フューリー 主演フランク・シナトラ

『華やかな魔女たち』1966年イタリア 
監督ヴィスコンティ、パゾリーニ、デ・シーカほか 主演シルヴァーナ・マンガーノ、クリント・イーストウッド

『ふたりだけの窓』1966年イギリス 
監督ロイ・ボールディング 主演ヘイリー・ミルズ、ジョン・ミルズ

『フレンチ・スタイルで』1963年アメリカ 
監督ロバート・パリッシュ 主演ジーン・セバーグ

『ペルーの鳥』1968年フランス 
監督ロマン・ギャリー 主演ジーン・セバーグ、モーリス・ロネ

『みどりの壁』1969年ペルー 
監督アルマンド・ロブレス・ゴドイ 主演ラウル・マルチン

『ユリシーズ』1967年アメリカ 
監督ジョセフ・ストリック 原作ジェームズ・ジョイス

『夜のダイヤモンド』1964年チェコスロヴァキア 
監督ヤン・ニェメッツ

『491』1964年スウェーデン 
監督ヴィルゴット・シェーマン 主演レナ・ナイマン「私は好奇心の強い女」

『リサの瞳のなかに』1962年アメリカ 
監督フランク・ペリー 主演ケア・デュリア、ジャネット・マーゴリン

『レッド・ムーン』1968年アメリカ 
監督ロバート・マリガン 主演グレゴリー・ペック、ロバート・フォスター

『私は誘拐されたい』1968年イギリス 
監督ヒューバート・コーンフィールド 主演パメラ・フランクリン、マーロン・ブランド




ついでに(70年代編)(80年代編)の修正版ラインナップが以下の通り。


『午後十時の映画祭』(70年代編)修正版

『愛とさすらいの青春/ジョー・ヒル』(1971)スウェーデン・アメリカ 
監督ボー・ヴィーデルヴェリ 主演トミー・ベルグレン

『赤ちゃんよ永遠に』(1972)イギリス・アメリカ 
監督マイケル・キャンパス 主演オリヴァー・リード

『雨のロスアンゼルス』(1975)アメリカ 
監督フロイド・マトラックス 主演ポール・ル・マット

『暗殺のオペラ』(1971)イタリア 
監督ベルナルト・ベルトルッチ 主演アリダ・ヴァリ

『あんなに愛しあったのに』(1974)イタリア 
監督エットーレ・スコラ 主演ステファニア・サンドレッリ、ヴィットリオ・ガスマン

『ウィークエンド・ラブ』(1973)イギリス 
監督メルヴィン・フランク 主演ジョージ・シーガル、グレンダ・ジャクソン

『失われた地平線』(1972)イギリス 
監督チャールズ・ジャロット 主演ピーター・フィンチ、オリヴィア・ハッセー

『うず潮』(1975)フランス 
監督ジャン・ポール・ラプノー 主演カトリーヌ・ドヌーヴ、イヴ・モンタン

『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと』(1976)アメリカ 
監督ハル・アシュビー 主演デヴィッド・キャラダイン

『黄金の指』(1973)アメリカ 
監督ブルース・ゲラー 主演ジェームズ・コバーン

『怪盗軍団』(1975)イギリス 
監督ピーター・デュフェル 主演テリー・サバラス、ロバート・カルプ

『かもめのジョナサン』(1973)アメリカ 
監督ホール・バートレット 音楽ニール・ダイヤモンド

『ガラスの旅』(1971)イタリア 
監督ウンベルト・レンツィ 主演レイモンド・ラブロック オルネラ・ムーティ

『カンサスシティの爆弾娘』(1972)アメリカ 
監督ジェロルド・フリードマン 主演ラクエル・ウェルチ

『恐怖の報酬』(1977)アメリカ 
監督ウィリアム・フリードキン 主演ロイ・シャイダー

『きんぽうげ』(1970)イギリス 
監督ロバート・エリス・ミラー 主演ジェーン・アッシャー、ジュディ・ボウカー

『刑事キャレラ 10+1の追撃』(1972)フランス 
監督フィリップ・ラブロ 主演ジャン・ルイ・トランティニャン、ドミニク・サンダ

『ゴールド』(1974)イギリス 
監督ピーター・ハント 主演ロジャー・ムーア、スザンナ・ヨーク

『最後の脱出』(1971)アメリカ 
監督コーネル・ワイルド 主演ナイジェル・ダヴェンポート、リン・フレデリック

『サイレント・パートナー』(1978)カナダ 
監督ダリル・デューク 主演エリオット・グールド、クリストファー・プラマー

『砂漠の冒険』(1970)イギリス 
監督ジャミー・ヘイズ 主演ダーキー・ヘイズ

『ザ・ファミリー』(1973)アメリカ 
監督リチャード・フライシャー 主演フレデリック・フォレスト、アンソニー・クイン

『さらば愛しき女よ』(1975)アメリカ 
監督ディック・リチャーズ 主演ロバート・ミッチャム、シャーロット・ランプリング

『さらば青春の日』(1971)アメリカ 
監督スチュアート・ハグマン 主演ジャクリーン・ビセット、マイケル・サラザン

『幸福の旅路』(1977)アメリカ 
監督ジェレミー・ポール・ケイガン 主演ヘンリー・ウィンクラー、サリー・フィールド

『ジーザス・クライスト・スーパースター』(1973)アメリカ 
監督ノーマン・ジュイソン 主演テッド・ニーリー

『シンジケート』(1973)アメリカ 
監督マイケル・ウィナー 主演チャールズ・ブロンソン

『スーパーコップス』(1974)アメリカ 
監督ゴードン・パークス 主演ロン・リーヴマン

『スカイエース』(1976)イギリス 
監督ジャック・ゴールド 主演マルコム・マクダウェル

『センチュリアン』(1972)アメリカ 
監督リチャード・フライシャー 主演ステイシー・キーチ、ジョージ・C・スコット

『空飛ぶ十字剣』(1977)台湾 
監督チャン・メイ・チュン 主演パイ・イン

『ダーティハンター』(1974)アメリカ・スペイン 
監督ピーター・コリンソン 主演ピーター・フォンダ、ウィリアム・ホールデン

『ダブ』(1974)アメリカ 
監督チャールズ・ジャロット 主演ジョセフ・ボトムズ、デボラ・ラフィン

『デキシー・ダンスキングス』(1974)アメリカ 
監督ジョン・G・ヴィルドセン 主演バート・レイノルズ

『ドーベルマン・ギャング』(1973)アメリカ 
監督バイロン・ロス・チャドナウ 主演バイロン・メーヴ

『ナイト・チャイルド』(1972)イギリス 
監督ジェームズ・ケリー 主演マーク・レスター、ブリット・エクランド

『ハメルンの笛吹き』(1971)イギリス 
監督ジャック・ドゥミー 主演ドノヴァン、ジャック・ワイルド

『白夜』(1971)フランス・イタリア 
監督ロベール・ブレッソン 主演ギョーム・デ・フォレ

『ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実』(1972)アメリカ 
監督シドニー・J・フューリー 主演ダイアナ・ロス

『フリービーとビーン大乱戦』(1974)アメリカ 
監督リチャード・ラッシュ 主演ジェームズ・カーン、アラン・アーキン

『ボビー・デアフィールド』(1977)アメリカ 
監督シドニー・ポラック 主演アル・パチーノ、マルト・ケラー

『マッドボンバー』(1973)アメリカ 
監督バート・I・ゴードン 主演チャック・コナーズ、ヴィンス・エドワーズ

『Mrビリオン』(1977)アメリカ 
監督ジョナサン・カプラン 主演テレンス・ヒル、ヴァレリー・ペリン

『ヤコペッティの大残酷』(1975)イタリア 
監督グァルティエロ・ヤコペッティ 主演クリストファー・ブラウン

『夕陽の群盗』(1972)アメリカ 
監督ロバート・ベントン 主演ジェフ・ブリッジス

『らせん階段』(1975)アメリカ 
監督ピーター・コリンソン 主演ジャクリーン・ビセット、クリストファー・プラマー

『ロリ・マドンナ戦争』(1973)アメリカ 
監督リチャード・C・サラフィアン 主演ジェフ・ブリッジス、シーズン・ヒューブリー

『ロンドン大捜査線』(1971)イギリス 
監督マイケル・タクナー 主演リチャード・バートン

『別れのこだま』(1975)アメリカ 
監督ドン・テイラー 主演ジョディ・フォスター、リチャード・ハリス




『午後十時の映画祭』(80年代編)修正版

『愛と哀しみのボレロ』(1981)フランス 
監督クロード・ルルーシュ 主演ニコール・ガルシア、ダニエル・オルブリフスキ

『青い恋人たち』(1983)アメリカ 
監督ジョエル・ディーン 主演ピーター・ギャラガー、ダリル・ハンナ

『アドベンチャー・ロード』(1980)オーストラリア 
監督ピーター・コリンソン 主演ウィリアム・ホールデン、リッキー・シュローダー

『アパートメント・ゼロ』(1988)イギリス 
監督マーティン・ドノヴァン 主演コリン・ファース、ハート・ボックナー

『ウィザード』(1988)ニュージーランド・オーストラリア 
監督ヴィンセント・ウォード 主演クリス・ヘイウッド

『エディ・マーフィ/ロウ』(1987)アメリカ 
監督ロバート・タウンゼント 主演エディ・マーフィ

『エデンの園』(1980)イタリア・日本 
監督増村保造 主演ロニー・バレンテ、レオノーラ・ファニ

『オブローモフの生涯より』(1980)ソ連 
監督ミキータ・ミハルコフ 主演オレーグ・タバコフ、エレーナ・ソロヴェイ

『俺たちの明日』(1984)アメリカ 
監督ジェームズ・フォーリー 主演エイダン・クィン、ダリル・ハンナ

『仮面の中のアリア』(1988)ベルギー 
監督ジェラール・コルビオ 主演ホセ・ファン・ダム、フィリップ・ヴォルテール

『キャル』(1984)イギリス 
監督パット・オコナー 主演ヘレン・ミレン、ジョン・リンチ

『ギャルソン!』(1983)フランス 
監督クロード・ソーテ 主演イヴ・モンタン、ニコール・ガルシア

『キリング・タイム』(1987)フランス 
監督エドゥアール・ニエルマン 脚本ジャック・オディアール 主演ベルナール・ジロドー

『恋の病い』(1987)フランス 
監督ジャック・ドレー 主演ナスターシャ・キンスキー ジャン・ユーク・アングラード

『ゴールデン・エイティーズ』(1986)フランス・ベルギー・スイス 
監督シャンタル・アケルマン 主演ミリアム・ボワイエ デルフィーヌ・セイリグ

『コンペティション』(1980)アメリカ 
監督ジョエル・オリアンスキー 主演リチャード・ドレイファス エイミー・アーヴィング

『ザ・アマチュア』(1981)アメリカ 
監督チャールズ・ジャロット 主演ジョン・サヴェージ、クリストファー・プラマー

『ザ・キープ』(1984)アメリカ 
監督マイケル・マン 主演スコット・グレン、ユルゲン・プロフノウ

『砂漠のライオン』(1981)リビア 
監督ムスタファ・アッカド 主演アンソニー・クイン、オリヴァー・リード

『サンフランシスコ物語』(1980)アメリカ 
監督リチャード・ドナー 主演ジョン・サヴェージ、デヴィッド・モース

『シカゴ・コネクション 夢みて走れ』(1986)アメリカ 
監督ピーター・ハイアムズ 主演ビリー・クリスタル、グレゴリー・ハインズ

『死にゆく者への祈り』(1987)イギリス 
監督マイク・ホッジス 主演ミッキー・ローク、アラン・ベイツ

『ジャグラー ニューヨーク25時』(1980)アメリカ 
監督ロバート・バトラー 主演ジェームズ・ブローリン、クリフ・ゴーマン

『シルクウッド』(1983)アメリカ 
監督マイク・ニコルズ 主演メリル・ストリープ、カート・ラッセル

『忍冬の花のように』(1980)アメリカ 
監督ジェリー・シャッツバーグ 主演ウィリー・ネルソン、ダイアン・キャノン

『スタントマン』(1980)アメリカ 
監督リチャード・ラッシュ 主演ピーター・オトゥール、スティーヴ・レイルスバック

『タイムズスクエア』(1980)アメリカ 
監督アラン・モイル 主演トリニ・アルヴァラード、ティム・カリー

『チェンジリング』(1980)カナダ 
監督ピーター・メダック 主演ジョージ・C・スコット、メルヴィン・ダグラス

『チャンピオンズ』(1984)イギリス
監督ジョン・アーヴィン 主演ジョン・ハート、エドワード・ウッドワード

『天国への300マイル』(1989)ポーランド・デンマーク・フランス 
監督マーチェイ・ディチェル

『天使の接吻』(1988)フランス 
監督ジャン・ピエール・リモザン 主演ジュリー・デルピー

『遠い声、静かな暮らし』(1988)イギリス 
監督テレンス・ディヴィス 主演ピート・ポスルスウェイト

『ドラキュリアン』(1987)アメリカ 
監督フレッド・デッカー 主演スティーヴン・マクト、トム・ムーナン

『トラブル・イン・マインド』(1986)アメリカ 
監督アラン・ルドルフ 主演クリス・クリストファーソン、キース・キャラダイン

『バーニング』(1981)アメリカ 
監督トニー・メイラム 原作ハーヴェイ・ワインスタイン

『ハイ・ロード』(1983)アメリカ 
監督ブライアン・G・ハットン 主演トム・セレック

『バウンティフルへの旅』(1985)アメリカ 
監督ピーター・マスターソン 主演ジェラルディン・ペイジ、レベッカ・デモーネイ

『パッショネイト 悪の華』(1983)アメリカ 
監督スチュアート・ローゼンバーグ 主演ミッキー・ローク、エリック・ロバーツ

『800万の死にざま』(1986)アメリカ 
監督ハル・アシュビー 主演ジェフ・ブリッジス、ロザンナ・アークエット

『フォー・フレンズ 4つの青春』(1981)アメリカ 
監督アーサー・ペン 主演グレッグ・ワッソン

『プリンス・オブ・シティ』(1981)アメリカ 
監督シドニー・ルメット 主演トリート・ウィリアムズ

『ベルリンは夜』(1985)イギリス 
監督アンソニー・ペイジ 主演ジャクリーン・ビセット、ユルゲン・プロフノウ

『炎628』(1985)ソ連 
監督エレム・クリモフ 主演アリョーシャ・クラフチェンコ

『マイ・ライバル』(1982)アメリカ 
監督ロバート・タウン 主演マリエル・ヘミングウェイ、スコット・グレン

『マルホランド・ラン 王者の道』(1981)アメリカ 
監督ノエル・ノセック 主演ハリー・ハムリン、デニス・ホッパー

『メイトワン 1920』(1987)アメリカ 
監督ジョン・セイルズ 主演クリス・クーパー、デヴィッド・ストラザーン

『夜の天使』(1986)フランス 
監督ジャン・ピエール・リモザン 主演ジャン・フィリップ・エコフェ
 
『ラスト・カーチェイス』(1980)アメリカ 
監督マーティン・バーク 主演リー・メジャース

『リトル・ダーリング』(1980)アメリカ 
監督ロナルド・F・マックスウェル 主演テイタム・オニール、クリスティ・マクニコル、マット・ディロン

『ル・バル』(1983)フランス・イタリア・アルジェリア 
監督エットーレ・スコラ


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追補版・『午後十時の映画祭』② [「午後十時の映画祭」]

この映画が観たい『午後十時の映画祭』追補版②

1月23日のこのブログで、最初にラインナップした「70年代編」の50本のうち、4本がDVDで見られるようになったので、リストへの入れ替えタイトルとコメントを入れたんだが、その後も新たに

「70年代編」から、
『栄光への賭け』『コンラック先生』『デリンジャー』の3本が、
「80年代編」から、
『ザ・クラッカー 真夜中のアウトロー』『タイムズ・スクエア』の2本が、

DVD販売決定とのニュースが入った。今回のはツタヤのオンデマンドDVD及び「発掘良品」でのリリースではなく、4本は「20世紀フォックス」からのリリースだ。

そんなわけで今回も、その5本に替わるタイトルとコメントは以下の通り。



『あんなに愛しあったのに』(1974)イタリア 
監督エットーレ・スコラ 主演ステファニア・サンドレッリ、ヴィットリオ・ガスマン

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1974年の映画ながら、日本公開が実現したのは1990年。ミニシアター・ブームの恩恵といえる。
『スプレンドール』では映画館主という主人公の役柄を通じて映画愛を語ったスコラ監督だったが、この作品でも、『自転車泥棒』『甘い生活』『太陽はひとりぼっち』『戦艦ポチョムキン』『人間の絆』といった名作を引用しながら、3人の親友たちの、終戦から74年までの約30年間を描いてた。
3人の男たちはレジスタンスで共に戦ってるから、日本だと「団塊の世代」のひとつ上の年代だろう。

その3人に愛されるのがステファニア・サンドレッリだ。彼女のいる前でケンカになり
「もう、いい人なんて言われたくないんだよーっ!」
と走り去ってく場面とか、セリフでかなり笑った記憶がある。
セリフの量も多いし、映画全体の情報量が多いんで、一度見ただけじゃ咀嚼しきれない感じはあった。
今見直したらもっといろんな部分に反応できるんじゃないかと思う。
フェリーニ監督とマストロヤンニが、トレビの泉で『甘い生活』を撮影してるという場面があり、実際に本人たちが出演してたり、映画好きなら必見だろう。

3人の男たちの行状はカッコいいとはいえないが、スコラ監督の
「イタリア人は堕落してるかもしれないが、愚かではない」
という言葉が、この映画の人物描写を言い当ててると思う。
一度ビデオになってたと思うが、DVDにはなってない。



『らせん階段』(1974)イギリス 
監督ピーター・コリンソン 主演ジャクリーン・ビセット、クリストファー・プラマー

らせん階段.jpg

うーむ、我ながらもう何本目だ?という位に、またジャクリーン・ビセットを選んでしまった。
今回はクリストファー・プラマーのオスカー受賞記念ということで。
これは1946年のロバート・シオドマク監督作のリメイク版。火事で最愛の夫と娘を目の前で失ったショックで、以来声が出せなくなったビセットは、叔父の家に身を寄せてるんだが、叔父の家の周辺では、この1年で5人が殺害されるという事件が続いていた。
共通するのは、被害者たちは皆、身体になんらかの障害を持ってたということ。ビセットも、口がきけない自分も狙われるんではと怯えていた。

クリストファー・プラマー演じる叔父は心理学の教授だが、もうおわかりのように殺人鬼である。
彼は完全主義者で、「健常者」ではない存在を許さなかったのだ。ひどい話だね。
このストーリーはオリジナルが1946年ということからも、ナチスの思想を思わせる。実際ナチス・ドイツの時代には「健常者」でないと迫害されたというからね。

クリストファー・プラマーは教授というアカデミックな役柄にはぴったりで、弟役でジョン・フィリップ・ローが出てくるが、二人とも瞳が青すぎてゾッとさせるもんがある。
そこに挟まれてビセットの草色の瞳が恐怖に揺らいでるのが、また色っぽくもあり。
ネタ的にちょっとまずいということなのか、今までビデオにもDVDにもなってない。



『ロンドン大捜査線』(1971)イギリス 
監督マイケル・タクナー 主演リチャード・バートン、イアン・マクシェーン

ロンドン大捜査線.jpg

原題『VILLAIN(悪党)』の方が潔くカッコいいと思うのだが、リチャード・バートンの主演作の中でも異色といえる、主人公のニューロティックな人物像が特徴の犯罪ドラマ。
バートン演じる強盗ヴィクは、残忍な手口で金品を奪うサディストなんだが、母親思いで、休日には海辺のレストランで一緒に食事するのを楽しみにするような男。強盗を企てる若い腹心のウルフとはゲイの関係も匂わせてる。同じ時期にイギリスで作られた『狙撃者』に通じるような、一筋縄でいかない雰囲気が漂ってた。
これは昔、深夜のテレビで見た憶えがあるが、細かいストーリーの運びなどは忘れてしまった。

ヴィクを追う警部には『最後の脱出』のナイジェル・ダヴェンポート。
バートンと妖しい関係のウルフを演じるイアン・マクシェーンは当時まだ30手前。『電撃脱走・地獄のターゲット』『オスロ国際空港』など、強い個性を持った主役と絡む準主演の位置づけをこなしてたね、この頃は。谷隼人に似てるなんて言われてた。
この人は今年70になるんだが、ここ数年ハリウッドでラスボス的な起用が目立つ。『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』とか『デス・レース』とか。
70年代の馴染みの顔が頑張ってるのを見るのは嬉しいね。
監督のマイケル・タクナーはこの後に、アリステア・マクリーン原作の『爆走!』を撮ってる。
この映画も『爆走!』も、ビデオ・DVDにはなってない。



『ザ・アマチュア』(1981)アメリカ 
監督チャールズ・ジャロット 主演ジョン・サヴェージ、クリストファー・プラマー

ザ・アマチュア.jpg

これも20世紀フォックス作品なんで、次のリリース予定の中に既に入ってるかも知れないんだが。
レッドフォード主演の『コンドル』と対を成してるというか、類似点のあるスパイ・サスペンスだ。
『コンドル』では主人公はCIAの下部組織で、出版物の文面からテロなどに繋がる暗号を探し出す部署の職員。そのオフィスが襲われ、仲間の職員が皆殺しに遭う。
この映画のジョン・サヴェージ演じるチャールズも、CIAの暗号解読部門の職員だ。

冒頭、ミュンヘンでテロリストによる人質篭城事件が発生。その様子がLIVEで中継されてる。
チャールズは画面を見て愕然とする。ジャーナリストで恋人のセーラが、テロリストに銃を突きつけられてる。
テロリストは「我々の本気を示す」と、セーラの頭を撃ち抜く。
チャールズはCIA上層部にテロリストの処刑を申し入れるが、聞き入れられない。
そこで自らの暗号解読技術で掴んだ、CIAの極秘情報をネタに交渉し、「対テロ」の暗殺技術を身につける訓練を受けさせることを了承させる。

ジョン・サヴェージという「線の細い青年」が似合う役者が、殺しの技術を仕込まれ、テロリストと渡り合うという、そのプロットを題名が表している。
クリストファー・プラマーはここでも、チェコの諜報活動部長の任にある「教授」役だ。
チャールズに訓練をつける大佐を演じるのはエド・ローター。70年代脇役スターの筆頭に上げたい役者だが、ここでは主人公を手助けするのか、敵となるのかという微妙な位置にある人物を渋く演じてる。
ビデオは前に出てた。



『天国への300マイル』(1989)ポーランド・デンマーク・フランス 
監督マーチェイ・ディチェル

天国への300マイル.jpg

この映画を見てる人は少ないかもしれないな。ミニシアターで見てるんだが、それがどこだったか思い出せない。
TYO という名の配給会社も耳馴染みがない。
ビデオは昔ひょっとしたら出てたかも知れないが、DVD化はされてない。

偶然にもこの当時、子供たちの過酷な旅を描いた映画が、相次いでミニシアターで上映されてたのだ。
1988年にはアンゲロプロス監督の『霧の中の風景』、
1990年にはアカデミー外国語映画賞のトルコ映画『ジャーニー・オブ・ホープ』、
1992年にはイタリアの『小さな旅人』と、どれもいい映画なのだが、この『天国への300マイル』も、ポーランドから西側デンマークへ亡命を企てようとする、14才と11才の兄弟の旅を甘さを排して見つめてた。
この兄弟の仲の良くない感じは、ロシア映画『父、帰る』の兄弟を連想させる。
弟が肌身離さず持ってたアコーディオンを、兄に車から捨てられる場面は可哀相だったな。

この兄弟は母国で父親が思想的な問題から、学校の職を解かれ、ならば自分たちが西側で働いて仕送りしようと考えたのだ。だが難民施設に収容された様子がニュースとなり、ポーランドの両親の立場も厳しくなってしまうという筋立て。
この兄弟は希望を求めてデンマークへ渡ったが、そのデンマークで熾烈なイジメにあう少年を描いたのが、スサンネ・ビア監督の2010年作『未来を生きる君たちへ』だ。
子供たちにも安住の地はないのだ。

2012年3月8日

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「午後十時の映画祭」(80年代編)⑦作品コメ [「午後十時の映画祭」]

この映画が観たい「午後十時の映画祭」(80年代編)50本の作品コメントも、、今日が最後となる。
五十音順リストの「マ」行以降を。



『マイ・ライバル』(1982)アメリカ 
監督ロバート・タウン 主演マリエル・ヘミングウェイ、スコット・グレン

マイライバル.jpg

モスクワ五輪を目指す、陸上の「女子5種競技」の、二人の女性アスリートが、レズビアンの関係になってくという、「スポーツの世界と同性愛」を、正面からテーマにした異色作。
『俺たちに明日はない』『チャイナタウン』などの名脚本家ロバート・タウンが満を持しての初監督に、挑戦的な題材を選んだ。

ただその部分だけが突出してるわけではない。日本だと「オリンピック強化選手」の日常なんていうと、禁欲的なイメージがあるが、この映画では選手たちは競技大会が終わると、酒呑んだり、マリファナ吸ったり、セックスも奔放に描かれてる。
そのあけすけな感じが、スキャンダラスな視点でなく、「若いんだからね、体力もある連中だし」と、ごく普通のことのように描写されてるのが面白かった。

マリエル・ヘミングウェイは色気を感じない女優だったんで、レズシーンも期待してなかったが、それよりも、彼女は手足が思ったより長くて、ハードルを越える様子など、カモシカのような足をしてる。こんなにアスリート体形だったとは。
彼女が最初は記録会で揮わず、声をかけて慰めてくれた先輩の女子選手と肉体関係を結ぶんだが、その後、コーチのスコット・グレンとも寝てしまう。マリエルとスコット・グレンが一緒にトイレに入る場面は、ちょっと衝撃的ではある。

ロバート・タウンの演出は、扱う題材のわりにはベタついた感触がなく、競技シーンも躍動する身体の美しさを捉えようとしてる。
ビリー・ジョエルの『ロザリンダの瞳』という、メジャーではない曲を効果的に使ったり、センスを感じる。
先輩アスリートを演じた、陸上選手上がりのパトリス・ドネリーのさばさばした個性もいい。

ビデオは出てたがDVDにはなってない。



『マルホランド・ラン 王者の道』(1981)アメリカ 
監督ノエル・ノセック 主演ハリー・ハムリン、デニス・ホッパー

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これを上映してたのは新宿プラザだったかな。今でこそ日本でも『頭文字D』とか、ドリフト族も普通に認知されてるけど、この映画はその魁と言えるもので、D・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』の、あの丘陵の湾曲した道を、ドリフト走行で競うドライバーたちを描いてるのだ。

過去にそのレースの王者として君臨してたのが、デニス・ホッパーで、彼得意の役作りの例に漏れず、今はすっかりアル中のスピード狂に成り果てている。
彼の駆るマシンが凄いことになってる。コルベットC2なんだが、異様なまでのチューンナップを施し、邪魔なもんはいらんと、リアウィンドーからボンネットまで取っ払ってて、まさに「愛のむきだしコルベット」だ。
主人公を演じるハリー・ハムリンが、そのコルベットに挑戦するわけだが、彼のマシンはポルシェ356スピードスターだ。

だが全編レースという展開ではなくて、主人公の走り屋仲間の作曲家ジョセフ・ボトムズのサブストーリーなどがあり、レースも音楽もと欲張った分、散漫になってるきらいはある。
そのサブストーリーもあってか、当時のヒット・ナンバーが使われたりしてるから、その楽曲版権がネックになって、今までビデオにもDVDにもなってないんだろう。
そもそもこの映画、ポリグラムというレコード会社が製作してるのだ。



『メイトワン 1920』(1987)アメリカ 
監督ジョン・セイルズ 主演クリス・クーパー、デヴィッド・ストラザーン

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ジョン・セイルズは1980年代以降の最も重要な、アメリカの映画作家であるにも係らず、ほとんどDVD化がされてない。理由のひとつには、彼がメジャーな映画会社と契約せず、常にインディペンデントな製作環境で映画を撮り続けてるということがある。映画の版権がそれぞれ別の場所にある、その煩雑さがネックとなってる部分がある。

日本では2003年の『カーサ・エスペランサ 赤ちゃんたちの家』が公開されたのが最後だが、その後も3本作ってる。2010年のものが最新作だ。
入ってこないのは、日本人にとって馴染みにくい題材を扱ってることもあるだろう。歯痒いもんだ。
どっか太っ腹な会社が、まとめて権利を引き取ってBOXで出してほしいもんだが、今の日本にそんな酔狂な会社もないだろう。

この『メイトワン』は1920年のウェスト・ヴァージニアの炭鉱で起きた事件を元にしてる。
クリス・クーパー演じる労働組合のオルグが中心人物になるが、例えばマーティン・リットー監督や、山本薩夫監督が描くような、「社会告発」ものとは、ちょっと趣がちがってた。

もちろんイタリア系や黒人など、当時安い賃金で雇える労働者を「山」に入れてくる会社側と、最低賃金の切り下げに反対を唱える地元白人労働者との対立の構図は、現在の日本に置き換えて見ることも可能な、「社会的視点」は感じるが、山で暮す人々の生活ぶりを細やかに描いていることで、叙情を感じるし、アパラチア山脈の緑や黄色の木々などが、美しいカメラで捉えられていて、メッセージが前に出過ぎない懐の深さがあった。

対立が沸点に近くなり、ついに会社側が実力行使に出た時、それまで静観していた町の保安官が動く。
クリス・クーパーとともに、ジョン・セイルズ映画の常連のデヴィッド・ストラザーンが銃を手に表に出ると、映画は一転して『ヴェラクルス』かと思うような西部劇の世界へ。
見ながら「カッコいい!」と呟いてしまったよ。
黒人労働者のリーダー格をジェームズ・アール・ジョーンズが貫禄で演じてた。

これはパルコPART3で見たはずだ。
昔ビデオにもレーザーディスクにもなってたがDVDにはなってない。
スクリーンで見たいね、もう一度。



『夜の天使』(1986)フランス 
監督ジャン・ピエール・リモザン 主演ジャン・フィリップ・エコフェ

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リモザンの映画は『天使の接吻』もそうなんだが、ストーリーとかほとんど憶えてないのだ。
だけどもう一度見たいと思うのは、とにかく繰り出されるショットがいちいちカッコよかったから。

この映画も主人公は夜は私設の夜警をやってるんだが、昼間は自動車泥棒という、アンビバレンツというのか、行動にほとんど一貫性がない。恋人が別の男になびこうとすると、その男を追っかけて銃で狙ったりとか、基本ろくでなしである。
しかし、ろくでなしが出てくる映画が好きな俺としては、この映画はマイク・リーの『ネイキッド』や、ギャロの『バッファロー'66』などと並ぶ「ろくでなし映画」の殿堂に入れたい位だ。

撮る前からキメキメに狙ったショットを「どうだ!」とドヤ顔で出してくるんじゃなく、ポンポンと軽快につながってく、あるいはブツ切りにされる絵が、結果としてカッコいい。
プールの場面なんか、なんでもないのに、ちょっと鳥肌立つ感じで、不思議だった。
初期のゴダールとか好きな人なら気に入るだろうな。

これはどこで見たのか、パルコPART3だったか、シネマテンだったか。
監督のリモザンも、2002年の『NOVO/ノボ』とかエロくてよかったんだが、その後は入って来ないね。
ジャン・フィリップ・エコフェもこの映画は最高なんだが。
昔ビデオになってたがDVDにはなってない。



『ラスト・カーチェイス』(1980)アメリカ 
監督マーティン・バーク 主演リー・メジャース

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これはどこで見たのかすら憶えてないんだよね。浅草あたりかなあ。都内ではちゃんと公開されなかったんで、チラシもパンフも見たことない。

この映画を見ようという人の動機は二つだろう。
一つはテレビ『600万ドルの男』のリー・メジャースが、同じSFというジャンルの映画に主演してるということ。
もう一つは、監督1作目の『パワー・プレイ』の面白さに、マーティン・バーグの才能を信用して。
俺は両方だったけど。

石油が枯渇し、自動車の運転はおろか、国民の移動の自由まで制限されてる、近未来のアメリカ。
荒涼とした大地を映しとけばいいから、予算がかからない、ありがちなデストピアSFの設定だ。
リー・メジャースは昔はレーサーだった男で、自宅にポルシェ917を分解して、燃料とともに隠し持っていた。国家体制に失望した彼は、偶然出会った、凄腕ハッカーの大学生を助手席に乗せ、アメリカ大陸で唯一の自由自治区となってる、西海岸の「フリー・カリフォルニア」を目指して、ポルシェを走らせた。

「カーチェイス」といっても、他に車は走ってないしね。男の反乱行為に気づいた国家保安委員会は、一機だけ残ってたF-86セイバー戦闘機で後を追うことに。操縦桿を握るのは、元空軍の老パイロットだ。その役を『ロッキー』シリーズのバージェス・メレディスが演ってる。

しかし『世界が燃えつきる日』みたいに大サソリがでてくるわけでも、『マッドマックス』みたいなバイカー軍団が襲撃するわけでもなく、荒涼とした大地を淡々と走ってく、寂寥感すら感じる不思議なSFではあったね。
ビデオもDVDも出てないのはなんでだろ?



『リトル・ダーリング』(1980)アメリカ 
監督ロナルド・F・マックスウェル 主演テイタム・オニール、クリスティ・マクニコル、マット・ディロン

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クリスティ・マクニコルって人気あったねえ、この頃は。健康そうで「部活系」の女の子という、さっぱりしたキャラだったんで、同性からもウケがよかったように記憶してる。

この映画は15才という設定で、煙草をプカプカやってる彼女と、良家のお嬢さんテイタム・オニールが、「サマー・キャンプ」で顔を合わす。女子たちの間でも一際目立った二人だったんで、自然と派閥が分かれる。その成り行き上、クリスティとテイタムと、どっちがこのキャンプの期間内にバージンを捨てるか、という競争になる。

クリスティが男子生徒のマット・ディロンに照準合わせるのはいいとして、テイタムが狙いつけたのは、大人の運動コーチ。
その役を演じてるのがアーマンド・アサンテだからね。今や「マフィアといえばこの男」ってポジションの役者。でもデビュー当初は「アル・パチーノに似た男」という、名誉なんだか失礼なんだかわからんような紹介のされ方してたんだよ。
こっちでいえば角川映画の『彼のオートバイ、彼女の島』の頃の竹内力を見る感じかな。

基本アイドル映画のノリなんで、際どい場面はほとんどない。クリスティ・マクニコルの胸ポチに反応したくらいか。
DVDになってないのは、内容というより、ブロンディなんかの楽曲絡みじゃないか。

この監督とクリスティはこの後も『さよならジョージア』で組んでいて、こっちも実はもう一度見たい。デニス・クエイドと兄妹役のロードムービーなんだが、カントリー歌手役のデニスが歌声を披露してて、それが上手い。たしか歌手としてアルバムも出してたはず。



『ル・バル』(1983)フランス・イタリア・アルジェリア 
監督エットーレ・スコラ

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これを見たのも歌舞伎町の「シネマスクエアとうきゅう」だ。
監督のエットーレ・スコラはイタリア人だが、舞台となるのはパリの一軒のダンスホールだ。なぜパリなのかというと、元々はフランスのテアトル・デュ・カンパニョールという劇団による舞台劇なのだ。その劇団員たちがそのまま、映画でも演じている。

1930年代、大戦前夜から80年代の「現在」に至るまでの現代史を、このダンスホールからカメラを一歩も外に出すことなく描いてる。しかもセリフも一言もなし!
すべては、時代時代に流行った音楽に乗せて、流行の服に身を包んだ男たち、女たちがダンスに興じる様子だとか、店を出入りする人間を眺めるだけで、それがいつの時代かわかる。その着想が素晴らしい。
さすがに古い時代の曲は知らないものも多かったが、グレン・ミラーとか、リトル・リチャードとか、ビートルズに至るまで流れるから、見飽きる聴き飽きるということがない。

字幕がいらないので、どこの国の人間でも楽しむことができるという、画期的な映画。
フランス語のセリフ一つないのに、その年のアカデミー賞「外国語映画賞」の候補に上がってるのも妙な話だった。
ビデオは出てたがDVDは出てない。出すならブルーレイでお願いしたいが。

2012年2月6日

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「午後十時の映画祭」(80年代編)⑥作品コメ [「午後十時の映画祭」]

昨日に引き続き、この映画が観たい「午後十時の映画祭」(80年代編)50本の作品コメントを入れる。
今日は五十音順リストの「ハ」行を。



『バーニング』(1981)アメリカ 
監督トニー・メイラム 原作ハーヴェイ・ワインスタイン

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公開当時のポスターのコピーに「これがウワサのバンボロだ!」って書かれてたけど、誰もウワサしてなかったし、大体映画の中に「バンボロ」なんて名前も出て来ないわけよ。
「ジョギリ・ショック!」っていうのも、この映画のコピーだったか。
ジョギリって何だよ?と。いやあれは『サランドラ』だったかも。
「全米27州で上映禁止!」ってのも嘘くさい。
だけどね、こういう「いかがわしさ」も含めての映画興行の楽しさなんでね。

キャンプ場の管理人の男が、若者たちにイタズラを仕掛けられ、それがもとで全身に大火傷を負う。退院し、変わり果てた風貌となった男は、復讐心に駆られた無差別殺人犯となった。
男の飛び道具が、デカい植木バサミで、そいつで首をシャキンシャキンと切り落としてく。

『13日の金曜日』と同様の「キャンプ・ホラー」だが、ラストはクワを手にした若者と、植木バサミとの一騎打ちとなる、いわば「農業系格闘シーン」が展開され、現在の自然回帰ブームを予見していたと言える。まあそんなことはないが。

注目したいのは、この原案と製作に、今や「ミラマックス社」の創始者として、ハリウッドで最も辣腕と知られるハーヴェイ・ワインスタインが係ってること。彼の映画の世界での、最初の仕事がこの映画だったのだ。
ビデオは出てたがDVDにはなってない。



『ハイ・ロード』(1983)アメリカ 
監督ブライアン・G・ハットン 主演トム・セレック

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ジョン・クリアリーのベストセラー冒険小説『高く危険な道』を映画化。
大体において、冒険小説の映画化は、原作ファンからは叩かれる傾向にあり、この映画も、小説のプロットをいじって簡略化してるのが、お気に召されなかったようだ。

イスタンブールの社交界の華のような、実業家の一人娘が、行方のわからないままの父親を、12日以内に探し出さないと、会社が乗っ取られると告げられ、パイロットと整備士を雇い、二機の複葉機で、父親の消息を辿る旅に出る。
イスタンブールからアフガニスタン、インド、ネパールのヒマラヤ越えを経て、新疆ウィグル地区へ。
複葉機が空を舞う雄姿が、ふんだんにカメラに収められてるし、変化に富んだロケーションと、行く先々で待ち受ける障害をクリアしていく、ロールプレイングな展開で大らかな気分で楽しめる一作。

第1次大戦の撃墜王ながら、呑んだくれのパイロットを演じるトム・セレックは、実はインディ・ジョーンズ役の第1候補に上がってたんだが、テレビシリーズ『私立探偵マグナム』で人気を博してた時期で、そちらのスケジュールを優先して、役を辞退してたのだ。
もし彼が演じてたら、その後のキャリアも違ってただろう。そんな直後に、インディと似たような、この映画のパイロットを演じてるんだから、皮肉なもんだ。

複葉機の優雅な飛行に、ジョン・バリーの流麗な音楽がマッチしてた。これは有楽座で見たはずだ。

ビデオは昔出てたがDVDにはなってない。
アメリカと香港のゴールデンハーベスト・プロと、旧ユーゴのプロダクションまで絡んでるから、権利がどうなってるのか。



『バウンティフルへの旅』(1985)アメリカ 
監督ピーター・マスターソン 主演ジェラルディン・ペイジ、レベッカ・デモーネイ

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『逃亡地帯』や『レッド・ムーン』などの脚本で知られるホートン・フートの原作・脚本による、ほのぼのしみじみな「おばあちゃんのロードムービー」だ。

息子夫婦と折り合いが悪いおばあちゃんが、いつか故郷のバウンティフルに戻るために貯めていた小切手を、息子が当てにしてるのを知り、家出する決意を固める。
後を追ってきた息子たちをかわしながら、何とか汽車に乗り込んだ。隣りの席に座った若い人妻からの優しい気遣いに触れながら、故郷は次第に近づいてきた。
だが息子夫婦は捜索願いを出しており、一人旅のおばあちゃんの姿は、田舎町の保安官にはすぐに目についてしまう。
それでも保安官はおばあちゃんの心情を察して、バウンティフル行きを承諾するのだった。

ジェラルディン・ペイジはこの演技で、アカデミー主演女優賞を受賞。息子たちから隠れる様子とか、茶目っ気もあって、思わずそのひとり旅を応援したくなってしまう。
結末はほろ苦いものではあったが、なにか爽やかな風が抜けてくような小品だった。
悪女を演じることが多いレベッカ・デモーネイが、優しい性格の人妻を演じてたのもよかった。綺麗だったしね。
これを「おじいちゃん」に代えたのが『ストレート・ストーリー』ということになるね。

ビデオは出てたがDVDは出てない。



『パッショネイト 悪の華』(1983)アメリカ 
監督スチュアート・ローゼンバーグ 主演ミッキー・ローク、エリック・ロバーツ

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この邦題の意味不明ぶりにも困ったもんだが、『グリニッジ・ヴィレッジの法王』という原題も、そのままじゃ内容は掴めないしな。

グリニッジ・ヴィレッジのイタリアン・レストランを任されてるのが、ミッキー・ローク演じるチャーリー。従兄弟で、同じ店でウェイターをしてるポーリーを演じるのがエリック・ロバーツ。

そのポーリーが不正伝票をつけてたのが元で、二人はクビになる。郊外に自分のレストランを持とうと頑張ってたチャーリーは落ち込むが、彼を慕うポーリーは儲け話を持ちかける。
競馬でデカく当てる資金を、金庫破りで稼ごうと。地元の組織のボスの金庫の在り処を知ってると。
しかしデカく当てられないかもしれない競馬の掛け金のために、そんなリスクの高い金庫破りをしようという、そのポーリーの思考回路がポンコツだと思うんだが、チャーリーもそれに乗っちまうし。

目が衰えてきて、老後の資金が心配だという、老時計職人を仲間に引き入れ、計画は実行された。だがその場に、組織のボスから賄賂を受け取るために現れた刑事と鉢合わせとなる。

公開当時はアメリカ版『チ・ン・ピ・ラ』などと評されてたが、実際にはこの映画の方が1年前に出来てる。だが日本公開が4年後の1987年だったのだ。高価なイタリアン・ファッションに身を固めた、ミッキー・ロークの男伊達な感じが、そういう連想となったんだろう。
ピカレスク物とすれば、エリック・ロバーツがダメキャラすぎるんだが。
フランク・シナトラの『サマー・ウインド』がいい感じに使われてた。

主演の二人は『エクスペンダブルズ』で久々の再共演を果たす。同じ画面に収まるシーンは無かったが。しかし二人とも風貌がこうも変わったかと。昔の二枚目ぶりを偲ぶ意味で、また見てみたい。
ビデオは出てたがDVDにはなってない。



『800万の死にざま』(1986)アメリカ 
監督ハル・アシュビー 主演ジェフ・ブリッジス、ロザンナ・アークエット

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ジェフ・ブリッジスは1970年代初頭にキャリアをスタートさせ、現在に至るまで第一線の座に居続けている、ハリウッドでも稀有な存在だ。
ディケイドごとに代表作があり、70年代は『サンダーボルト』『ラスト・アメリカン・ヒーロー』、
80年代はこの『800万の死にざま』に『スターマン』『タッカー』、
90年代は『フィッシャー・キング』『フィアレス』『ビッグ・リボウスキ』、
そしてゼロ年代は、合衆国大統領を洒脱に演じた『ザ・コンテンダー』に『クレイジー・ハート』など。
監督業に色気を見せず、役者一筋なのも立派。

この映画はローレンス・ブロックの「私立探偵マット・スカダー」シリーズの一編を、舞台をロスに移して映画化したことで、原作ファンからは不評を買ってるが、俺はお気に入り。
監督ハル・アシュビーの遺作だが、いつもの作風には似つかわしくないほど、血生臭い場面やアクションが織り込まれて、これは脚本のオリヴァー・ストーンの持ち味が前に出てるせいだ。

ジェフ・ブリッジス演じるスカダーと敵対する、成金ギャング・エンジェルを演じるアンディ・ガルシアが強い印象を残す。
スカダーがアイスクリーム片手にエンジェルと威嚇し合う場面や、麻薬の山を目の前に、倉庫でスカダーとエンジェルと、エンジェルの手下が三つ巴で銃を向け合い、怒鳴り合う場面など、見せ方に工夫がある。
タランティーノの『レザボア・ドッグス』のラストはこれの流用だ。

スカダーがアル中のセラピーに通ってるという場面が出てくるが、『クレイジー・ハート』でもそれをなぞってて、思わず笑った。
ビデオにはなってるがDVDにはなってない。
ロスの空撮から、カメラがハイウェイを疾走する一台のパトカーにフォーカスしてく、見事なオープニング映像を、スクリーンでまた見たいね。



『フォー・フレンズ 4つの青春』(1981)アメリカ 
監督アーサー・ペン 主演グレッグ・ワッソン

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アーサー・ペンという名匠が手掛けていながら、「忘れられた青春映画」となってしまってる一作。
俺は封切りの時見てるが、興行は不入りだったし、DVDはおろか、今までビデオにすらなってない。

東欧からの移民の子である主人公と、2人の親友、その3人から愛されたジョージアという名の女の子の、青春時代から、青春を過ぎた時代に至るまでの物語。
無名のキャストを揃えることで、世界のどこにでもある普遍的な青春像に移し変えることができる反面、激動の60年代以降のアメリカを背景にしてることと、主人公たちの人種的背景などもあり、アメリカの国特有のローカルな部分への認識が必要とされるんで、とっつき易いんだか、とっつき難いんだか、微妙なところなんだね。
主人公と娘との結婚に反対する父親が、結婚式場に乗り込んできて、花嫁を射殺するなんてショッキングな場面もあった。

だが全体の流れなど、ほとんど憶えてないなあ。
今このトシになって見直したら、感慨がこもったりするのかもしれない。

女の子の名がジョージアだからと『わが心のジョージア』が流れたりする、ベタな選曲のほかにも、時代のヒットソングが流れてた印象があるんで、ビデオにもならないのは、その権利関係なんだろうね。



『プリンス・オブ・シティ』(1981)アメリカ 
監督シドニー・ルメット 主演トリート・ウィリアムズ

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正義感から窮地に立たされる刑事の姿は、同じシドニー・ルメット監督の『セルピコ』との「姉妹編」の趣があるが、こっちの方が、この監督としては最長尺の168分に渡って、警察組織が抱える腐敗やジレンマがあぶり出されており、その苦味も痛烈だ。
横山秀夫や佐々木譲といった、日本の警察小説の書き手も、きっとこの映画は見てるはずだ。

犯人検挙のために自由な権限が与えられた、ニューヨーク市警の麻薬取締り班。彼らは売人から賄賂を受け取るなど、その羽振りのよさで「街のプリンス」と囁かれる存在だった。
だがリーダーのダニーは、麻薬中毒者たちの悲惨な姿を見るにつけ、任務の不毛さを感じていた。
「街のプリンス」たちに目をつけた地方検事局は、ダニーに接触。過去の汚職を不問とする代わりに、麻薬取締り班の腐敗を立証するための協力を求めてきた。

ダニーは「仲間の名は口にしない」という条件で、その日から、身体に隠しマイクをつけて、汚職の現場に乗り込んでいく。
だが証拠が上がり、検事の追及が始まると、麻薬取締り班の内部はパニックとなる。
追いつめられ自殺する者、マフィアの一員と繋がりを暴かれ、殺害される者、家族ぐるみの付き合いをしてた刑事たちの絆は絶たれる。
ダニーは思いもよらない事態に憔悴し、同僚のガスに、内通者は自分だと打ち明ける。
怒り狂うガス。だが別れ際、
「許してくれるか?」
「恨んじゃいないよ」

映画のラストは、新人研修の教壇に立つダニーの姿が。
だが彼が名乗ると、一人の新人警官が即座に退席する。
トリート・ウィリアムズがなんとも言えない苦笑いを浮かべて、それを見送る表情が目に焼きついてる。
ビデオは出てたがDVDにはなってない。
これを映画館で見た時は、しばらく立てない位にズーンと来たのを憶えてる。



『ベルリンは夜』(1985)イギリス 
監督アンソニー・ペイジ 主演ジャクリーン・ビセット、ユルゲン・プロフノウ

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これは大人向けのいい映画。第2次大戦下のベルリンが舞台で、冒頭、長い裾のスカートで自転車に乗るジャクリーン・ビセットの優雅さに、一気に引き込まれるわけだが、彼女はドイツ人貴族の身分ながら、ナチスドイツには反対の立場を取る、進歩的な女性。
そのニナが偶然出会ったユダヤ系の詩人フリッツと恋におち、ユダヤ人狩りの魔手から、彼を匿い通すというのが大筋。

芯の強いヒロインを演じるジャクリーン・ビセットが、歳を重ねてもなお美しいのだが、ユダヤ系のフリッツを、ドイツ人俳優ユルゲン・プロフノウに演じさせるキャスティングには驚いた。
実はこれが結末に効いてくる。

戦争中、ドイツ軍から匿われ続けて、ベルリンは陥落。降伏したドイツ軍に代わって、ソ連兵たちがベルリンの町になだれ込んでくる。
ドイツ人の男とわかると射殺しかねない。
フリッツはソ連兵に引きずり出される。その顔を見てドイツ人だと銃を向けられ、フリッツは思わずユダヤ教の祈りの言葉を口にする。
するとユダヤ系のソ連兵がそれに気づくのだ。

これはミニシアターで見てるんだが、フリッツがソ連兵に見つかるまでのくだりが思い出せない。
戦闘シーンなどはなく、「いつ見つかっちゃうのか」というハラハラ感で見せてくドラマだった。

ビデオにはなってるがDVDにはなってない。



『炎628』(1985)ソ連 
監督エレム・クリモフ 主演アリョーシャ・クラフチェンコ

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これは歌舞伎町の「シネマスクエアとうきゅう」で見た。
今回のリストに入れはしたものの、これをもう1回見るのも相当しんどいかもなと、今思い直してる。
第2次大戦下、ドイツが進軍してきた白ロシアが舞台。題名の意味は「独ソ戦」によって焼き払われた村の数を示している。

主人公は10才くらいの少年か。レジスタンスに参加しようとするが、幼いと置いて行かれる。だが少年がライフルを手にしてるのをドイツの偵察機が見ていた。
少年が村に戻ると、死体の山が積まれていた。家はすべて焼かれ、生き残った村長から、「村からレジスタンスがでた」のを理由に皆殺しに遭ったと聞かされる。
自分のせいで家族も殺された。
少年は絶望するが、殺された者たちに報いるためにも、残った村人たちのために、食料集めに奔走する。

だがドイツ兵に追われ、逃げ込んだ村には、「特別行動隊」と呼ばれるドイツ軍の一団がやってきた。
スピーカーから、けたたましい音楽を流し、村人を銃で追いたて、納屋に押し込む。
「子供だけ置いて出て来い!」
と命ぜられるまま出てくる大人たち。
子供だけが残された納屋に手榴弾を投げ入れるドイツ兵。酒を飲みながら眺める者、声援を送る者。
さらに火炎放射器を納屋へ浴びせる。
外に出たまま泣き崩れるしかない若い女は、ドイツ兵たちにその場で輪姦される。寝たきりの老婆は、ベッドのまま、道端に捨て置かれる。
あまりの光景に、まだ幼いはずの少年の顔は、老人のようにシワが刻まれた。

憎しみすら欠如した殺戮の場面が、これでもかと描かれて、神経が麻痺してくるようだ。
だが一方で、少年が年上の少女と出会い、森に逃げ込む場面などは、雨がしたたる森の光景など、実に美しく撮れており、その落差が凄い。

少年がヒトラーの肖像写真に向けて、何発も銃弾を打ち込むラストの見せ方も、痛烈な皮肉がこもってる。
DVDは出てたが廃版状態。かなり高値がついてるね

2012年2月5日

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「午後十時の映画祭」(80年代編)⑤作品コメ [「午後十時の映画祭」]

昨日に引き続き、この映画が観たい「午後十時の映画祭」(80年代編)50本の作品コメントを入れる。
今日は五十音順の「ス」と「タ」行を。



『忍冬の花のように』(1980)アメリカ 
監督ジェリー・シャッツバーグ 主演ウィリー・ネルソン、ダイアン・キャノン

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カントリー・ミュージックというのは、どうも日本では受けない音楽ジャンルで、『クレイジー・ハート』も、ジェフ・ブリッジスがアカデミー賞を受賞したから、ちょっとは話題になったが、ロバート・デュバルがカントリー歌手を演じて、やはりアカデミー主演男優賞を得た『テンダー・マーシーズ』は劇場未公開・ビデオスルー扱いだった。

そんな中で劇場公開に漕ぎつけたこの映画は、カントリー界の大御所ウィリー・ネルソンが、自身を投影するような主人公を演じたドラマ。といっても、この主人公はアメリカの穀倉地帯の酒場などを回る「ツアー歌手」で、まだレコードデビューは果たしてないという設定だ。
その設定上、映画はロードムービーの体裁で進んでいく。監督はやはりロードムービーの傑作『スケアクロウ』のジェリー・シャッツバーグ。

撮影はロビー・ミュラーだ。ロードムービーでロビー・ミュラーといえば『パリ、テキサス』を即座に連想するだろうが、ドイツ時代のヴェンダース作品の撮影を担当してたミュラーが、アメリカに渡っての最初の仕事が、この映画だった。

『オン・ザ・ロード・アゲイン』をはじめとする、ウィリー・ネルソンの楽曲の数々が聴きものではあるが、同時にカメラの美しさが大きな魅力となってる。
封切りの時に映画館で見てるが、見事に客は入ってなかったな。
音も絵もシネコンでもう一度味わえたらいいのだが。

ビデオは出てたがDVDは出てない。楽曲絡みだろう。



『スタントマン』(1980)アメリカ 
監督リチャード・ラッシュ 主演ピーター・オトゥール、スティーヴ・レイルスバック

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作ってるのは商業映画なのに寡作という「もっと仕事しろよ」な監督リチャード・ラッシュによる、ちょっと不条理テイストなアクション・コメディ。

殺人未遂の容疑で警察に追われてる若い男。手錠をかけられたまま、必死で逃げる様子を、上空のヘリが捉えていた。だがそれは警察のヘリではなかった。
若い男は逃げてる内に、映画の撮影現場に紛れ込んでしまっていた。ヘリから若い男を眺めていたのは、その映画の監督だった。
逃げっぷりの俊敏さを気に入った監督は、若い男を匿ってやる代わりに、撮影でスタントマンとして働かせることに。
だが監督は映画撮影に一切の妥協を排する、鬼のような性格で、任されるスタントも次第に過激さを増し、若い男はこの監督に殺されるかも知れないと、精神的に追いつめられていく。

いわゆる「映画の映画」というジャンルに属する一作だが、現実世界より、映画の撮影現場の方がもっと過酷だったという皮肉が面白い。

悪魔の映画監督を演じるピーター・オトゥールは、その年の全米批評家協会の最優秀主演男優賞を受賞し、アカデミー賞でも6度目の候補になったが、またも受賞は逃した。
彼が演じてる映画監督の名前がイーライ・クロスといって、あの『ホステル』の監督と一文字ちがいなのが可笑しい。

これを見たのはスバル座あたりだったか。
ビデオは昔一度出てたと思うが定かではない。DVDは出てない。



『タイムズ・スクエア』(1980)アメリカ 
監督アラン・モイル 主演トリニ・アルヴァラード、ティム・カリー

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ロック歌手を夢見る少女と、お譲さんタイプの少女が、収容された精神療養施設を二人して抜け出し、大都会ニューヨークを巡る冒険の旅へ。
互いがはぐれてしまった時には、名前を叫び合えば、どこにいてもきっと通じるなんてセリフは「少女漫画」チックなんだが、まさにこの映画の設定って、矢沢あいの『NANA』の元ネタっぽいよね。

彼女たちのちょっと危なっかしい冒険を、陰からサポートするラジオ番組のDJにティム・カリー。
『ロッキー・ホラー・ショー』とか『レジェンド』とか、奇抜な役ばかりの怪優にとって、この役は素の顔で演じてる、普通にいい役だ。

アメリカの少女たちの青春ストーリーでありながら、劇中を彩るナンバーは、ロキシー・ミュージック、ザ・キュアー、XTC、プリテンダーズなど、ブリティッシュ・ニューウェーブのブームを背景にした選曲になってた。
ロック少女ロビン・ジョンソンと、お嬢さんトリニ・アルバラードの個性のちがいを眺める楽しさも。

過去に一度DVDになってたかも知れないが、今は廃版と思う。



『チェンジリング』(1980)カナダ 
監督ピーター・メダック 主演ジョージ・C・スコット、メルヴィン・ダグラス

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イーストウッド監督&アンジェリーナ・ジョリーによる同名映画の方が有名になってしまったが、こちらも心霊ホラーとして優れた出来栄えなのだ。
ジョリーの映画では、失踪した息子を別人の子供を、警察から「息子だ」と押し付けられる母親の話だったが、こちらの『チェンジリング』も同じ意味で、過去に病弱のため、遺産狙いの父親により殺害され、孤児院から貰われてきた子供に、実の子に成り代わられた子供の霊が、その存在を示そうと怪奇現象を起こす。

妻と子を自動車事故で亡くし、傷心の作曲家が、歴史保存協会に勤める女性から、閑静なビクトリア調の屋敷を、新居にと紹介される。悲しみを忘れ、音楽に専念できそうな雰囲気を気に入るが、ほどなく家の中で、妙な現象が相次ぐようになる。
霊媒師を頼み、降霊術を行うと、その家には子供の霊が憑いてることがわかる。
作曲家は、この古い屋敷の過去を調べていく内、元々の所有者だった一族にその原因があることを突き止める。そして屋敷の床板を外すと、その下には井戸が掘られていた。

うん?何かに似てるよね。そう『リング』貞子だね。
父親によって殺されて井戸に捨てられた幼い子供の霊なので、貞子みたいに這い出てくるわけじゃないが。

それに怪奇現象に見舞われるのがジョージ・C・スコットなので、全然ビビッてない。それどころか、子供の霊があんまり騒ぐと、叱りつけたりしてる。
なので心霊ホラーとしての怖さはさほどではない。それより、娘を亡くした作曲家と、父親に殺された子供の霊の、無念さや悲しみがリンクするストーリーに深みがあるのが、凡百のホラーにはない部分だ。
昔ビデオは出てたがDVDにはなってない。



『チャンピオンズ』(1984)イギリス
監督ジョン・アーヴィン 主演ジョン・ハート、エドワード・ウッドワード

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騎手と競争馬の実話というと『シービスケット』を思い起こさせるが、こちらの方は「事実は小説より奇なり」と言いたくなるほどの実話なのだ。

なにしろこの映画の主人公である、障害レースの花形騎手ボブ・チャンピオンは、名馬と謳われるアルダニティに騎乗して、世界最高の障害レース「グランド・ナショナル」を制することを目標としながら、突然のガン宣告で、余命8ヶ月と診断されてしまう。
回復の見込みを化学療法に賭け、その副作用で頭髪は抜け落ち、別人のような人相に。
そして追い討ちをかけるように、アルダニティがレース中に、前足を骨折、廃馬となる危機に。

だが未来の無くなったかに見えた騎手と競争馬は、共に復活を遂げる。ボブはアルダニティに騎乗し、「グランド・ナショナル」のトラックを目指して走り始める。

騎手を演じるのがジョン・ハートなんで、化学療法の副作用が表情に表れてくるあたりは、普段からあのルックスなのに、それに輪をかけて痛々しく、見てる方が気分が落ち込むんだが、
そのボブが担当の女医から
「ガンは完治しました」
と告げられる場面は、映画館の客席からどよめきの声が上がってたのを憶えてる。
それは「良かったわねえ!」という、実感のこもったどよめきだった。

ビデオは出てるがDVDにはなってない。
馬が疾走する映画はスクリーンで見たいね。



『天使の接吻』(1988)フランス 
監督ジャン・ピエール・リモザン 主演ジュリー・デルピー

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この映画に関してはあまり書くこともなくて、要は『汚れた血』で目を奪われたジュリー・デルピーが主演してるということと、前作『夜の天使』が俺的には最高だったリモザン監督の新作なんで、封切りに駆けつけた。
内容はほとんど憶えてない。ジュリー・デルピーを眺めてる内に映画が終わってしまったからだ。
それより憶えてるのは、この映画はフランス映画『変身する女』と2本立ての興行だった。

場所は自由が丘武蔵野推理劇場で、その頃は名画座から、ミニシアターへと、プログラム編成を変えていた。劇場名も変えてたかも。
平日の夜、先に『変身する女』を見に場内に入ると、客は俺だけだった。間際になっても誰も入って来ない。
冬場だったが、俺は受付のスタッフに
「勿体ないから暖房切ってもいいですよ」
と言いに行った位だ。
『天使の接吻』の時にはポロポロと客も入ってきた。

まあとにかく俺はこの映画のジュリー・デルピーが一番可愛いと思ってるんで、もう一度見たいのだ。
ビデオはどっから出てたかな?パックインあたりか。DVDは出てない。



『遠い声、静かな暮らし』(1988)イギリス 
監督テレンス・ディヴィス 主演ピート・ポスルスウェイト

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1950年代のリヴァプールの、ある五人家族の肖像を描いた映画なんだが、ユニークなのは、登場人物たちが、当時やなつかしの流行歌なんかを、アカペラで唄い継いでいく構成になっていて、その歌詞に時々の家族の心情が反映されてたりする。
『ボタンとリボン』とか『バイバイ、ブラックバード』とか数曲は知ってるが、ほとんどは耳なじみのない歌ばかりだ。
だけどその家の三人姉妹が唄うのを聴いてると、なにか不思議な幸福感に包まれる感じがした。

全編を歌で綴るといっても、ミュージカルのような明朗さはない。
ピート・ポスルスウェイト演じる父親は、すぐに癇癪を起こして母親に暴力を振るうような男なんで、家族の風景そのものは、ほの暗い印象なのだ。
しかし、なんだろう、彼らの唄う様子をずっと眺めていたいと思った、あの感情は。

人生にはいい思い出も、悪い思い出もあるが、自分が幼い頃から口ずさんできた歌に、
「悪い歌」はない。
家族の営みと「歌」がこれほど寄り添うように描かれた映画もないんじゃないか?

これは今は無き六本木の「シネヴィヴァン」で見た。
パンフレットがよく出来ていて、劇中で家族によって唄われる、すべての曲名と解説がついていた。
服飾デザイナーの菊池武夫が、登場人物たちのドレスやスーツを、自らスケッチして、解説してたり、シナリオの採録もあった。資料価値が高い。

これも昔ビデオになったきり、DVDにはなってない。



『ドラキュリアン』(1987)アメリカ 
監督フレッド・デッカー 主演スティーヴン・マクト、トム・ムーナン

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こんな「ドラキュラ」と「バタリアン」合わせただけのテキトーな邦題つけるもんだから、今じゃほとんど顧みられなくなってるし、ウェス・クレーヴンの『ドラキュリア』と混同されてるしで、ロクなことないんだが、はっきりこれは『ドラキュリア』より面白い!
今だったら原題の『モンスター・スクワッド』で公開できてただろうね。

内容は簡単に言うと『怪物くん』と『グーニーズ』をミックスしたようなもの。
ドラキュラ伯爵が、フランケン、ミイラ男、狼男などモンスターを引き連れて人間界にやってきた。自らの力を封じる「石」を人間から奪い取るためだ。郊外の町の少年たちが、その存在に気づき「モンスター討伐隊」を組織して、それぞれの弱点を調べ上げ、戦いに臨む。

「お子さま向け」かも知れないが、製作総指揮にはピーター・ハイアムズや、後に『ワイルド・スピード』で当てるロブ・コーエンが名を連ね、『ラスト・アクション・ヒーロー』などのシェーン・ブラックが脚本を書いてる。

フランケンがやっぱりいいヤツで、ドラキュラから少年たちの味方についたりしてる。少年の小さな妹と、フランケンの別れの場面などは、思わずホロリとさせられてしまうから侮れない。

監督のフレッド・デッカーは『クリープス』『ドラキュリアン』とSF・ホラーファンを喜ばせ、ビッグになるはずだった『ロボコップ3』でヘタこいて、その後は映画を撮れないでいる気の毒な男だ。

昔ビデオは出てたがDVDにはなってない。
本国アメリカでは「製作20周年記念版」のDVDが出るくらいに根強いファンがいるのにね。



『トラブル・イン・マインド』(1986)アメリカ 
監督アラン・ルドルフ 主演クリス・クリストファーソン、キース・キャラダイン

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この映画の魅力を人に伝えるのは難しいんだよね。シアトルを架空の町「レインシティ」に見立てた、ハードボイルドであり、三角関係のドラマでもあり。

クリス・クリストファーソンの出で立ちなどは「ハードボイルド」を記号化したらこうなるというような、完璧に隙のない渋さなんだが、あまりにキマッてるんで、それが80年代特有の「すかした」感じ手前のギリギリで踏み止まってると言おうか。
キース・キャラダインは最初は、妻子を養うため、レインシティに職を探すが、すぐに悪の道にすくわれて行き、次第にルックスもおかしなことになってくる。
もう髪型なんか、リーゼントなのかクロワッサンなのかわからん状態に。

『ピンク・フラミンゴ』の怪優ディヴァインが、女装ではなく、素の表情でギャングのボスを演じてたり、舞台装置も含めてデフォルメされた世界の中で、アラン・ルドルフ監督ならではの「愛を掴み切れないでいる者たち」のドラマが展開されるのだ。

栗田豊通のカメラが美しいんだが、俺がこの映画で一番目を惹かれたのはロリ・シンガーだ。『フットルース』でケヴィン・ベーコンの相手役として出てた彼女は「なんか肩幅の広い女だな」程度にしか思わなかったが、この映画で小さな赤ん坊を抱えた若妻の彼女は、それは美しい!
ルドルフ監督は女優の魅力を引き出すことにかけては、師匠のロバート・アルトマンを凌ぐ才を持ってると思うが、それにしてもという感じで、彼女に魅入ってしまった。

マリアンヌ・フェイスフルのけだるいヴォーカルもマッチして、こんな雰囲気の映画は滅多にない。

ビデオは出てたがDVDにはなってない。
この映像をもう一度スクリーンで見たい。

2012年2月4日

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「午後十時の映画祭」(80年代編)④作品コメ [「午後十時の映画祭」]

昨日に引き続き、この映画が観たい「午後十時の映画祭」(80年代編)50本の作品コメントを入れる。
今日は五十音順リストの「サ」と「シ」を。



『ザ・キープ』(1984)アメリカ 
監督マイケル・マン 主演スコット・グレン、ユルゲン・プロフノウ

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ある意味マイケル・マン監督唯一の「トンデモ映画」なわけだが、何とも捨てがたい魅力がある。
そしてこの映画は劇場の大スクリーンで見なければ、堪能できたとは言えない、そういう映像へのこだわりに満ちている。特に前半がいい。

第2次大戦中、ドイツ軍の小隊が、ルーマニア山中に進軍する。険しく幽玄のムードが漂う山肌が、湖面に鏡のように反映してる、この監督が好きなシンメトリーの構図のショットが美しい。
東山魁夷の絵画のようだ。
山中の村に着いた小隊は、そこで無数の石で築かれた巨大な城塞を発見する。
ユルゲン・プロフノウ演じるドイツ軍大尉はつぶやく。
「この城塞は作りが逆だ。外敵を防ぐためでなく、なにかを内側に封じこめようとしてるようだ」と。

城塞の内部はさらに石の壁でシールドされてるが、兵隊のひとりが、壁に穴を開けてしまう。
壁の向こうには、おっそろしく深く巨大な空間が広がっていて、その底から何かが、壁に開いた穴から漏れる光を目指して上昇する。
この場面の空間造形などは、スクリーンで見てこそ凄さがわかる。

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F・ポール・ウィルソン原作による新手の「吸血鬼伝説」の映画化なんだが、ディテールが端折られてる感は否めず、後半の尻すぼみぶりは残念だ。
以前から噂に上ってる「ロングバージョン」でのリバイバル上映なんてのが実現できたらいいのに。
タンジェリン・ドリームの音楽も大音量で聴きたいね。

イアン・マッケランやガブリエル・バーンを起用してる、キャスティングの先見性にも注目。
ビデオが出たのみでDVDは出てない。



『ザ・クラッカー 真夜中のアウトロー』(1981)アメリカ 
監督マイケル・マン 主演ジェームズ・カーン、チューズディ・ウェルド

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これは最初に映画館で予告編を見た時に「なんだこのカッコよさは!」と興奮して、「テアトル東京」の封切りに駆けつけたのだ。
昼は中古車の販売業、夜は金庫破りという、二つの稼業を持つ男を演じるジェームズ・カーンが渋い。これが代表作でいいんじゃないか?

まず目を引いたのが、工事現場か、と思うような金庫破りの場面。デカいドリルを持ち込んで、扉に穴を開けてく。「音は大丈夫なんか?」と思うが、相棒のジェームズ・ベルーシと、無駄のない動きで黙々と進めてく。
タンジェリン・ドリームの無機的だが煽るようなシンセの旋律が、ドリルから放たれる火花に呼応して、とにかくスリリングだった。

もう一点強い印象を残したのは、ジェームズ・カーンの銃の構え方だ。それまで映画で見たことないような構え。
両手で銃を持ち、肘を伸ばして、肩を上下左右にすばやく動かして状況を図る。カーンの顔つきと共に、緊迫感漲ってた。
軍隊なのか警察なのか、マイケル・マン監督が実際にリサーチしての構え方なのだろう。
カーンに金庫破りの極意を授けた、今は刑務所の中にいる「師匠」を演じてるのが、ウィリー・ネルソンというキャスティングが意表を突いてた。出番は少ないが貫禄を感じさせるいい演技だった。

この監督は、結末の見せ方に今ひとつインパクトが足りないという弱点を持ってて、この劇場映画デビュー作から、その例に漏れずなんだが。

ビデオは出てるがDVDにはなってない。
間違いなくツタヤのオンデマンドにラインナップされるとは思うが。



『砂漠のライオン』(1981)リビア 
監督ムスタファ・アッカド 主演アンソニー・クイン、オリヴァー・リード

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カダフィ大佐が金を出したんだろうか?潤沢なオイルマネーによって作られた歴史戦争大作だ。
第2次大戦下の北アフリカ。イタリアの独裁者ムッソリーニは、サハラ砂漠に「第二のローマ帝国」を建設するという、破天荒な野望のもと、イタリア軍を進軍させていた。その前に立ちはだかったのが、ベドウィンの戦士だった。

その勇猛さで「砂漠のライオン」と呼ばれたオマー・ムクターの伝記の映画化。
シリア生まれの監督ムスタファ・アッカドは1976年の『ザ・メッセージ』がデビュー作で、当時都内唯一のシネラマ上映館だった「テアトル東京」で上映された。
ムハンマドの教えを描いた歴史宗教大作の趣だったが、この2作目は、戦争映画として娯楽性も高くなってた。こちらは「渋谷パンテオン」で見たと思う。

アンソニー・クィンはこの監督の前作に続いての主役登板。
ムッソリーニを演じるのはロッド・スタイガー。彼は1974年の『ブラック・シャツ/独裁者ムッソリーニを狙え!』でもムッソリーニを演じてる。この映画はビデオ・スルーでリリースされてた。
ベドウィンを抑えるために、イタリア軍を率いる将軍にオリヴァー・リード。彼のアクの強さが役柄にいい具合に反映されてた。

以前DVDになってたが、現在は廃版。
カダフィ大佐のリビア軍が全面協力した大がかりな戦闘シーンを、またスクリーンで見てみたいが。



『サンフランシスコ物語』(1980)アメリカ 
監督リチャード・ドナー 主演ジョン・サヴェージ、デヴィッド・モース

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主人公ジョン・サヴェージが高層のオフィスビルに入っていく。社員なのかと思いきや、空いてる部屋の窓を開け、いきなり飛び降り自殺を図るという、衝撃的なオープニング。
駆けつけた救急隊員の中に、リチャード・ドナー監督がカメオ出演してる。

その青年ローリーは、一命は取り留めたものの、歩行困難な身体となり、途方に暮れるまま、立ち寄ったバーには、同じように身体の不自由な客たちが集っていた。
その中にやはり足が悪いがバスケが得意な、長身の青年ジェリーがいた。バーに通いつめる内に心の傷も癒えてきたローリーは、ジェリーの能力ならプロのバスケでも通用すると確信。手術を受ければジェリーの足は良くなると聞き、手術代の工面が、自らの生きる張り合いになってゆく。

リチャード・ドナー監督は娯楽大作の担い手のイメージがついてるが、元々は『君は銃口/俺は引金』や『おませなツインキー』など、小味な映画に上手さを見せる人だ。

ジェリーを演じるのはこれがデビュー作のデヴィッド・モース。俺はこの時の役柄が、そのままイメージに残ってるんで、近年では名バイプレーヤーとして、悪役も演ったりするが
「でもホントはいい人だよね?」
と思いながら見てしまうのだ。

あと出演者の中に、第2次大戦中に両腕を失ったハロルド・ラッセルがいる。彼がこの映画以外に唯一出たのが、1946年の、復員軍人たちのドラマ『我等の生涯の最良の年』だ。

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そのことからも、この映画が、あのアカデミー作品賞受賞作へのオマージュとなっているのがわかる。

この邦題だが、ありきたりな上に正確ではない。舞台はサンフランシスコから少し内陸側の、あのアスレチックスの本拠地オークランドだもの。
今までビデオもDVDも出てないのは、劇中に当時のAOR系の楽曲がけっこうな数使われてるからか?



『シカゴ・コネクション 夢みて走れ』(1986)アメリカ 
監督ピーター・ハイアムズ 主演ビリー・クリスタル、グレゴリー・ハインズ

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テレビ『サタデーナイト・ライブ』で人気を博したコメディアン、ビリー・クリスタルの映画初主演作。『タップ』のグレゴリー・ハインズが相棒を演じる「バディ・ムービー」の快作。
暖かいマイアミで店を持つことを夢見るシカゴ市警殺人課の刑事コンビが、退職前のひと仕事に、地元の麻薬組織のボスの逮捕を目指し、奮闘する。

ピーター・ハイアムズとしては、監督デビュー作『破壊!』以来の「バディ・ムービー」となるが、どちらの映画の刑事たちも、風采が上がらない感じなのが可笑しい。
映画初主演とは思えない軽妙洒脱な演技を見せるビリー・クリスタルと、シカゴ地下鉄の有名な高架線上を、車が爆走するという、ハイアムズ面目躍如なアクションが、がっちり組み合わさって、最後まで楽しませてくれる。

ただビリー演じる刑事の別れた美人の奥さんが、麻薬組織に誘拐されるという展開は頂けない。
アメリカ映画の刑事ものの悪いパターンというのが、刑事の身内に危機が及ぶというヤツね。
実際、悪人を検挙するたんびに身内が狙われてちゃ、刑事なんてやってられんだろうし、現実にはそんなことはほとんどない。
警察という組織は身内を狙うような犯罪者は、それこそ血眼で追いつめてくからだ。
まあその減点分を差し引いても、もう一度見たい映画には変わりない。

ビデオは出てたがDVDにはなってない。



『死にゆく者への祈り』(1987)イギリス 
監督マイク・ホッジス 主演ミッキー・ローク、アラン・ベイツ

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いや、わかってますよ、この映画がジャック・ヒギンズの原作ファンからはすこぶる評判が悪いことは。
ヒギンズ原作の映画化では『鷲は舞いおりた』の方がなんぼかマシという意見が大勢であろうことも。
しかしね、俺はマイク・ホッジスの映画が好みだし、80年代のミッキー・ロークも好きなんでね、これで満足なり。
ただ製作会社のサミュエル・ゴールドウィン・プロによって、当初の尺から大幅に切られたようで、公開当時、監督とミッキー・ロークが抗議のコメントを出していたりして、描き足りてない部分は確かに感じる。
完全版が存在するものなら、是非見てみたい。

IRAの凄腕のテロリスト、マーチン・ファロンは、手違いでスクールバスを爆破、罪の意識に苛まれ、組織を抜け、国外逃亡を図る。
偽造パスポートと引き換えに、ギャングのボスから殺しを依頼され、実行するが、その現場を神父に目撃される。
ファロンは懺悔の内容を神父が公にできないことを逆手に取り、教会で殺人を懺悔する。
だが今やファロンは警察からもIRAからも追われる身となっていた。

イタリア系のミッキー・ロークは、髪を赤く染め、アイリッシュ訛りで話し、役に近づける努力はしている。
脇を固める役者たちがいい。表向きは葬儀屋を営むギャングのボスにアラン・ベイツ。
昔は荒くれだったという神父を演じるボブ・ホスキンスは名演だろう。

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出番は少ないが、ファロンの親友だが、IRAの闘士として、ファロンに銃を向けることになるリーアム・ニーソンも強い印象を残す。彼は当時まだ無名だったが、もう数年遅ければ、アイリッシュのリーアム・ニーソンが、マーチン・ファロン役を演じてたかも知れない。

ビデオは出てるがDVD化はされてない。



『ジャグラー ニューヨーク25時』(1980)アメリカ 
監督ロバート・バトラー 主演ジェームズ・ブローリン、クリフ・ゴーマン

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『サンフランシスコ物語』の題名と同様、この映画の邦題も誤解を招く。
「25時」というのは、午前1時という意味じゃなく、突然人違いで娘を誘拐された元警官が、必死で犯人を追って、娘を救出するまでの「25時間」の物語という意味なのだ。
なのでこの設定からも連想されるように、これはリーアム・ニーソン主演の『96時間』の元ネタと言ってもいいサスペンス・アクションの快作だ。

ブロンクス地区からセントラル・パークまで、ゲリラ撮影も織り込みながら、ニューヨークを縦横に駆け抜ける、その「しゃにむ」な熱気がこもった演出ぶりに乗せられる。
『カプリコン1』でスターの座についたジェームズ・ブローリン以外は、名の知れてないキャストだが、主人公が警官時代に恨みを買った巡査部長が、誘拐犯でなく、それを追う主人公に銃を向ける展開も凄い。
巡査部長を演じるのが、これが映画デビューのダン・ヘダヤ。
街中でいきなりショットガン撃ちまくって、通行人が逃げまどう場面などは
「第2のブルース・ダーン来たあー!」
と喜んでしまったが。

エロい場所にもカメラが入っていくんで、当時のニューヨークの風俗も伺い知れる。
昔マイナー・メーカーからビデオが出てたがDVD化はされてない。



『シルクウッド』(1983)アメリカ 
監督マイク・ニコルズ 主演メリル・ストリープ、カート・ラッセル

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メリル・ストリープで言えば『ソフィーの選択』もまだDVD化されてないんだが、時節がらと言っちゃなんだが、「原発」を扱った題材のこの映画を今、見れるような環境が作られてるべきじゃないか。
それに同じ題材として『チャイナ・シンドローム』ばかりが取り上げられる傾向があるしね。

オクラホマにあるプルトニウム製造工場で働いていた工員カレン・シルクウッドの実話の映画化。
工場の放射能漏れ事故により、放射能汚染にさらされたカレンが、プルトニウム製造過程での重大な違反を探り当て、告発に動いた矢先に、自動車追突事故で死亡する。
それが事故か謀殺かと、当時アメリカ国内を騒然とさせたのだ。

カレンはバイセクシャルで、男と女、両方の恋人と三人で同棲していた。
男の恋人をカート・ラッセルが、女の恋人をシェールが演じてる。

「社会告発もの」ではあるが、マイク・ニコルズ監督は、その生活ぶりも細かく描写してる。
後にラブコメの名手と謳われるようになるノーラ・エフロンが、こんな硬派な脚本を書いてたんだね。
ブルーカラーを演じるメリルというのも珍しいし、彼女の狼ヘアーな髪型も俺は好き。

ビデオは出てたが、DVDにはなってない。

2012年2月3日

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「午後十時の映画祭」(80年代編)③作品コメ [「午後十時の映画祭」]

昨日に引き続き、この映画が観たい「午後十時の映画祭」(80年代編)50本の作品コメント。
今日は五十音順リストの「カ」行を。



『仮面の中のアリア』(1988)ベルギー 
監督ジェラール・コルビオ 主演ホセ・ファン・ダム、フィリップ・ヴォルテール

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かつてその美声で聴衆を酔わせた名バリトン歌手が、突如引退を表明。後進を育てる「音楽教師」の道を選ぶ。彼には愛弟子の若い女性歌手がいたが、町で偶然耳にした美声の持ち主である青年を弟子にとることに。
二人の若い歌手は師のもとで技量を磨いていき、師がバリトン歌手だった時代のライバルだった公爵が主催する、アリアのコンテストに出場することに。
だが師と公爵にはある因縁があり、公爵はコンテストを復讐の場に考えていた。

とりすました「オペラ映画」なんかではなく、クライマックスの「歌合戦」の熱血な盛り上がり方なんかは、一昨年の『オーケストラ!』に近いもんがある。
通俗的なストーリー展開のとっつき易さがあるんで、劇中に歌われる名曲の数々も、俺みたいなクラシック音痴な人間でも、素直に「いい曲だなあ」と聴き惚れてられるのだ。

音楽教師を演じるホセ・ファン・ダムは実際に高名なオペラ歌手だそうで、劇中でその歌声も披露してるが、愛弟子を演じる若い男女の俳優は、オペラ歌手ではなく、歌う場面は吹替えだという。でも別にそれはいい。
女性歌手を演じるアンヌ・ルーセルが歌い上げる表情とか美しいし、見てるこっちも気持ちが昂ぶる。

DVDは以前パイオニアLDCから出てたが、廃版となってる。
これは音響のいいシネコンでかけてほしい。



『カリフォルニア・ドールズ』(1981)アメリカ 
監督ロバート・アルドリッチ 主演ピーター・フォーク、ローレン・ランドン

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女子プロレスに材を取った、巨匠アルドリッチの遺作。
ローラーゲームを描いた『カンサスシティの爆弾娘』とも通じるが、まだ格闘系の女子スポーツが
「見世物」と捉えられてた時代が背景にある。なので尚更
「どう見られてようが、アタシは体張ってやってるんだよ!」
という女たちの意地が際立つ。
マネージャーの中年男と、一台のボロ車で、全米各地を遠征する女子プロレスラーのタッグが、ギャラがいいからと「泥レス」のリングに上げられ、その屈辱に悔し泣きする場面などは、
「見世物とは呼ばせない」という本気をリングにぶつけてきた彼女たちの、ギリギリのプライドに「泥」を塗られた無念さが痛いほど伝わってきた。

ロードムービーの魅力でもある、ひなびたアメリカの風景も堪能できるし、マネージャー役のピーター・フォークが実にいい味。二人の若い女と旅をしながら、一線を越えるなんてことがないのもいい。

『探偵マイク・ハマー/俺が掟だ!』でハマーの頼もしい秘書を演じてたローレン・ランドンと、ヴィッキー・フレデリックの女子タッグも、スタントなしでリングで暴れていて、まさに体張った熱演。だから最後の試合シーンもテンション上がる。
この二人の女優、その後やはりというか、それぞれ「アマゾネス」ものに主演してたりする。

昔ビデオは出てたが、DVDは出てない。
MGMなんで、そう遠くない時期にツタヤのオンデマンドにラインナップされると予言しとこう。



『キャル』(1984)イギリス 
監督パット・オコナー 主演ヘレン・ミレン、ジョン・リンチ

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『父の祈りを』『ボクサー』『ナッシング・パーソナル』『ブラッディ・サンデー』そして『麦の穂をゆらす風』など、北アイルランド紛争を背景にした映画には力作が多いが、この映画はその中でも、それこそ視点がパーソナルだし、いろんな意味で地味だし、よく劇場公開が実現したなと思う。
日本公開は製作年度から5年後の、1989年になってだったが。

この映画のことは、音楽をマーク・ノップラーが前年の『ローカル・ヒーロー』に続いて担当してるということで注目してた。なので先にサントラを聴いてて、公開は望めないかもなと思ってたのだ。

プロテスタントが多くを占めるアイルランドの小さな村で、その鬱屈をIRAでの活動で晴らすような日々を送るカソリックの青年キャルが、図書館で働く未亡人のマルチェラと出会い、惹かれていく。
キャルは殺人も厭わないIRAの破壊活動に次第に嫌気がさしていたが、彼が係った殺害行為の標的が、マルチェラの亡き夫だったことがわかり苦悩する。

キャルを演じるジョン・リンチはこれがデビュー作で当時23才。未亡人演じるヘレン・ミレンは当時39才。「年の差ラブストーリー」の側面もある。
アイルランドの風景というのは、アメリカとは違い、なにか荒涼とした中にも「なつかしさ」を感じるような所があって、見てて飽きないのだ。

一度ビデオになってるが、かなりレア。たしか「紙箱」だったと思う。DVDにもなってない。



『ギャルソン!』(1983)フランス 
監督クロード・ソーテ 主演イヴ・モンタン、ニコール・ガルシア

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「俺もこんなジジイになりたい!」と映画館で見ながら、心の中で叫んでたよ。

ギャルソンというのは「給仕」のこと。パリのブラッセリー(大衆食堂といったところか)で、チーフの給仕としてフロアを仕切るイヴ・モンタンの身のこなしがまず見事。当時62才だが、食事時の満席のテーブルの間を、ダンスのような軽やかなステップで抜けていく。鬼シェフとの怒鳴りあいのオーダー通しも楽しい。

主人公には、海岸沿いに子供向けの小さな遊園地を建設するという、人生の目標がある。
『生きる』の志村喬を思わせる人物設定だけど、こっちは生活する活力に溢れてる。
仕事だけじゃなく、女友達も何人か居て、時には彼女たちの避難場所にと、住まいと別に借りてあるアパートの鍵を渡したりしてる。

ニコール・ガルシアが歳の離れた元カノを演じてるんだが、彼女がアパートに泊まり、バスタブにつかってると、モンタンが入ってきて、さり気なく彼女の足を揉んでやったりする。
ジジイがそういう事しても気色悪く映らない所がさすがだ。日本の役者でも映画でもこうはいかん。
イヴ・モンタンを見てると「枯れているけど艶がある」という、二律相反するんだが、そうとしか表現しようのない佇まいを感じるのだ。

幕切れも爽やかだし、ほんといい映画。
以前DVDになってるんだが廃版状態。



『キリング・タイム』(1987)フランス 
監督エドゥアール・ニエルマン 脚本ジャック・オーディアール 主演ベルナール・ジロドー

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今にして思うと「ミニシアター・ブーム」というのは確かにあったのだなあと、こんな「売りどころ」のなさそうな映画まで、公開されてたわけだから。ベルナール・ジロドーで客が呼べるはずもなく、監督は無名で、フランス映画お得意のラブストーリーでもなし。
でも俺も見に行ってるってことは、何か反応するような要素があったんだろう。
当時はジャック・オーディアールの名も知らなかったし。

ストーリーもよく憶えてないんだが、たしか妻が家を出てしまって、夫の刑事がその行方を捜すうちに、殺人事件に突き当たるという大筋だったかな。でも本筋からずれて、刑事が出会う、言動の奇妙な少女との係わり合いの描写の方が面白かった印象があるのだ。
この邦題は日本の配給会社によるもので、「ひまつぶし」という意味合いがあるらしい。
たしかに刑事が妻を捜すことより、少女との無為に思える時間を過ごすことに、心地よさを感じているようで、その話が真っ直ぐに進まない脚本の作りを、もう一度確認してみたいと思うのだ。

オーディアールは現在公開中の『預言者』を含め監督作は5本なので、まだ若いと思われがちだが、もう今年で60才となるのだ。初監督作『天使が隣で眠る夜』が42才の時だから、監督としては遅咲きだ。それまでは脚本を書いてたのだ。
これも昔ビデオになってたが、レンタル店にもほとんど出回ってないんじゃないか?DVDは出てない。



『恋の病い』(1987)フランス 
監督ジャック・ドレー 主演ナスターシャ・キンスキー ジャン・ユーク・アングラード

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ナスターシャとは実年齢が近いこともあり、思い入れも強い女優だ。
特に俺はショートカットの彼女が好きなんで、『キャット・ピープル』『ワン・フロム・ザ・ハート』『愛と死の天使』に続く「ショート系」のこの映画も外せない。
ナスターシャというと、ギリギリ1984年の『パリ、テキサス』あたりまでしか語られない事がほとんどだが、いやいやこの映画もまだ26才だしね。レインコートとか、彼女のファッションも洗練されてた。
フランスきっての優男ジャン・ユーク・アングラードと、リヴェットとか、オリヴェイラとか、名匠の映画に出て、近年では「渋い」と評されてるが、70年代には「愛しの変態おやじ」という認識だったミッシェル・ピコリとの三角関係が綴られてる。
アンジェイ・ズラウスキが原案ということで、ヒロインのエキセントリックな内面が隠し味になってる。

ところで、そのミッシェル・ピコリが70年代に、ダッチワイフにリアルな愛情を注ぐ男を演じた映画があった。
『等身大の恋人』という題名まで決まりながら、結局オクラ入りしてしまったのだ。
それがすんごく見たいんだが。

話はそれたが、『恋の病い』はDVDになってるが、現在は廃版状態。
なんか多いなこの時代ので廃版になってるの。



『ゴールデン・エイティーズ』(1986)フランス・ベルギー・スイス 
監督シャンタル・アケルマン 主演ミリアム・ボワイエ デルフィーヌ・セイリグ

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フレンチ・ミュージカルといえばジャック・ドゥミであるわけだが、ドゥミのミュージカルのカラフル感はそのままに、舞台を地下のブティック・アーケードにして、大人たちの下世話な恋愛話を歌にのせた、ユニークなミュージカル・コメディ。
題名にあるように80年代のフレンチ・ポップス風ナンバーで彩られており、埋もれさせておくのは勿体ない楽しさに満ちている。

アラン・レネやルイス・ブニュエルなどの映画のヒロインを演じて、知的な女優という印象のデルフィーヌ・セイリグが、30年も前に別れた恋人との再会に、心みだされる様子を歌い上げるのも見もの。
登場人物たちがけっこう歳いってるというのも、いい味つけになってる。
そういやデルフィーヌ・セイリグはジャック・ドゥミ監督の『ロバと王女』にも出てたな。

昔ビデオは出てたが、ほとんどレンタル店で見かけたことない。もちろんDVDにもなってない。
もう楽曲も憶えてないんで、もう1回見てみたいのだ。



『コンペティション』(1980)アメリカ 
監督ジョエル・オリアンスキー 主演リチャード・ドレイファス エイミー・アーヴィング

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これはしかしなんでDVDにならんかね?音楽版権と言ったって、ほとんどクラシックのピアノ・コンチェルトだからね劇中に流れるのは。
ドレイファス演じるのは、出場資格ギリギリの30才手前で、ピアニストになる最後のチャンスをコンテストに賭けようとするポール。
サンフランシスコでの決勝までに何度か顔を合わせた、エイミー・アーヴィング演じるハイディと、恋におちるが、その彼女とは優勝を争うライバルでもあるのだ。
彼らふたりの他にも様々な背景を持った若者たちが、決勝を目指してしのぎを削る様子を描いた、音楽群像劇だ。
主演のふたりは相当ピアノの特訓を積んだようで、実際の音は吹替えかもしれないが、その指さばきはなかなかのもんだった。

ドレイファス演じるポールの人物像が、エゴが強く自分に甘いところが目立つんで、素直に共感できるかは微妙。そのせいかわからないが、その年の「ラジー賞」で、ワースト男優賞の候補になってしまってる。
早くに「名優」と呼ばれる存在となってしまい、演技が粗くなってた時期だったかも。

この映画で主人公ポールは、ピアニストになれなければ、音楽教師の道に進むしかないという立場なんだが、それから15年後に主演した『陽のあたる教室』で、ピアニストをあきらめて音楽教師になった男を演じて、ドレイファスはアカデミー賞主演男優賞の候補に上がった。
『コンペティション』の役柄のその後を描いたような役を演じ、「ラジー賞」の汚名も晴らしたってわけだ。

2012年2月2日

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