パチーノになれなかった男 [俳優について]

レイ・シャーキーという役者

『ドッグ・ソルジャー』の日本版DVDが、キングレコードからようやく出たんで、劇場公開以来久々に見る。
渋谷東急か松竹セントラルで見たんだよな、たしか。
一応ニール・マーシャル監督の人狼ホラーじゃないよ、ニック・ノルティのベトナム帰還兵の方だよ。
劇中にCCRがガンガン流れる、ニック・ノルティの主演作では
『ノースダラス40』『アンダー・ファイア』と並ぶ俺のフェイバリット。


この映画の中で、自称FBI麻薬捜査官を名乗る怪しい3人組の一人を演じてたのがレイ・シャーキー。
この時の印象は背が小さく変な口ひげで、ネズミみたいな男。

だがこの2年後の1980年に『THE IDLEMAKER』に主演。ゴールデングローブ賞の「ミュージカル・コメディ部門」で、主演男優賞をゲット。
この映画は『愛と青春の旅立ち』のテイラー・ハックフォード監督のデビュー作で、レイ・シャーキーは60年代の伝説的音楽プロデューサーをモデルにした人物を演じ、「アル・パチーノの再来」などという評価も受けてたのだ。
パチーノが引き合いに出されたのは、背丈とともに、シャーキーもイタリアンとアイリッシュの血が入ってたからだろう

レイシャーキー.jpg

同じ年に主演した『ウィリーとフィル 危険な関係』は、ポール・マザースキー監督が、なんとトリュフォーの
『突然炎のごとく』をハリウッド・リメイクした作品。
ジャンヌ・モローの役にはマーゴット・キダー。まあ顔の皺の感じは似てるかな。
マーゴット・キダーは『スーパーマン』でロイス・レーンまで演じながら、後年はキャリアが途絶え、一時はホームレスのような状態に陥ってたという不幸な女優。

それはともかく、このまま順調にキャリアを伸ばしていきそうだったレイ・シャーキーだったが、なぜかすぐに失速。RCAコロンビアからビデオが出てた『ヘルホール』なんていうエロサスで、妙な格好して出てたりして。
そんな中、1986年にブライアン・デパルマ監督のギャングコメディ
『WISE GUYS』で久々のメジャー作出演。

とここまで書いてきたけど、彼のキャリアでの重要な作品がどれも日本で人目に触れる状態にないんだね。
ハックフォード監督のもデパルマ監督のも、劇場未公開、ビデオ・DVDの発売履歴なし。
マザースキー監督のはWOWOWで昔放映したきり。

ネオン・エンパイア/アクシデント(2本立て・ペア券数ヶ所シワ有).jpg

そんな不運な男の雄姿が日本の映画館で映されたのが
1989年の『ネオン・エンパイア』。ウォーレン・ベイティの『バグジー』と同様、ラスベガスを作ったギャング、バグジー・シーゲルをモデルにした役を演じた。
本国ではTVムービーだったが、日本では劇場公開。これは歌舞伎町の映画館で見た気がするなあ。
『バグジー』はメロドラマ仕立てだったが、こちらは『ある戦慄』『パニック・イン・スタジアム』のラリー・ピアース監督が、実録ギャングものとして、渋く仕上げてた。
レイ・シャーキーとしたら、キャリアの中でも晴れ姿といっていいんじゃないか。

同じ年にシャーキーはもうひとりの実在ギャングを演じてる。
『新アンタッチャブル カポネの逆襲』のアル・カポネだ。役名はカポネではなく「スカーフェイス」。
こんなところでもパチーノと通じてるんだねえ。
このギャング物2本も、ビデオは廃版、DVDも望み薄だね。


レイ・シャーキーこれでキャリアを立て直すかと思われたが、彼はこの頃麻薬に手を出してた。
カナダでの撮影の折に、ホテルの部屋で大量のヘロインが押収されたり、ラリッて交通事故を起こしたり。
で、結局1993年に40才の若さで亡くなってる。
ヘロインを射つ注射針を使い回したことからAIDSを発症したのだ。

「オールシネマオンライン」という俺がよくチェックする映画データベースがあるんだが、生まれた年は記載されてるが、死亡年月日は記載されてない。
つまりそのくらい日本じゃ顧みられることのない存在。

だから日本で一人くらい、この俺が顧みてやろうと思うのだ。

2011年9月13日

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