最後にわかる「リメンバー・ミー」 [映画ラ行]

『リメンバー・ミー』

img1576.jpg

不意打ちを食らうような結末に「ああ、これはやられたなあ…」と
エンドロールが流れる間、座席で腕組んでうつむいてた。
ロバート・パティンソンは日本じゃスターにはなれないと配給会社は思ってるのか、これだけ出来栄えもいい映画なのに、都内ではシネマート新宿1館のみの上映。

この映画館は今後も、今や『ラスト・サムライ』など大作専門となったエドワード・ズウィック監督が、久々に『きのうの夜は…』のようなロマコメを手がけ、ジェイク・ギレンホールとアン・ハサウェイの共演ぶりも楽しみな『ラブ&ドラッグ』
ケヴィン・スペイシー、コリン・ファレル(すごいヅラ!)ジェニファー・アニストンの3人が、ハラスメント上司を怪演する『モンスター上司』
スティーヴ・カレル主演で、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンという、若手最注目株が脇を固める『ラブ・アゲイン』など、
まあどれも邦題がちょっととは思うが、いわゆるシネコンからはじかれた、米メジャーのハリウッド映画を単独封切りしていくようだ。

ロバートパティンソンは『トワイライト』シリーズのファンの女の子からは「キャーッ」って感じなんだろうが、顔の造作がいちいち大袈裟だからな、日本人の胃袋じゃ消化しにくいルックスだろう。
この先どういうキャリアを歩んでいくかわからないが、ギョロ目大好きなヘルツォーク監督から仕事に呼ばれたりするかも。
俺は、最近のクセのない若手の役者ばかりの中で、この顔の濃さは貴重と思ってる。


映画は兄の自殺を受け入れられず、
「人生に意味なんてあるのか」
ともう6年間もうじうじと時をやり過ごしてる青年と、子供の頃、目の前で暴漢に母親を撃ち殺され、
「人生には突然、死が訪れる」
という思いから、食事でも好物は真っ先に食べるような習慣がついたエミリー・デ・レイヴンの出会いと、その後を中心に描いていく。

この出会いは偶然ではなく、エミリーにとっては「フェアじゃない恋愛」となり、事実を告げられれば、そりゃあ怒るし、彼を許さないのだが、それでも戻ってくるのは、ロバートの家族の描写にも目配せがなされているからだ。
妻の死後「警官なのに家族を守れなかった」という自責の念から、娘につい過干渉となる父親との二人暮らしを続けてきたエミリーには、ロバートの家族たちに招き入れられて過ごす時間は、温もりと寛ぎを感じられるものだったろう。

映画ではロバートの年の離れた妹がキーパーソンになってる。この11才の少女は、天才的な絵の才能を認められながら、心は冴えない。
母親と離婚した弁護士の父親は、朝は車で学校へ送ってくれるが、絵のことに関心を持ってくれないし、展覧会に絵が飾られても見に来てくれない。
自分はもう愛されてないんじゃないかと思ってる。

教室ではノートに絵を描くことに夢中になって、先生の授業が頭に入らず、同級生の女の子たちから「変人」とハブられてる。
ロバートはこの妹のことを、自分のことより気にかけていて、兄の死にも、妹の才能にも関心を示す様子のない父親に反発してる。

妹を演じたルビー・ジェリンズという少女がすばらしい。例えばダコタ・ファニングとか
『リトル・ミス・サンシャイン』の子とか、演技が達者で愛嬌もあるという、そういうアピール感を感じさせない、11才の女の子がそこにポンという感じのふつうさなのだ。
同級生とうまく交流できないというあたりは、軽度のアスペルガー症候群かも知れないし、登場人物の中でも、一番複雑な性格づけがされている役なのに、それが前面に表れない。
でもロバートに「こいつは俺が最後まで味方になってやるんだ」と思わせる、そんな切なさは小さな肩から漂ってる。

その妹を気遣うロバートの心根を知ってるからこそ、エミリーはロバートの嘘を許した。
父親と諍いとなり家を出たエミリーが、そっとドアを開け、台所で洗い物をしてる父親に声をかける場面もいい。
「そんなにフライパンをごしごし洗っちゃだめよ。テフロン加工されてるんだから」
「ああ、そうか…」
どんな役でも巧いが、特に愛情の伝え方の苦手な不器用な父親を演らせると絶品のクリス・クーパー。
エミリー・デ・レイヴンはこのベテランとの二人芝居の場面でも、気負いがなく、長く生活を共にする親子の空気が自然に感じられた。

一方のロバートの父親に、007退任後はいろんな役を楽しんでる感じのピアース・ブロズナン。
『蜘蛛女』の強烈な悪女レナ・オリンが、涙もろい母親役に。
その他、映画の冒頭、地下鉄の駅で暴漢に殺されるエミリーの母親にマーサ・プリンプトン。
『旅立ちの時』でリヴァー・フェニックスと恋をした少女もこういう歳に。

名のあるベテランたちによって、二人の周辺の人々が生きる世界を含めた、視野の広いドラマが出来上がった。だからこそ、あの結末が効いてくる。

「リメンバー・ミー」という題名の意味が、ストンと心におちるようになってるのだ。

2011年9月20日

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。