オリジナルは6時間のテレビドラマ [映画ハ行]

『復讐捜査線』

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最近は私生活の方がリーサル・ウェポンな状態にあるメル・ギブソン。
なんと『サイン』以来8年ぶりの主演作なんだね。
冒頭、娘を出迎えるメル・ギブソンの顔は、そのシワが一層深くなって「さすがに老けたかな」と感じたが、鬼の執念で事件の闇に迫っていくにつれ、表情に精彩が増してゆく。
仁王立ちで銃を構える場面でも、その迫力はまだ錆び付いてはいなかったよ。

1985年に英国BBCが製作した6時間のテレビ・ミニシリーズ『刑事ロニー・クレイブン』を、
監督したマーティン・キャンベルが、ハリウッド映画としてセルフ・リメイクした本作。
自らのテレビ作品を映画リメイクするのは、『マイアミ・バイス』や、『メイド・イン・LA』をブラッシュアップさせた
『ヒート』を撮ったマイケル・マンの前例があるね。

『刑事ロニー・クレイブン』は日本では1990年にNHK-BSで全長版が放映されてるけど、俺は録り逃した。
短縮版のビデオがリリースされ、そっちは見てた。
メーカーはポニー・キャニオンだったが、今回の映画版も配給は同じ。BBCが製作に加わってるので、ポニーが現在もBBC作品の日本での権利を持っているんだろう。




マーティン・キャンベルの演出は「インパクト命」ってとこがあって、過去には、行進中の兵士が、いきなり将校の頭を銃で撃ち抜く様子を俯瞰で捉えたオープニングの『ノー・エスケイプ』や、やはり冒頭で主人公の兄妹の父親が、ロック・クライミング中に滑落する場面で、地面に叩きつけられる顔面のアップを捉えた
『バーティカル・リミット』なんてのがある。
やっぱり今回も、久々に再会したものの、身体の具合がおかしい娘を病院に連れて行こうという矢先…って場面が強烈だったね。

それと同時に、この監督、映画撮ってるうちに、何か自分で演出に飽きてくるようなところがあるんだよね。
だからどの映画も後半に行くに従って、雑な感じになってきちゃう。
今回のも、自宅で待ち伏せを受けて、拉致されたメルが、監禁された核兵器製造施設から、結構簡単に抜け出し、わざわざ待ち伏せ受けた自宅にとって返し、隠した拳銃を手に、疑惑の社長の邸宅に単身乗り込んでく。
その間、何の障害もなしという、
「もう時間だからさっさと終わらそう」な雰囲気ムンムンなのだ。

それとオリジナル版ではジョー・ドン・ベイカーが演じてたCIAエージェントの役が、この映画版では、政府から依頼された不都合な件を処理する「トラブル・シューター」的な存在に変えられてる。
演じるレイ・ウィンストンは、ゲイリー・オールドマンが監督に挑んだ、英国版『血と骨』といえる凄絶な家族ドラマ
『ニル・バイ・マウス』で、DV父を怪演して強烈な印象を残したが、今回は敵か味方かわからぬ存在を腹芸で見せる。
だが、オリジナル版でプルトニウムのインゴットを手掴みして暴走するジョー・ドン・ベイカーの、狂気に陥ってゆくキャラを、メル・ギブソンの行動の方に割り振ってしまったため、映画版のレイ・ウィンストンの描き込みが不足気味となり、
「結局なんだったんだ、あの人」と思われかねないのはちと残念。

『刑事ロニー・クレイヴン』は俺の見た短縮版でも、終盤は核を巡る、狂気の黙示録のような、壮大なテーマを現出させていて、娘を失った刑事の執念の捜査というドラマから、こんな地点に着地するのかと驚いた。
この映画版は、核と国家的陰謀というテーマを踏襲しながら結局、刑事の私怨を晴らすような結末に収束してしまった感は否めず。

映画サイト「オールシネマオンライン」が独占通販で発売を予定してるという
『刑事ロニー・クレイヴン』全長版に期待をかけるとする。

2011年9月19日

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