押し入れからビデオ②『キング・オブ・ジプシー』 [押し入れからビデオ]

『キング・オブ・ジプシー』

キングオブジプシージャケ.jpg

つい最近も『バーレスク』で貫禄の歌声を聴かせてたシェール。俺が彼女の曲で最初に耳にしたのは、
1971年の『悲しきジプシー』だった。マイナー調の哀愁帯びたメロディに、シェールの力強いボーカルが被さって、思わず引き込まれた。
あの曲はアメリカ南部に移民として渡ってきて、偏見や迫害を受けるロマ族を歌ったもの。

この『キング・オブ・ジプシー』も、劇中で「わしらはロシアから渡ってきた」とセリフにあるが、20世紀初頭から、主に東ヨーロッパからアメリカに渡ってきたロマ族の一家3世代の愛憎を描いてる。
時代背景は語られないが、車の年式からすると1940年代から1970年代までの話のようだ。
ジプシーという呼称は現在の日本では差別用語となってるようだが、この映画の中では、登場人物たち自らが「ジプシー」と名乗ってる。


1978年製作だが、日本公開は1983年。「シネマスクエアとうきゅう」の開館間もない頃にやってたと思う。
米メジャーのパラマウント映画だが、今までビデオ、DVD化はされてない。
映画を見ても音楽著作権絡みということはなさそうだし、エミール・クストリッツァ監督の俺的最高傑作
『ジプシーのとき』もDVD化されてないってことは、題名の呼称が問題なのか?
別に差別的な意味でつけられてる訳じゃないけどな。

公開時には「ジプシー版ゴッドファーザー」というコピーがつけられてたような記憶がある。
テーマ曲なんかニーノ・ロータっぽくもあるんだが、あちらの風格とか、暴力描写のインパクトとか、そういうものを期待するとハズされる。
祖父であるジプシー・キングからは称号を受け継ぐよう望まれ、祖父から疎まれる父親からは
「なぜお前がキングに?」と憎まれ、上の二世代の板挟みの中で、自らの人生を生きたいと願う孫のデイヴに焦点を置いた、青春ドラマの色彩が濃い。

デイヴにはこれが映画初出演にして、主演の大役を得たエリック・ロバーツ。
『プリティ・ウーマン』でジュリア・ロバーツがブレイクした時、
「彼女の兄さんがこの役者なの?」と違和感持って語られてた。
たしかに90年当時のエリックしか知らなければ、そういう印象になるだろうが、この映画を見れば二人が兄妹なのも納得の美青年ぶりだ。

ブルック・シールズ、スーザン・サランドンと、撮影のスヴェン・ニクヴィストは、同年の
『プリティ・ベビー』から、まとめてひっぱって来た感じ。
ブルック・シールズは出番は多くないが、父親が金で決めた結婚をブチ壊そうとする兄のデイヴと、車で逃げる場面。助手席からデイヴの肩に寄り添う姿に、兄妹の関係以上の艶かしさがあり、当時13才にして、飛び抜けた美貌を持った彼女だからこその印象だ。

『アスファルト・ジャングル』『大砂塵』キューブリックの『現金に体を張れ』『博士の異常な愛情…』など爽爽たるキャリアを築きながら、俳優としての掴み所が最後まで定まらなかった感じの、名優にして怪優スターリング・ヘイドンが、ジプシーの王を、威厳とある種の狡猾さを入り交えて演じていて、彼の晩年のキャリアを代表する役になってる。
瀕死の状態の病室で、酸素吸入の管を外し、見舞いにきた孫から煙草をもらい、一服つけて、満足した後こと切れる。いかにもこの役者らしい、死に様で良かった。

父親が差し向けた刺客に顔を切られ、重症を負ったデイヴを介抱するロマの娘にアニー・ポッツ。
見覚えある顔だなあと思ったら、マーク・ハミル主演の青春ドラマ『コルベット・サマー』に出てたんだ。

なので次回の押し入れは彼女つながりで。

2011年9月25日

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