三大映画祭週間2011『唇を閉ざせ』 [映画カ行]

三大映画祭週間2011

『唇を閉ざせ』

唇を閉ざせ.jpg

これはとてもいい企画だと思うし、見た5本どれも面白かったが、宣伝ほとんどしてないんじゃない?
俺も「ヒューマントラストシネマ渋谷」のHP見て、偶然知った位だもの。

毎年世界中で行われてる映画祭での受賞作も、日本で公開されるのはごく一部。
「東京国際映画祭」での「WORLD CINEMA」部門のチケット人気の高さからも、海外で評価を得た映画に対する関心は強いはず。毎年継続していってほしい企画だ。


この『唇を閉ざせ』はフランス映画だが、原作はアメリカの作家ハーラン・コーベンのベストセラー・ミステリー。
舞台も原作のニューヨークからパリへと移している。
ハリウッドで映画化の話がすすめられていて、監督にはベン・アフレックの名前が上がってる。
リメイクということになるんだが、「原作がアメリカの小説だし、舞台もニューヨークなんだから、リメイクではない」なんて言いそうだね。

ベン・アフレックは『ゴーン・ベイビー・ゴーン』『ザ・タウン』2作で監督としての評価を固めた感があるけど、この映画の監督ギョーム・カネも俳優から監督業へ挑戦し、セザール賞監督賞、主演男優賞を獲得してる。
俳優としてのギョーム・カネは、昨年公開された『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』で、KGB幹部と接触するフランス人家電技師役が印象深かった。


8年前、実家のある湖畔で、夜に水遊びをしてる最中、先に岸に上がった妻の悲鳴が響く。
急いで岸に上がろうとした所を、何者かによって殴られ、水に落とされる…。
あの日のことが忘れられず、妻を救えなかった自責の念を拭いされない小児科医アレックス。

ある日、彼のパソコンにメールが届く。差出人は妻の名前マルゴ。文面には
「誰にも言わないで」
動揺を隠せぬまま、リンク先を開くと動画が貼られてる。
地下鉄の出口のような場所の、監視カメラに向かって振り返り、何事か語りかける女性。
「これはマルゴじゃないか?」
8年前、彼女は殺されたはずだ。死体も警察によって確認されている。

そしてほどなく、刑事が彼のもとへとやって来る。あの湖畔で二人の男の他殺体が見つかったという。
8年前の事件の折り、刑事はアレックスの仕業と疑っていた。
アレックスは再び疑いをかける刑事の追求をかわしながら、真相を突き止めるべく行動し始めるが、マルゴの行方を探すために手段を選ばない謎の組織が、アレックスの動向をキャッチしていた。


物語の発端と、数年後に知らせが届いて真相へ動き始める展開は、キーファー・サザーランドの『失踪』を思わせる。登場人物が多いので、人物相関図が頭に入ってないと、混乱する部分があるね。
2回見るともっとすっきりできるのかも。

主役の小児科医アレックスにフランソワ・クリューゼ。
見た人誰もが「ダスティン・ホフマンに似てる」と思うだろう。ほんと似てるよ。
映画中盤、警察の追跡を振り切り、走りに走って、車がビュンビュン行き交う大通りに侵入して、無理やり渡り切り、高架から飛び降りて、スラムの雑踏に紛れ、ストリート・ギャングたちがたむろするアパートへ。
このシーンの走りっぷりはホフマンの『マラソン・マン』がカブって見えた。


フランソワ・クリューゼは1986年の『ラウンド・ミッドナイト』で、老サックス・プレイヤーの身を案じるジャズ好きの男を演じてた。
妻と別れて、思春期の娘と、パリの安アパートで一つ布団で寝てる、甲斐性なしな感じがよかった。
この『唇を閉ざせ』は2006年の映画だから、20年経ってるんだね。渋いいい役者になったね。

脇役で出てくる女優も豪華でクリスティン・スコット・トーマスなど、もっと大きな役でもいいのではと思うくらい。
ナタリー・バイが弁護士役で出てくるんだけど、この人、この映画の時もう58才!
見えない見えない。
フランスの女優って、歳を重ねても、厚塗りな感じじゃなく、色気を失わないでいられてる、そういう人多いね。

あと名前はわからないけど、謎の組織の一員の女、これが迫力あった。
相手の多分、胃袋とか喉仏とかを、握力で締め上げる尋問技を持ってるんだが、全身筋肉って感じの細身で、無表情なのがおっかない。
背中に2発銃弾食らうんだが、そのまま歩き続けて、グラッと路上に突っ伏す。
死に際もカッコよかったよ。

映画のラストは若干出来すぎな感じもあるが、絵的に美しいんで、気持ちよく見終えることができる。
一般公開してもいいと思うが。

2011年9月26日

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