女と女の読み聞かせ [映画カ行]

『クロエ』

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『ジュリエットからの手紙』『赤ずきん』『親愛なるきみへ』そしてこの『クロエ』と、
1年に4本の主演作が公開されるという、すごい売れ方のアマンダ・サイフリッドと、熟女ジュリアン・ムーアのレズシーン。
エロいのは、レズシーンより、そこに至るまでのプロセスなんだけどね。


産婦人科医として成功し、大学教授の夫と、音大に通う息子と、何不自由ない生活を送るキャサリン。
だが夫とは営みもなくなり、息子は女の子を部屋に連れこんでも悪びれもしない。
妻としても母親としても、孤立感を深めてく、そんなさ中、偶然目にした夫の携帯に、教え子らしき女子大生からのメールが、夫とツーショットの写真とともに。

夫の浮気を疑ったキャサリンは、直接問い質そうとはせず、以前レストランのトイレで言葉を交わしたことのある、ホステス風の若い女クロエの元を訪ねる。
クロエが高級娼婦だと知ったキャサリンは、彼女に夫を誘惑させ、誘惑に乗るような男かどうか、確かめてほしいと持ちかける。
一度目は何もなかったと告げられ、念押しにもう一度と、クロエに金を渡す。
だが二度目に夫はクロエの誘惑に乗ったという。
それは植物園の温室の中でのことだった…。


これは倒錯した「読み聞かせ」の物語なのだ。
母親がベッドで我が子に童話を読み聞かせる。子供は目を輝かせて聞き入り、やがて眠りにおちて、幸せな夢を見る。
20才そこそこの娼婦クロエが、母親ほども歳の離れたキャサリンに、自分がキャサリンの夫と重ねた情事を「読み聞かせ」る。
「娘」の口から紡ぎ出されるエロティックな物語に、我を忘れてのめり込んでゆく「母親」。

キャサリンはやがて眠りにおちるのではなく、娘ほども歳の離れたクロエと、肉体を交わし、つかの間の甘い夢を見るのだ。
クロエはキャサリンの中に母性を求める孤独な若い女でもある。
若い女が、年上の女を言葉でたらし込んでいくというシチュエーションだけでも、官能的である上に、そこには擬似的な近親相姦の匂いまで漂っている。

だけどこの展開を女性が見ても「キモい」と思わないとすれば、それはアマンダ・サイフリッドの「声」の心地よさと、受け手のジュリアン・ムーアの
「ああっ、私どうしちゃったのかしら…?」
な動揺演技の見事さによるものだろう。
ジュリアン・ムーアという人は、今までの主演作の中でも常に動揺してきたみたいな印象あるからね。

しかし苦言を呈すれば、この場面できっちり脱いでるのは熟女ジュリアン・ムーアの方で、アマンダは背中を見せるのみ。
これはいかんだろ。先輩女優がお手本を見せてるんだから、脱ぎ惜しみは失礼にあたるぞ。


さて思わぬことで一線を越えてしまうものの、キャサリンとしては
「あれは一時の気の迷いだったから」
と、まあ正気に戻るんだが、クロエの方は本気モードで、産婦人科に乗り込んだが、キャサリンにはつれなくあしらわれ、彼女への執着心は、ドス黒い復讐心へと、変貌を遂げてゆく。

産婦人科を後にするアマンダ・サイフリッドの目付きが怖い怖い。
普段はきれいだなと思うけど、こういう時は「お魚系」の顔が強調される。
しかし『クロエ』を見た後に『ジュリエットからの手紙』のアマンダを見れば「女優だなあ!」と感嘆するよ。
俺はこっちのアマンダの方が好み。

ここからの展開は気に入らない。結局『危険な情事』パターンに収束してしまうとは。
クロエがキャサリンの息子にロックオンすることは、まあ想定内の展開で、「家族を脅かすモンスター」っぽくなっちゃうけど、ここまで見てきて、大方の人は
「クロエはそんなに悪い子じゃないよね」
と思ってるはずでね。
キャサリンに対する執着心はあるものの、誘い水かけたのは向こうだし。

俺は思ったよ。
「クロエも家族になっちゃいなよー」って。

だってキャサリンはどうせ夫とはセックスレスだったし、クロエが家族の中に入ることで、夫への刺激にもなる。
息子が、母親と関係を持った女と寝てしまったという事実を、どう受け止めるかは問題だが、音大通ってるような芸術肌なんだから、右脳で理解するんじゃないの?
ルーカス・ムーディソン監督の『エヴァとステファンとすてきな家族』とか見てると、
「スウェーデン人ならそうするね!」と思うが。

アトム・エゴヤン監督は2005年の『秘密のかけら』でもアリソン・ローマンにレズシーン演じさせてる。
好きなんだろうね。俺も好きだけど。
あとトロントの冬という映画の舞台が、「寂しさゆえの過ち」という心情を反映する効果を生んでると思う。
これがイタリアになると、お笑いエロ話になっちゃうし、夏のリゾートだと、男でも女でもいいのよエマニエルって感じになっちゃうだろう。
リーアム・ニーソンは今回はほとんど空気だった。

2011年10月5日

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