ジェリー・アンダーソン印で育った [映画カ行]

『決死圏SOS宇宙船』

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デアゴスティーニの「ジェリー・アンダーソンSF特撮DVDコレクション」を定期購読してる。
『サンダーバード』をはじめ『キャプテン・スカーレット』『ジョー90』『海底大戦争スティングレイ』の人形特撮ものに、初の実写特撮『謎の円盤UFO』計5作のテレビシリーズが、毎号2作づつ順を追って届けられる。

俺のように50前後で『サンダーバード』のテーマ曲を聞いたことない人間は少ないんじゃないか。
ジェリー・アンダーソンは、日本で言えば円谷英二のような存在。
人形の口の部分を電気制御して無線で動かせるようにし、声優のセリフと合わせられるように作った
「スーパーマリオネーション」という方式で、ミニチュア特撮と組み合わせた独自の世界を完成させた人だ。
『サンダーバード』のプラモは1号、2号、4号は買ってもらった。
あの椰子の木がパカーッとなる基地の模型も売ってたはずだが、高くて買ってもらえなかったと思う。

この『決死圏SOS宇宙船』は、ジェリー・アンダーソンが培ってきた特撮技術を駆使して、初の実写にして劇場用映画に取り組んだ、1969年作。
日本では劇場未公開で、3年後に「日曜洋画劇場」で初放映されてる。
その後も数回放映されてるようだが、俺は見てない。

俺が買ったDVDは「オールシネマ・オンライン」の通販サイトか、中野ブロードウェイのDVDショップ「レコミンツ」の店頭でしか販売されてない。
レンタルもできない。ライトユーザーが食いつくような映画でもないが。

にしてもこの邦題。3つの単語を無作為にくっつけた感じで、俺はいつも『宇宙船SOS決死圏』と言いそうになる。
『SOS宇宙船決死圏』でもいけそうだし、用途に合わせて組み合わせ自在な家具みたいだよ。
しかも映画の印象としては、決死圏でもないし、SOSでもないんだな。
アメリカ公開時の題名は、日本語に訳すと「太陽の向こう側への旅」だが、本国イギリスでの題名は
「ドッペルゲンガー」で、この映画の発想を反映したものとなってる。


欧州宇宙探査局「ユーロセク」が宇宙事業を担ってる未来という設定で、冒頭、基地内の資料室に入るためX線検査を受けてる。
映画から40年後の今、海外の空港で導入されることになろうとはね。
そのユーロセクの探査衛星のカメラが、太陽の向こう側に、地球とよく似た形状の惑星があることを発見。
その機密が東側(多分)に漏れたことを知った局長は、有人探査船の打ち上げを急ぐ。

資金協力の条件として乗船したアメリカ人宇宙飛行士ロス大佐と、短期間で猛烈な訓練を積んだ上、乗船したイギリス人物理学者ケーン博士。二人は片道3週間の冷凍睡眠の後、太陽の向こう側の惑星に接近、調査の上、帰還するというミッションを目指す。
睡眠から覚め、惑星を確認すると、上陸を決断するが、宇宙船から放たれた上陸用飛行機は、荒涼とした大地に不時着。
ケーン博士は瀕死の重症を負い、ロス大佐は何者かに捕獲される。

次に目覚めた時、ロス大佐はユーロセクの基地内に居た。
「6週間のミッションを、3週間で切り上げ帰還したのは何故か?」
尋問を受けるが、不時着してからの記憶が曖昧で、答えられない。
自宅へ帰されたロス大佐は、なにか違和感を感じつつ、鏡をじっと眺めるうち、ある推測に思い至ることになる。


邦題から受けるような派手な見せ場がある訳じゃない。
見るべきはやはり精巧なミニチュア技術だ。宇宙船を積んだロケットの打ち上げシーンなどは、噴煙の立ち上り方とか、アポロの打ち上げの様子そのままで、ミニチュアでこの臨場感を出すのは相当なもんだ。

思うんだけど、CGの技術というのは、ソフトウェアが更新されていけば、どんどん細密な画面が作れるだろうが、ミニチュア技術というのは、これは職人技の世界だ。
例えばどの位の速度で動かせば、宇宙船の飛行がリアルに見えるかとか、照明の当て具合とか、重量感の出し方とか。
40年以上前の、この映画のミニチュア技術を今再現しろと言われても、意外と難しいんじゃないかな。

昨年公開された『月に囚われた男』はまさに、ジェリー・アンダーソンのミニチュア世界の再現を狙ったような作りで、ペシミスティックな作品世界も、60年代後半から70年代前半のSFの雰囲気を漂わせてた。

主演のロス大佐を演じてるのは、当時テレビシリーズ『インベーダー』で人気を博してたロイ・シネス。
俺もガキの頃、夜中に見てたりしたが、主人公しか、人間に化けた宇宙人を見分けられないという設定は、
ジョン・カーペンター監督の『ゼイリブ』の元ネタっぽい。

その他のキャストで、翌年から始まる実写特撮テレビシリーズ『謎の円盤UFO』の、ストレイカー司令官役のエド・ビショップや、フリーマン大佐役のマーク・ニューマンが顔を出してるのも嬉しい。
『謎の円盤UFO』は毎週放映が待ち遠しかった、初めてハマッた海外テレビシリーズだった。
キャストの他にも、地球本部SHADOでストレイカーが乗る流線型の「シャドー・カー」の原型が出てきたり。

監督のロバート・パリッシュは「アンダーソン組」ではない。
この人はハリウッドの職人監督なんだが、本国よりフランスで評価の高い人。
日本では15本ほど公開されてるが、今ほとんど見る機会に恵まれない。

クリフ・ロバートソンが主演した第2次大戦物『渚のたたかい』は、昔はよくテレビで放映されてたんだが。これも戦争映画というには静かなムードで、そのへんのヨーロピアンなテイストがフランス人受けしてるのか。
遺作となった1974年の『マルセイユ特急』は、渋谷パンテオンや新宿ミラノ座という大劇場で封切られてるが、俺はなぜかスルーしちゃってる。
マイケル・ケインも一番カッコいい頃なんだけどなあ。
ビデオ、DVD化もされてないが、本国では例のオンデマンドのDVD-Rでリリースされてる。

2011年10月4日

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