ラテンビート映画祭2011『チコとリタ』 [ラテンビート映画祭2011]

ラテンビート映画祭2011

『チコとリタ』

チコとリタ.jpg

3DCGアニメ『リオ! ブルー 初めての空へ』のコメントで、ラテン音楽世代が孫と一緒に楽しめると書いたけど、
このもう1本のアニメ作品『チコとリタ』は、孫にはまだ早い、パーカッションの効いたラテンビートが全編を彩る、
大人だから楽しめる逸品だった。

若き日にはキューバでも指折りのジャズ・ピアニストだった老人が、安アパートのラジオから流れてきた、昔愛した女のために作った曲を聴き、回想にふけるという構成。
俺はジャズには明るくないけど、最初に歌手が唄ってるのが『ペサメ・ムーチョ』だという位はわかる。
1940年代から50年代に革新を遂げたアフロ・ジャズ・シーンが背景になってるという。


主人公のジャズ・ピアニスト、チコは、ある晩クラブで歌うリタの声に魅了される。
「彼女と組めば絶対成功できる」
最初はつれないリタだったが、チコのピアノのタッチに才能を認め、二人の距離は急速に縮まる。
だがチコには深い仲の女がいることを知り、ちょうどその時期に、彼女の才能に目をつけていたアメリカ人から、ニューヨークに誘われ、リタは船に乗る。

リタを忘れられないチコは、彼女の後を追うようにアメリカへ。
リタはすでにアメリカのショウ・ビジネスの世界でも脚光を浴びる存在となってて、映画出演のためハリウッドに向かった。
チコもニューヨークでディジー・ガレスビーの楽団の一員として、世界をツアーする日々を送る。

褐色の肌の歌手はミュージカルで主役を張っても、白人からは差別の視線を浴びせられる。
心が疲れていたリタは、久々に再会したチコに安らぎを感じ、仕事にも意欲を失いつつあった。
危機感を感じた芸能事務所の社長は、チコに麻薬所持の濡れ衣を着せ、キューバに強制送還させてしまう。


ハリウッドでミュージカルの主役を張るというリタのモデルは、『ウエストサイド物語』などでスターとなった、ベネズエラ出身のリタ・モレノがモデルかも知れない。

ストーリーも大人向けのちょっとホロ苦いテイストだけど、とにかくこのアニメは、その絵柄がなんとも言えなく渋いのだ。
人物は最小限の線だけで表現されていて、リキテンシュタインのポップアートの、あの顔の感じ。
最近の日本のアニメは、ジブリもしかりで、細部に渡るまで描きこみがなされていて、背景など実写のようなリアルさで表現されてるけど、このアニメは、省略する部分は大胆に省略していて、イラスト的な感覚。

配色も、明るい茶系統の建物に、深緑とか、濃い青のバックを合わせたり、目の疲れない色合いに統一されてる。
線も直線ではなく、わざと手書き感を出す感じで歪ませてあったり、そうやって描かれるキューバの街並みが、明るい活力に溢れて、ほんとにこのアニメの中の町に入り込んでみたいと思ってしまう。
50年代当時の流線型のバスや自動車、音楽ホールなど、美的感覚が今より鋭敏だったのが50年代だったんじゃないかと、見てて思ったね。

ジャズが好きな人が見れば、いろんな小ネタに反応できそう。
でなくても、ほぼ全編音楽に溢れてるし、絵的にとても洒落てるんで、部屋でただ流してるだけでも気持ちいいと思う。
DVDでもブルーレイでも出たら即買いしたい。
今回の映画祭で、上映終了後の拍手が一番多かったし、一般公開も決まるといいけど。

2011年10月12日

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