鬼の伊東四郎28年ぶりに解禁 [映画サ行]

『スパルタの海』

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いや殴るねしかし。もうポカスカジャン!というくらいに殴ってるね。韓国映画『息もできない』でも出演者は終始殴られてる感じで、しかもほんとに当たってたからね、「韓国すげえなあ」と変な溜め息ついてたもんだが、こっちもすごかった。この映画に出てる若い役者を俺はひとりも知らないが、よく耐えられたなと思うわ。


「戸塚ヨットスクール事件」は勿論よく憶えてるし、当時はテレビのドキュメンタリーなんかで、内部の様子が映されたりしてた。これ見せられたら、家で暴れてる子供もビビっただろうね。
「ヨットスクールに入れるぞ!」って親は言えばいいんだから。

ある意味少年院よりキツいだろう。不良やってりゃ、少年院送りもハクがついた位に思うかも知れないが、少年院が法の元で更生を指導していく施設で、入所期間も決められてるのに対し、戸塚ヨットスクールは、親の同意の元で、いきなり自宅から引っ張り出されて、海に叩き込まれて、たるんでれば殴られて、戸塚校長が「もうよし」と言うまでは家には戻れないのだ。

そしてこの戸塚校長は信念を持ってるやってるからね。
「俺は嫌われ役で全然かまわない」
「俺だって辞めたいと思うこともある。だが俺が辞めたら誰がやるんだ?」
「俺と競争しようって人間はいないじゃないか」

訓練生が逃げ出して、警察署へ駆け込む場面。体罰を非難する署長に
「じゃあ、あんたがこいつを治せるのか」
と言い返す校長。いや警察官の役目じゃないけどね。そう言われると二の句が継げないもんだね。


戸塚校長になり切ったかのような伊東四郎がまず圧巻。日焼けした顔と、多分ビルドアップしたであろう二の腕の太さ。近年の『伊東家の食卓』での、のほほんとした味わいしか知らない若い人たちには驚きだろうな。

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電線音頭で一世風靡した「ベンジャミン伊東」のキャラも、笑いの中に狂気が滲んでて、他の芸人には出せない感じがあった。なので、自分の教育方針に一点の迷いもないという、ある種「すれすれ」の戸塚校長の人物像を演じるには、まさに人を得たキャスティングだったと思う。

事件によって、完成した後も「封印」されていた、この映画も28年ぶりに一般公開の日を迎えたわけだが、もし1983年当時公開されていたら、伊東四郎の熱演には注目が集まってただろうし、テレビで教師ドラマの主演に、なんてことも有り得たかもしれない。

監督は東宝青春映画のベテラン西河克己。百恵ちゃんとかのアイドル青春ものとは扱う題材が違うし、冒頭のスクールのコーチたちが、自宅から少年を力づくで連れ出してく描写など、異様な迫力があるが、やはりそれでもこれは青春映画として機能してるのだ。
ヨットの訓練場面では必ず、当時流行りのフュージョンっぽい音楽が軽快に流れ、その中で訓練生たちが、ボートを転覆させて、コーチに海水ぶっかけられたり、オールで殴られたりしてるのだ。

入所時は一番手に負えず「ウルフ」と呼ばれた少年と、やはり最初は荒れまくってた少女が、赤いビー玉で心をつなぎ、少女が先に出所する場面では、ウルフが電車を追いかける、定番の駅の別れが。
このウルフ役の少年が、頭を坊主にされてからは、太田光そっくりに見えるのには困った。

訓練生に死者が出るとこは映画でも描写されている。当時のマスコミは「スクール内での暴力」と原因づけてたが、映画の中では元々思春期特有の、情緒障害の少年少女を預かるという方針なのだが、親に泣きつかれると、とりあえず面倒見ると校長が引き取ってしまう。
その子がもっと深刻な精神の病気であることを、よく見極められなかったことも原因に上げてた。
「精神薄弱と精神病の者は受け入れるべきじゃない」
なんてセリフが頻繁に出てくるが、これも今のテレビじゃまず流せないな。

1980年代は角川映画が隆盛の時代で、角川の青春映画には暴力はほとんど描かれなかったが、一方で
『積木くずし』の渡辺典子の荒み方、暴れ方とか、ホラーすれすれの迫力だったし、今の映画の表現より振り切ってたかも知れないね。

2011年11月24日

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