ライアン・ゴズリング腹筋割れ男くん [映画ラ行]

『ラブ・アゲイン』

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ここんとこラブコメ批判を繰り広げてる俺だが、このラブコメはいい。登場人物が実にうまく物語に組み込まれていて、無駄キャラというのがいない。

有名な「ケビン・ベーコン指数」というのがある。ケビン・ベーコンと共演したことがある俳優を「1次」、その俳優と共演した俳優を「2次」という風につなげていくと、「3次」か「4次」の時点で、あらゆる俳優がケビン・ベーコンにつながるという法則だ。つまりその位、彼が主役・脇役問わず、いろんな映画に出まくってるということなんだが、この映画にそのケビン・ベーコンが出てるのが、物語上の非常に巧妙なヒントになってる。

キャスティングは中々に豪華。物語の中心となる夫婦にスティーヴ・カレルとジュリアン・ムーア。その外枠を注目の若手ふたりが囲む。
全米大ヒットの学園コメディ『EASY-A』は『小悪魔はなぜモテる?』という題名でDVDスルーになってしまったが、来年には、オスカー候補の呼び声高いドラマ『ヘルプ 心がつなぐストーリー』や、新生シリーズの口火を切る『アメージング・スパイダーマン』など、話題作目白押しの23才エマ・ストーンと、イメージ一新で挑んだアクション演技も評判の、来年3月公開作『ドライヴ』や、ジョージ・クルーニー監督・主演作『アイズ・オブ・マーチ』など、演技派の筆頭に上げられるライアン・ゴズリング。
さらにその外枠をケビン・ベーコンとマリサ・トメイのベテランが囲んでる。


子供をベビーシッターに頼んで、夫婦でディナー。デザートを頼もうという段になり、夫のキャルは妻のエミリーから、だしぬけに離婚を切り出された。妻が働く会社の同僚リンハーゲンと浮気してるという。
妻が運転する帰りの車の中でも、呆然としたままのキャル。告白を続ける妻を横目に、助手席のドアを開け、路上に転げ落ちる。初恋の相手との一途な愛を貫く結婚生活、子供たちにも慕われ、手入れの行き届いた庭のあるマイホームに、仕事も順風満帆、そんな人生と一緒に転げ落ちた気分だった。

離婚に応じ、家を出たキャルは、仕事帰りに、以前は立ち寄ることもなかった、独身男女の出会いの場となるバーのカウンター席でくだを巻く。
毎晩のように女の子をお持ち帰りしてるプレイボーイのジェイコブが、キャルを手招きしてる。
「俺はあんたと見ず知らずの他人だが、あんたの名前も知ってるし、奥さんの浮気相手の名前も知ってる。なぜだと思う?」
「あんたはこの2日間、カウンターでひとりで叫び散らしてるからだ」
そりゃ悪かったねと席を立とうとするキャルを制して
「奥さんが浮気したのは、あんたに男を感じなくなったからだ」
グサリと核心を突かれるキャル。そして自分に任せれば、奥さんが離婚を後悔するような男に仕立て直してやるという。キャルは「勝手にしろ」という気分でその提案を呑んで、後日、指定されたショッピングモールに行く。

どこに行くにもスニーカー履きのキャルに、ジェイコブは
「あんた学生か?さもなきゃスティーヴ・ジョブスか?」
「どっちでもないんなら、スニーカーを履く資格はない」
と、靴を捨てられる。マジックテープの財布もジェイコブの表情を歪ませる。
そしてスローガンのような一言を唱えさせる
「GAPで満足するな!」
キャルはクレカを取り上げられ、上から下までコーディネイトされる。25年間サイズの合ってないスーツを着てたことにも気づかされた。

こうして見た目だけは生まれ変わったようなキャルは、ジェイコブから「お持ち帰り」の指南を受け、バーで実践に臨む。最初にゲットしたのは、バーに来てるのに断酒中だという女性教師だった。キャルが昔、妻に言った口説き文句が効いたのだ。

キャルの変化は13才の息子ロビーも感じていた。そのロビーはロビーで、恋に悩んでいた。彼は家に来るベビーシッターのジェシカにぞっこんだった。彼女は17才で、弟のようにしか見られてない。だがオナニーしてるとこは見られた。それでもめげずに
「君を思ってしてるんだ」
と言ってジェシカをドン引きさせたりしてる。
ロビーは父親のキャルに、ジェシカのことを話した。
「彼女は僕のソウルメイトなんだ」と。
「そう思うなら諦めるな」と言われ、
「だったらパパもママのことを諦めるなよ」
と言い返され、キャルには言葉もなかった。

だがややこしい事にそのジェシカは、実はロビーの父親キャルを、秘かに想っていたのだ。
彼女は年上ばかりと付き合ってる同級生に
「親ほども年の離れた相手から、子供扱いされないためにはどうすればいい?」
同級生の答えは
「素っ裸の写真を送りつけてやるのよ」
そのジェシカの決意の行動が、思わぬ騒動に発展してゆく。

キャルを見栄えのいい男に仕立て直してやったジェイコブには、ひとり忘れられない女の子がいた。その子はバーで口説いた子たちの中で唯一、なびかなかったのだ。口説きテクを見透かされてる感じだった。彼女はハンナと名乗ってた。そのハンナとの再びの出会いは劇的なものになった。ジェイコブは初めて自分が真剣に恋に落ちる予感がした。

一方、離婚後、顔を合わす機会もなかったキャルとエミリーは、息子ロビーの中学校の保護者面談で、久々に顔を合わせた。身だしなみに気をつかったキャルを、エミリーは素直に賞賛した。
順番を待つ間、キャルは
「自分がふがいなかった、離婚の危機と戦うべきだった」
と訥々と語った。エミリーの目にも涙が溢れていた。


コメディ演技はお手の物のスティーヴ・カレルが、今回は派手なリアクションを抑えて、自分磨きを止めてしまった中年男の冴えない感じを、自然に滲ませる好演を見せる。
繊細な役を得意としてきたライアン・ゴズリングのチャラ男ぶりも楽しい。彼が思いっきり割れた腹筋なんかを披露してるせいなのか、今回はケビン・ベーコンの「脱ぎグセ」は封印され、彼としては大人しい役だね。
エマ・ストーンよりむしろ目立ってたのが、息子ロビーが恋するジェシカを演じる新人女優のアナリー・ティプトン。
目と口が大きくて、テンパった時の表情が可笑しい。この先、個性を伸ばしていけそうな女優だと思った。
マリサ・トメイに関しては、ひと言「最高」しかない。
この映画一番のスペクタクルは彼女が生み出しているからだ。

とにかく後半部分はサプライズの連続なんで、伏線を確認したくてもう一度見たくなってしまう。
平凡な邦題より『クレイジー、ステューピッド、ラブ』の原題のままでよかったんじゃないか?

2011年12月9日

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