初代レクター再び刑務所脱獄 [映画タ行]

『DATSUGOKU 脱獄』

ブライアンコックス脱獄.jpg

ツタヤの新作レンタルの棚はちょいちょいチェックしとかないと、こういうのを見逃してしまう恐れがある。
このローマ字題名で「ああ、またセガールね」とスルーしそうになったが、これはルパート・ワイアット監督が、『猿の惑星/創世記(ジェネシス)』に抜擢される決め手となった2008年作だった。
「脱獄」を描いてる映画だから、邦題は間違っちゃいないんだが。

「見たいなあ」と思ってたもんが、何気にレンタル店に並んでたりするから油断できないのだ。
この調子だと、『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン監督が脚光浴びた2008年作『BRONSON』も、同じパターンあり得るな。

ところで今回はもう1枚『汚れなき情事』という未公開作を借りてきた。エヴァ・グリーンと『三銃士』最新版でお姫様を演じてたジュノー・テンプル共演の2009年作。
『DATSUGOKU 脱獄』が刑務所舞台の「男だらけの密室映画」とすれば、こちらは、島にある全寮制の女子高の女性教師と生徒たちを描く「女だらけの密室映画」だ。名画座にしたら「気の利いた2本立て」じゃないか。


『DATSUGOKU 脱獄』は、スコットランド出身のブライアン・コックスが製作・主演を兼ねて、アイルランドやイギリスの役者たちを揃えた、「渋い顔」を眺める映画でもある。

ブライアン・コックスの顔と名前を憶えたのは、マイケル・マン監督の1986年作『刑事グラハム/凍りついた欲望』で、「初代」のハンニバル・レクターを演じた時だ。
刑務所に入ってるのも、あの映画以来だろうか?

ブライアンコックスレクター.jpg

映画は冒頭からレナード・コーエンの『パルチザン』が流れて、気分を盛り上げる。この映画の「テーマ」にもつながる曲だからだ。ただタイトル文字の出し方とかが安いTV映画風なんで、ちょっと不安にもなる。


ブライアン・コックス演じる初老の囚人フランクは、無期懲役刑で、もう長く収監されてる。刑務所内はリッツァという囚人が仕切っており、フランクは他人の揉め事に首を突っ込むこともなく、目立たぬように過ごしていた。
もう何十通も家族に手紙を出してたが、返事が来ることはなかった。

だがそのフランクに一通の手紙が届いた。まだ少女の頃以来会ってない一人娘が、麻薬中毒で生命も危ういとの、妻からの手紙だった。フランクは脱獄を決意した。

もう長いつきあいになるアイルランド人の囚人ブロディに話を持ちかける。ブロディは刑務所に入る前はロンドンの地下鉄工事に長く従事してた。下水道などの構造にも明るかった。
フランクの覚悟が本物だと分かり、鍵開けのスペシャリストに声をかける。

その男レニーは、自分をチクッて先に釈放された仕事仲間に恨みを抱いて、ひたすらサンドバッグを叩いていた。
レニーは話に乗り、刑務所内で行われる「ストリート・ファイト」の挑戦者に志願した。
無敵を誇る筋骨隆々の相手は、前歯にダイヤを仕込んでいた。レニーの狙いはそのダイヤだった。
パイプを利用した手製のハンマーの先に着け、硬い壁を削るのに不可欠だったのだ。

こうしてフランク、ブロディ、レニーの3人は、休憩時間にドミノをする振りをして、脱獄計画を詰めていった。
だがリッツァの弟トニーが、その不自然さに気づいた。
トニーは凶暴で蛇のような狡猾さを持っていた。しかもフランクの同部屋となった新米の若い囚人レイシーを、シャワー室に追いつめ犯してもいた。
フランクはその事実にも無関心を装ってたが、レイシーが手首を切ろうとするのを見て、さすがに止めに入った。

トニーは今や目の上のタンコブとなっていた。
兄貴のリッツァに脱獄をチクられたくなきゃ、麻薬を500gも都合しろと言う。
フランクたちは、所内で自家製の麻薬を精製してる、ジャマイカ人のバティスタを計画に引き込むことにした。

トニーは麻薬を受け取りにフランクの房に来た。背を向けてフランクと話すトニーに、レイシーがパイプ椅子を振るった。フランクが止めようとしたが遅かった。
トニーは血まみれのまま、房の外に出て、階段から転落して死んだ。

たちどころに騒ぎとなり、レイシーは独房へ。だが看守たちはリッツァからすぐに独房から出すように言われてるだろう。果たして、フランクに対し、レイシーが房に戻ったら、リッツァの元に連れて来るよう伝令がきた。

フランクは迷った。もう脱獄の決行は近い。レイシーの身を案じてる余裕はない。
だがフランクは、娘と同い年くらいの若者に、情が移ってもいたのだ。
そして決行も間近の午後、フランクは面会室に呼ばれた。窓ガラスの向こうには、一度も顔を見せたことがなかった妻がいた。その表情を見て、フランクはすべてを察した。


映画は脱獄を計画するフランクたちの動きと、脱獄を決行した後の、必死の逃避行を交互に描く。
タイトルの出し方とか、最初は軽いのかと思って見てたが、進むに連れ、迫力のある描写が積み重ねられていき、否応なく引き込まれてく感じがある。

ブロディを演じるのはリーアム・カニンガム、レニーにはジョセフ・ファインズ、若いレイシーにはドミニク・クーパーと、顔触れがいい。
『ドリーム・キャッチャー』で乗っ取られる赤毛のジョンジーを演じてたダミアン・ルイスが、囚人のボス格リッツァとは、貫禄ついたもんだ。


刑務所映画といえば『ショーシャンクの空に』のドンデン返しが有名だが、この映画も別の意味で驚きが待ってる。ふつうだったら「なんだよ、そのオチか」と言いたい所だが、映画の「テーマ」自体はちゃんと描かれてるので、拍子抜け感はない。

それは終盤に、フランクが若いレイシーの代わりに、リッツァと対面する場面で語られてるのだ。
レナード・コーエンの歌が効いてくる。

2012年4月17日

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