洗車してくれキャメロン・ディアス [映画ハ行]

『バッド・ティーチャー』

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昨日コメントした『ダーク・シャドウ』に続き、「洋楽おやじ向けエクスプロイテーション映画」なのか?と思わず身を躍らせるのがオープニング。
タイトルバックに流れるのは、1980年代初頭に、ニック・ロウとデイヴ・エドモンズが組んだポップロックバンド、ロックパイルの『ティーチャー、ティーチャー』ではないか。
先生が主役の映画だからという、ごくベタな選曲ではあるが、この曲は全米ではトップ40にも入ってなかったんだから、渋いとこ突いてきたと言える。

あとキャメロン・ディアス演じる女性教師エリザベスが、教師たちのパーティに出る場面で、 1982年の「一発屋」トミー・ツートーンの『ジェニーズ・ナンバー/867-5309 』がかかってた。
この曲はディアブロ・コディが脚本書いた学園ホラー『ジェニファーズ・ボディ』でも、ヴァンパイアたちが鼻歌で唄ってた。アメリカ人には意外と愛着持たれてるんだな。
ちなみにエンディングはジョーン・ジェットによる、イギー・ポップの『リアル・ワイルド・チャイルド』のカヴァーだった。

『ヤング≒アダルト』『ブライズメイズ…』に続く「しょーもない女」シリーズ3部作と呼びたいこの『バッド・ティーチャー』だが、3本中最も中身がない。

これはケナしてるわけじゃなく、キャメロン演じる女性教師について潔いくらいに、人物の背景が描かれないからだ。
『ヤング≒アダルト』のシャーリーズ・セロンは、勘違い暴走キャラだったが、その人生になんとも言えない寂寥感が漂ってもいた。
このキャメロン・ディアスには、その人物像に思い入れる要素がなく、というより、ハナからそんな見方を拒否してるような佇まいがある。
『ニッポン無責任時代』に始まる一連の「無責任男」を演じた植木等と同じように、人物の背景などなく、ただ周囲を振り回す「キャラクター」として存在してるのだ。

近年のアメリカン・コメディの主流である、ジャド・アパトーの一派が描く、下品で下ネタも満載だけど、最後にはホンワカとさせたり、ある種の教訓を含んだりという、そういうソフト・ランディングを考えず、ひたすらドライな展開に終始してる。


とりあえず、よく採用されたな、と同時によく免職にならんなと、笑っちゃうくらいやる気がない。
公立の中学教師だが、金持ちの御曹司捕まえてるんで、結婚に漕ぎつければ、教師なんぞさっさと辞める構え。だが御曹司の母親は、息子の金でガンガン買い物してるエリザベスが、玉の輿目当てと見抜き、結婚はご破算に。
学校の同僚から一応お別れパーティを開いてもらったものの、同僚の名前も満足に憶えてなかった。
仲間に入るつもりもなかったからだ。
だが玉の輿が失敗に終わり、学校に舞い戻ることに。
エリザベスに気がある体育教師ラッセルは歓迎するが、やたら授業に情熱を燃やす同僚のエイミーとは露骨に敵対する。

エリザベスは新学期の授業の初っ端から、「学園映画」をただ見せるだけ。
一応評価の高い映画を選んでいて、エドワード・ジェームス・オルモスが、荒れた生徒たちと真摯に向き合う教師を演じた『落ちこぼれの天使たち』や、モーガン・フリーマンが校長を演じた『リーン・オン・ミー』、ミシェル・ファイファーが熱血教師を演じた『デンジャラス・マインド』など、エリザベスとは似ても似つかない、立派な教師たちを描いた映画を、生徒に見せてるのが可笑しい。

エリザベスは授業よりもファッション誌のチェックに余念がなく、自己評価も「10点満点で8点」と言い切る。
その足りない2点はバストなのだ。彼女の唯一のコンプレックスであり、
「玉の輿を狙ってバービー体形の女と張り合うのは大変なのよ」
と言ってる。そこに千載一遇のチャンス到来。
イケメンの代理教師スコットと出会う。エリザベスが目ざとく、彼の腕時計が「ジャガー・ルクルト」であることをチェック。それをスコットに告げると「その一族の身内」だと言う。
「玉の輿キターーーー!」
がっちり押さえるにはあとは豊胸手術あるのみ。だが手術代は半端ない。


生徒たちの課外活動の「洗車アルバイト」に目をつけたエリザベスは、「見本をみせてあげる」と、超短パン、ヘソ出しルックで、泡まみれの洗車ショー開始。
たちまち周囲の車が殺到し、課外活動は大盛況に。
エリザベスは洗車代からちゃっかり着服するが、それをエイミーが目撃し、ただちに校長に報告。
だが課外活動で今までにない売り上げを収められたと、校長はエイミーのチクリには耳を貸さない。

エリザベスはさらに耳よりな情報を手に入れた。共通一次テストで最も成績の良かったクラスの担任には、ボーナスとして5700ドルがもらえるという。
エリザベスの授業内容が一変した。もう映画はなしだ。スパルタで目指すは共通一次トップの成績。
だが予備テストをやらせると惨憺たる成績に。
「こんなことだからジャップに負けるのよ!」
エリザベスは考えた。
「そうだ、共通一次の問題集が事前に手に入ればいいんだわ」

どうもスコットはあろうことか、天敵エイミーに心が動いてるらしい。
「彼女の授業に対する情熱に打たれる」と。だが本当のところは、エイミーの胸元にあるようだ。
エリザベスは見てくれにおいて、エイミーに劣る部分などないと思ってる。だが1箇所だけ。
エイミーは明らかに自分より胸があるのだ。一刻も早く手術をしなければ。
エリザベスの違法な「課外活動」が加速した。


この映画は他の映画とカブる場面がある。スコットを演じるジャスティン・ティンバーレイクが、教師たちで組んだバンドのお披露目ライヴに出るくだり。
この時点でスコットはエイミーに惹かれており、自作の曲を彼女に向けて唄う。ギターの弾き語りなんだが、微妙にヘタ。本職のジャスティンがわざとヘタに唄ってのが聴きものなんだが、この場面は
『ヤング≒アダルト』で、元カレの奥さんが組んでるバンドが、地元のクラブで演奏する場面を連想させる。
あの場面では元カレが昔シャーリーズに贈った「お気に入り曲」の自作テープに入ってた曲が演奏されて、今の奥さんが「夫から送られた曲なんです」と言ってた。
あの時のシャーリーズとおんなじような表情を、キャメロンもしてたよ。

あと結局エイミーとつきあうことになったスコットが、本来彼女と一緒に行くはずだった、泊まりがけの研修に、エリザベスが代理で行くことに。いつもエイミーがかじってるリンゴに細工をして、彼女が行けなくなるように仕向けるんだが、もうスパイなみの仕業だよ。

それで、研修先のホテルでエリザベスは果敢にアタック。スコットはエイミーを裏切られないからと、服を着たままの「エア・セックス」を了承する。
エマ・ストーンの『小悪魔はなぜモテる?』にあったね「エア・セックス」の場面が。
だがこっちのはちょっと描写がアダルティで、実際はしてないにも係わらず、スコットはジーパンの中で射精。ジーパンから染み出してる。
ジャスティン・ティンバーレイクも元は音楽界のスーパースターなのに、ここまでやっちゃうか。


キャメロンは『メリーに首ったけ』『クリスティーナの好きなコト』など、下ネタ耐性は抜群の女優だから、今回も際どいセリフ満載だが、カラッと決めてる。
スコットを最初に見た時の「顔の上に跨りたい」ってセリフも凄かったが。
しかもこの二人、実生活で4年付き合ってたんだから、セリフも生々しいよな、考えてみれば。

だがキャメロンやジェスティンよりも、この映画で目立ってるのは、エイミーを演じたルーシー・パンチという女優。
「超イラつく」キャラなのだ。生徒たちの前ではハイテンションで授業を進めるんだが、その空回りぶりに、生徒たちは呆気にとられてるのみ。エリザベスを追い出すため、校長を動かそうと必死だが、逆にたしなめられる。
「2008年のようなことになってもいいのか?」
と校長に言われてるんで、なにかエイミー自身もやらかした過去があるんだろう。
そのトラウマが表情に出る。
「口をそんな風に動かすのはやめなさい」
と校長に言われる時の口の動きが最高に可笑しい。

エリザベスは何一つ正しい行いをしてないにも係わらず、エイミーみたいな女は叩きのめされればいい、と見てる方に思わせてしまう。そのくらいキャラが立ってる。
見てなんの教訓も得られないが、そのサバサバした感触が俺は気に入った。

2012年5月22日

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