ロマポル⑦三井マリアと鹿沼えり [生きつづけるロマンポルノ]

『わたしのSEX白書 絶頂度』

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1976年の曾根中生監督作で、プログレ・バンドのコスモス・ファクトリーが音楽を担当、劇中にライヴシーンもある。男女の絡みにあうような、しんねりむっつりな劇伴ではなく、エッジの立った音が映画を前のめりにザクザクと進ませてく感じが、曾根監督独特のタッチとなってる。
音楽ともに、多分京急の湾岸沿いだと思うが、スクラップ&ビルドの建設重機の音が、意識的に大きめに挿入されてる。

主演してる三井マリアももちろん俺は初めて見た。彼女は山城新伍の「チョメチョメ」を生んだ伝説のエロ番組『独占!男の時間』で、カバーガール的なことをしてたようだ。
俺もこの番組は見てたが、まったく印象にない。

しかしこの映画の彼女はいい女だった。女優という感じがあまりしない。
「市井の美人」というのか、表情も固めだし、だがセックスシーンなどは、かなり気持ちが入ってる印象で、そのギャップがいい。ルックスは櫻井淳子を思わせる。

彼女は健康上の理由から女優を早くに辞めてしまい、これが唯一のロマンポルノ出演作となってるのだという。なので作品もカルト的人気を誇ってるようだ。
主人公を病院の採血係としてるのもユニークだな。「男の血を吸う女」というメタファーか。


採血係のあけみは、病院での働きぶりはしごく真面目で、しかも美人なので、医者からも言い寄られるし、仕出しの弁当屋からも結婚を迫られてる。だがあけみは態度をはっきりさせない。
あけみは湾岸沿いの古びたアパートに、予備校通いの弟とふたりで暮す。弟を「あんた」と呼ぶこの姉弟の関係もいわくありそうだ。
向かいのマンションにはストリッパーと、そのヒモのヤクザが住んでる。ヤクザはエロ写真と売春で稼いでおり、あけみの弟も、エロ写真を依頼者に手渡す手伝いをしてた。

ヤクザは弟とのつきあいから、あけみを知り、こんな美人ならと仕事を持ちかける。最初は話に乗るそぶりもなかったあけみだが、ヤクザが弟に渡してくれと差し出した封筒を開けると、セックスを写したスナップが入ってた。
それを見て思わず一人で始めてしまうあけみ。
弟が帰ってきてもそのまま続行、弟は誘われるが腰が引けてて、押入れから懐中電灯で、姉の下半身を照らしてる。十分いわくありげな関係である。

そんなこともあり、あけみはヤクザに再度会った時
「私、仕事やってもいいわよ!」と応える。
この工事現場の場面がよかった。煮詰まってくような日常を叩き壊す、ふんぎりをつけるような、あけみの内面が、建設重機の凶暴な音とシンクロしてると感じた。

ヤクザの斡旋する売春相手との行為にのめりこむあけみ。会社社長と、その運転手を巻き込んでの3Pは見ものだった。ただの3Pじゃないのだ。

あけみをバックから攻める社長が、運転手に「おい、いまだ!」と命ずると、運転手はあけみじゃなく、社長に挿入。レゴじゃないんだから。
ここは場内笑いが起こってた。
曾根監督はちょいちょいセックスシーンに笑いを放りこんでくる癖があるね。
おまけにあけみが尿意を催すと「運転手の顔にしろ」とか言ってるし、この変態社長。

最終的に弟も家を出ていき、空しさを抱えたまま、あけみはヤクザに身を任せる。
ヒモがほかの女と寝てるんで、ストリッパーも悔しくて、二人に水ぶっかけたりするんだが、まあ最後には3Pへとなだれ込むわけだ。
ストリッパーを演じるのは『(秘)色情めす市場』が圧巻だった芹明香だ。

この3Pの場面はかなりな熱度で撮られていた。三井マリアは演技もぎこちない部分はあるんだが、声が低めで落ち着いた感じがあって、そこもよかったな。



『宇能鴻一郎の浮気日記』

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若い世代だと、この官能小説の大家のことを知らないだろうから、宇能鴻一郎という男の主人公が浮気する話と思われそうだな。
思春期の頃に、今のように簡単にエロ動画も画像も手に入りにくかった、70年代当時において、父親の買ってくる週刊誌に連載されてる、宇能鴻一郎の官能小説の威力は絶大なものがあった。

この時代にはもう一人、川上宗薫というやはり大家がいたが、そちらは文学的というか、かついかにも中年男目線で、中学生あたりにはちょっと油がきつい感じがあった。

宇能鴻一郎の戦略の上手さは、小説の文体を、ヒロインの女性の「体験告白談」の体で「ですます」調で統一してたことだ。
「私、部長にヘンなとこ触られちゃったんです」みたいな。
中学生としては「大人のお姉さんがそんなことされちゃったのかあ」と、鼻息荒くなるわけだ。
この映画は宇能鴻一郎の文体を忠実になぞっていて、主人公の人妻ゆり子のモノローグが挟み込まれている。

ゆり子を演じる鹿沼えりがまたエロかわいい。

映画は1980年製作で、劇中に「多摩テック」のゴーカートに乗る場面があったり、京王バスで駅まで行ったりしてるから、高幡不動とか、多摩ニュータウン近辺の住宅地でロケされたんだろう。
この映画の3年後には、やはり町田の新興住宅地を舞台にして、高い視聴率を稼いだ不倫ドラマ『金曜日の妻たちへ』が放映されてる。
「新興住宅地」「若い夫婦」「浮気」の3点セットをさきがけたような内容になってる。

内容とはいっても、まったくシリアスな部分はなく、「他愛ないにも程がある」と見れば思うだろう。
イタリアの艶笑コメディの乗りだね。

今回の特集上映「生きつづけるロマンポルノ」の32本の中に、映画評論家3氏がなぜこれを選んだのか、理由は書かれてないが、俺が思うに、「ロマンポルノ」という名前に、映画好き以外の人が、イメージするとしたら、こういうものではないか。

ポルノでありながら、芸術性を高く評価されるに至った、神代、田中、曾根、小沼などの「作家の映画」がクローズアップされがちなロマンポルノだが、道行くサラリーマンや親父たちが「作家性」を求めて、映画館に入ったりはしないのだ。
商品としての「ロマンポルノ」のスタンダードも選んでおこうという意図があったのかも。


鹿沼えり演じる人妻も「そもそも人妻になるのがまちがい」という、身持ちがユルすぎるというか、来るモノは拒まずというか。
夫は勤めに出てる昼間を持て余してしまうんで、夫にせがんで、結婚前に勤めてた会社に再就職することになるんだが、同僚の男たちに波状攻撃を受けるはめに。

近所になぜか望遠鏡でゆり子の行動を監視し続ける主婦がいて、ゆり子が会社の同僚に車で送ってもらったのを見たと、ゆり子の亭主に告げ口。浮気の現場を押さえようと亭主を引っ張って、ゆり子の後を尾けたりする。

証拠は挙がらないが、ゆり子が新人男性社員と1泊の研修旅行に行くとなって、さすがに亭主も気を揉むことに。結婚して数年たつが、なんか最近色気が増してるし。
気を揉む亭主のもとに、なぜか近所の主婦がビール持って上がりこむ。
「ぜったい浮気してるわよ~」と言いながら、自分が人の亭主に迫っていく。

すると彼女の亭主が窓からそれを覗いてる。かなり年上の官能作家なのだ。
「ウチの嫁は浮気してみたくてしょーがないんだよ」
「ひとつよろしく頼みます」などと言ってる。

つい勢いでしてしまったものの、ゆり子の亭主は激しく後悔。
出張から帰ったゆり子に浮気を告白する。
ゆり子も出張先で、新人くんの筆おろしをしてあげてたんで、亭主を許して一件落着である。

まったくバカバカしいが笑ってみてられるし、鹿沼えりがとにかくエロい。この数年後に古尾谷雅人と結婚してるが、男が放っとかないのはわかる。
彼女の「されちゃったんです」調のモノローグの声がまたいいのだな。

ゆり子の亭主を演じてるのは金田明夫。「金八先生」の同僚教師とか、近年は大河ドラマにも出てる、中間管理職の似合う役者だが、この映画では髪も長めでイケメン風亭主をコミカルに演じてる。
近所の主婦に迫られる場面のリアクションとか上手い。さすが劇団あがりだ。
鹿沼えりとのセックスシーンは、かなり際どい体位までこなしてた。

ロマンポルノをここまで見て来て、1970年代前半のものは、修正条件が厳しくて、男女が腰を動かしてるだけで、マスクがかかったりしてたが、この映画の1980年ともなると、かなり修正条件も緩和されてきてるのがわかる。

2012年5月27日

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