まとまりすぎてるツイ・ハーク [映画ア行]

『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』

王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件.jpg

以前のブログでこの映画を見に行ったが、体調が芳しくなかったのか、途中で寝てしまったんで、リベンジの機会を待つと書いた。
これは「シネマート新宿」で上映してたんだが、しばらくの間、小さな画面の「スクリーン2」に格下げされてた。なのでHPをマメにチェックし、「スクリーン1」に格上げされる「月曜メンズデー」が来るのを待ってたのだ。
先日ようやくその機会があり、2度目の鑑賞。う~む、中盤けっこう記憶がすっ飛んでたんだな。


則天武后という、中国初の女帝が出てくる。唐の時代の人で、後の西太后と並び称されるほど、冷酷残忍な権力者だったと伝えられてる。
映画の舞台は、皇宮のある洛陽の都。女帝の座に就く則天武后は、その権力の象徴として、自らの顔を模した弥勒菩薩像をかたどった、巨大な「通天仏」の建立を急がせていた。
それはまさに天にも届かんとする高さだった。

だがスペインからの使者を招いた、建立前の内見で、都を一望できる像の目の部分に足を運んだ一行の中で、工部副長官の体が突然火に包まれた。

この怪事件の捜査に司法官シュエと、野心家の部下ペイ・ドンライがやってくる。
死体の状態を見たシュエは、これは火を放たれたのではなく、人体内部から燃えたのだと結論づけた。
工事に使われる溶剤の中に、人体で化学反応を起こす物があると。犯人は工夫の中にいる。

ペイ・ドンライはその中の一人に目をつけた。建立の造営頭を務めるシャトーだった。
彼は以前、武后への反逆罪に連座し、片腕を落とされる刑を受けていた。
だが建立が遅れれば、それこそ全員が打ち首になると、工事の妨害工作を否定した。

司法官は事件を報告すべく、部下とともに則天武后の皇宮にお目通りを願うが、武后の目の前で、今度は司法官のシュエが全身火だるまとなり、朽ち果てた。
部下のペイ・ドンライは呆然と立ち尽くした。

困惑する武后の前に一頭の鹿が姿を現した。鹿は「国師」のお告げを口にした。
「怪事件を解決できるのは、朝廷を離れ、8年も獄に繋がれた“明けの星”しかいない」

“明けの星”とは、皇帝の死とともに権力の座に就いた当時の武后を非難し、投獄されていたディー判事のことだった。ディー判事は明晰な頭脳と、武術にも長けていた。
武后はディー判事を呼び戻すことにし、美貌の側近チンアルを監視役に、ペイ・ドンライを捜査の補佐役に任命した。


光の差さない獄に幽閉されてたディー判事だが、国師のお告げに相前後して、すでに刺客が投じられてきた。
ディー判事は拳法で刺客を蹴散らし、チンアルも見事な鞭さばきでディーを手助けした。
チンアルはディーの行動の真意を探るためなら、夜の相手もせよと命じられていた。

彼女はディー判事に誘いをかけるが、乗ってくる様子はない。
強引に出ようと思った矢先、またしても刺客の放つ無数の矢が二人を襲う。

危うく難を逃れたものの、この事件には、反武后派の企み以外にも、底知れぬ陰謀が隠されていると悟ったディー判事は、化身術を使うという、元宮廷侍医のワン・ポーが隠れ住む「地下世界」へと足を踏み入れる。
そして人体発火の鍵を握る「火炎虫」の存在にたどり着く。
それを操るのは一体誰なのか?
だが真相に迫りつつあるディー判事と、行動を共にするチンアルとペイ・ドンライの身にも、危険が迫っていた。


ツイ・ハークの映画らしいと思うのは、小道具がイカしてる所だ。
アンディ・ラウ演じるディー判事の武器は「降龍杖」というもの。青銅の棒なんだが、この武器には、触れた物質の弱点が音で判別できる力が備わってるのだ。

ディー判事がお忍びで現れた武后の前でその力を披露する場面がある。灯篭を「降龍杖」でなぞっていき、音の変わった部分を一撃すると粉々に崩れ落ちる。こういう場面があるのが楽しい。

美貌の側近チンアルを演じるのは、リー・ビンビン。
彼女の鞭さばきがカッコいい。しばいてほしい。
アクション監督はサモ・ハンで、随所に飛び道具を使ったような見せ場をこしらえてる。

鹿が「国師」のお告げをしゃべり出した場面は、『鹿男あをによし』かと思ったが、鹿はあとの場面で、ディー判事に猛アタックで襲いかかってきたりするんで、意外と重要な存在だったりする。
アンディ・ラウは生真面目に対応してたな。

人体自然発火というと、そのものズバリな題名の、トビー・フーパー監督作『スポンティニアス・コンバッション』を思い出すってもんだが、その種明かしが「火炎虫」という。
もちろん架空の虫なんだが、映画の中では、見た目は「ダンゴ虫」の巨大なヤツで、家の中で見かけたら卒倒するレベル。
この火炎虫の体液をなんらかの形で、人間の体内に注入させると、太陽の光を浴びた途端に、体内でその成分が発火するという設定なのだな。


そういった小道具やら、妖術やら、いろんな要素が盛り込まれていて、クライマックスの「通天仏」大崩壊に至るまで、2度目の鑑賞では飽きずに見終えることができた。

だがこれは贅沢な不満というもんだが、ツイ・ハークにしては、破綻なくまとまりすぎてるなと。
言い方かえると、今まで見てきたツイ・ハークの映画は、ストーリーの辻褄が多少合わなくても
「なんだこれ、すげえ!」っていう見せ場がどっかしらにあったのだ。

このブログでも以前コメント入れた『ブレード/刀』もしかり。
その後に見た『ドリフト』もどんな話だったかさっぱり憶えてないが、九龍あたりの高層&ボロアパートの階段を、ワイヤー使ってビュンビュン駆け下りてく、まさに「ワイヤーアクション」な場面とか、壁面使ったアクションとか、その凄さだけは目に焼きついてる。
今回の映画では、そういう目に焼きつくような見せ場がなかったのは、なんか物足りない。


則天武后をカリーナ・ラウが演じてるが、伝え聞くような冷酷な女帝という面は強調せずに、女が権力の座に就くことの孤独を滲ませる描写もあり、その人間的な部分を表現しようと好演してる。

ペイ・ドンライを演じるダン・チャオは、俺は知らない役者だったが、中国では人気の若手という。この映画では髪も睫毛も白くしていて、大人なのか子供なのか、不思議な佇まいをしていた。

アンディ・ラウは王朝時代の衣装とか、着こなすのが難しそうなのに、ビシッと決まってて、さすがスターの風格だ。

登場人物のほとんどに非業の死が訪れるという、なかなか悲壮感あふれる展開も、お気楽な冒険探偵ものと違って、余韻があっていい。
ディー判事でシリーズ化されそうな気配はあるね。

2012年6月11日

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