フィルムセンターで『サスペリアPART2』 [映画サ行]

『サスペリアPART2』

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この29日まで京橋の「国立近代美術館フィルムセンター」で特集上映されていた「ロードショーとスクリーン ブームを呼んだ外国映画」にラインナップされた1本。

選んだ人が意図したのかどうか、このダリオ・アルジェント監督作と、同じくラインナップに入ってるニコラス・ローグ監督の『ジェラシー』には共通して、「赤」へのオブセッションが感じられる。
2本ともミステリーの装いで、見る者を迷路に誘い込むような手口で作られてる所も似てる。

1978年日本公開のダリオ・アルジェント監督作。スクリーンで見るのは、その公開時以来だが、30年以上優に経っていても、やっぱり面白いんだよなあ。
唯我独尊というのか、時代による風化を凌駕する、この頃のアルジェント作品の強固な美意識に貫かれてる。
ミステリーとしては、『四匹の蝿』なんかにも言えるんだが、「なぜそこからそうつながる?」という、どんなに察しのいい人でも察しきれない謎解きが待っていて、途方に暮れたりするのだが、そんなことはおかまいなしに、痛覚直撃の惨殺シーンが挟まれているんで、しまいには筋はどーでもよくなる。


女性霊能力者が、講演中に霊の存在を感じとり、この会場に殺人犯がいて、新たな殺人を犯そうとしてる、と取り乱し、会場を騒然とさせる。
憔悴してアパートに戻った霊能力者は、突然何者かに襲われ、惨殺される。
悲鳴を聞いて部屋に駆けつけた、アパートの住人の音楽家マークは、茶色のコートを着た男の背中を目撃した。

講演会場に殺人犯が居て、それを指摘されたんで霊能力者を殺したというのはいいが、事件の真相が明かされると、そもそもなんでその犯人が、女性霊能力者の講演会場にいる必要があったのか、さっぱりわからん。

デヴィッド・ヘミングス演じるマークが、探偵さながらに事件の真相に迫っていくが、それは20年以上前に、小さな息子の目の前で、自分の夫を殺した女が、夫の死体を屋敷の壁の中に埋め、その殺人の発覚を恐れて、危険そうな人間を殺して回ってたというわけ。

しかし警察はまだ動いてる気配もないし、過去の殺人を隠蔽するため、新たに殺人を積み重ねてるんだから、勇み足もいい所なのだ。
そして殺された2人に関しては、マークのいわば「探偵ごっこ」に付き合わされた末に、惨たらしく殺されてるんで、実はマークこそ疫病神だったといえる。


マークは事件を嗅ぎ回る過程で、子供の「わらべ歌」を耳にし、「お前を殺す」という声を聞いた。
その「わらべ歌」を聴いてもらおうと訪れるのが、心理学者ジョルダーニのもとだ。
そして「わらべ歌」の謎を解く鍵が、「近代の幽霊と暗黒伝説」という本にあるとわかる。

その作者である女性作家のもとを訪ねるが、すでに女性は惨殺済みだった。
女性は自宅で襲われ、バスタブに熱湯を注がれ、その中に顔を押し付けられた。
浴槽に転がされた時はもう虫の息となってた。
犯人が立ち去った後、顔面がジェリー状になった女性は、最後の力を振り絞って、バスルームの鏡に指で「ダイイング・メッセージ」を書き遺す。

その現場を訪れたマークはそれに気づかなかったが、死体が収容された後に現場を訪れたジョルダーニは、死体の位置を示すチョークの痕を見て閃いた。
そしてバスルームを蒸気で満たし、鏡に文字が浮かび上がった!

…なんて書いてあるのかわからない…

そのジョルダーニが自宅に戻り、物思いに耽っていると、居間になにかがやって来る。
ドアの向こうから真っ直ぐに、ジョルダーニの前まで、一体の操り人形が笑いながらスルスルと!
ジョルダーニは恐怖で思わず人形を叩き壊す。
顔が割れて半分になっても、ケタケタ笑ってる。
次の瞬間ジョルダーニは後ろから頭をつかまれ、何度もテーブルの角に口を打ちつけられ、歯が砕ける。
そして刃物で止めを刺された。


ふたりともマークに係わってなければこんな目には遭ってない。
そのマークは「近代の幽霊と暗黒伝説」の本に紹介されてた、曰くつきの幽霊屋敷をようやく探し当てた。廃墟となったその屋敷の壁が不自然に塗られてる箇所を発見する。

その表面を剥がしていくと、中から子供が描いたと思われる絵が出てくる。
誰かがナイフで刺されて血まみれになってる絵だ。

マークは事件に興味を持って近づいてきた女性新聞記者のジャンナに充て、その屋敷に行くとメモを残し、夜中に廃墟となったその屋敷に忍び込み、今度は壁の向こう側に空間があることを突き止める。
壁を叩き壊すと、中には部屋があり、ミイラ化した死体が椅子に座っていた。
だがその直後にマークも何者かに襲われた。

意識が戻ると目の前にはジャンナがいた。心配で駆けつけてきたのだ。
二人はその屋敷の壁に描かれた絵とそっくりの絵が、レオナルド・ダ・ヴィンチ小学校の図書館に残されていることを知る。
その図書館で同じ絵を発見した時、またしてもあの「わらべ歌」が聞こえ、ジャンナは暗がりで何者かにナイフで刺される。だが一命は取り留めた。


なぜマークとジャンナは殺されず、心理学者と幽霊本の作者と、霊能力者は惨殺されたのか?
ああ、灯台もと暗し。犯人はマークの友人の音楽家カルロの母親だったのだ。

マークは女性霊能力者殺人の謎を追ってると、カルロに告げた時に
「あまり深入りしない方がいい」と言われてた。
マークとジャンナを襲ったのはカルロで、他の3人を殺したのは母親だったのだ。

図書館の絵がカルロによって描かれたものとわかり、マークはカルロを追求。
だがカルロは動揺してその場を逃げ去ろうとし、清掃車の後部に足を挟まれて、そのまま引き摺られていく。叫びを上げても運転手は気づかない。
やがてカーブで縁石に頭を打ちつけられ、意識を失いかけてる所に、対向車がカルロの頭部を潰して走り去った。

カルロが犯人ではないとすると?マークはカルロの母親の住むアパートを訪ねた。
その廊下には、なにやら不気味な幽霊画のような絵が何枚もかかっている。
マークは何か思い出した。
あの霊能力者が殺された現場に駆けつけた時に、これと同じ絵がかかってた気がしたのだ。

いやあれは絵ではなく鏡だったのでは?
そしてその鏡に映ってた顔こそ、不気味な幽霊画と思い込んでたが、カルロの母親の顔だったのだ!

それに気づいた時、案の定マークは、カルロの母親に刃物で襲われた。
カルロの母親は勢い余って、エレベーターの鉄柵に、首にかけたネックレスを引っ掛けてしまう。
それを見たマークは即座にエレベーターのボタンを押す。
エレベーターシャフトが降りて行き、ネックレスは絶叫とともに母親の首を切断した。


まあこれでほぼゴアシーンの解説は済んだな。
ゴブリンのプログレ・サウンドが鳴りまくるのも気持ちいいね。

アルジェントの音楽のつけ方は独特で、普通は殺害場面など、その最中に鳴らすもんだが、この映画ではその場面の直前に「さあ、行きますよ!」って感じで盛り上がるのだ。
そして音楽が止んで静かになると「ドン」とショックシーンが挟まれる。
登場人物がなにか重要なことに気がついて「そうだったのかあ!」っていう場面でも音楽が高鳴ります。その見え見えの感じが楽しいのだ。

あのトラウマ人形だが、今回改めて見ると、歩いてるというより、やっぱり上から紐で釣られてる感があったね。足がヒョコヒョコ浮いてたから。そこは愛嬌感じたよ。
あの幽霊屋敷もよくこんな建物見つけてくるなと思うくらい雰囲気出まくり。こういう建物がそこらに残ってるというのが、ヨーロッパの強みだろう。

ダリオ・アルジェントの映画を見てて思うのは、ひと気のない広場とか、登場人物以外の画面に映ってる人間たちが、ほとんど点景にしか見えない所。
なにか自分の見る、夢の中の風景に近い感覚を覚えるのだ。
『GANTZ』の中で主人公たちが、自分たちの住む町そのままの異空間で敵と戦う場面があるが、あの「無人感」に近い。
自分の日常と繋がってるようで、繋がってない、地に足がついてない、心細くなるような感覚。

アルジェントの映画に惹かれるのは、ただのジャーロ的な露悪趣味に終わらない、独特の感覚を味あわせてくれるからなのだ。

2012年7月31日

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