ストックカーレース映画の最高峰 [映画タ行]

『デイズ・オブ・サンダー』

デイズ・オブ・サンダー.jpg

「トニー・スコット監督自殺」の報にはさすがに目を疑った。
遺書があったということは、衝動的ではなかったということだ。理由はなんなのだ?
クリエイターとしての行き詰まりということでもないだろう。

昨年は『アンストッパブル』で、「相変わらずお盛んだなあ」と、その衰えない演出パワーに乗せられて、俺はシネコンに2度見に行ったくらいだったのに。
68才か、リドリーもショックだろうねえ。

『トップガン2』を準備してたというが、俺はこの監督のものでは『トップガン』より
『デイズ・オブ・サンダー』の方が好きなのだ。
いや他にも面白い映画を何本も撮ってる人だけど、一番回数多く見てるのがこれなんだな。

1990年の、たしか7月の暑い最中に封切りを見に行った。もうヒネリもなんにもない、レース一直線って映画で、夏の暑さも忘れさせる爽快な気分で映画館を出たのを憶えてる。

その当時は、日本もバブル真っ只中で調子こいてたんで、ソニーに続いて、松下もハリウッドで映画会社を買収、ジャパンマネーがふんだんに流れこんでたわけだ。
この映画のプロデューサー、ドン・シンプソンとジェリー・ブラッカイマーのコンビも、いいようにジャパンマネーを使いまくったなんて言われてた。

だが興収としては『トップガン』の足元にも及ばず、「失敗作」の烙印を押された。
だがあのバブルの資金力がなければ、これだけのスケールでは撮れてないだろう。

NASCARのストックカー・レースを描いた映画としてのみならず、臨場感からいったらカーレース映画でも群を抜いてると思う。
60年代の『グラン・プリ』や、ポール・ニューマンの『レーサー』、マックィーンの『栄光のル・マン』以降、カーレースの映画自体がほとんど作られなくなった。
あるにはあるが、製作規模の小さなものばかり。
なのでオーバルコースを、猛烈にチューンナップさせたレースカーが爆走するド迫力にはしびれた。


トニー・スコットらしく、車のフロントの車載カメラや、地面すれすれのローアングルなど、カメラを置ける位置には全部置けみたいな、至れり尽くせりの映像で、レースのスピードを体感させてくれる。

トム・クルーズ演じる主人公コール・トリクルが、レース中に、前方を行く数台がクラッシュし、炎上する、その黒煙の中に突っ込んでいく場面のおっかなさ。映画館で身がすくんだよ。

ストックカーの獰猛なエンジン音もテンションを上げてくれる。
DVDになってからも、時折取り出しては、サラウンド・ヘッドフォン装着、ほぼフルボリュームで浸ってるのだが、この映画デジタル・リマスターを施して、今のシネコンでかけてほしいなあ。
デジタルIMAXとかで見れたら最高なんだが。


ストーリーはまったくもって単純。

サーキットにふらりと現れた名もない若者コールが、いきなりチームのトップレーサーの車に乗り込んで、凄いラップを叩き出す。
当然車を使われたローディは面白くないが、ベテランのカー・ビルダー、ハリーは、無名の若者の荒削りな走りに、天分を見出し、チームに迎え入れる。

コールとローディは常に角突き合わすライバルとなるが、二人の切磋琢磨でチームは得点を上げていく。だがあるレースでコールとローディがクラッシュし、ローディは再起不能の怪我を負う。

天性の走り屋だったコールの中に、走ることへの恐怖が芽生える。
チームオーナーはコールに見切りをつけ、新進レーサーのラスをチームの柱にする。

コールは苦渋を味わうが、レースへの闘志は完全には失ってなかった。
コールはハリーや女医のクレアの支えもあり、恐怖を克服するため、最大の舞台
「デイトナ500」に挑む。
とこんな感じだ。


『俺たちに明日はない』や『チャイナタウン』など名作を書いた脚本家ロバート・タウンにしたら、もう書き飛ばしたような内容なんだが、そこが逆に面倒くさくなくていいのだ。
トム・クルーズも「走りバカ一代」という感じで、清々しいほど内面になにもない。

ニコール・キッドマンはカーリーヘア時代の最後の頃で、まだ野暮ったさが抜けてない。
ギャラのほとんどはトムに行ってるんだろうが、脇を固めてるメンツが渋くていい。

カー・ビルダーのハリーには、こういう役はお手のもののロバート・デュヴァル。
チーム内のライバル、ローディを演じるのは、マイケル・ルーカー。
敵役を演じることが多い役者だが、この映画ではユーモラスな面も見せてる。
チームオーナーにはランディ・クエイド。
ロバート・タウンが脚本書いた1973年の『さらば冬のかもめ』が彼の出世作だった。

それからまだキャリア駆け出しの時期のジョン・C・ライリーが、コールの才能を認めるピットクルーの役で出てる。
その後2006年に、この『デイズ・オブ・サンダー』のまんまパロディといえるようなレース映画
『タラデガ・ナイト オーバルの狼』では準主役で出てる。

この映画は全米で1億ドルを超えるヒットを記録しながら、日本では劇場未公開に終わった。
理由は主演がウィル・フェレルで、売りようがないということだったんだろう。
レースシーンはけっこう迫力もあったのにねえ。

ジョン・C・ライリーは怪我で出れなくなったトップレーサー、ウィル・フェレルを蹴落として、チームのトップの座はおろか、ウィルの女房まで寝取ってしまうという美味しい役だった。


『デイズ・オブ・サンダー』の音楽は、ほぼハードロックの楽曲が並ぶベタなもので、それはそれでいいのだ。
しかしこの映画でもスペンサー・デイビス・グループの『ギミ・サム・ラヴィン』が使われてる。
俺思うけど、アメリカ映画で多分一番使われてるロックナンバーだと思うんだよな。

「こっからテンション上げましょーっ!」みたいな場面に必ずかかるもの。
アメリカ人どんだけ好きなんだよこの曲ってね。

そんなわけで今夜はこの映画をまた引っ張り出して、監督を偲ぼう。

2012年8月20日

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