TIFF2012・1日目『ウーマン・イン・ブラック』他 [東京国際映画祭2012]

東京国際映画祭2012

『独身男女』
『ウーマン・イン・ブラック』

「東京国際映画祭2012」が20日に初日を迎えた。
初日から飛ばさずに、今日は2本のみ。

そのうち1本は、本祭ではなく、関連企画の「東京・中国映画週間2012」の方で見た。
場所は六本木ではなく、渋谷の「ヒューマントラストシネマ渋谷」だ。



『独身男女』(東京・中国映画週間2012)

独身男女.jpg

一筋縄ではいかない活劇を連打する傍ら、ジョニー・トー監督がたまに手がけるラブコメ路線の新作。
だがその期待に冷水浴びせるかのように、内容よりまず、あの悪夢の字幕問題が再燃してたのだ。

一昨年の上映作『孫文の義士団』の字幕が凄いシロモノで、レオン・カーファイや、ワン・シュエチーなど、渋い役者たちのシリアスなセリフが、全部オネエ言葉になっちゃってた。
日本語の意味が通らない箇所も多く、映画の緊迫感も台無し。

思うに日本語がなんとなくわかる中国人女性が翻訳したのだろう。
それを修正する日本人スタッフがいなかったのか。
だが昨年に、この映画祭で見た2本の字幕は、それほど不自然さは感じなかった。
だから字幕の部分は改善がなされたものと思ってた。

やな予感がしてたのは、今年の「東京・中国映画週間2012」の、開催期間が近づいた頃に、HPに
「作品の一部に字幕の不備や、誤字などがある場合がございます」
的な但し書きがつくようになったことだ。

そして今日『独身男女』の上映前にも、劇場側から再三アナウンスで
「字幕に不自然な点や誤字があります」とのエクスキューズが。
実際見てみると、これが思いのほか壊滅的に酷い。

まず男と女が二人で会話してる場面でも、
「君」が「おまえ」になり「あなた」になるという、
ひと言ごとに言い回しが変わってしまう。

前の言葉は敬語だったのに、つぎには急に馴れ馴れしい口調に訳されたり。
「あなた、どうしましたか?」みたいな、中国の人が日本語しゃべる時の言い回しがそのまま字幕になってたり。
固有名詞や地名や店名なんかが、全部中国語で表記されてるから読めないし。
もう映画のストーリーに集中なんて無理。

たぶん一昨年と同じ状況で字幕が制作されたんだろう。
この映画祭を主催する組織には、日本人はいないんだろうか?
いや、いないにしても、字幕を日本語として自然な形に直す手間くらいかけてくれよ。

専用の業者に外注するとか、そんな大袈裟なレベルでもないよ。字幕読んでれば
「ああ、ここは本来こういうことを言いたいんだろうな」
と俺だって見当つく。
ということは普通の日本人なら直せるレベルだ。
ちょっと誰かに頼めば済む話だと思うがな。


とても映画を1本まともに見たとはいえないんだが、ストーリーはヒロインを巡る男二人の「三角関係」ラブコメだ。
ヒロインを演じるカオ・ユアンユアンは、最初は髪がロングだが、すぐにダニエル・ウーに勧められてショートにする。
このショートになった彼女が、なんか長澤まさみに似てるのだ。

表情豊かにユーモラスな演技もこなし、2001年の『北京の自転車』での、初々しくも硬い演技の印象はもはやない。美しさは増した。

「窓越し」に、見る見られるという行為をモチーフにしたストーリー展開が楽しい。
これで字幕がまともならね。
いつもはクールなイケメンを決めてるルイス・クーが、カオ・ユアンユアンの気を惹くために、あの手この手を繰り出してくる、その男カマトトぶりな演技が物珍しい。

このヒロインは、男ふたりの間を揺れ動くというのか、優柔不断というのか、両天秤というのか、ちょっと同性からは反感買うかもしれない性格づけになってる。
ダニエル・ウーが飼ってるガマガエルがいい味出してる。あの末路は悲痛すぎるが。

終映後の女性客の話を漏れ聞いた所によると、この映画は昨年の「大阪アジアン映画祭」で『単身男女』という原題のままで上映されており、その時の字幕はまともなものだったという。

ということは違う素材を使ってるわけか。一度字幕入れたものを使えばいいのにねえ。
いやあ、明日は『画皮 あやかしの恋2』を見るんだが、不安だよもう。



『ウーマン・イン・ブラック』(特別招待作品)

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舞台では二人芝居として演じられた、スーザン・ヒル原作のゴシックホラー小説を映画化。
こちらは二人芝居ではなく、登場人物がそのまま出てくる。

今年の映画祭の期待作をコメント入れた折りに、ホラー映画なのに「G」という一番緩い指定になってると書いたが、確かに血生臭い場面や、残忍な殺害場面などの描写はない。
だが心理的に追いつめられてく主人公に密着するカメラの視点で、見てる側も相当に緊張を強いられる。


子供たちの変死が相次ぐ、イギリスの田舎町。
その因縁が深いと目される「イールマーシュの館」にダニエル・ラドクリフ演じる弁護士アーサーが足を踏み入れる。

満潮時には泥の地面が水没してしまう、広大な沼地の中にそびえる館のロケーションが、フランスの世界遺産「モン・サンミッシェル」を思わせる、幻想的な美しさだ。

その廃墟となってる「イールマーシュの館」で、アーサーは黒衣の女の姿を目にする。
それが恐怖の連鎖の引き金になっていく。

『バイオレンス・レイク』で、胸糞悪くなるほどの臨場感で、理不尽な暴力を描き出したジェームズ・ワトキンス監督は、今回は残忍さは封印して、「お化け屋敷」映画としての怖さの醸造に徹している。
イギリスの寒村の灰色のムードや、館の調度品や小道具の不気味さ。
画面の隅々にまで、手を抜かずにこしらえてある。

ショック演出は苦笑してしまう位に王道で、音が消えたらビビらせのサインだ。

「ハリポタ」を1本も見てない俺は、この映画がダニエル・ラドクリフの演技を初めてまともに見ることとなったが、館の中で怪奇現象に見舞われるのは、もっぱらラドクリフ一人なんで、その追いつめられ感の表現は見応えがあった。
本当に一人で映画を背負って立ってる印象だ。

アーサーに唯一協力的な、地元の住人サムを演じるキアラン・ハインズは、いつもどおりの安定感。
ご贔屓のジャネット・マクティアが「黒衣の女」を演じるのかと思ったらちがった。

サムの妻役で、この夫婦の子供も変死してるのだ。妻はそれが「黒衣の女」の呪いと思っており、時折亡き息子が憑依して、ナイフで禍々しい絵を刻む。
その演技のためにキャスティングされたっぽい。

主人公が仕事のキャリアで窮地にあるという設定や、ラストが駅のホームという所や、主人公が泥水の中に潜る描写など、サム・ライミの『スペル』と合致する部分がある。

サム・ライミが、スーザン・ヒルの小説をヒントに取り入れてたのかも知れない。
登場人物が悲しみを抱えてるという部分では『リング』を連想させもする。
俺は映画を見て、逆に舞台の「二人芝居」を見たくなってしまったが。

2012年10月20日

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