マゾヒズムに映えるスターたち [俳優について]

リチャードハリス.jpg

『死の追跡』について書いた折、リチャード・ハリスについて触れた。
過酷な目に会うほどに精彩放つ「被虐芸」の持ち主と。マゾヒズムの美学とでも言おうか。
日本の役者で言えば、これはもう石橋蓮司に止めを差す訳で、
『アウトレイジ』でも喜々として、責めにあっていた。



海外の役者で、リチャード・ハリスの後継となる素養を秘めたのは誰か、思い巡らせてみると、前回
『センチュリオン』で触れたマイケル・ファスヴェンダーが浮かんだ。

マイケルファスヴェンダー.jpg

彼の場合は2008年に出た2本の映画での役柄がどちらも強烈だった。
1本は前回も述べた『HANGER』の超絶ダイエットで臨んだハンスト演技。
『マシニスト』のクリスチャン・ベールという前例はあるものの、あそこまでやり切るのは、役者魂というより立派なマゾ体質だろう。
もう1本はDVDスルーの『バイオレンス・レイク』
エデン湖という美しい避暑地にやってきた夫婦が、地元の少年たちとのいさかいから、凄絶な暴力に晒されるサスペンス・ホラー。
ファスヴェンダーのファンの女性が見たら気を失いかねないほどに、少年たちに縛りつけられ、殴られ、刺され、切り裂かれる悲惨な状態に。結末も「ハネケかよ…」と思うくらい絶望的でね。

『センチュリオン』でも胸を切り裂かれたり、上半身裸で雪原走ったり。
身体的なことだけじゃなく、百人隊長という頼れる存在なはずだが、戦えば捕まる、将軍助けようとしても鎖外せず諦める、味方の陣地の方向へ逃げると思わせて逆へ向かい、敵を欺こうとするが、結局追跡されるなど、意外と頼りにならん感じもマゾっぽい。

『X-MEN ファースト・ジェネレーション』では、復讐心を胸にニヒルに決めてるのに、チャールズに心を読まれてちょっと泣いてるし。


彼の他にも二人、この路線で行くと精彩放ちそうな役者がいる。

バリーペッパー.jpg

一人はバリー・ペッパー。そもそもあの新興宗教SF『バトルフィールド・アース』に主演させられて、身長4メートルだかのトラボルタに虐め抜かれてた時点で「素養あり」とは思ってたが、
2003年のDVDスルー作『ホワイト・クラッシュ』では、アラスカの大雪原のただ中に不時着するパイロットのサバイバルを演じてる。
リチャード・ハリスの『荒野に生きる』を思わせるこの映画では、製作総指揮も兼ねる気合の入りよう。
監督は『アメグラ』組としては、ロン・ハワードに続く監督業進出を果たしたチャールズ・マーティン・スミスが、自身が主演した1983年のネイチャードラマ『ネバー・クライ・ウルフ』以来、20年ぶりにアラスカの地に凱旋してる。
ちなみに彼の監督最新作『ドルフィンズ・テイル』は現在全米興行チャートでトップ10入りするヒットを記録中だ。

バリー・ペッパーに話を戻すが、何と言ってもすごかったのがトミー・リー・ジョーンズが監督・主演した
『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』
この映画では終始ジョーンズにボッコボコにされてる。
ジョーンズ扮するカウボーイの親友だったメキシコ人を殺害した国境警備員という役なので、恨みを買うのが仕方ないんだが、拉致された上、墓からメキシコ人の死体を掘り返すよ命じられ、メキシコ人の故郷へと運ぶ旅に同行させられるのだ。
その間も何かにつけ殴られ蹴られ、ヒジョーに気の毒になってくる。
最新作『トゥルー・グリット』では、地顔がわからない位、小汚いメイクで野盗一味のボスを演ってた。


そして3人の中で一番若いが、見る度強烈な印象を残してくれるのがベン・フォスターだ。
2004年の『パニッシャー』では、トーマス・ジェーンをかくまうアパートの住人。
オタク青年なんだが、アパートに乗り込んできた悪党一味から手ひどい拷問を受ける。
後に駆けつけたトーマス・ジェーンに
「俺はなにもしゃべらなかったぜ」と、血まみれの歯を見せて笑ってた。

ベン・フォスターは作品ごとに風貌を変えてくるんだが、『ホステージ』では凶暴な人質籠城犯を、ロン毛なびかせて演じ、死に様はやっぱり血まみれ。

ベンフォスター.jpg

その後の『30デイズ・ナイト』に至っては、吸血鬼に襲われ、血まみれのまま牢屋に繋がれてるという(だけ)の役。
役名は「よそ者」!どんだけ血まみれ好きなんだよ。

役柄的なマゾっぽさが光ったのは『3時10分、決断の時』
ラッセル・クロウ扮する強盗団のボスの忠実な片腕。捕まって護送されるボスの後を追い、ようやく奪還のチャンス到来と思いきや、あの仕打ち。
本人としては「なんでやねん!」という結末だったね。
あの時のベン・フォスターの表情が忘れられない。

最新作『メカニック』でも、体格も格闘のスキルも明らかに上なボディガード相手に、フルコンタクトで挑みかかり、案の定血まみれに。
彼の場合、血まみれな時ほど、表情が嬉しそうなんで、これは本物でしょう。

この3人の中で、誰がリチャード・ハリスの正統後継者(?)となるのか。
今後のキャリアに目が離せない、のは俺だけか。

2011年9月28日

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