ラテンビート映画祭2011『トレンテ4』 [ラテンビート映画祭2011]

ラテンビート映画祭2011

『トレンテ4』

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その国のことを知る一つの判断規準にいいのは、その国で作られるコメディ映画を見ること。
どんな笑いが国民にウケるのか、どんなキャラが人気を博すのか、結構国によって違いが出るもんだよ。

例えばフランス。日本に入ってくるのは、ミニシアターが似合うしゃれおつな映画やブランド監督の映画だが、フランス人が一番詰めかけるフランス映画は、
『アステリックスとオベリックス』という、人気漫画原作のコメディ。
シリーズでもう4作できてるが、日本では2作目『ミッション・クレオパトラ』が、モニカ・ベルッチが出てるという売りで公開されたのみ。ほんとベタにドタバタな内容だ。

70年代でも日本じゃドロンやベルモンドがスターだったが、フランスで一番人気があったのは、
1972年の日本未公開作『ノッポで金髪で黒い靴をはいた男(原題)』でブレイクしたコメディ役者ピエール・リシャールだった。

この映画は1985年に、トム・ハンクス主演『赤い靴をはいた男の子』としてリメイクされてる。
リシャールは1974年『おかしなおかしな高校教師』、1975年『冒険喜劇・大出世』とジェーン・バーキン共演の2作が日本公開されてるが、ヒットはしてない。この人も基本ドタバタ芸が持ち味。

イギリスであれば「モンティパイソン」シリーズに代表されるような、ナンセンスと毒気をふくんだ笑いがウケるし、アメリカ映画の今の主流は、ジャド・アバトー製作による「冴えない男子」の自虐系ネタのコメディ。
本国で大ヒットするような作品がほとんどDVDスルーになっちゃうのは、映画の内容は男には「あるある」と共感持てるネタが入ってても、女性がそれを見たいか?というとこでね。
ベン・スティラーやセス・ローゲンやウィル・フェレルの顔を、劇場まで見に行きたいという女性も(俺はいい趣味だと思うが)少ないだろうねえ。

じゃあ、日本映画のコメディでウケるのはどんなものかと思うと、例えば三谷幸喜の作品とか、
『ハッピーフライト』などの矢口史靖監督の作品、クドカン脚本や『キサラギ』など、役者というより、物語で笑わせる映画が人気を得てる。
テレビで毎日のようにお笑い芸人を見てるから、映画でおんなじようなキャラで笑わせる要素は求められてないんだね。

前置きが相当長くなったが、ではスペインではどんなコメディが人気なのか?
それがわかるのがこの『トレンテ4』なのだ。
4とついてるからには、シリーズ4作目で、トレンテは主人公の名前だ。
風体はね、イメージしやすいのはチーチ・マリンかな。マリファナ・コメディで人気博したコメディ・コンビ
「チーチ&チョン」のチーチ。ドン・ジョンソンの刑事ドラマ『ナッシュ・ブリッジス』の相棒、あのチョイハゲ、小太りのオヤジ。彼に近いね。


トレンテは元警察官らしいが、今は警備員のバイトとして、大富豪の娘の結婚パーティの現場にいる。
だが映画開始10分ほどで、その花嫁に寝室でフ●ラさせてる。
その後パパラッチを見つけて、会場内を破壊しつつ追いかけ、パーティ客をプールに落とし、デカい電飾に足ひっかけて電飾をプールに落とし、客を感電させ、逃げ去ってく。
まあそういう出だしです。

翌日はストリップ劇場に行って、掃除係りのポワンとした男に
「マスかきたいから金貸せ」と言ったり、ホームレスの子供たちを突き飛ばして残飯のポリバケツを漁り、テラスのレストランに立ち寄って、片付いてないテーブルのワインの残りをグラスにかき集め、家族連れにちょっかい出し、家族たちがモメて立ち去ると、
「まったく夫婦ってやつは」と残った皿を平らげる。

アパートを借りてるんだが、その部屋を不法移民のアジア人に「また貸し」してて、10畳ほどの空間に30人位いて、中で闘鶏とかやって盛り上がってる。
黒人のことはニガーと呼び、オバマが大統領になるとはアメリカも終わりだなと公言し、映画の最初に着てる服は、刑務所にいる以外の場面ではずっと同じで、シャツについたシミも最後までそのまま。

そういう主人公の映画が大ヒットしてるという。スペイン人はかなり手ごわいぞ。
サッカーに関しては、もう当分勝てそうもないのもわかるくらい国民性として手ごわい。

あの突撃大ヒンシュクコメディ『ボラット』のサシャ・バロン・コーエンが、このトレンテを、自分が演じるリメイクに動いてるのも何となく納得だよ。
オナラを手掴みして相手に嗅がせるギャグが何度も繰り返される。
小学1年生が大ウケしそうなギャグがほとんど。
そうかと言えば定期的に女たちが出てきてオッパイ見せてくという。
まあ子供もオッパイ好きだけどな。

金に釣られて殺しの仕事を請け負ったトレンテが罠にはめられ、刑務所送りに。
シャワー室で右隣の黒人に色目使われるが、
「こいつの方がいいよ」と左隣の白人の足元に石鹸を落とす。
背を屈めた白人を見て黒人襲いかかる。この場面でア●ルと裏キ●タマが画面に大写しに。
これコメディ映画だよな?コメディどころか映画で裏キンを目にするなんて前代未聞だよ。
これに国民が詰めかけてるんだろ?スペイン人手ごわすぎるぞ。

刑務所でもめげることなく、『ショーシャンクの空に』みたいにポスターの裏の壁からトンネル掘ってる囚人と話をつけて、脱獄計画を練る。
トレンテ曰く『勝利への脱出』作戦。
あのスタローンの映画みたいに、刑務所内でサッカーの試合を催し、ハーフタイムの間に抜け出すというもの。
脱獄は成功するのか?


とまあ、ギャグはほんとくだらないんだが、トレンテの破壊的なキャラのせいで、結構楽しく見れてしまうからおそろしい。
ウンコとオナラとキン●マとオッパイが主成分といってもいい、このコメディはまず、日本で一般公開されることはないだろう。

一番笑ったのは、殺しを請け負ったトレンテが、地元の暇な奴らを集めて手伝わせようとする場面。
殺しの講義をして、手近なハサミや石を手に
「こんものを使うのは素人だ」
「地下鉄の切符でも頚動脈が切れる」
と言って、一人にかかってこさせる。
そいつに思いっ切り首を締められ、頚動脈狙って切符を振るうが、ペナッと折れる、さらに首を締められ続け、失神しそうになって、結局さっきのハサミをそいつの腕に突き刺す、そんな場面。

トレンテを演じるサンティアゴ・セグーラは監督も兼任。
ボラットと同じように、このキャラも自分で作り上げたものなんだろう。

2011年10月10日

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