「ファラリスの雄牛」が見れるぞ [映画ア行]

『インモータルズ』

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いきなり余談だが、いまシネコンでさかんに流れてる予告編の中で、デヴィッド・フィンチャーの新作『ドラゴン・タトゥーの女』が群を抜いてカッコいいね。
去年日本でも公開されたスウェーデン映画『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のハリウッド・リメイクだが、何の説明もセリフの場面もなく、トレント・レズナーとヤー・ヤー・ヤーズのカレン・Oのユニットによる『移民の歌』のカヴァーに合わせて場面が刻まれ、終盤にデカいテロップがリズムに合わせてバンバンバンと出る。
「悪」「だけが」「唯一」「悪を」「制す」
これは期待せんわけにはいかないよ。


さて『インモータルズ』だが、ごく簡単に言うと「ギリシャ人をオリンポスの神々が助ける」って話だ。
現在のギリシャも助けてやれよ、EUに頼ってないでさ。

ゼウス率いるオリンポスの神々は、人類誕生の遥か昔に、闇の神タイタン族を戦いの末に、地上から地底深くへと幽閉した。以降、オリンポスの神々は天空の世界で、地上の人類の平和と繁栄を見つめ続けてきた。
神々は人類の争いごとに介入してはならないという掟があり、ゼウスは地上で老人に扮し、一人の若者を救世主として鍛え上げていた。
名も無き村人の子で、売春婦と周りから唾棄される母親をかばう優しさと、軍人にも歯向かう恐れ知らずの闘志。その若者テセウスこそ真の勇者の資質を持つと見込んでいた。
そしてテセウスの資質が試される時が訪れようとしていた。

世界征服の野望を持つ、イラクリオンの残忍な国王ハイペリオンが、大軍を組織し、ギリシャの村々を破壊、難攻不落を誇るタルタロス要塞へと迫っていた。
テセウスの村も襲撃を受け、果敢に戦うも多勢に無勢のテセウスは捕らえられ、目の前でハイペリオンによって、母親を殺されてしまう。

捕虜となり、塩湖での過酷な塩堀りの労働で、死の淵にあったテセウスに、口移しで水を飲ませたのは、巫女のパイドラだった。パイドラはテセウスに触れた時、この若者がゼウスに選ばれた者だと見通した。
そして、幽閉されたタイタン族を解き放つ鍵を握る「エピロスの弓」を、ハイペリオンより先に探し出さなければ、世界が終わると確信し、テセウスや盗賊たちと脱走して、そのありかへと向かう。

一方、ハイペリオンも、巫女のパイドラこそが「エピロスの弓」の行方を握ってると知り、巫女たちを捕らえていた。3人の巫女は「私がパイドラだ」と名乗り、弓のありかは知らないと言う。
ハイペリオンは彼女たちを「ファラリスの雄牛」の拷問にかける。

パイドラの導きによって、弓を手に入れたテセウスたちは、タルタロス要塞へ向かう道中の修道院で、拷問にかけられた巫女たちの変わり果てた姿に遭遇する。そこにはイラクリオンの軍隊が待ち伏せしており、テセウスたちは窮地に陥る。
その時、天空から閃光とともに、黄金の鎧に身を包んだ神々が舞い降りた。

「おいおい、神様は人間の揉め事に介入しないんじゃないのか?」
と見てたが、舞い降りたのが戦いの神アレスだからさすがに強いな。軍人が気の毒だわ。
なぜか妹のアテナも付いてきてるんだが、さらに父ゼウスまでやってくる。
テセウスたちは何のことやら呆然と見守る中で、ゼウスは
「人間は放っとけって言うたやろー!」
と激怒し、なんとアレスをひと蹴りで粉砕。神様も死ぬんだな。

テセウスはゼウスに
「あとは自力でやれ、俺たちは知らん」みたいなこと言われ、アテナに「息が止まるまで走り続ける」という馬を与えられ、一路タルタロス要塞へ。

なんだかんだで弓がハイペリオンの手に渡ってしまったため、要塞を越えられ、タイタン族の幽閉される霊廟を探し当てられるとエラいことになる。結局エラいことになって、
「もう人間の手には負えん」
とゼウス再降臨。オリンポスvsタイタンの再戦の火ぶたが切られる。


ターセム・シン監督が全幅の信頼を寄せる石岡瑛子が、今回も衣装デザインを担当。
全身黄金スーツの神々は、マレーシアにしか棲息しないというオウゴンオニクワガタを思わせるね。

ターセム・シン監督といえば、映像に凝りまくりの人だが、同時に『ザ・セル』の時もそうだったが、拷問道具にも高い関心を持ってる。
映画に出てくる「ファラリスの雄牛」は、ギリシャで考案された最古の拷問器具と言われてるもの。

ファラリスの雄牛.jpg

真鍮で出来た、ほぼ等身大の牛の置物。中は空洞で、胴体の中心を水平に開けられるようになってる。
その空間に縛り上げた人間を放り込み、蓋をして、牛の胴体部分の下で火を炊く。
蒸し焼きにされるってことだね。
中の人間が暑さで呻き声を上げると、それが牛の鳴き声のように外に漏れるので、この名がつけられたという。
よくこんなもの発明したなと思うが、発明者が最初に放り込まれたらしい。神も仏もないな。

その「ファラリスの雄牛」が大のお気に入りらしい、残忍なハイペリオス国王を演じるミッキー・ローク。
『レスラー』で華々しい復活を遂げた後は、大した役をやってなかったが、今回はこれぞ仇役という目立ち方だ。
見てて、これは『地獄の黙示録』のカーツ大佐=マーロン・ブランドを気取ろうとしてるなと思った。
最初に自らの宮殿で部下の報告を受ける場面、腰かけた状態で、ヌッと顔を突き出す感じとか、つねにザクロとかクルミとかを食べながら、話しをする所とか。
ミッキー・ロークはイタリア系だからマーロン・ブランドは尊敬してるだろうし、コッポラ監督とも縁があるしね。

そのミッキー・ロークと、テセウス役のヘンリー・カヴィルによるプロレス肉弾戦と、オリンポス対タイタンの殺し合いが同時に描かれるクライマックスは、もうとにかく勢いと馬力の迫力ではある。
俺は韓流スターと香港スターとHIPHOPアーティストと同じ位に、ギリシャの神々には明るくないんで、神様たちがタイタン族に刺し殺されたりするのは意外だったよ。

大体、天空から「ドーン!」って衝撃とともに地上に降り立つんだから、肉体も相当頑丈に出来てるはずだろ?
タイタン族の剣は特注なのかな。
この場面のオリンポスの神々が、タイタン族をブッた斬るさまは、もう斬るというより粉砕する感じで、肉片が画面一杯に飛び散ってる。
でも残酷さはないのは、タイタン族が人間の形はしてるが、人間じゃないってことだから。

この映画も3D版で見たが、たいした効果はないね。一番3Dしてたのはエンディング直前の、無数の神々が天空で戦う様子をCGで描いてるとこだもの。結局3D効果出すにはCGで画面作らないと駄目なんだろ。
もういい加減、実写では3D効果得られる技術には至ってないことを認めろよ映画界。
こんな程度のもんで400円とか割り増し取られて、メガネかけてるだけで鬱陶しいんだよ。

2011年12月6日

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