追補版・『午後十時の映画祭』② [「午後十時の映画祭」]

この映画が観たい『午後十時の映画祭』追補版②

1月23日のこのブログで、最初にラインナップした「70年代編」の50本のうち、4本がDVDで見られるようになったので、リストへの入れ替えタイトルとコメントを入れたんだが、その後も新たに

「70年代編」から、
『栄光への賭け』『コンラック先生』『デリンジャー』の3本が、
「80年代編」から、
『ザ・クラッカー 真夜中のアウトロー』『タイムズ・スクエア』の2本が、

DVD販売決定とのニュースが入った。今回のはツタヤのオンデマンドDVD及び「発掘良品」でのリリースではなく、4本は「20世紀フォックス」からのリリースだ。

そんなわけで今回も、その5本に替わるタイトルとコメントは以下の通り。



『あんなに愛しあったのに』(1974)イタリア 
監督エットーレ・スコラ 主演ステファニア・サンドレッリ、ヴィットリオ・ガスマン

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1974年の映画ながら、日本公開が実現したのは1990年。ミニシアター・ブームの恩恵といえる。
『スプレンドール』では映画館主という主人公の役柄を通じて映画愛を語ったスコラ監督だったが、この作品でも、『自転車泥棒』『甘い生活』『太陽はひとりぼっち』『戦艦ポチョムキン』『人間の絆』といった名作を引用しながら、3人の親友たちの、終戦から74年までの約30年間を描いてた。
3人の男たちはレジスタンスで共に戦ってるから、日本だと「団塊の世代」のひとつ上の年代だろう。

その3人に愛されるのがステファニア・サンドレッリだ。彼女のいる前でケンカになり
「もう、いい人なんて言われたくないんだよーっ!」
と走り去ってく場面とか、セリフでかなり笑った記憶がある。
セリフの量も多いし、映画全体の情報量が多いんで、一度見ただけじゃ咀嚼しきれない感じはあった。
今見直したらもっといろんな部分に反応できるんじゃないかと思う。
フェリーニ監督とマストロヤンニが、トレビの泉で『甘い生活』を撮影してるという場面があり、実際に本人たちが出演してたり、映画好きなら必見だろう。

3人の男たちの行状はカッコいいとはいえないが、スコラ監督の
「イタリア人は堕落してるかもしれないが、愚かではない」
という言葉が、この映画の人物描写を言い当ててると思う。
一度ビデオになってたと思うが、DVDにはなってない。



『らせん階段』(1974)イギリス 
監督ピーター・コリンソン 主演ジャクリーン・ビセット、クリストファー・プラマー

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うーむ、我ながらもう何本目だ?という位に、またジャクリーン・ビセットを選んでしまった。
今回はクリストファー・プラマーのオスカー受賞記念ということで。
これは1946年のロバート・シオドマク監督作のリメイク版。火事で最愛の夫と娘を目の前で失ったショックで、以来声が出せなくなったビセットは、叔父の家に身を寄せてるんだが、叔父の家の周辺では、この1年で5人が殺害されるという事件が続いていた。
共通するのは、被害者たちは皆、身体になんらかの障害を持ってたということ。ビセットも、口がきけない自分も狙われるんではと怯えていた。

クリストファー・プラマー演じる叔父は心理学の教授だが、もうおわかりのように殺人鬼である。
彼は完全主義者で、「健常者」ではない存在を許さなかったのだ。ひどい話だね。
このストーリーはオリジナルが1946年ということからも、ナチスの思想を思わせる。実際ナチス・ドイツの時代には「健常者」でないと迫害されたというからね。

クリストファー・プラマーは教授というアカデミックな役柄にはぴったりで、弟役でジョン・フィリップ・ローが出てくるが、二人とも瞳が青すぎてゾッとさせるもんがある。
そこに挟まれてビセットの草色の瞳が恐怖に揺らいでるのが、また色っぽくもあり。
ネタ的にちょっとまずいということなのか、今までビデオにもDVDにもなってない。



『ロンドン大捜査線』(1971)イギリス 
監督マイケル・タクナー 主演リチャード・バートン、イアン・マクシェーン

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原題『VILLAIN(悪党)』の方が潔くカッコいいと思うのだが、リチャード・バートンの主演作の中でも異色といえる、主人公のニューロティックな人物像が特徴の犯罪ドラマ。
バートン演じる強盗ヴィクは、残忍な手口で金品を奪うサディストなんだが、母親思いで、休日には海辺のレストランで一緒に食事するのを楽しみにするような男。強盗を企てる若い腹心のウルフとはゲイの関係も匂わせてる。同じ時期にイギリスで作られた『狙撃者』に通じるような、一筋縄でいかない雰囲気が漂ってた。
これは昔、深夜のテレビで見た憶えがあるが、細かいストーリーの運びなどは忘れてしまった。

ヴィクを追う警部には『最後の脱出』のナイジェル・ダヴェンポート。
バートンと妖しい関係のウルフを演じるイアン・マクシェーンは当時まだ30手前。『電撃脱走・地獄のターゲット』『オスロ国際空港』など、強い個性を持った主役と絡む準主演の位置づけをこなしてたね、この頃は。谷隼人に似てるなんて言われてた。
この人は今年70になるんだが、ここ数年ハリウッドでラスボス的な起用が目立つ。『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』とか『デス・レース』とか。
70年代の馴染みの顔が頑張ってるのを見るのは嬉しいね。
監督のマイケル・タクナーはこの後に、アリステア・マクリーン原作の『爆走!』を撮ってる。
この映画も『爆走!』も、ビデオ・DVDにはなってない。



『ザ・アマチュア』(1981)アメリカ 
監督チャールズ・ジャロット 主演ジョン・サヴェージ、クリストファー・プラマー

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これも20世紀フォックス作品なんで、次のリリース予定の中に既に入ってるかも知れないんだが。
レッドフォード主演の『コンドル』と対を成してるというか、類似点のあるスパイ・サスペンスだ。
『コンドル』では主人公はCIAの下部組織で、出版物の文面からテロなどに繋がる暗号を探し出す部署の職員。そのオフィスが襲われ、仲間の職員が皆殺しに遭う。
この映画のジョン・サヴェージ演じるチャールズも、CIAの暗号解読部門の職員だ。

冒頭、ミュンヘンでテロリストによる人質篭城事件が発生。その様子がLIVEで中継されてる。
チャールズは画面を見て愕然とする。ジャーナリストで恋人のセーラが、テロリストに銃を突きつけられてる。
テロリストは「我々の本気を示す」と、セーラの頭を撃ち抜く。
チャールズはCIA上層部にテロリストの処刑を申し入れるが、聞き入れられない。
そこで自らの暗号解読技術で掴んだ、CIAの極秘情報をネタに交渉し、「対テロ」の暗殺技術を身につける訓練を受けさせることを了承させる。

ジョン・サヴェージという「線の細い青年」が似合う役者が、殺しの技術を仕込まれ、テロリストと渡り合うという、そのプロットを題名が表している。
クリストファー・プラマーはここでも、チェコの諜報活動部長の任にある「教授」役だ。
チャールズに訓練をつける大佐を演じるのはエド・ローター。70年代脇役スターの筆頭に上げたい役者だが、ここでは主人公を手助けするのか、敵となるのかという微妙な位置にある人物を渋く演じてる。
ビデオは前に出てた。



『天国への300マイル』(1989)ポーランド・デンマーク・フランス 
監督マーチェイ・ディチェル

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この映画を見てる人は少ないかもしれないな。ミニシアターで見てるんだが、それがどこだったか思い出せない。
TYO という名の配給会社も耳馴染みがない。
ビデオは昔ひょっとしたら出てたかも知れないが、DVD化はされてない。

偶然にもこの当時、子供たちの過酷な旅を描いた映画が、相次いでミニシアターで上映されてたのだ。
1988年にはアンゲロプロス監督の『霧の中の風景』、
1990年にはアカデミー外国語映画賞のトルコ映画『ジャーニー・オブ・ホープ』、
1992年にはイタリアの『小さな旅人』と、どれもいい映画なのだが、この『天国への300マイル』も、ポーランドから西側デンマークへ亡命を企てようとする、14才と11才の兄弟の旅を甘さを排して見つめてた。
この兄弟の仲の良くない感じは、ロシア映画『父、帰る』の兄弟を連想させる。
弟が肌身離さず持ってたアコーディオンを、兄に車から捨てられる場面は可哀相だったな。

この兄弟は母国で父親が思想的な問題から、学校の職を解かれ、ならば自分たちが西側で働いて仕送りしようと考えたのだ。だが難民施設に収容された様子がニュースとなり、ポーランドの両親の立場も厳しくなってしまうという筋立て。
この兄弟は希望を求めてデンマークへ渡ったが、そのデンマークで熾烈なイジメにあう少年を描いたのが、スサンネ・ビア監督の2010年作『未来を生きる君たちへ』だ。
子供たちにも安住の地はないのだ。

2012年3月8日

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