死亡フラグが読めないワニワニパニック [映画マ行]

『マンイーター』

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TOHOシネマズ日劇の「秘宝系レイトシリーズ」とでも呼ぶべきプログラムが定着してるようで、俺もこれまで『ピラニア3D』『ドライブ・アングリー3D』『トロール・ハンター』と見てきた。この『マンイーター』もその番線の新作だが、ららぽ横浜でも上映されてたので、そっちで見た。淋しい入りだったが。

ひと言で表せば「巨大ワニ・パニック映画」だ。この手の物なら3Dでやりそうなもんだが、実はこの映画2007年作なのだ。「なんでいまさら?」と思うが、これはオーストラリア映画で、当時はまだ無名だったオーストラリア出身のサム・ワーシントンとミア・ワシコウスカが出ていて、「キャストがそこそこ売りになる」と配給会社も読んだんだろう。

今じゃハリウッドのスターとなった二人が、無名時代に出たパニック映画を、今見るというのがポイントになってる。つまり無名の彼らだから、映画の中で生き残るとは限らないわけだ。誰が犠牲になって、誰が生き残るのか、予想つきにくい。

もう一つの重要なポイントは、ワニが棲息する川を行く、「リバー・クルーズ」の観光船の舵を取るのがラダ・ミッチェルであること。
どんな乗り物であれ、彼女に操縦させたり、運転させたりしたら、ロクなことにならないよという、法則が発動されるのだ。

2000年のSF『ピッチ・ブラック』では、一般乗客と共に、囚人も護送する宇宙船を彼女が操縦してるが、アクシデントにより未知の惑星に不時着。闇の中から襲いくる謎のモンスターに乗客たちが次々と餌食になっていった。
この映画の前年2006年の『サイレント・ヒル』では、幼い娘のうわ言の謎を探ろうと、亭主が止めるのも聞かずに、車に娘を乗せて、ゴーストタウンに迷い込み、二度と戻れなくなってしまう。
『ピッチ・ブラック』の結末を知っていれば、この映画で主役級であるラダ・ミッチェルとて、生き残れるのかということには懐疑的になるだろう。

もう一人メインを張るのが、ドラマ『エイリアス』で、ヒロインにとって頼りになるんだか、ならないんだか微妙な立場にあった優男を演じてたマイケル・ヴァルタンなので、これも不安だよねえ。
その他のクルーズ客に関しちゃあ、全員に死亡フラグが立ってるようなもんだから、さあどうなるどうなる?という感じだ。


映画はアメリカ人の旅行ライターのピートが、オーストラリアのノーザン・テリトリーと呼ばれる地域にある、「カカドゥ国立公園」という、巨大な岩山とジャングルが並立する、目を奪われるような景観を楽しめる「リバー・クルーズ」の体験取材を書きにやってくる所から始まる。

小型の観光船の舵を取るのは、女性ガイドのケイトだ。10人前後の乗客を乗せ、船は巨大な岩山の裂け目を流れる川を上り、折り返してくるコース。イリエワニの餌付けの様子を見る乗客は、この川にはワニが棲息してることを実感する。小型船から手を伸ばすと水面に触れられる、その「高さ」にもスリルを感じる。
ケイトに気がある地元の若者ニールが、モーターボートでからかいに来るが、軽くいなして、折り返し地点へ。

だがビデオカメラを覗いてた乗客の一人が「救難信号のようなものが見えた」と。たしかに上流の方に、空に何か打ち上がるのが見える。
クルーズの途中だったが、ケイトは「救難信号を見たら現場へ向かう」というルールを、乗客に説明し、理解を求める。定期的に薬を飲まなくてはならない年輩の女性は、不安を見せるが、1時間くらいで往復できるとケイトに言われ納得する。
船は速度を落としながら、現場に近づく。前方に小島のような中州が見えたが、水面に何か浮いている。
確認しようとした時、突然船は水底から突き上げられるような衝撃を受け、たちまち船床が浸水する。
ケイトは舵を切り、中洲へと船を突っ込ませた。乗客全員を降ろすと、船は沈没してしまった。


無線も水につかり、使い物にならない。ケータイの電波も届かない。ケイトは船が戻らなければ父親が探しに来ると言ったが、それも気休めのようだった。しかも夜には満潮となるため、この中州は水に没してしまう。
対岸には泳がなければ、辿り着けない。動揺する乗客は、さらなる悪夢を目の前にする。

夫婦で来ていた乗客の夫が、水辺に立っていたのだが、その背後から7メートルはあろうかという巨大なワニが、一瞬にして咥えて水中に引きずりこんだのだ。妻は半狂乱となり、乗客は恐怖に硬直する。

その時、ニールとその友達が乗るボートが通りかかった。ケイトたちは必死に助けを叫んだ。ニールは気がついて中州へと近づけたが、そのボートもワニの突進を食らい、瞬く間に沈没。ニールの友達の姿も見えなくなった。
ニールは中州まで必死に泳ぎ、難を逃れる。巨大なワニがここにいる。
なぜワニは襲ってくるのか?
ニールは「ここが縄張りの中なんだろう」と。
自分たちはそこに侵入してしまったのだ。ワニは食いついた獲物を、一旦餌場に持っていき、貯めておく習性がある。餌場に行ってるだろう今の内に対岸の岸辺に渡るしかない。
ニールの提案を乗客たちは聞こうとしなかった。
「泳いで渡るなんて無理だ」

ニールはボートに積んであったロープを使うことを思い立った。中州の小島には太い木が生えており、ロープを対岸の木に結びつければ、泳がなくても、ロープにぶら下がって進めば対岸に着ける。まず対岸までは自分が泳いで渡ると言った。ワニは捕食するためジャンプすることもある。ロープで渡る途中で襲われる危険性もある。だがこの方法しかなかった。
ニールの勇敢な行動で、ロープは無事に対岸の木に結びつけられた。
乗客たちの決死の脱出が始まった。


ワニが潜む上をロープで渡るのって、どうしても『ジャッカス』のネタを思い出しちゃうね。あの時はパンツ一丁で、そのケツに鳥の生肉挟んでたけど。

この場面の後にも、ピートがワニの餌場に迷いこんでしまう場面があり、心臓バクバクもんである。
巨大ワニはCGとともに、実物大の模型(アニマトロニクス)で製作されており、その全身を現す餌場の場面は、迫力の造形に息を呑む。
眠りに戻ってきたワニを起こさないように脱出を試みるんだが、韓国のモンスター映画『グエムル』で、少女が怪物の巣から脱出しようとする、あの場面の緊迫感に匹敵する見せ場となってる。

映画の前半はほとんどワニが気配だけで、姿を表さないあたりは、スピルバーグの『ジョーズ』の演出を踏襲してるかな。
それとこの映画の監督グレッグ・マクリーンは、2005年に『ウルフクリーク/猟奇殺人谷』というホラーで注目浴びたんだが、その時の演出も、前半は淡々とした展開に留めてあった。それだけに後半の「絶望じかけのオレンジ」みたいな、たたみ掛け方が、インパクト残したのだった。

本当にワニがいるかしらんが、この映画でロケされる「カカドゥ国立公園」のダイナミックな景観は、一度行ってみたいと思わせるものだ。スクリーンで見といてよかった。

ところで映画で共演してるラダ・ミッチェルとミア・ワシコウスカには繋がりがある。二人とも「レズビアン」を表明してるリサ・チョロデンコ監督の映画に、それぞれ出てるのだ。ラダ・ミッチェルは1998年の『ハイ・アート』で主役を張っていて、ヌードにもなってる。「ビアン映画」としても名作だと思う一作。
一方のミアは2010年の『キッズ・オールライト』で、ビアン夫婦の娘を演じてた。あの映画はラストのマーク・ラファロへの仕打ちが納得いかなかったね。

2012年4月26日

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