イメージフォーラムに巨乳降臨 [映画ナ行]

『女体拷問人グレタ』

グレタ.jpg

イタリア映画一色という感じで過ぎ去ったGWだったが、そんなさ中に、渋谷のイメージフォーラムでこんなものを上映してたのだ。しかしよく見つけたな俺も。

丁度時期を同じくして「イメージフォーラム・フェスティバル」が開催されており、そのプログラムの中の「ローザンヌ・アンダーグラウンド・フィルム・フェスティバル提携企画」の枠で上映された。
「クィアー・フィルム」の1本ということだろう。
「イメージフォーラム・フェスティバル」の本筋は実験映画なんだが、そっちは見ずに、これ1本だけ見に行った。


知ってる人にはいまさら説明不要だが、ダイアン・ソーンという、ドSキャラで売った巨乳女優が70年代に人気を博してたのだ。彼女を一躍有名にしたのが「イルザ」シリーズ。

1974年の『ナチ女収容所/悪魔の生体実験』に始まり、1976年の『アラブ女地獄/悪魔のハーレム』、翌77年の『シベリア女収容所/悪魔のリンチ集団』と、すべて日本公開されてる。

この『女体拷問人グレタ』は、アメリカなどでは「イルザ」シリーズとしてDVDとかになってるようだが実際は別物。
『アラブ女地獄/悪魔のハーレム』の製作時に、「イルザ」シリーズで一山当てたカナダの映画会社と、ダイアン・ソーンが待遇などを巡ってモメてた。新作企画も「イルザとドラゴン(カンフーの方ね)」とか「イルザとアミン大統領」とか色々上がるが、すべてポシャリ、彼女がしびれ切らして、西ドイツの映画会社に呼ばれて撮ったのがこれだった。

名前もグレタに変えてあるが、中身はほとんど一緒だ。
スピンオフともいえる『女体拷問人グレタ』は、しかしジェス・フランコという、本家よりネームバリューある監督が撮ってるのがオモロイ。

昔フジテレビで深夜に、新作映画のトレーラーをただ流すだけという『洋画の窓』という帯番組があり、「グレタ」のトレーラーを見て生唾飲み込んでた記憶がある。

「イルザ」シリーズの売りは、ダイアン・ソーンがナチの親衛隊になったり、アラブ国王のハーレムを仕切ったり、スターリン独裁下の政治犯収容所の所長になったり、時と場所を超えて、剣呑な環境で巨乳を躍動させるという、コスプレの楽しみもあるわけだ。

ポシャった企画も実現してればよかったのにねえ。
多分「イルザと北の国から(首領さまの方ね)」も企画に上がってたんじゃないの?


しかしもっと続きそうなものだと思うのに、意外と短命なシリーズに終ったのは、『シベリア女収容所/悪魔のリンチ集団』のせいだろう。
俺はたしか銀座の丸の内東映パラス(今の丸の内東映の地下)で封切りを見に行ったんだが、これには失望させられた。女収容所と題名つけてるのに、囚人は男なのだ。
イルザが女所長で看守は女、つまり裸で「責められる」のは男という、本末転倒ぶりだった。

別に映画を売るのに、多少の誇張やハッタリは構わないが、本質的な部分に嘘があるのはいかんだろ。
俺はダイアン・ソーンの巨乳自体より、イルザが女を責めるのが趣味という、その「レズッ気」に期待してたのだ。
だから『シベリア女収容所…』を見た後は、帰る足取りも鉛のように重かった。
いっそマイク水野に『イルザとシベ超』として映画化してもらえばよかったと思う。

グレタチラシ.jpg

体たらくに終った本家シリーズ第3弾と同じ年に出た『女体拷問人グレタ』の方は、きっちり基本を踏まえていて、もう全編女体でカットを繋いでく感じは、さすが安心のジェス・フランコ印である。

今回は南米とおぼしき某国で、性的異常の(主に女性)患者を更正させるという表向きで、反政府活動を行う人間を拷問にかけたりしてる療養施設の女所長という役柄だ。
もちろん南米ロケではなく、ジャングルもどこかの大きめの公園で撮影してるんだろう。

冒頭から女性患者たちのシャワー・シーンだ。
そこから脱走しようとして、捕えられ、女所長グレタから手酷い拷問を受けた女性患者の、安否を気遣う姉が、自分も患者になりすまし、施設から妹を救い出そうとするというのがアウトライン。

しかし1973年の監督作『吸血処女イレーナ・鮮血のエクスタシー』で主演に起用して以来のお気に入りで、本作の頃には嫁にしてた、リナ・ローメイの方にカメラを向けがちなジェス・フランコだったので、肝心のダイアン・ソーンがいまいち目立たないのだ。

拷問シーンも意外と淡白で、電気ショックの描写などは、単に患者が身体を反らしてるだけ。
むしろ患者になりすましたヒロインを、患者のボス的なレズのリナ・ローメイが、いたぶる場面の方がエグかったりする。トイレ済ました後に「あたしのケツをお舐め!」とか。AVじゃないんで直接の描写はないが。
それとグレタの右腕として働く男が、拷問の様子を隠し撮りして、業者に売って、懐を肥やしてたり、悪キャラが分散しちゃってるね。

拷問され続けて廃人状態の妹を、ようやく施設内で発見したヒロインだったが、目の前で妹はグレタに顔からビニール被せられて窒息死。
ヒロインを施設に送り込んだ、反政府活動家の医者も、正体を見破られ殺害。
助けも来ないまま、ヒロインもロボトミー手術を施されるという救いのなさは、西ドイツならではのダーク感。

女性たちを好き放題に責め苛んだグレタは、患者たちの反乱にあう。
大勢に取り囲まれて、裸にひん剥かれ、一斉に噛み付かれる。
野生の虎が獲物を食いちぎる映像をカットバックさせながらの「最期の晩餐」場面は、グレタの肉が食いちぎられる様を執拗に描写する。ここだけゾンビ映画っぽい。

そしてグレタの凄惨な最期も、あの男が隠し撮りしてるのだった。
ブロンソンの隠し子みたいな顔した役者だった。

この日は「イタリア映画祭」で3本見た後に、夜これを見たわけで、さすがに疲れはしたが、間違っても「イタリア映画祭」でかかるような映画じゃないんで、いい箸休めにはなった。この例えも変だが。

2012年5月9日

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。