「やられた!」って思う映画 [映画ハ行]

『ハロー!?ゴースト』

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都内では新宿武蔵野館で1日2回上映のみという韓国映画だが、多分いま公開されてる映画の中で、最も口コミで評判が広まってるのがこれじゃないか。

俺も『ハロー!?ゴースト』という、何の期待も抱かせないような凡庸な題名だし、チラシを眺めても、全然食指が動かなかった。だが韓流好きの知り合いが「これは絶対見るべき!」とプッシュしてくるし、たしかに方々で評判がいい。

この映画はハリウッド・リメイクが決定したとチラシには書いてあったが、そもそも映画の設定自体は、過去のハリウッド映画にあったじゃないかと、見る前は思ってた。
生死の境をさまよって生還した青年に、複数のゴーストが取り憑いてしまい、彼らの願いを叶えて成仏させないとならないって話。


1993年の『愛が微笑む時』は、バスの事故で命を落とした4人の男女が、ゴーストとなって、その現場で産まれた赤ん坊の守護霊となる。だが成人した主人公は利己的な性格となり、ゴーストたちは彼の前に出現して、純粋さを取り戻させようとする。主人公を演じてたのはロバート・ダウニー・Jrだった。

それよりさらに近い設定だったのが、2008年の『オー!マイ・ゴースト』
人づきあいを極度に嫌う主人公の男が、内科検診の麻酔ミスで、7分間の心肺停止に。蘇生するとともに、ゴーストたちが見えるようになり、現世との仲介役を求められて四苦八苦する。

この『ハロー!?ゴースト』もほぼそういう展開であり、際立って演出が上手い訳でもない。
だがサッカーでいえば、残り10分でハットトリック決めて、逆転勝ちしたみたいな、途方もなく鮮やかな着地を決めるのだ。
それまで笑いは起こるものの、いたって静かな場内に、さざ波のようなすすり泣きの音が広がっていった。


安ホテルの一室で、いままさに大量の錠剤を飲んで、自殺を図ろうとしてる青年サンマン。
彼は孤児院で育ち、面会に来る大人で、サンマンと呼んでくれる人は一人もいなかった。
天涯孤独な上に、つい最近仕事もクビになった。生きてても希望もないので、自殺しようと思うのだが、なぜかうまくいかない。

錠剤の服用も失敗に終わり、朦朧としたまま、今度は川へ身を投げる。
だが丁度通りかかった警察の船に救助される。

病室のベッドで意識を取り戻したサンマンの前に、見慣れない顔ぶれが。
太っちょでヘビースモーカーの中年男。
美人看護師のヒップをガン見するのが楽しみの、呑んだくれじいさん。
なぜかロッカーの中で泣いてるアラサー女性。
ベッドで飛びはねてる子供もいる。
病院のスタッフの誰もが「そんな人どこにいる?」という反応を見せる。

この4人は自分にだけ見えるのか?
ゴーストに取り憑かれてしまったと思ったサンマンは、霊媒師を訪ねる。
なんとか取り除いてくれと頼むが、霊媒師は
「霊をあの世に送り出すような力はない」ときっぱり。

ゴーストたちを成仏させるには、この世に未練を残してることを解消してやるしかないと言う。
自殺すらする暇もなくなり、サンマンは、しぶしぶゴーストたちの願いを叶えるために奔走することになる。

その過程でサンマンは、シングルマザーで美人の看護師ヨンスと知り合う。
ヨンスの父親は彼女の勤める病院のホスピス棟に入院していた。彼女は父親にはきつい調子であたり、サンマンはやがてその理由を知ることになる。

生きる希望もなかったサンマンは、ヨンスに惹かれていく中で、人を愛するという気持ちに目覚め、ゴーストたちとの「共同生活」を通じて、生きる意欲が湧いてくる。


この映画はこれ以上あれこれ書くのは野暮だろう。ゴーストたちの願いを叶えてくことが、意味があることだとわかった途端に「すすり泣き」が広がったのだ。

「映画の日」で休日ということもあり、ほぼ満席に近かった。
新宿武蔵野館でいえば、最大キャパの「シアター1」でかければいいのにと思うし、もっと公開劇場も増やせばいいのにとも思う。

しかしこれは金がかかるわけではないし、ほんと着想の勝利なんで、まだまだゴースト・ファンタジーも作りようがあるんだなあと感服したよ。

2012年7月1日

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