爆音で見た『ラスト・ワルツ』と『未知との遭遇』 [映画ラ行]

『ラスト・ワルツ』

d0789.jpg

ライヴ用の音響システム組んで映画を見ようという企画「爆音映画祭2012」を開催してる、「吉祥寺バウスシアター」に、雨のそぼ降る中、足を向けた。
『ラスト・ワルツ』はほぼキャパの220席が埋まってたんじゃないか?

『ラスト・ワルツ』は過去に何度かスクリーンで見てはいる。
日本公開時の1978年には、俺は試写会で見て、それまでザ・バンドを聴いたことがなかったんで、「こんなカッコいいバンドがいたのか!」と、LP買い漁った。

公開初日の「みゆき座」に、ロビー・ロバートソンが舞台挨拶に現れ、ギターで1曲披露したと知り、
「駆けつけときゃよかった」と後悔したよ。
その後もスクリーンでかかる機会があると見に行った。

ハイライトは2002年の「東京国際映画祭」での特別上映だろう。
「シアターコクーン」の壇上にロビー・ロバートソンが登場した時はテンション上がったなあ。
5.1chデジタルリマスター版のDVD発売に合わせた上映だったと記憶してるが、音響もかなり鳴らしてくれてて最高だった。
そうかあれからもう10年経っちゃったか。

今回上映に使ったフィルムは、初公開時の物か、リバイバル時に焼いた物か、わからないけど、音の「抜け」や輪郭のクリアさでは、「シアターコクーン」上映時の方が良かった。

今回の音は「アナログ」でガンガン鳴らしてる感じだった。学生時代に「フィルム・コンサート」ってのが、時々催されてて、見に行ってたんだが、その時のデカい音の印象に近い。
音楽が終わると耳が「シーン」って鳴ってるあの感じだ。


今年レヴォン・ヘルムが逝ってしまったことで、この映画に映される5人のバンドメンバーで、あと二人しか残ってない。
ゲストで出てくるアーティストを見ても、このコンサートの数年後に世を去ったポール・バターフィールドと、すでに高齢だったマディ・ウォーターズを除いて、すべてがまだ存命してることを考えると、ザ・バンドから3人もが「欠けて」しまってるのは只事ではない。

見るたんびに追悼の気分が高まってしまうのはやり切れない。

『シェイプ・アイム・イン』を唄い出す前の、リチャード・マニュエルの瞳がとても奇麗で悲しくなるし、『同じことさ』のリック・ダンコの熱唱には胸が熱くなる。

それに今だからというわけじゃなく、俺が昔から『ラスト・ワルツ』のベストショットだと思ってるのは、『オフィーリア』を唄うレヴォン・ヘルムを、ドラムの背中越しから捉えてるとこ。
そのままアルバムのジャケに使えそうなほど絵になる。

もちろんジョニ・ミッチェルのカッコよさや、ヴァン・モリソンの短足地面蹴りは、何度見ても色褪せないね。



『未知との遭遇』(特別編)

未知との遭遇 特別篇.jpg

スクリーンで見るのが随分と久しぶりだったんで、楽しみにしてた。

だがチケット窓口で「フィルムの状態がよくないですが、よろしいですか?」
と言われ、支配人からも、上映前に「初公開時のプリントを使用してるんで、退色やコマ飛びなど状態はよくないのでご了承を」
と、かなり念入りに予防線張ってこられたんで、覚悟して見ることに。

それにしても状態の悪いフィルムだったね。
退色が進んで赤茶けた画面になってる。終盤はフィルム傷バリバリに出てるし、こんだけ事前に謝るんなら、料金割引にでもすればいいんだよ。
「シアターN渋谷」で新藤兼人監督の『鉄輪』を見て以来の退色フィルムだった。

音もデジタルリマスターとかではなく、とにかく昔のフィルムのサウンドトラック部分をそのままボリューム上げてるだけだから、中盤あたりのジョン・ウィリアムスのスリリングな劇伴も、音がベタッとつぶれてしまってる。
音量自体も「爆音」って感じでもない。デジタルIMAXの方がよっぽどデカいよ音は。


スピルバーグ作品の中において、『未知との遭遇』は地味な扱いになってる。
公開当時は、同年の『スター・ウォーズ』と張り合う話題作だったし、実際大ヒットした。
なぜ地味になったのかというと、スクリーンでかからなくなったからだ。

この映画をテレビ画面でちんまりと見ても、その醍醐味は味わえるはずもない。
ビデオ時代となって、初めて見たという世代にはインパクト薄いだろう。
テレビで見るようには作られてないのだ。

UFOに初めて遭遇する夜の場面の、ドキドキする感覚。
それは画面の大部分に夜の空間が広がっていて、まばゆい光を放って飛ぶUFOの航跡が、画面の奥の方にまで視認できる、そういう絵作りをしてるからで、その闇に包まれてる感覚が、テレビでは生まれ得ない。
スピルバーグは明かりを落とした映画館の館内自体を、「夜の空間」に見立てて演出してるのだ。

それをまた味わいたくて、今回の上映に駆けつけたんだが、フィルムが退色してて、夜の闇までが赤茶けてしまってるんで、まったく気分が出ない。

『未知との遭遇』に関しては「爆音」上映する意味がなかったと思うよ。

2012年7月2日

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。