サメVSピラニア 人食い対決 [映画ハ行]
『ピラニア リターンズ』
先週末の同日公開となった「どうぶつパニック」、その出来具合の軍配やいかに?というところなんだが、結果からいうと『ピラニア リターンズ』の勝ち。でも「圧勝」とまではいかない。
どちらも3D仕様で製作されたものの、『シャーク・ナイト』は日本ではなぜか2D版のみでの公開というハンデを負った。だが3Dで見れていれば結果は変わったかといえば、そんなこともないんだな。
『ピラニア リターンズ』が前作に続いて「R18+」というレイティングに指定されてるのに対し、『シャーク・ナイト』は「PG12」というレイティング。
なんだ子供も、親付き添いなら見れるじゃん、というこれはハナから描写のエグさに差がついてしまうのも致し方ないのだ。
『ピラニア リターンズ』は、監督は前作のアレクサンドル・アジャから、『The FEAST/ザ・フィースト』シリーズのジョン・ギャラガーにバトンタッチされたが、物語上のつながりはある。
前作でアバンタイトル部分の主演を張ったのは、『ジョーズ』に敬意を表してという意味合いかリチャード・ドレイファスだったが、今回はゲイリー・ビジーと、監督の父親で俳優のクルー・ギャラガーがアバンタイトルを飾ってる。
ゲイリー・ビジーはこの手の「どうぶつパニック」には出てないんだがな。
あえて言えば『プレデター2』リスペクトかな?
ただピラニアに食われるだけではないという所が、ゲイリーの芸風に合ってて最高だった。
ヴィクトリア湖の湖面を赤く染めた前作の惨劇から1年。
異変はヴィクトリア湖から遠く離れたアリゾナ州のクロス湖で起きた。行方不明の牛の死体が湖面に浮かび、確認に近づいた農夫たちが、牛の体を食い破って飛び出してきたピラニアの群れに襲われた。
前作で生き残ったピラニアたちは、地下水脈を辿って、別の湖へと移動してきたのだ。
折りしもクロス湖畔には、「ビッグ・ウェット」という名のウォーターパークが、開園を2日後に控えていた。
ここは子供連れだけではなく、大人の男女にも楽しめる趣向が凝らされた、ヒロインの大学院生マディには悪いが、とても「いい線いってる」水のアミューズメントだと俺は思った。
なにしろ施設内には「アダルトプール」なるものが併設され、コンドームの自販機も備えてある。
プールの監視員はなぜかストリッパーなのだ。
おっぱい丸出しでウォータースライダーで滑り下りてくる金髪のお姉さん方。これは流行るだろ。
これを考えたマディの義理の父親チェットは、まあ悲惨な末路を迎えはするが、経営者としちゃ、いい腕してる。
チェットが開園の日に、特別にプール監視員として招いたのはデヴィッド・ハッセルホフだ。
日本じゃ『ナイトライダー』の主役で有名だが、アメリカではむしろその後の『ベイウォッチ』の沿岸レスキューが当たり役とされてるようだ。
しかしハッセルホフはゲストとして来てるつもりなんで、プールでピラニア大襲来が起こっても、我関せずなのだった。
知り合いのカップルが謎の失踪を遂げ、怪訝に思ったマディと女友達のシェルビーは、湖の桟橋で、トビウオのように襲い掛かってくる大型のピラニアから、間一髪逃げ延びる。
マディは昨年のピラニアだと確信し、ヴィクトリア湖のほとりに住む熱帯魚店のグッドマンを訪ねた。
前作にも出てた“ドク”ことクリストファー・ロイドだ。
グッドマンは、このピラニアが鉄板も突き破るようなパワーを持ち、プールのような施設はおろか、下水管をつたって、民家にまで浸入するかもしれないと警告を発する。
一方、マディとともにピラニアに襲われたシェルビーは、その際、一匹のピラニアに体内への侵入を許してしまったようで、急に気分悪くなって道端でもどしたりした。
3Dで飛び散るのがゲロという悪趣味ぶり。
シェルビーは彼氏に介抱されてベッドで寝てたが、体の異変に切迫感を強め、急いで処女を捨てとこうと、彼氏を強引にベッドに誘う。
彼氏が体の上でグラインド始めると、シェルビーの腹部からなにかが動き出す。
彼女の叫び声をエクスタシーと勘違いする彼氏のチ●コに、ピラニアが噛み付いてた!
んなバカなという一席である。
マディが自宅の風呂場でバスタブにつかってウトウトしてると、蛇口からピラニアが、という場面は、足を開いた間からのカメラなど、まんま『エルム街の悪夢』になってて、しかも夢オチという。
「下水管をつたって、民家にまで」と期待させたわりには、そこまで惨劇の場を広げられなかったのは、予算の制約もあるんだろう。
結局ウォーターパークが血に染まるだけなんで、前作ほどのスケール感はない。
子供にまで容赦なくゴア描写が降り注いではいるが、演出の畳み掛け方においては、前作のアレクサンドル・アジャには劣るね。グロ描写が散発的な印象なのだ。
3Dなんでピラニアはこれ見によがしに飛び出してくるが、女の子たちがおっぱい見せてるわりには、飛び出し効果が薄く、期待に添えてるとは言い難い。
エンド・クレジットに、アウトテイクやらNGテイクやらハッセルホフのPVまがいの映像やらが、けっこう長く使われてる。ハッセルホフをリスペクトしすぎじゃないんかな?
『シャーク・ナイト』
この映画にに期待したのは、なんと言っても『スネーク・フライト』で、「ヘビヘビ大パニック」をエロとギャグを交えて爽快なまでに描き切ったデヴィッド・R・エリス監督だけに、サメでもやってくれるだろうと思ったからだ。
アバンタイトルは『ジョーズ』の趣向そのまんまだが、大学生たちが週末のバカンスに訪れる、ルイジアナの湿地帯にある湖のロケーションが美しい。モーターボートで突き進んでく様子を映す上空からのカメラに、自然の雄大さが伝わってくる。
彼らは女子大生ベスの、クロスビー湖畔にある別荘で楽しく過ごそうという計画だった。
だが黒人学生のマリクが、ウェイクボードの最中に、サメに片腕を食いちぎられ、バカンスは暗転する。
クロスビー湖は塩水湖という設定なんだが、にしてもなぜサメが?
ケータイの電波も届かない場所なんで、とにかくマリクを町の病院へ連れてこうと、ベスたちはボートを出すが、そのボートはサメの体当たりを食って、マリクの彼女がその衝撃で湖面へ落ちる。
たちまちサメの餌食となり、操縦の利かなくなったボートは桟橋にぶつかり大破。
だがまだ小屋には水上バイクがあった。筋肉ナルシストのブレイクはここで男気を発揮して、マリクをくくりつけ、水上バイクを飛ばすが、たちまち巨大なアオザメがジャンプ一閃、ブレイクをひと呑みした。マリクは水中に没した。7人いた学生は、4人になった。
窮地に陥った彼らの元に、地元のデニスとレッドが船で現れた。デニスは顔に深い傷跡があり、ベスとは因縁のある間柄だった。
デニスとレッドは学生たちに手を貸す素振りを見せたが、それは恐ろしい罠だった。
なぜ塩水湖に何種類ものサメがいるのか?それはデニスたちが養殖してたからだ。
彼らはサメの生態を知り尽くし、獰猛なサメだけを育てていた。
そしてドキュメンタリー『皇帝ペンギン』で使われてたという小型カメラをサメの体に仕込んであった。デニスたちはバカンスなどでやってきた人間たちを、サメに襲わせ、その映像を商売に利用してたのだ。
というようなことになっていて、「どうぶつパニック」というより、どうぶつを使った拷問マニアによる、サイコホラー的な色合いの方が強くなってるので、見てる側の楽しみ方の心構えにブレが生じてしまうのだ。
だって凶暴なサメより、人間の方がおぞましいって展開だからね。
肝心のサメの襲撃描写も、PG12指定なんでグロさが半端。襲われたら後は水が真っ赤になるというだけで、肢体が食いちぎられる生々しい描写がないのは、「サメもの」としては画竜点睛を欠く。
アオザメがジャンプで「パクリ」とやるのも、レニー・ハーリンが『ディープ・ブルー』でやってるし。ちなみにその時餌食になったのは、『スネーク・フライト』に主演してたサミュエル・L・ジャクソンだった。
「なんで3D版で上映しないんだ?」と不満を呈したが、実際見てみると大体「この場面だな」というのはわかる。その「飛び出しポイント」もあんまり大したことなさそうで、たしかにこれなら3Dの必然性もそう高くはないなと感じた。
グロ描写などは不満の残るところだが、大学生たちが窮地に立たされてく流れとか、登場人物の性格づけとか、サスペンスを高めるためのスキルに関しては『ピラニア リターンズ』の監督よりも、こちらのエリス監督に一日の長がある。
『シャーク・ナイト』にしても『ピラニア リターンズ』にしても若い役者たちが主人公を演じてるが、こういう映画に出てくる若い役者って、ほとんど顔を憶えるようなことがないんだよね。
この手の映画は、青春を謳歌するような(特に性的に)若いヤツらが血祭りに上げられるというのがパターンで、あまり感情移入もしないで楽しめるってことなんだろう。
一度、とても善良な家族がサメやらなんやらに襲われ、子供までもが食われて、見てるこっちまで惨さに号泣してしまうような、どシリアスなどうぶつパニックも見てみたい。
2012年7月19日
先週末の同日公開となった「どうぶつパニック」、その出来具合の軍配やいかに?というところなんだが、結果からいうと『ピラニア リターンズ』の勝ち。でも「圧勝」とまではいかない。
どちらも3D仕様で製作されたものの、『シャーク・ナイト』は日本ではなぜか2D版のみでの公開というハンデを負った。だが3Dで見れていれば結果は変わったかといえば、そんなこともないんだな。
『ピラニア リターンズ』が前作に続いて「R18+」というレイティングに指定されてるのに対し、『シャーク・ナイト』は「PG12」というレイティング。
なんだ子供も、親付き添いなら見れるじゃん、というこれはハナから描写のエグさに差がついてしまうのも致し方ないのだ。
『ピラニア リターンズ』は、監督は前作のアレクサンドル・アジャから、『The FEAST/ザ・フィースト』シリーズのジョン・ギャラガーにバトンタッチされたが、物語上のつながりはある。
前作でアバンタイトル部分の主演を張ったのは、『ジョーズ』に敬意を表してという意味合いかリチャード・ドレイファスだったが、今回はゲイリー・ビジーと、監督の父親で俳優のクルー・ギャラガーがアバンタイトルを飾ってる。
ゲイリー・ビジーはこの手の「どうぶつパニック」には出てないんだがな。
あえて言えば『プレデター2』リスペクトかな?
ただピラニアに食われるだけではないという所が、ゲイリーの芸風に合ってて最高だった。
ヴィクトリア湖の湖面を赤く染めた前作の惨劇から1年。
異変はヴィクトリア湖から遠く離れたアリゾナ州のクロス湖で起きた。行方不明の牛の死体が湖面に浮かび、確認に近づいた農夫たちが、牛の体を食い破って飛び出してきたピラニアの群れに襲われた。
前作で生き残ったピラニアたちは、地下水脈を辿って、別の湖へと移動してきたのだ。
折りしもクロス湖畔には、「ビッグ・ウェット」という名のウォーターパークが、開園を2日後に控えていた。
ここは子供連れだけではなく、大人の男女にも楽しめる趣向が凝らされた、ヒロインの大学院生マディには悪いが、とても「いい線いってる」水のアミューズメントだと俺は思った。
なにしろ施設内には「アダルトプール」なるものが併設され、コンドームの自販機も備えてある。
プールの監視員はなぜかストリッパーなのだ。
おっぱい丸出しでウォータースライダーで滑り下りてくる金髪のお姉さん方。これは流行るだろ。
これを考えたマディの義理の父親チェットは、まあ悲惨な末路を迎えはするが、経営者としちゃ、いい腕してる。
チェットが開園の日に、特別にプール監視員として招いたのはデヴィッド・ハッセルホフだ。
日本じゃ『ナイトライダー』の主役で有名だが、アメリカではむしろその後の『ベイウォッチ』の沿岸レスキューが当たり役とされてるようだ。
しかしハッセルホフはゲストとして来てるつもりなんで、プールでピラニア大襲来が起こっても、我関せずなのだった。
知り合いのカップルが謎の失踪を遂げ、怪訝に思ったマディと女友達のシェルビーは、湖の桟橋で、トビウオのように襲い掛かってくる大型のピラニアから、間一髪逃げ延びる。
マディは昨年のピラニアだと確信し、ヴィクトリア湖のほとりに住む熱帯魚店のグッドマンを訪ねた。
前作にも出てた“ドク”ことクリストファー・ロイドだ。
グッドマンは、このピラニアが鉄板も突き破るようなパワーを持ち、プールのような施設はおろか、下水管をつたって、民家にまで浸入するかもしれないと警告を発する。
一方、マディとともにピラニアに襲われたシェルビーは、その際、一匹のピラニアに体内への侵入を許してしまったようで、急に気分悪くなって道端でもどしたりした。
3Dで飛び散るのがゲロという悪趣味ぶり。
シェルビーは彼氏に介抱されてベッドで寝てたが、体の異変に切迫感を強め、急いで処女を捨てとこうと、彼氏を強引にベッドに誘う。
彼氏が体の上でグラインド始めると、シェルビーの腹部からなにかが動き出す。
彼女の叫び声をエクスタシーと勘違いする彼氏のチ●コに、ピラニアが噛み付いてた!
んなバカなという一席である。
マディが自宅の風呂場でバスタブにつかってウトウトしてると、蛇口からピラニアが、という場面は、足を開いた間からのカメラなど、まんま『エルム街の悪夢』になってて、しかも夢オチという。
「下水管をつたって、民家にまで」と期待させたわりには、そこまで惨劇の場を広げられなかったのは、予算の制約もあるんだろう。
結局ウォーターパークが血に染まるだけなんで、前作ほどのスケール感はない。
子供にまで容赦なくゴア描写が降り注いではいるが、演出の畳み掛け方においては、前作のアレクサンドル・アジャには劣るね。グロ描写が散発的な印象なのだ。
3Dなんでピラニアはこれ見によがしに飛び出してくるが、女の子たちがおっぱい見せてるわりには、飛び出し効果が薄く、期待に添えてるとは言い難い。
エンド・クレジットに、アウトテイクやらNGテイクやらハッセルホフのPVまがいの映像やらが、けっこう長く使われてる。ハッセルホフをリスペクトしすぎじゃないんかな?
『シャーク・ナイト』
この映画にに期待したのは、なんと言っても『スネーク・フライト』で、「ヘビヘビ大パニック」をエロとギャグを交えて爽快なまでに描き切ったデヴィッド・R・エリス監督だけに、サメでもやってくれるだろうと思ったからだ。
アバンタイトルは『ジョーズ』の趣向そのまんまだが、大学生たちが週末のバカンスに訪れる、ルイジアナの湿地帯にある湖のロケーションが美しい。モーターボートで突き進んでく様子を映す上空からのカメラに、自然の雄大さが伝わってくる。
彼らは女子大生ベスの、クロスビー湖畔にある別荘で楽しく過ごそうという計画だった。
だが黒人学生のマリクが、ウェイクボードの最中に、サメに片腕を食いちぎられ、バカンスは暗転する。
クロスビー湖は塩水湖という設定なんだが、にしてもなぜサメが?
ケータイの電波も届かない場所なんで、とにかくマリクを町の病院へ連れてこうと、ベスたちはボートを出すが、そのボートはサメの体当たりを食って、マリクの彼女がその衝撃で湖面へ落ちる。
たちまちサメの餌食となり、操縦の利かなくなったボートは桟橋にぶつかり大破。
だがまだ小屋には水上バイクがあった。筋肉ナルシストのブレイクはここで男気を発揮して、マリクをくくりつけ、水上バイクを飛ばすが、たちまち巨大なアオザメがジャンプ一閃、ブレイクをひと呑みした。マリクは水中に没した。7人いた学生は、4人になった。
窮地に陥った彼らの元に、地元のデニスとレッドが船で現れた。デニスは顔に深い傷跡があり、ベスとは因縁のある間柄だった。
デニスとレッドは学生たちに手を貸す素振りを見せたが、それは恐ろしい罠だった。
なぜ塩水湖に何種類ものサメがいるのか?それはデニスたちが養殖してたからだ。
彼らはサメの生態を知り尽くし、獰猛なサメだけを育てていた。
そしてドキュメンタリー『皇帝ペンギン』で使われてたという小型カメラをサメの体に仕込んであった。デニスたちはバカンスなどでやってきた人間たちを、サメに襲わせ、その映像を商売に利用してたのだ。
というようなことになっていて、「どうぶつパニック」というより、どうぶつを使った拷問マニアによる、サイコホラー的な色合いの方が強くなってるので、見てる側の楽しみ方の心構えにブレが生じてしまうのだ。
だって凶暴なサメより、人間の方がおぞましいって展開だからね。
肝心のサメの襲撃描写も、PG12指定なんでグロさが半端。襲われたら後は水が真っ赤になるというだけで、肢体が食いちぎられる生々しい描写がないのは、「サメもの」としては画竜点睛を欠く。
アオザメがジャンプで「パクリ」とやるのも、レニー・ハーリンが『ディープ・ブルー』でやってるし。ちなみにその時餌食になったのは、『スネーク・フライト』に主演してたサミュエル・L・ジャクソンだった。
「なんで3D版で上映しないんだ?」と不満を呈したが、実際見てみると大体「この場面だな」というのはわかる。その「飛び出しポイント」もあんまり大したことなさそうで、たしかにこれなら3Dの必然性もそう高くはないなと感じた。
グロ描写などは不満の残るところだが、大学生たちが窮地に立たされてく流れとか、登場人物の性格づけとか、サスペンスを高めるためのスキルに関しては『ピラニア リターンズ』の監督よりも、こちらのエリス監督に一日の長がある。
『シャーク・ナイト』にしても『ピラニア リターンズ』にしても若い役者たちが主人公を演じてるが、こういう映画に出てくる若い役者って、ほとんど顔を憶えるようなことがないんだよね。
この手の映画は、青春を謳歌するような(特に性的に)若いヤツらが血祭りに上げられるというのがパターンで、あまり感情移入もしないで楽しめるってことなんだろう。
一度、とても善良な家族がサメやらなんやらに襲われ、子供までもが食われて、見てるこっちまで惨さに号泣してしまうような、どシリアスなどうぶつパニックも見てみたい。
2012年7月19日
コメント 0