フィルムセンターで『エンドレス・ラブ』 [映画ア行]

『エンドレス・ラブ』

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この29日まで京橋の「国立近代美術館フィルムセンター」で特集上映されている「ロードショーとスクリーン ブームを呼んだ外国映画」のラインナップの中の1作。

1981年12月に「お正月映画」として公開されてるが、当時俺はスルーしてて、その後DVDとかでも見てなかったんで、今回初めてスクリーンで相対したわけだが、いや聞きしに勝る「困った映画」だったな。

青春ラブストーリーであり、ブルック・シールズを売るためのアイドル映画でもあるんだが、内容は今でいうケータイ小説の映画化作みたいなもの。『恋空』とかね。『恋空』見てないけどさ。
映画に描かれてるテーマをどう解釈するとか、そういう見方はどうでもよくて、とにかくよくこの人物設定とストーリーでGOサインが出たなという、そこんとこを楽しむべきものだった。
あらすじを真面目に書くのも憚られるので、くだけて書くんで、まあ聞いてください。


課外授業でプラネタリウム見学に来てる15才の女子高生が、ブルック・シールズ演じるジェイド。
その彼女の席の隣に後から忍び込むように入って来るのが、ボーイフレンドで、新人マーティン・ヒューイットが演じるデヴィッド。
17才で上級生の男子がジェイドと暗闇でいちゃついてるもんだから、周りの女子も色めきたつわけ。
純愛ドラマっぽく、二人が恋に落ちる部分は端折られ、肉体関係成立済み。

ジェイドは飛び抜けた美少女で、映画で説明はないが、彼女の兄貴が、デヴィッドの同級生で、紹介されたのが最初だったのだろう。それからデヴィッドは頻繁にジェイドの家族の元を訪れてる。
ジェイドの父親ヒューは開業医で、その家庭もユニークだ。
どうもフラワー・チルドレン世代で、執筆活動もしてる母親アンは、子供たちの恋愛にも
「いいんじゃないの?ラブ&ピース」な立場だ。

ヒューは自宅でパーティを開くと、バンドは入るわ、マリファナは回すわで、テンション高くなるのだった。若い者に囲まれ、興が乗ると趣味のサックスを聴かせたりする。
デヴィッドはそのジェイドの両親から、家族扱いされてることが嬉しかった。
「こんな家族って最高だよなあ」

デヴィッドの両親は弁護士として互いに仕事に追われ、家庭ではろくに会話もない。
自分の話もじっくり聞いてくれる余裕も見られない。
デヴィッドは家族の温もりを味わいたくて、ついジェイドの家で過ごすことが多くなる。
まあ第一の理由は彼女とヤリたいってことなんだが。

「えっ?彼女の自宅に行ってヤッてるの?」
そうなんです。だがそこまでは彼女の家族もまだ知らない。
ジェイドの兄貴のキースは、すでに二人がデキてることは感づいていて、
「妹とヤッたからって、家族と認めたわけじゃないぞ」
とデヴィッドに言い放つ。

キースを演じるのが、これがデビュー作となるジェームズ・スペイダーだ。
映画に出て早々に嫌味なセリフが板についてるのはさすがだな。
キースとしては、自分が紹介したダチに妹を奪われたってのが面白くないんだろう。
妹がブルック・シールズなら、なおさらそう思うわ。


その夜もパーティで父親ヒューは酔っ払って寝室へ。最後まで残ってたデヴィッドには、
「暖炉の火が消えるまでに帰るんだぞ」と言い残し。

デヴィッドとジェイドは両親が眠る2階に聞こえるように
「じゃあ、明日学校で!」と調子を合わせ、ドアを閉めるふりして、そのまま居残り。
暖炉の前で始めるのだ。気づいたの母親アンだった。

なんとなく目が覚めて、寝室から下の階へ降りて行くと、暖炉の前で素っ裸で絡んでる娘とデヴィッド!
「なんということでしょう」と一瞬ショックで目を逸らすが、なぜかすぐにガン見。
娘のエクスタシー顔を眺めて微笑んでるではありませんか!そんな母親って…。

「ああ、私にもあんな若い頃があったんだわ」って表情なのだ。
もちろんアンはその事はオフィシャルにはしなかった。

期末試験の時期だというのに、勉強なんか手につかない二人。
ブルック・シールズも頑張って喘ぎ顔とか作ってる。
一箇所デヴィッドがおっぱいに触れる場面があるが、あれは別撮りのボディダブルだろう。


ほぼ毎日の夜這い状態が続くわけだが、ある朝、父親のヒューは、2階の娘の部屋に、デヴィッドが素っ裸で立ってるのに仰天。

「なんでここにいる?」
しかもそこにシャワーを浴びてきたと思しき娘が。
「いったいここで何をしとるんだ?」と問い詰めるも
「私の部屋で何しようと勝手でしょ!」と娘逆ギレ。

あとで妻のアンに訊くと
「あらあなた気がつかなかったの?」ときたもんだ。
「デヴィッドは家族が寝静まった夜中にそっと来て、夜明け前には帰ってくの」
「コウモリみたいで素敵でしょ?」
うーむ、自分の妻とはいえ、この女、話にならんな。

しかもジェイドはそんなどさくさに紛れて、診察室から睡眠薬を失敬しようとする。
父親に見つかり
「眠れないのよ!」とまた逆ギレ。
あれだけ毎晩ヤッてれば、疲れてぐっすり眠れそうなもんだが、若さゆえであろう。
「お前の歳で睡眠薬はまだ早い!」
父親もな、ここで医師的所見を述べるのも、指摘すべき部分がズレてる気がするが。

実際ジェイドは授業中は居眠りこいてて、成績もガタ落ち。
休日に夜這いではなく、昼間にジェイドの自宅を訪れたデヴィッド。
だが声をかけてもキースはガン無視。
父親ヒューからは
「娘に会わすわけにはいかない」
「試験前に勉強も手につかないでいる。30日間会うのは禁止だ」
「30日経ったら改めて考えよう」

後から出てきた母親のアンに頼ろうとするが、家に入ろうとするデヴィッドを「警察を呼ぶぞ」とまで言って拒絶する父親。
突き飛ばされて、追い払われるように出て行かされる。


学校でもジェイドの姿を眺めるだけの日々。すっかりくさったデヴィッドは、同級生の友達に事の次第をボヤく。
「そんな家、放火してやれよ」

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そう言った同級生の顔をよく見るとトム・クルーズではないか?
ジェームズ・スペイダーとともに、この映画がデビュー作だが、端役もいいとこで、この場面のみだ。
しかもセリフが「俺は前に放火したことあるけど、自分で通報したら、その家から感謝されたぜい!」
とバカ笑いしてる。

あの精悍な表情など微塵もなく、この端役の若者が、将来ハリウッドを代表する大スターになろうとは、この映画に係わった誰ひとりとして、夢想だにしなかっただろう。

スペイダーやクルーズがその後スターの階段を登ってくのに、この映画で主役に抜擢された、マーティン・ヒューイットは、すぐに忘れ去られてしまったのだから皮肉だよ。

でもってデヴィッドは、そのトム・クルーズのセリフ通りに、本当にジェイドの自宅に放火しちまうんだから、開いた口が塞がらない。
つまりこの映画で、物語をある意味劇的に動かしたのは、端役のトム・クルーズだったということも言えるんで、すでに影響力を発揮してるということだよな。


玄関先に積んであった暖炉の薪に火をつける。一応ボヤですむように、バケツで上の部分には水をかけてるんだが、17才の浅知恵というのか、瞬く間に火は燃え広がり、見てたデヴィッドは思わずドアを破って、ジェイドたちに火事を知らせる。

「なんでここにいる?」
ジェイドの両親にキースとその弟、火にまかれる前に逃げ出すが、デヴィッドはジェイドを助け出そうとして何かにぶつかり気を失う。
ジェイドも無事で、倒れたデヴィッドは、ヒューが抱えて外に連れ出した。
もう何やってんだよ。火つけといて助け出されるって。


デヴィッドは自供し、裁判の末、重大な罪だが情状酌量の余地もあるということで、保護観察処分で、精神療養施設への強制入所を言い渡される。
ジェイドの家の人間に接近してはならないとも。
ヒューは刑の軽さに激怒。まあデヴィッドは親が弁護士だしねえ。

その後2年間、施設で暮らす中で、デヴィッドは何十通もの手紙を、ジェイドに向けて出していた。
だがすべて院長の手に渡り、投函されることはなかった。

デヴィッドは面会に来た両親に
「もうこれ以上耐えられないから出してくれ!」
と泣いて頼み、両親は院長に手を回して、デヴィッドを退院させる。
それを伝え聞いたジェイドの父親ヒューはまた激怒。

ジェイドの家族はあの一件以来こわれてしまった。父親ヒューは若い女を作り、両親は離婚。
ジェイドはひとりバーモンド州の大学のそばで下宿生活をしていた。


この精神療養施設の描写もいかんなと思うのは、デヴィッドは我が身を嘆くだけで、施設の患者と触れ合って自分を見つめ直すとか、そういうことが一切ない。

それから映画で言及されてなかったが、放火で家を全焼させたんだから、当然賠償請求って話になるだろう。デヴィッドの両親が払ったのか?
自分の家に戻ってくる場面があったから、家を売ったということはないとすると、やっぱり弁護士って稼げるってことなんだな。


でこのあと、ジェイドの家族に会うことを禁じられてるのに、デヴィッドはニューヨークに住むアンの部屋を訪ねてる。その前あたり俺は一瞬眠ってたんで、どういう経緯か知らない。
アンはあれだけの目に遭わされたデヴィッドを、それでも拒絶してないね。驚いた。

アンはジェイドがバーモンドに居ることを教えちゃったみたいだが、デヴィッドはバス停まで行くものの、バーモンド行きのバスに乗る踏ん切りはつかなかった。

悶々としながら、ニューヨークの街を歩いていると、交差点の向こうにヒューがいるではないか?
隣には若い彼女が腕組んでる。
先に気づいたのはヒューの方だった。顔色が見る見る変わる。
その殺気を感じたのか、デヴィッドが顔を向けると、二人の目が合った。

「なんでここにいる?」
夜這い発見から都合3度目の疑問となるね。

デヴィッドは思わず身を翻し、ヒューは後を追おうと、赤信号で飛び出し、タクシーに轢かれて即死。
若い彼女は取り乱し、デヴィッドは一度は駆け寄るが、その彼女と目を合わせた後、その場を立ち去ってしまう。

ヒューの事故死は家族の元にもたらされ、アンは部屋を訪れたデヴィッドにそれを告げて泣き崩れる。
自分がその場にいたとは、まして自分が事故死の引き金になったとは、とても言えない。
だがその部屋にはヒューと一緒にいた若い彼女が。
ドアから見えるデヴィッドの横顔に「もしや」と思った。

アンのもとを立ち去り、ホテルの部屋に戻ったデヴィッドを、誰かが訪ねてきた。それはなんとジェイドだった。
葬式にやってきて、母親からデヴィッドの居場所を聞いたのだ。

デヴィッドはアンに会った時に、施設で投函されることのなかったジェイドへの手紙を、本人に渡してほしいと託していた。
いまジェイドはその手紙をすべて読み終えて、デヴィッドに会いに来たのだ。
「だけどもう元通りにはならない」
立ち去ろうとするジェイドの腕を掴み、ベッドに押し倒す。抵抗するジェイドに
「君はまだ僕を愛してる!」
デヴィッドの叫びに、ジェイドは腕の力を抜き、すべてを委ねた。


久しぶりにすっきりしてしまった二人だったが、ホテルの部屋に、ジェイドの兄キースから電話が。
「聞きたいことがあるから、母の部屋に来てくれ」
デヴィッドはジェイドを伴い部屋を訪れる。キースは父親の若い彼女に
「現場にいたのはあいつか?」
若い彼女は頷く。ジェイドは驚き
「デヴィッド、パパが死んだ時その場にいたの?」
「ああ、いたんだ」
「でもあれは事故だった」
ジェイドは後ずさった。
「お前のせいで父さんは死んだんだ!」
キースは掴みかかり、その騒ぎに警官が乗りこんで、デヴィッドは連行されていった。

裁判所命令を破った以上、行く先は刑務所しかなかった。
さすがに二人の関係もここまでだろう。
しかし、ジェイドは信じていた。「エンドレス・ラブ」を!


ダイアナ・ロスとライオネル・リッチーによる主題歌が流れるラストシーンを、脱力して眺めるほかない俺がそこにいた。
もう映画の感想とかそんなことより、ストーリーを読んでもらえば、それがすべてという映画だ。
純愛ラブストーリーの名匠と謳われたフランコ・ゼフィレッリとしても、この脚本では途方に暮れたんではないか?

脚本はジュディス・ラスコーという女性で、他に何書いてるのかと思ったら、俺の大好きな
『ドッグ・ソルジャー』も書いてるのか!どうなっとるんだ。

マーティン・ヒューイットの演技はそれほど大根という感じでもなく、だがほとんどキャリアを伸ばせなかったのは、こんな共感も得られない「なんでここにいる?」男を最初に演じてしまって、そのイメージに足引っ張られたという不運さもあるんじゃないかな。

ブルック・シールズは、これはもう奇麗ですよ。
ときおり目線が定まってないような表情に見えることもあったが、アイドル映画としては成立してるんだろう。

2012年7月28日

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