君たちレオン・ニキータ・ドミノだね。 [映画カ行]

『コロンビアーナ』

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いや昔「君たちキウイ・パパイヤ・マンゴーだね。」っていう曲がヒットしてましてね、それをモジってみただけだが。
要はそういった映画をなぞった内容で、とりたてての目新しさも感じられなかった。


1992年、コロンビアの麻薬組織を束ねるドン・ルイスの下から独立を図ったファビオは、組織の手によって、家を襲われ、妻とともに殺される。
ファビオは顧客データを収めたフロッピーをドン・ルイスに返していたが、それ以外の内情に関わるデータをまだ握ってる。ドン・ルイスはそう睨んでいた。
ファビオを殺し、家さがしするが、見つからない。

組織の殺し屋マルコは、ファビオの9才の娘カトレアが、キッチンに残ってるのを発見。
「父親から預かってるものはないか?」
テーブルの向かいに座り、静かな口調で訊いた。カトレアは
「これでしょう?」
と、テーブルの下で握っていた包丁を、マルコの掌に思い切り突き立てた。

カトレアはキッチンの窓から飛び出し、猫のような身のこなしで、逃げ出した。
マルコたちを振り切って、アメリカ大使館に駆け込んだ。

父親ファビオは、カトレアに、ドン・ルイスの麻薬取引のデータを託していたのだ。
何かあったらこれを大使館の人間に渡せと。
そのデータと引換えに、カトレアはアメリカ行きの旅券を手にする。

父親からは1枚のメモも渡されていた。
シカゴで祖母と暮らす叔父のエミリオの住所が書かれていた。
9才の少女は、ひとりっきりの心細い旅の果てに、ようやくシカゴへと辿り着いた。


カトレアはエミリオたち家族に暖かく迎え入れられたが、彼女の望みは、アメリカで他の子供たちと一緒に、学校に通うような生活ではなかった。
カトレアは叔父のエミリオに、殺し屋になる手ほどきを頼んだ。
冗談で言ってるようには見えなかった。
エミリオは突然路上で発砲してみせた。周囲はパニックとなった。

叔父はカトレアに言った。
「お前はこういうことがしたいのか?」
「学校に通うってことは、知識を身につけ、善悪の判断がつけられるようになることだ」
「知性がなければ、ただ銃を撃ちまくって、射殺されて、人生は終わりになる」
「お前はどっちを選ぶ?」
通学カバンと拳銃を差し出され、カトレアはカバンを手にとった。


15年が経った。学校に通いはしたものの、カトレアはやはり、プロの殺し屋になる道を選んでいた。
仕事は叔父のエミリオが持ってきた。
警察の拘置所内に入れられた標的を暗殺することも、難なくこなす凄腕ぶりで、すでに4年間で22人を葬っていた。

だがカトレアは叔父に隠し事をしていた。
自分の両親を殺したドン・ルイスにつながる標的を暗殺した際には、その死体にカトレアの花を描いておいたのだ。

なぜそんなことをするのか?カトレアが殺し屋になったのは、両親の復讐のためであり、だがその標的とするはずのドン・ルイスと片腕のマルコは、コロンビアから姿を消している。

ドン・ルイスは、殺したファビオに娘がいて、カトレアという名だと知っている。
死体にメッセージを残すことで、ドン・ルイスが動くのを待っていたのだ。


FBI捜査官のロスは、連続殺人の捜査が手詰まりとなり、死体に描かれたカトレアの花の写真を、マスコミに公開する。
ドン・ルイスとマルコは、新聞でその写真を目にした。
そしてファビオの9才の娘の存在を思い出した。
マルコの掌に包丁を突き刺した、あのガキならやりかねん。

カトレアの抹殺に組織は動き出した。
ドン・ルイスは麻薬取引の情報提供と交換に、CIAの保護を受けていや。
今はアメリカ南部の町に移り住んでいたのだ。


カトレアにとって、殺しと復讐という、殺伐とした人生を逃れる、つかの間の時間が、恋人ダニーとのひとときだった。
彼女はジェニファーと名乗り、自分のことはほとんど話さなかった。
画家のダニーは、彼女が心に何か抱えてることは知ってたが、いまは目の前の彼女だけを愛していた。

ダニーは、ベッドでまだ眠るジェニファーの寝顔をケータイで撮り、画像を保存した。
ダニーはその日、友達にカフェで何気なく、その画像を見せた。
だがそこから画像データが傍受されて、FBIは過去の犯罪者データと顔のマッチングを行い、拘置所に入れられた経歴を持つカトレアを焙り出す。

その時期に拘置所内で殺人事件が起こっていたことも。
カトレアはドン・ルイスの組織と、FBIと、双方から追いつめられていく。


冒頭部分の目の前で家族が殺され、ひとり生き残るってのは、『レオン』の悪徳警官ゲイリー・オールドマンが、家宅捜索だと押し入って、家族を殺してく場面と同じだし、恋人ダニーの存在は、『ニキータ』のジャン・ユーク・アングラードの役どころと一緒。

演じるマイケル・ヴァルタンの優男な感じまで似てる。
彼は『マンイーター』では頼りなさそうで、けっこう頑張るツーリストを演じてたが。
『ドミノ』と似てるってのは女殺し屋ってとこぐらいだが。
ドミノも大学進学はしてたんだよな。

カトレアを演じるゾーイ・サルダナは、細身で女豹のような身のこなしで、格闘場面も動きが機敏だし、そこんとこはいいんだが、ルックスも含めて、女優として、押し出しがいまいち弱い。
『ニキータ』のアンヌ・パリローとか、『ドミノ』のキーラ・ナイトレイのインパクトに、どうしても見劣りする。

むしろ少女時代のカトレアを演じたアマンドラ・ステンバーグという女の子が、アップでも人を惹きつける力があった。
彼女がシカゴに辿り着くまでの、セリフのないシークェンスも、心細さと、見たことない光景への好奇心がないまぜの表情がよかった。

映画では9才からの15年間はすっぱり削ってあるんだが、学校に通いながら、次第に殺しのスキルも叩き込まれていく、そういう過程を見せた方がよかったんではないか?
というか俺が見たかったんだが。

マオリ族の血を引くクリフ・カーティスが、カトレアの叔父エミリオを演じている。
俺はこの役者が好きなんで、パンフでも写真入りで紹介してほしかったよ。


映画自体は銃撃戦やら格闘技やら、いつもの「ベッソン印」のアクションで手堅くまとまってる。
ただこれは考えすぎかも知れないが、ベッソンの絡んだ活劇には、どことなく「人種蔑視」の視線を時折感じるのだ。

広末とジャン・レノの出た『WASABI』とか『TAXi2』なんかは、日本人を小馬鹿にしてるような描写が目立つし、リーアム・ニーソンの『96時間』ではセルビア人が諸悪の根源みたいな感じだし。

『パリより愛をこめて』では、ジョン・トラボルタが、いきなりチャイニーズ・レストランで銃を乱射して、中国人皆殺しにしちゃうし。

この『コロンビアーナ』も、ヒロインをコロンビア人にしてる目新しさはあるが、ここに出てくるコロンビア人たちは、みんな麻薬やら犯罪に関わっていて、カタギの人間がいない。
ダニーはアメリカ人だ。
結局コロンビア人のカトレアが、コロンビア人と殺し合うという話であって
「コロンビア人だからしょーがないよねえ」と言ってるように見える。

リュック・ベッソンは、自分で監督する作品はそういう視線は感じられないし、新作でもアウンサン・スー・チーの生き方に共感を表明してるけど、なぜか「ヨーロッパ・コープ」の代表として、映画の製作に絡むと、そういう気になる部分が目立ってくるのだ。

そう思うのは俺だけかもしれんが。

2012年9月8日

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