綾瀬はるかのリアル「キッザニア」映画 [映画ア行]

『映画 ひみつのアッコちゃん』

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豊洲のららぽーとの3Fにある「ユナイテッドシネマズ豊洲」は、よく利用するシネコンの一つなんだが、その同じフロアに、週末には親子連れの長い行列ができてる。

その行列の先にあるのが「キッザニア東京」という施設だ。
子供たちが、自分がなりたい職業をシミュレーション体験できるというコンセプトで、けっこうな種類の職業から選ぶことができる。
インストラクターがその仕事の手順とか、道具の使い方を補佐してくれるので、初めてでも戸惑うことがなく、リピーターも多いという。
こういうのがガキの頃にあったら、俺も行ってみたいと思っただろうな。

綾瀬はるかが、心は10才で外見は22才というヒロイン、「アッコ」こと加賀美あつ子を演じる、
『映画 ひみつのアッコちゃん』は、まさに子供の目から会社を見たらどんな風に映るのか、大人たちはどんな風に仕事をしてるのか?という「キッザニア・コンセプト」そのままの物語が展開されてく。

トム・ハンクスの『ビッグ』を下敷きにしたような内容だが、もっと近いのが、2004年の日本未公開作『13 ラブ 30 サーティン・ラブ・サーティ』だ。
ジェニファー・ガーナー演じるヒロインは、13才の誕生日の日に、好きな男の子のマットと喧嘩してしまう。
クローゼットに閉じこもって「早く30才の大人になりたい」と念じたら、翌朝には本当になってたという話。30才の自分はファッション誌のキャリアウーマンになってたが、心は13才のままなのだ。


綾瀬はるかの主演作は見たり見なかったりで、前作『ホタルノヒカリ』は、テレビドラマを見てないのでスルーしたが、『プリンセス・トヨトミ』や『おっぱいバレー』は見てる。

綾瀬はるかが演じてきた役柄は、かなり振り幅が広いというか、他の女優と比べてもユニークではある。
サイボーグだったり、女座頭市だったり、スッチーだったり、干物女だったり。
だがこれだけいろんな役を演じ分けてきてるわりには、「カメレオン女優」という風に呼ばれることもないし、演技的な評価をあまり受けることがない。

これは彼女がデニーロのような「メソッド演技」のアプローチで、その人物や役柄になり切ろうとする、そういう方向を目指してないからかもしれない。

自分の中で役のリアリティを追求するんじゃなく、例えて言うと
「コーチのいうことには全力で従います!」
的な、体育会系の演技に感じるのだ。
役者としての妙な野心とかがなく、一所懸命演じるだけという、そこに清々しさがあり、俺は彼女の演じたどの映画を見ても、気分悪く見終えたことはない。

この『映画 ひみつのアッコちゃん』においても、終始一貫、10才の子供口調と、子供の仕草で押し通しており、同世代の女優たちも
「あそこまではできないかも」と思うかもしれない。
なので、綾瀬はるかの「天然ブリキャラ」が苦手という人はきついかもな。


映画の冒頭は、子役の吉田里琴が演じる10才のアッコが、今はいない父親から貰った手鏡を割ってしまい、悲嘆にくれてる。
庭に埋めて「鏡のおはか」を作って供養する。
するとその夜、アッコの前に黒ずくめにサングラスの、見るからに怪しい男が光とともに現れる。
よく見れば香川照之だ。
『るろうに剣心』にも『夢売るふたり』にも『鍵泥棒のメソッド』にも、もうどこを向いても出てるな。仕事しすぎ。

男は「鏡の精」で、アッコに魔法のコンパクトをプレゼントする。
「テクマクマヤコン、テクマクマヤコンと唱えて、なりたいものの名前を言えば何にでもなれる」
「もとに戻る呪文は、ラミパスラミパス、ルルルルルだよ」
「でもこの秘密を人に知られたら、もう魔法は効かなくなる」

半信半疑で部屋に戻り、呪文を唱えると、たちまち22才の自分になった。
「胸大きい!」

冬休みに入り、アッコは親友のモコちゃんたちと遊園地に出かける。
アッコはつまづいてコンパクトが転がってしまうが、それを拾ってくれたのが、早瀬尚人という青年だった。
二人は観覧車の順番待ちで、再び顔を合わせた。
小さな観覧車に、一緒に乗ることになったアッコと尚人。
いや見知らぬ青年と小学生の女の子が、一緒には乗らんだろう観覧車と思うが。

尚人は夕焼けの町を眺めながらアッコに
「平日なのに遊園地に来てるのかい?」
「だって今は冬休みだもん」
「そうか、子供はいいな気楽で」
尚人の言葉にちょっとふくれるアッコ。
「ほら、きれいだよ」
「えっわたし?」
でも尚人はアッコの背後に見える夕焼け空を指差してた。

見ようによっては際どいシチュエーションだが、尚人を演じる岡田将生が、爽やかキャラなので、妙な空気にはなってない。
「1日の終わりに、ここに来て空を見るのが日課なんだ」
尚人はそう言った。


翌日コンパクトの魔法で、22才の自分に変身したアッコは、デパートの化粧品売り場で、メイクを受けていた。
そこに通りかかったのが尚人だった。
彼は化粧品会社「株式会社赤塚」の社員だったのだ。
思わず声をかけてしまうが、尚人にわかる筈はない。

逆に化粧品の感想を尋ねられた。アッコは率直に子供の目から見た印象をぶつけた。
尚人はアッコの感性を面白がり、そのまま会社に連れて行くことに。

アッコは名刺の漢字をよく読めなかったが、「企画開発室・室長待遇」と書かれていた。
そのまま専務たちが取り仕切る社内会議の場に。

尚人と専務たちとの間には、険悪なムードが漂っていた。
アッコには知る由もなかったが、「赤塚」の社内は揺れていた。
業績の伸びない会社を、専務はある企業に買収してもらう話を進めていたのだ。

専務は前社長を追い落とした張本人で、その社長を慕ってヒット商品を生んできた尚人は、社内の派閥争いに破れ、今や企画室は、商品を企画しても、ことごとく専務に握り潰される「閑職」と化していた。

「過去のブランドイメージにあぐらをかいて、このまま新商品も開発できなければ、会社は潰れます」
社内会議で尚人は訴えるが、それこそ専務の望む展開だった。
会社の株価が下がれば、黒い噂のある買収先の「ゴールド興業」からの出資も承認され易くなると踏んでるからだ。

尚人は「赤塚」という会社に勤めてることに誇りを持っていた。
なのでなんとかヒット商品を開発して、買収話を白紙に戻させようと思っていた。
アッコを冬休みの間、バイトとして雇い、化粧品のアイデアを出してもらおうと期待したのだ。

だが中身が10才のアッコには、会社で交わされる会話はチンプンカンプンで、まわりの社員にも変な目で見られてる。
それでも母親には塾に行くと言って、毎日会社に出社するアッコは、次第に大人の世界のいろんなことがわかってくるのだった。


ラブコメ乗りのファンタジーかと思ってたら、企業ドラマな展開になっていくのは意外だった。
「アッコちゃん」を見に来た子供は、それこそチンプンカンプンだろうな。
この脚本は思い切ったもんだ。

アッコは冬休み中の、自由研究を発表する登校日に、会社で覚えたパソコンのスキルで、資料をコピペしてプリントアウトしたものを提出。
「大人はみんなこうしてるよ」
と同級生に自慢気にするが、担任の先生にはやんわりとたしなめられる。

「アッコは、自分が提出した内容を、この場で言えるかい?」
全然頭に入ってないアッコは、言葉を継げない。
「自分で苦労して調べたり、考えたりしたことが、自分の身につくんだよ」

コピペしたデータを貼り付けてパワポで仕上げたようなプレゼン資料をやりとりする、現実の大人社会の仕事のやり方を皮肉ってる場面だった。
会社内の紛争は、株主総会の紛糾でピークを迎える。


もちろんシリアスな描写だけでなく、アッコが魔法のコンパクトを使って、いろんな人間に変身して状況を変えようと奮闘するので、変身された役者も「子供口調」で演じることになる。

専務を演じる谷原章介も、開発室の女性社員を演じる吹石一恵も。
中でも前社長を演じる大杉漣の、子供演技全開っぷりは爆笑ものだ。

終盤に向かうに従いマンガな展開になってくが、エピローグも気持ちよくまとめてあり、
「大人とはどういう人のことを言うのだろう」
と、映画が描こうとしたテーマを、判り易く観客の心に届くように作られてる。

『映画 ひみつのアッコちゃん』という題名で、俺みたいな物好きはともかく、大人の男性客が関心持つとは期待できないと思うが、これは侮れない仕上がりなのだ。

2012年9月12日

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