秘宝別冊とスーザン・ジョージ [映画ア行]

『おませなツインキー』

本屋に行ったら、なかなか面白いビジュアル本が出てるじゃないか。
「映画秘宝ex 思春期映画女優グラフィティ」という、70年代~80年代の洋画を飾った女優たちを網羅してる。だがその中にはメリル・ストリープとかグレン・クローズの名前はない。
つまりはそういう観点でセレクションされた女優図鑑なのだ。
どういう観点だかは察してほしい。ほとんどR45仕様ではあるが。

おませなツインキー雑誌.jpg

表紙を一番デカく飾ってるのが、ナスターシャ・キンスキーなので、これは俺に買えと無言のプレッシャーを与えてるようなもんである。

ちなみに裏表紙には『サンバーン』のファラ・フォーセットが。
サラフィアン監督とは思えないユルさの映画だったが、彼女の胸下までジッパーおろしたウェットスーツ姿の破壊力は、『死亡遊戯』の黄色いトラックスーツのブルース・リーに匹敵すると、当時クラスの男子の議論を沸騰させたのだ。

買ってひと通り眺めてみたが、おそろしいことに、この本に出てくるすべての女優の、ほとんどの映画を俺は見てるのだった。

スチルだけでなく、読み物も楽しい。
大槻ケンヂが、社会現象となってた『エマニエル夫人』に触れて、
小学校の同級生が「お前はエマニエルだ!」とアダ名されるイジメに合い、クラス会で
「●●君をエマニエルと呼ぶのはやめましょう」
と提案があったとか爆笑したわ。

みうらじゅんのインタビューでも、文系の自分らは『アメリカン・グラフィティ』見ても、どう考えてもチャーリー(・マーティン・スミス)の役でしかない。
とか本質を突いた語録に溢れており、これを読めるだけでも買った甲斐はあるってもんだ。

そんな楽しい本にも登場するのがスーザン・ジョージだ。
この『おませなツインキー』は彼女が19才の時に、16才の女子高生を演じた、1969年作。
日本では1972年に公開されてる。

おませなツィンキー.jpg

ロンドンのパブリック・スクールに通うツインキーは、毎朝ブレザーにミニのスカート、白のハイソで自転車通学。
家は裕福で、厳格な父親は朝食のテーブルで、ツインキーが官能小説を読み耽ってるのを見つけて叱りつける。しかも母親からは「あなたの日記読んだわよ」と言われピンチ。

なぜピンチかというと、ツインキーには恋人がいたのだ。
それも彼女が読んでた官能小説を書いた作家で、38才のアメリカ人スコットだった。

親子ほども歳の離れた二人が、どこでどう出会ったのか、ツインキーは登校前に、スコットのアパートに立ち寄り、まだ寝てる彼のために朝食を作る。
出来たものは黒こげになってるが。
歳は離れてたが、ツインキーは純粋にスコットのことを愛していた。
だが二人が恋人同士と明るみに出ると、イギリスの法律では「法廷強姦罪」が適応される可能性がある。有罪になれば7年の禁固刑だ。

ツインキーは「じゃあ、結婚して夫婦になればいいのよ!」
一応16才で結婚はできるが、二人の関係上、イギリスで認められるかわからない。

そんなスコットの元に、警察官がやってきた。
スコットのイギリス滞在ビザが明日で切れると言う。
更新手続きを踏まなかったのは迂闊だった。
この二つの問題を解決させる妙案があった。
スコットランドに行けば、すぐに結婚手続きが交わせるというのだ。
スコットとツインキーは、その日のうちにグラスゴーへと向かい、二人は晴れて夫婦となった。

ツインキーから事後報告を受けた両親はびっくり。すぐにスコットを家に呼び、審問が開かれた。
父親は「長続きするはずない」と結婚を認めない構えだが、母親はスコットの男前ぶりに満更でもないようだ。
いずれにせよ、結婚してしまったもんはしょーがない。
両親はその新婚生活を見守るしかなかった。


38才の作家が、16才のイギリス少女と結婚したというニュースは、大衆紙の格好の記事になった。
同級生が人妻になったと、学校でも大騒ぎ。

ツインキーは同級生の女の子たちを、スコットの家に招いてパーティを催した。
家に戻ったスコットは、たくさんの女子高生たちの視線に晒された。
だが仲睦まじく寄り添うツインキーを見て、同級生たちは一様に、裸の二人を想像してしまい、場は微妙な沈黙に支配される。
ツインキーの夫に会いたいとやってきた同級生たちは、そそくさと部屋を出て行った。

ツインキーの家族のことやら、なんやらと干渉に晒されるのを逃れるため、スコットはニューヨークに彼女を連れて戻ることにした。

ケネディ空港にはスコットの両親と、スコットのエージェントが出迎えた。
「イミグレーション」から出てきたツインキーを見て
「息子はロリコンだったのか」と親は絶句する。

ツインキーは本気で息子を愛してるようなので、スコットの両親もすぐに彼女を受け入れた。
エージェントは、スコットが一向に新作の執筆に入ってないことに焦っていた。
「小説が今すぐ無理ならCMの台本を頼む」と仕事を依頼した。


数日間はスコットの両親の家に同居したが、スコットの父親が、二人の寝室を覗ったりするんで、やはりアパートを探そうということに。
ニューヨークはデモの季節だった。
ツインキーにはその光景が物珍しく、スコットが目を離した隙に、いつの間にか、デモに加わって、プラカード持って歩いてる。
スコットはツインキーを連れ戻そうと、警官と揉み合いになり、つい殴ってしまう。
現行犯逮捕され、下されたのは30日間の拘留。

ツインキーはスコットが釈放されるまで、自分でアパートを探す決意をする。
彼女が見つけたのは、ハドソン河に架かる橋の傍にある、見晴らしのいい部屋だった。

可愛い女の子の独り住まいと思った大家は、快く契約を交わすが、後で人妻と知りがっくり。
ツインキーはアパートに暮らし始めると、すぐに仲良くなった人たちを呼んではパーティ三昧だった。

ようやく釈放されたスコットは、ツインキーと待望の新婚生活へ。
だが執筆活動に専念したいスコットと、常にかまってほしい若いツインキーの関係は、しだいにぎくしゃくしたものになっていく。


映画としては小品というイメージだったので、ロンドンとニューヨーク、二つの大都市でロケーションしてるスケールの大きさは意外だった。
ハイドパークとテムズ川を臨むロンドンの風景と、セントラル・パークとハドソン河のニューヨークが、対になってるように描かれてる。

他愛ないロマコメではあるが、設定が他愛ないどころか、今じゃアウトな内容なのだから、時代は進んでるのか戻ってるのか。
二人が裸で抱き合うような場面は一切ないが。

60年代後半のミニブームそのままに、スーザン・ジョージは終始ミニスカで、とにかく可愛い。
彼女はこの映画の後は、集団暴行される人妻役が衝撃を与えた『わらの犬』とか、
ピーター・フォンダと逃げる『ダーティ・メリー、クレイジー・ラリー』で、思春期部分を直撃する女優となる。
庶民的な親しみ易さがあり「外人さんだけど、お願いすればなんとかなるんじゃないか?」という、都合のいい妄想に耽らせてくれた。
風吹ジュンがデビューした当時、スーザン・ジョージとカブるエロ気を感じたもんだ。


そんな彼女が惚れるのがチャールズ・ブロンソンというのが、「なぜ?」って感じなのだが。
父親が早くに亡くなって、以来ファザコンでというような設定ならわかるんだが、家には口うるさい父親がいるのに、なんでまたそんな年上と、と思わざるを得ない。

口ヒゲのないブロンソンも、エロ小説家という設定が、合ってるんだか、合わないんだか、微妙だけど、贅肉のないシルエットはカッコいいね。

前にこのブログでコメント入れた、オリヴィア・ハッセーの『青い騒音』というイギリス映画も、中年の妻子持ちとの恋愛を描いてたが、その時の男優もイケメンというより、ジミシブな感じの見た目だった。イギリスの女性の独特な好みがキャスティングに反映されてるのか。

監督はリチャード・ドナーで、この人は当時はテレビドラマとか、こういう小ぶりな映画を手がけてたのが、1976年の『オーメン』の大ヒットで確変起こして、以降は大作監督として名を成していく。
「ツイ~ンキ~♪」っていう軽快なテーマソングもいい。

ジェットリンクから出てるDVDは、フランス公開版を原版にしてるようで、タイトルはフランス語だった。画質はいいとは言えない。
なぜか後半のニューヨークの場面になると、画質がマシになってく印象があった。
錯覚かもしれんが。

2012年9月15日

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